保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
総説
リアルとデジタルの好循環を通した市民科学による生物の時空間分布プラットフォーム
小出 大, 辻本 翔平, 熊谷 直喜, 池上 真木彦, 西廣 淳
著者情報
  • 小出 大

    国立環境研究所気候変動適応センター

  • 辻本 翔平

    国立環境研究所気候変動適応センター

  • 熊谷 直喜

    国立環境研究所気候変動適応センター

  • 池上 真木彦

    国立環境研究所生物多様性領域

  • 西廣 淳

    国立環境研究所気候変動適応センター

責任著者(Corresponding author)

ORCID
キーワード: デジタルプラットフォーム, 種分布, 生物多様性, フェノロジー, モニタリング
ジャーナル オープンアクセス

2023 年 28 巻 1 号 論文ID: 2217

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  • 発行日: 2023年04月30日 受付日: 2022年06月07日 J-STAGE公開日: 2023年09月05日 受理日: 2022年11月02日 早期公開日: 2023年04月30日 改訂日: -
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抄録

人為撹乱や気候変動など、変動する環境下において様々な生物多様性の変化が引き起こされ、生態系サービスの変容が危惧される中で、市民科学は生物の観測や生物多様性の普及啓発を図る上でますます重要なツールとなってきている。近年のスマートフォンの普及とデジタル技術の革新に伴って、国内でも様々な市民科学デジタルプラットフォームが構築されてきたが、相互の特徴比較やデータを活用した観測の改善などはまだ不十分である。そこで本論文では国内 3 つのデジタルプラットフォーム(iNaturalist、いきものログ、Biome)比較を行い、市民科学におけるデータやデジタル活用に関連する課題をまとめた上で、その課題をデータ解析によって克服する方法について議論した。3つのデジタルプラットフォームは入力可能なデータ形式や、使いやすさ、データの公開方針などで違いがあり、プロジェクトの目的によって使い分ける必要性が考えられる。市民科学の課題としては、データの質・量に関係するものとして種同定精度、観測バイアス、分布の北限南限やフェノロジーなどいくつかのデータの不足が挙げられた。またプロジェクト運営に関係する課題として、市民とのコミュニケーション不足や継続性の担保が指摘されている。種同定精度に関しては観察した生物の写真や位置情報などを使った機械学習による人工知能判定により改善されてきているが、その他の課題に関しては今後データを活用・解析してデータ取得の段階から改善していく方向性が考えられた。種ごとの観測データの見える化や、モデルによる時空間分布予測、個別の市民観測データに対する貢献度評価レポートなどを用いれば、既存の課題を改善することが可能と考えられる。現実世界における生物観測データの共有を進め、デジタル世界におけるデータ解析結果をユーザーがスマートフォンで簡便に確認しつつ楽しみながら観測を改善し、新たな観測データを元にモデル改善を図る。こうしたリアルとデジタルの好循環を意識した観測体制の構築が、さらなる市民科学の活性化と、自然と共存した社会形成に繋がるだろう。

引用文献 (55)
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© 2023 著者

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