(国研)国立環境研究所
早稲田大学法学部
名古屋大学大学院環境学研究科
都留文科大学教養学部
環境省
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みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社
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(一財)地球・人間環境フォーラム
2022 年 35 巻 5 号 p. 338-354
化学物質のリスク管理においては,常にさまざまな不確実性を伴う科学的知見に基づく適切な管理の実施が求められる。本稿では,水俣病,イタイイタイ病,いわゆる杉並病の3事例について,時間の推移とともにどのような科学的知見が現れ,同時にどのような対応がとられたかを観察した。その結果から,例えば強制力を伴う強い対策がとられたのは科学的知見の不確実性が相当に小さくなった時期に初めて観察される一方,科学的知見が不確実な状況でも,さまざまな行政等による対応が試みられたことも観察された。次に,過去の事例におけるこれらの観察を,現代の科学的リスク評価の観点により考察すると,前者の時期に見られる程度に科学的知見の不確実性が小さくなって初めて現代の科学的リスク評価の考え方が完全に適用可能となるのに対し,後者のような科学的知見の不確実性が大きい状態では現代の科学的リスク評価の考え方が適用可能ではないと考えられるが,実際に何らかの対応が試みられていたことから,そのような科学的知見の状態でも対応の必要性は明らかと思われた。後者の状態は予防原則の適用範囲と,完全に同一ではないとしても類似するところがあると考えられた。すなわち,科学的知見の不確実性の程度に応じ,現代の科学的リスク評価の方法が適用可能である場合とそうでない場合が事例として存在するが,いずれであっても何らかのリスク管理的な措置が試みられた経緯が観察された。これらにより,化学物質リスク管理において,科学的知見の不確実性が大きい場合から小さい場合までともに包含する枠組みが必要であり,そのためには例えば予防原則的な方法と科学的リスク評価による方法とを相補的に考慮することが有効である。