ダムの書誌あれこれ(52)〜ダムの堆砂〜 2ページ - ダム便覧
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◇ 2. ダムが埋没する
雪の研究者として知られている中谷宇吉郎博士(1900年〜1962年。人工雪の研究に取り組み、人工雪の製造に成功した)は「文芸春秋」昭和26年9月号において「ダムの埋没−これは日本の埋没にも成り得る」という論文を発表し、ダム
堆砂
問題を具体的に指摘、ダム工学分野に警鐘を鳴らした。その論文が26年を経て開発問題研究所編・発行「これは日本国土の沈没だ ダムが埋没する」(昭和52年)に再掲載された。
博士はダム開発について次のように述べている。
「日本は水資源には非常に恵まれた国で、これを開発すれば、動力にも水にも全く心配がなくなる。電力は有り余るほど得られる。しかし、水路式で電源開発すると、却って石炭の消費が増す。どうしてもダム式を採用しなければならない。これは同時に水害の防除にもなり、灌漑用水の源にもなる。但し、ダム式にすると、埋没の危機が甚だ多い。
以上の如くである。それで結局、問題は二つに帰せられる。合理的なダムの建設並にその使用の合理化、それと貯水池の埋没を防ぐこととの二つの問題である。湖底に沈む村の悲劇は免れないが、それは国家の力で十分な保障をすべきである。」
中谷博士は多くの学者たちとダム
堆砂
に係わる只見川開発調査に携わった。
ダム堆砂の基礎資料として、只見川の総降水量と洪水中の岩塊の移動状況、その速度の測定を重視している。
「これは日本国土の沈没だ ダムが埋没する」
夏期の降雨量測定には、自記雨量計の設置、降雪量の測定には、最大積雪に達した時期における積雪量の調査、それに融雪量の測定が必要だと説く。融雪量を測るには、降雪開始直前の時期を選んで地中に浸透計を埋め込み、雪触水の測定を行う。この降雨量と降雪量(水)の合計が年間総降水量となり、50億m3になるという。また洪水中の岩塊の移動状況及び速度その測定を重視する。
さらに中谷博士は次のように土質調査を重視する。
「土砂が一度川へはひったらその移動を止めることは到底出来ない。川へ入れないやうにするより外には根本的な埋没防禦の策はない。この研究には、まず全流域にわたって土質調査をして、その地図を作る必要がある」
「結局、この土質図を基にして、土砂崩壊の防止をやり、一方砂防ダムを最も有効な形式に造るといふ平凡なところに落付くかもしれないが、或は調べてみれば何か巧い方法が出て来るかも分らない。埋没防止のためには階段式にダムを造ればいいことは分っているが、それをやるにしても堆積量の予報及び堆積物の出所の究明が必要である。科学的な調査と研究をいくらやってもダムの埋没を完全に防止することは出来ないであろう」
中谷博士は、「医学がいくら進歩しても不老不死の法は見付からないと同じことである」と説きながら、ダム
堆砂
解決には完全な方法はないだろうと結論づける。しかし、博士は、年々のダム堆砂を減少させてダムの寿命を延ばすことは、経済上大切なことだと主張する。
なお、博士は、アメリカにおける水資源開発(ダム開発)を視察し、その重要性について、「沙漠の征服−アメリカの国土開発」(岩波新書・昭和25年)、児童向けに「水と人間」(三十書房・昭和27年)を著した。この書には、アメリカ内務省によって、コロラド川河にボルダー・ダム(1947年フーバー・ダムに改名)とその下流にパーカー・ダムが造られ、パーカー・ダムの貯水池からロスアンゼルスへ導水されるようになり、都市の発展に寄与したこと等が論じられている。
「沙漠の征服−アメリカの国土開発」
「水と人間」
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