第21回「よつばの。読書会」参加レポート

第21回「よつばの。読書会」に参加しました。今回も、特殊な表現や面白い着眼点に触れることができて、いろいろ刺激を受けました。

会場で読んで印象に残った本

  • (さかえさんの持ち込み本)
    • ゆかたろ『AKNMR Log. Version1.01』......『高機動幻想ガンパレード・マーチ』の二次創作マンガ。同ゲームソフトはリメイクされないまま現在に至っているため、僕的には25年前にどういう感情で楽しんだのかを思い出しにくい存在である。しかし、この本の絵に眠っていた記憶が刺激された。オリジナルのデザインが持っていた魅力を引き出しつつ、現代的な感覚が加わったアレンジで美しくキャラクターが描かれており、見ているうちに再プレイしたい気持ちが湧き上がった。
  • (ハルガさんの持ち込み本)
    • みひふ『F/M』......『魔法少女まどか☆マギカ』の二次創作イラスト同人誌。イラストそのものに息をのむ迫力があり、また、正確に描けばこうなるが、雰囲気を重視して今回はこう描いたという説明図にも「なるほど」と感じて印象に残った。
  • (ya_shiさんの持ち込み本)
    • AiLeeN『Take it Easy.』......語学留学先のマルタや、パリ、ローマを描いたカラーイラスト調の旅のスケッチ集。僕も一度マルタ語学留学を検討したことがあるので、興味深く絵を眺めた。
  • (suzukoさんの持ち込み本)
    • 菖桂苑『酒造がつくる美味しい消毒液』......コロナ禍で消毒液が大量に必要な社会になった際、その分野に参入した酒造メーカーに注目した本。僕はそんな出自を持つ消毒液があること自体知らなかったし、それをまとめてみようとする着眼点も面白いと思った。
    • 沖島灯『姉の海外挙式でストリップに行くんじゃない!inグアム』......旅行記マンガ。有名観光地じゃない場所に行く旅行記が好きなので面白かった。
  • (国里コクリさんの持ち込み本)
    • 休み時間のらくがき帳『いとのはなし』......マンガの紙のページに糸を縫い込むという、とても手間がかかりそうな表現がされており、発想に驚かされた。
  • (ぴにっとさんの持ち込み本
    • ぴょこっとついんて!『ぴょこっとレポ漫画総集編2』......写真の背景に映り込んだ植物のせいで警察に疑いをかけられた体験など、少し変わった日常が描かれていて面白かった。

表紙の絵が印象に残った本

  • (wraitaさんの持ち込み本)
    • ぴけ『アルビレオ』
    • 春日あえ『たべる』
  • (国里コクリさんの持ち込み本)
    • エブリデ『CITY DIVER: 大阪ミナミ 戎橋筋南編』

今回は、展示スペースが従来の重厚な作業机から軽量な机に変わり、だいぶ見た目がすっきりした印象を受けました。

(余談1)徒歩で駅から会場に向かう途中、「耕書堂跡地」に寄ってみました。そこは大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の主人公・蔦屋重三郎が開業した書店の跡地です。『べらぼう』には、主人公が絵描きや文章書きに原稿を依頼して、手作業で本を作る展開があり、同人誌づくりを連想しました。そのため、同人誌関連のイベントの日に立ち寄れるのは気分的に丁度よかったです。

(余談2)同人誌を読んだ影響で、PSソフトの『高機動幻想ガンパレード・マーチ』を中古で買い直し、再プレイし始めました。

李白の詩が書かれたLDジャケットイラスト

部屋が殺風景なので「レーザーディスクのジャケットでも壁に飾ってみるか!」と思い立ち、『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』の第6巻を用意したところ、イラストの背景に並ぶ漢字が気になった。これは単なる装飾なのだろうか? それとも何か意味があるのかな?

早速、中国のSNSウェイボーで漢字の意味を尋ねてみたところ、これは李白の詩「戦場南(せんじょうなん)」であると教わった。

漢詩の本とイラストを照らし合わせてみると、確かに、人物群の両側に並ぶ「備胡處漢」「啄人腸銜飛」の文字が合致する。加えて、ムック本に収録されている同イラストの縦長のもの(LDジャケットより広い範囲の漢字が見える)でも合致していた。というわけで、李白の「戦場南」の引用とみて間違いなさそうだ。

このOVA第6巻は1995年発売、約30年前の作品である。それでも、まだまだ初めて知ることがあるとは面白い......!(いや、単に僕が知らなかっただけかもしれないけど)

「戦場南」は、長い戦争に疲弊した将兵の姿や、戦場の悲惨さを描いた詩である。また、軽々しく武器を使うべきでないという反戦的な想いが込められた詩であるようだ。
それを踏まえてジャケットイラストを改めて見ると、どなたの発想でこの詩が引用されたのかは分からないが、激戦が続く物語終盤の展開とかけ離れた内容ではなく、教養ある作り手の存在に思いを馳せることとなった。

(以下、『世界古典文学全集27 李白』P.82〜83)

戦場南
去年戰桑乾源
今年戰葱河道
洗兵條支海上波
放馬天山雪中草
萬里長征戰
三軍盡衰老
匈奴以殺戮爲耕作
古來唯見白骨黄沙田
秦家築城備胡處
漢家還有烽火燃
烽火然不息
征戰無已時
野戰格鬪死
敗馬號鳴向天悲
烏鳶啄人腸
銜飛上挂枯樹枝
士卒塗草莽
將軍空爾爲
乃知兵者是凶器
聖人不得已而用之

城南に戦う
去年 桑乾河の源で戦争があったばかりなのに
今年もまた葱嶺河の道で戦争だ
条支の海の波で武器の血のりを洗い
天山の雪でおおわれた草原に馬を放つ
長い戦争で万里の行軍を続け
三軍の将兵はみな老けこみ衰弱する
敵の匈奴は人殺しをまるで田を耕すことのように心得
白骨を黄いろい砂田の上に見ることなど昔から平気だ
秦の始皇帝は万里の長城をきずいて蛮族の南下を防いだ
だが漢の時代になってまたそこにのろし火が燃え辺境の急を告げる
のろし火は燃えてやまない
戦争も終わるときがない
野に戦い組打ちして死ぬ
主人を失った馬が天に向かっていななく声は悲しい
からすやとんびが人間のはらわたをついばみ
口にくわえて飛び枯れ木の枝にひっかける
士卒は草むらの中で野たれ死にし
将軍のやったことはじつに無意味であった
そこで武器というものはたしかに凶器であることがわかる
聖人はやむをえない場合にだけ仕方なしにそれを用いるのだ

「NotebookLM」がアニメの内容を即座に要約したので驚いた

はじめに

Googleの「NotebookLM」は、指定した資料(PDFなど)に人間の代わりに目を通して、情報を整理してくれるツールだ。最近、資料だけでなくYouTubeのURLも指定できると知り、アニメで試してみたところ、即座に要約が出てきて驚いた。

[フレーム]notebooklm.google

とりあえず公式配信されている『機動戦士ガンダム』の第1話と、たまたま最近観直した『MASTERキートン』の第1話のURLを指定。

すると、数秒で次のようなものが出力された。

出力された第1話の概要

『機動戦士ガンダム』の場合

このYouTube動画の冒頭部分は、宇宙世紀の始まりと、増えすぎた人口を宇宙に移住させたことによる地球連邦とジオン公国の対立を描いています。冒頭のナレーションでは、この対立が独立戦争へと発展し、開戦からわずか1ヶ月で全人口の半分が失われたという衝撃的な状況が語られます。その後、物語はサイド7というスペースコロニーに移り、主人公らしき少年アムロ・レイが日常を送る様子と、彼が避難勧告を受けているにも関わらず友人たちと過ごす様子が描かれています。動画の大部分は、ジオン軍の攻撃に晒されたサイド7で、アムロが偶然にも連邦軍の新型モビルスーツであるガンダムに乗り込み、敵を迎撃する初めての戦闘シーンで構成されています。

『MASTERキートン』の場合

このYouTube動画のトランスクリプトは、ギリシャの文化と歴史、特に賭博の起源と生命保険の概念について触れつつ、物語の導入部を描写しています。主人公らしきキートンは、古代ギリシャの競技や遺物について言及し、次に保険会社「ロイズ」からの連絡を受けます。その内容は、保険契約者であるレオン・パパスという人物の不審死に関する調査依頼であり、キートンはレオンの故郷であるギリシャの村を訪れ、関係者から情報を得ようとします。過去の悲劇や秘密が明らかになっていき、物語はサスペンスフルな展開を迎えます。

「こんなものが自動で、数秒で出てくるの!?」と驚いた。

ただこの機能には、まだ不完全な点があり、利用には注意が必要である。例えば、『MASTERキートン』の第1話では主人公が古い村の一部を破壊する場面がある。ところが「NotebookLM」のチャット機能でその場面について質問したところ、全く認識していなかったのだ。この原因は、冒頭にトランスクリプト(文字起こし)がソースとして示されているように、映像そのものを観ているわけではなく、セリフやナレーションを元にまとめたためだと思われる。そのため、主人公が無言で行った破壊行為を認識できなかったようだ。

だから現状では、セリフが少ない作品では上手く機能しないだろうし、「セリフではこう言ってるけど、顔を見ると明らかにウソ!」みたいな場面も誤読しそう。とはいえ「こんなの全然凄くないよ......!」とはちょっと言えない機能だ。「映像をAIに読ませて、あらすじの叩き台を作ってもらうぞ」みたいな時代がすぐ来たりするのかな。

出力された第1話のマインドマップ

((注記)見た目がごちゃごちゃするので上の方しか展開してないが、下の方も同様に開く)。

『機動戦士ガンダム』の場合
『MASTERキートン』の場合

このようにマインドマップ形式で要素の整理もしてくれた。自分は古いアニメファンなので、あんまりハイスピードで作品を消費するような行為には抵抗あるが、機能としては、アニメを観ていて頭が混乱した時などに理解を助ける役に立ってくれるかもしれない。

おわりに

結論としては、(今はまだ不正確で物足りないけど)AIの性能が上がったらアニメファンの視聴スタイルや、映像を元にして文章を書く人にも影響を及ぼしそうだなと思った。今まであまり考えたことがなかったけれども。

((注記)他にもいろいろ出力できるのだが、そちらの機能は内容が不自然に細かくて、YouTube以外の情報も参照していそうなので、今のところ興味ない。音声概要の機能も、確かに凄いけど、間違ったことを堂々と言うので困る)

『アニメ・ファンタジスタ・ジャパン2024』「新時代の作画――美術・撮影・3DCG」の感想

アニメ・ファンタジスタ・ジャパン2024のメインステージで行われた7公演のうちの1つ、山本健監督とちな監督の対談「新時代の作画――美術・撮影・3DCG」を観に行った。今年生まれたばかりのアニメイベントであり、会場もホテルのワンフロアと小規模、かつトークイベントは観覧有料にも関わらず、観客が100人ぐらい居てびっくりした。

ちなさんは折り目正しいブルーのビジネスシャツ((注記)以前に井上俊之さんの出版記念イベントにゲスト出演した時と似た格好)、山本健さんは『化け猫あんずちゃん』のTシャツを着ていて対照的な雰囲気だった。

ぼくは『劇場版 ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』を観て山本健監督に興味を持ったのだが、いろんなインタビュー記事を読んでみたところ、「映画の印象」と「インタビュー記事から受ける印象」が頭の中でどうにも一致しない。その引っ掛かりが、今回イベントに参加した動機のひとつだった。
そしたら、イベントの中で「こんなテンションの低い人が、あんな熱い『ウマ娘』を......」みたいなニュアンスで山本さんがいじられる場面を目撃したり、大学時代の先生にも描く絵とのギャップを指摘されたことがあるみたいな逸話が聞けたり、何よりメディア越しではないリアルな姿を目の当たりにすることができたので、個人的な引っかかりに対する答えが得られてよかった。

対談の最初に司会の高瀬康司さんが経歴を尋ねた。山本さんは武蔵野美術大学で油絵を学び、サークルで自主制作アニメを作っていたという。その後、Production IGで動画を2年経験して原画に昇格。原画は黄瀬和哉さんに見てもらっていたという。いきなり原画になるのではなく、動画を2年やった経験は演出の仕事に役立っているそうだ。
ちなさんの方は、いろんな美大の学生(渡邊啓一郎さん、谷田部透湖さん、山本健さん等)が自主制作アニメを作るブームが10代の頃にあり、それを見た影響で憧れて武蔵野美術大学に進学したという。しかし入学した頃には山本健さん達はもう大学には居なかったり、アニメ業界の方が楽しそうだったりで半年で中退したそうだ。ちなさんは山本さんとの世代差を「0.5世代上」と表現していた。
話を聞きながら、「そういえばあの頃、周りの作画マニアの人たちが美大生の自主制作アニメに騒いでいた気がする!」と思い出して、当時何が起きていたのかを今さら理解した。

トークでは、お二人の上の世代にあたるWEB系世代の『鉄腕バーディー DECODE:02』の作り方との比較や、伍柏諭さんとの比較からお二人のスタンスに迫った後、ちなさんと山本さんの共通点・相違点を浮き彫りにするかたちで進んでいった。参考映像を観ながらとかではなかったが、聞いていてとても分かりやすかった。
世代論としては、「絵が描ける仕事」としてアニメーターを選んだ世代と、その枠組みに収まらない新しい世代との違いの話が面白かった。後者はデジタルの自主制作アニメで作画から色彩設計、3DCG(Blender)、撮影(AfterEffects)まで全工程を経験した上で、はじめから演出志向を持ってアニメーターの仕事を選んでいるという違い。そこから、現代の「作画出身の演出家・監督」がかつてのそれとは少し性質が異なる、という視点を得ることができた。

山本さんの意見を聞いていて印象に残ったのは、商業アニメのある種の「安っぽさ」を大事に考えているところ。技巧的な絵や、美術館にあるような高級な絵は見る人を突き放す感じがあるとした上で、商業アニメの絵に宿る、工業的な作りであるが故に生まれる「親しみやすさ」を肯定的に語っていた。美大出身の腕利きアニメーターみたいな人がそういうことを言うのは意外に感じて、そういう人がアニメ界に居てくれてよかったと思い、ホッとした。
また、アニメにおける「品質が高い」という言葉の指す範囲が狭いことに違和感を表明していて、リッチなアニメだけが絶対の正義じゃないはず、みたいな考え方にも共感できた。
そして、その思想的背景として、普通の商業アニメに反抗していた山下清悟さんへの憧れが出発点だけど、業界で仕事をするうちに芽生えた「普通の商業アニメもめちゃくちゃ良い!」という矛盾した気持ちを抱えているみたいな話も、非常に興味深く感じた。
そういった、正解をひとつに絞らない姿勢は、スタッフを信頼の置ける知り合いで固めるよりも知らないアニメーターと組んでいろんな絵が見たいという、今回のイベントで語られた山本さんのスタンスにも通底しているなと感じた。(とはいえ『新時代の扉』では、重要な中盤のシーンを榎戸駿さん坂詰嵩仁さん、ラストは杉田柊さんに頼んだとも語られていた)。「作家性」に対する警戒感というか、作風のタコツボ化を警戒する慎重な態度も記憶に残った。

あと技術的な話だと、『新時代の扉』では走りは「1歩=4コマ」という縛りをアニメーターに課したという話が印象に残った。1秒が24コマだから、1/6秒? あのレースのスピード感はそういうところからも生まれているのかな。他の『ウマ娘』は何コマなんだろう。
山本健さんはアクション物の仕事を振られることが多いけど、大好きな恋愛物をやってみたい、みたいなアピールをされていて、それは是非観てみたいなと思った。

以上はイベントで語られたことのごく一部でしかないが、アニメファンとして、学ぶことの多い内容でした。『アニメ・ファンタジスタ・ジャパン』が来年以降も継続して開催されると良いなと思いました。

(2024年8月12日@吉祥寺エクセルホテル東急7F)

『化け猫あんずちゃん』の感想

ポスター画像の第一印象は「ぼくはこの映画のターゲットではなさそう!」だったのだが、ぼくが好きな『花とアリス殺人事件』でロトスコープアニメーションディレクターを務めた久野遥子さんが監督の一人と知り、興味が湧いて観に行った。そしたら、思いのほか楽しめた。

ジャンルとしては、都会の子が夏休みに田舎で印象的な体験をするタイプの映画ではあるのだが、田舎のお寺で出会う「化け猫あんずちゃん」の言動が中年男性っぽくて異色。猫なのに趣味がパチンコだったり。また、都会の子であるところの「かりんちゃん」という女児が、すぐに舌打ちをしたり、暴言を吐きながらスマホのゲームをプレイしたりする。だから、観る前に想像していた「夏休み田舎体験映画=ピュアっピュア」なイメージとはひと味違うのが面白かった。北野武監督の『菊次郎の夏』をちょっと思い出した。

冒頭、化け猫あんずちゃんが初登場する場面では、かりんちゃんのいる現実世界に異様な生き物が侵食してきたような感じが楽しく、面食らってしまう映像体験がまずよかった。ロトスコープの生々しい動きには、普段アニメを観る時には使わない脳のセンサーが刺激されるのだが、それと人型の妖怪要素がうまく噛み合っている気がした。後半に出てくる鬼も存在感あったな〜。

画的には、南伊豆の自然の風景やお寺を描いた背景美術の色が綺麗だった。また、キャラクターの輪郭線が黒ではなく、画に馴染む色が使われていて、やわらかい印象を受けた。あと、化け猫やカワウやうずらなど、動物のデザインがかわいらしくて気持ちが和んだ。

化け猫あんずちゃんは細けえことは気にしない性格なのだが、かりんちゃんが「親に捨てられた」と誇張して言った時だけは、「うそつきかりんちゃん」と責めるので、そのシーンが妙に印象に残った。化け猫あんずちゃんは本当に捨てられた捨て猫だから、ちょっとカチンときたのかなと思った。

映画が面白かったので、原作マンガを読んでみたら、原作ではそもそもかりんちゃんというキャラが登場しなくてびっくりした。あの世界に完全に調和していて、映画を観ている最中はまったく違和感を覚えなかったけど、そうだったのか〜。

(追記) (追記ここまで)

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