信託商品を活用して暦年贈与をスムーズに
相続税について関心が高まったのは、2015年の税制改正がきっかけです。基礎控除額が4割引下げられ(※(注記))、それまで相続税に「無縁」だった人も、その対象になる可能性が出てきたからです。とくに都市圏での影響が大きく、東京23区では4人に1人が課税されるという試算もあります。
子どもや孫に相続として財産を遺すのではなく、生前に譲り与えるのであれば、それは「贈与」ということになります。そうなると心配となるのが贈与税ですが、実は贈与にはさまざまな優遇措置があるのです。
まず、贈与税には「1年間に110万円」という基礎控除額があり、基本的にはこの範囲内の贈与であれば課税されません(暦年贈与)。ただし、毎年一定額を贈与すると一括贈与と見なされ、課税されるケースもあります。
それを避けるため、信託銀行では、受け取る側に受贈の確認書を送付し、贈与するまでの手続きを代行してくれる信託商品(各種贈与信託)を販売しています。非課税額の範囲で計画的に贈与をしたい人には便利でしょう。
また、「相続時精算課税制度」という優遇措置もあります。これを利用すると、本人(60歳以上)の財産をその子どもや孫(ともに18歳以上)に贈与する際に2,500万円までは課税が繰り延べになるというもの。
しかし、贈与者の相続時には、相続財産と相続時精算課税の適用を受けた贈与財産の価額を合算しなくてはいけません。その額が相続税の基礎控除額を超えれば、相続税が発生することになるわけです。
今使わなくても非課税枠が利用できる教育資金の贈与
もうひとつ、2013年4月に始まった「教育資金の一括贈与についての非課税措置」は、祖父母が子や孫に教育資金を贈与しても税金のかからない制度です。
その特徴は、非課税枠が1人1,500万円までと大きく、当面使わない分もまとめて非課税で贈与できるという点。もともと教育資金や生活資金は必要額をその都度渡すなら課税されませんでした(都度贈与)が、これを利用すれば時期を待たずに贈与できます。
手続きは、最初に金融機関(銀行など)で子ども、もしくは孫名義の専用口座を開く必要があります。あとは、教育資金が発生したら、その領収書を金融機関に提出するだけ。なお、現行は2026年3月末までの措置です。
(※(注記))×ばつ法定相続人の人数〉に変更された。