ダムの書誌あれこれ(21)〜島根県のダム(尾原・志津見・山佐・三瓶・八戸・浜田・御部・大長見・美田・銚子)〜 4ページ - ダム便覧



4.島根県のダムの開発史(年表)

島根県のダム開発について、前述の『斐伊川史』、松尾寿他著『島根県の歴史』(山川出版社・平成17年)、日本ダム協会編・発行ダム年鑑2005』(平成17年)、『各ダムのパンフレット』によって、

・明治期〜大正期
・昭和初期(昭和元年〜昭和20年)
・昭和中期(昭和21年〜昭和40年)
・昭和後期(昭和41年〜昭和63年)
・平成期 (平成元年〜平成15年)

の5期に分けて追ってみる。

【なお、表記のダムは、型式、目的、堤高総貯水容量の順で、A:アーチダム E:アースダム G:重力式コンクリートダム R:ロックフィルダム。F:洪水調節・農地防災 N:不特定用水河川維持用水 A:かんがい用水 W:水道用水 I:工業用水 P:発電用水を表す】


しかく明治期〜大正期

明治4年 江良溜池(高津川)の竣工
E A 16.5m 0.5万m3
大堤上溜池(高津川)の竣工
E A 22m 1.3万m3
大堤下溜池( 高津川) の竣工
E A 21m 0.9万m3
雁丁大堤(高津川)の竣工
E A 21m 3.3万m3
6年 斐伊川水害おこる(死者74人)
13年 穴釜溜池(斐伊川)の竣工
E A 22m 5.6万m3
19年 斐伊川水害おこる(死者78人)
23年 大石溜池(斐伊川)の竣工
E A 23.3m 5万m3
26年 斐伊川水害おこる(死者54人)
27年 大風水害おこる
大正7年 斐伊川水害おこる
15年 斐伊川水害おこる

この期はアースダム6基が築造されており、大正期の築造はみあたらない。すべて目的はかんがい用水であって、平均堤高21m、平均貯水容量 2.8万m3となっている。

しかく昭和初期(昭和元年〜昭和20年)

昭和3年 杉谷池(江の川)の竣工
E A 15m 0.6万m3
6年 下高尾溜池(斐伊川)の竣工
E A 21m 7.5万m3
9年 室戸台風(死者12人、負傷者14人)
10年 淀原溜池(江の川)の竣工
E A 16m 4万m3
12年 平四郎溜池(江の川)の竣工
E A 15m 3.3万m3
13年 畑溜池(田俵川)の竣工
E A 15.3m 6万m3
14年 湯屋の奥溜池(斐伊川)の竣工
E A 15m 0.6万m3
16年 殊勝山溜池(斐伊川)の竣工
E A 21.3m 3.6万m3
岩汐溜池(斐伊川)の竣工
E A 20.4m 6.1万m3
17年 井頭溜池(斐伊川)の竣工
E A 19.4m 8.3万m3
後山溜池(斐伊川)の竣工
E A 15.4m 32万m3
阿井川ダム(斐伊川)の完成
G P 21.7m 108.5万m3
18年 台風26号の災害(死者 152人、負傷
者 131人、家屋流失1463戸)
19年 台風による大洪水
20年 扇迫溜池(斐伊川)の竣工
E A 21.4m 9.9万m3
枕崎台風の災害(死者58人、負傷者
128人)

昭和初期は、12基が築造された。その内訳はかんがい用のアースダム11基、水力発電用の重力式コンクリートダム1基で、平均堤高18m、平均総貯水容量15.8万m3にすぎない。戦争の時代を背景とした稲作中心のダム開発であった。特筆されることは、昭和17年完成の島根県初の重力式コンクリートダムの阿井川ダムである。この阿井川ダムは、仁多郡仁多町の斐伊川水系阿井川に建設され、北原発電所において最大出力15,600KWが稼動した。

しかく昭和中期(昭和21年〜昭和40年)

昭和22年 程ケ益池(浜田川)の竣工
E A 15m 1.7万m3
24年 ビシャデン溜池(斐伊川)の竣工
E A 15.9m 1.5万m3
蝮谷溜池(斐伊川)の竣工
E A 16m 9.9万m3
28年 三成ダム(斐伊川)の完成
A P 36m 386.9万m3
柿原溜池(斐伊川)の竣工
E A 17m 139万m3
浜原ダム(江の川)の完成
G P 19m 1120万m3
29年 大渋溜池(田俵川)の竣工
E A 15.2m 7万m3
鹿子原溜池(江の川)の竣工
E A 16m 6万m3
30年 中南溜池(江の川)の竣工
E A 16m 9万m3
31年 来島ダム(神戸川)の完成
G P 63m 2347万m3
大谷ダム(斐伊川)の完成
G W 35m 142.2万m3
32年 嵯峨谷ダム(益田川)の完成
G F 34.6m 82.8万m3
33年 梅雨前線による豪雨災害
35年 大峠ダム(益田川)の完成
G F 23.2m 18.6万m3
36年 周布川ダム(周布川)の完成
G P 58m 1017.3万m3
長見ダム(周布川)の完成
G P 20.2m 35.9万m3
木都賀ダム(三隅川)の完成
G P 39m 252.6万m3
斐伊川、神戸川の水害(死者13人、
負傷者33人)
37年 加志岐ダム(敬川)の完成
G A 16.5m 26.7万m3
浜田ダム(浜田川)の完成
G FP 58m 500万m3
38年 三八豪雪の被害
39年 殿川内溜池(斐伊川)の竣工
E A 16m 18万m3
山陰北陸豪雨の災害
40年 上野溜池(大原川)の竣工
R A 15m 10.2万m3
梅雨前線による豪雨災害

昭和中期は20基が築造された。その内訳はアーチダム1基、アースダム8基、重力式コンクリートダム10基、ロックフィルダム1基で、用途として、洪水調節2基、かんがい用水11基、水道用水1基、水力発電6基となっている。平均堤高27.2m、平均総貯水容量 306.6万m3である。なお、この期は戦後復興、高度成長時代であり、水力発電専用ダムとして、昭和31年来島ダム(堤高63m)、36年周布川ダム(堤高58m)、37年浜田ダム(堤高50m)の完成が特筆される。だが、工業用水及び多目的ダムの建設はない。

しかく昭和後期(昭和41年〜昭和63年)

昭和42年 布部ダム(斐伊川)の完成
G FWIP 55.9m 710万m3
笹倉ダム(益田川)の完成
G F 36.3m 55.6万m3
43年 中海干拓淡水化事業着工
47年 梅雨前線による豪雨災害(死者11人
負傷者18人)
48年 大渇水おこる(松江市給水制限)
49年 島根原子力発電所営業運転開始
50年 津田川ダム(津田川)の完成
G F 28.7m 34万m3
斐伊川、神戸川の水害
51年 八戸ダム(江の川)の完成
G FNWIP 72m 2680万m3
中海に赤潮異常発生
減反政策3240ha割当て
53年 美田ダム(美田川)の完成
G FNW 26.8m 39.1万m3
55年 山佐ダム(斐伊川)の完成
G FW 56m 505万m3
58年 島根県西部地方豪雨災害(死者、行
方不明者 107人)
59年 清瀧ダム(大原川)の完成
E F 34.8m 83.5万m3
60年 梅雨前線による豪雨災害
61年 志津見ダム建設事業着手
62年 赤田新溜池(斐伊川)の竣工
E A 25.2m 13.8万m3
深山溜池(波根川)の竣工
G A 15m 8万m3
63年 塩田ダム(斐伊川)の完成
G A 39.7m 31万m3
農水省 中海・宍道湖淡水化事業の
凍結決定
加計・浜田豪雨災害

昭和後期は10基が築造された。その内訳はアースダム2基、重力式コンクリートダム8基で、用途として洪水調節3基、かんがい用水3基、多目的ダム4基となっている。多目的ダムとして昭和42年に布部ダム(堤高55.9m)、51年八戸ダム(堤高72m)、53年美田ダム(堤高26.8m)が完成した。

しかく平成期(平成元年〜平成15年)

平成2年 御部ダム(三隅川)の完成
G FNP 63m 1680万m3
3年 尾原ダム建設事業着手
台風19号の被害
4年 坂根ダム(斐伊川)の完成
G A 50.6m 79万m3
5年 船堀溜池(大原川)の竣工
E A 15m 11.5万m3
6年 斐伊川放水路事業起工
8年 三瓶ダム(静間川)の完成
G FNW 54.5m 712万m3
11年 銚子ダム(八尾川)の完成
G FNW 39.7m 253万m3
12年 島根県西部地震発生
14年 美田ダム再開発(美田川)の完成
G FNW 26.8m 53.9万m3
宍道湖・中海淡水化事業の中止決定
15年 大長見ダム(周布川)の完成
G FNW 71.5m 1927万m3

平成期は6基が築造された。その内訳はアースダム1基、重力式コンクリートダム5基で、その用途としてかんがい用2基、多目的ダム4基であり、特筆されるダムは、昭和53年完成した美田ダムの再開発、島根県初RCD施工の大長見ダムである。現在、尾原ダム(斐伊川水系)、稗原ダム(神戸川水系)、志津見ダム(神戸川水系)、波積ダム(江の川水系)、第二浜田ダム(浜田川水系)、益田川ダム(益田川水系)が建設中で、矢原川ダム(三隅川水系)は調査中、浜田ダム(浜田川水系)、笹倉ダム(益田川水系)は再開発中である。

以上、完成のダムは溜池を含む54基に及ぶが、堤高ベスト5は、
・ 八戸ダム 72m
・ 大長見ダム 71.5m
・ 来島ダム 63m
・ 御部ダム 63m
・ 周布川ダム 58m
一方、総貯水容量ベスト5は、
・ 八戸ダム 2680万・
・ 来島ダム 2347万・
・ 大長見ダム 1927万・
・ 御部ダム 1680万・
・ 浜原ダム 1120万・
と、なっている。

以下、管理中における島根県営ダムの山佐ダム、三瓶ダム、八戸ダム、浜田ダム、大長見ダム、御部ダム、美田ダム、銚子ダムの建設について追ってみたい。

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