保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
原著論文
奄美大島の亜熱帯照葉樹林における樹洞現存量と樹洞形成に関わる要因の評価:樹洞利用生物の保全のために
井上 奈津美, 井上 遠, 松本 斉, 境 優, 吉田 丈人, 鷲谷 いづみ
著者情報
  • 井上 奈津美

    東京大学大学院農学生命科学研究科

  • 井上 遠

    東京大学大学院農学生命科学研究科

  • 松本 斉

    東京大学大学院農学生命科学研究科

  • 境 優

    中央大学理工学部

  • 吉田 丈人

    総合地球環境学研究所
    東京大学大学院総合文化研究科

  • 鷲谷 いづみ

    中央大学理工学部

責任著者(Corresponding author)

ORCID
キーワード: 国立公園, 成熟林, 大径木, 腐朽, マイクロハビタット
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2021 年 26 巻 1 号 論文ID: 2019

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  • 発行日: 2021年05月24日 受付日: 2020年05月02日 J-STAGE公開日: 2021年07月12日 受理日: 2021年02月17日 早期公開日: 2021年05月24日 改訂日: -
  • 訂正情報
    訂正日: 2022年05月25日 訂正理由: incorrect pdf 訂正箇所: 本文PDF 訂正内容: incorrect pdf
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抄録

樹洞は、多くの生物がねぐらや営巣場所として利用する森林生態系における重要なマイクロハビタットである。気候帯や地域に応じて樹洞の現存量や、樹洞の形成に関わる要因は大きく異なっており、樹洞利用生物の保全のためにはそれらを明らかにすることが重要である。本研究では、奄美大島の世界的にも希少な湿潤な亜熱帯照葉樹林を対象に、伐採履歴が異なる 2つの森林タイプ(成熟林と二次林)において、樹木サイズや樹種構成、樹洞の現存量を明らかにするとともに、樹種ごとに形成される樹洞の特徴を把握した。奄美大島の亜熱帯照葉樹林は、他の地域の熱帯林または亜熱帯林と比較して樹洞の現存量は多く、キツツキの穿孔による樹洞と比べて腐朽による樹洞が高い割合を占めていた。胸高直径( DBH)30 cm以上の樹木において、成熟林では二次林と比較して、ヘクタールあたりの幹数、樹洞を有する幹数、樹洞数が有意に多かった。いずれの森林タイプにおいてもスダジイが最も優占しており(胸高直径 15 cm以上の幹に占める割合は成熟林で 48%、二次林で 66%)、成熟林では次いでイジュ( 10.8%)とイスノキ(10.3%)、二次林ではイジュ( 9.9%)とリュウキュウマツ( 7.6%)が優占していた。記録された樹洞について、一般化線形混合モデルを用いて幹ごとの樹洞数に影響する要因を検討したところ、胸高直径が大きくなるほどそれぞれの幹が有する樹洞数が多かったほか、樹種ではイスノキで最も樹洞数が多く、スダジイ、イジュがそれに続いた。確認された樹洞の 90%はスダジイとイスノキに形成されており、イスノキに形成された樹洞はスダジイに形成された樹洞よりも地面から入口下端までの高さが有意に高かった。 CCDカメラを用いて一部の樹洞の内部を観察したところ、ルリカケスもしくはケナガネズミの利用の痕跡および、リュウキュウコノハズクの繁殖が確認された。樹洞が形成されやすいイスノキの大径木を含めて成熟した亜熱帯照葉樹林を優先的に保全することが、樹洞を利用する鳥類や哺乳類の重要な繁殖・生息場所の維持、保全につながると考えられた。

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https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
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