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タンチョウと共に生きる未来に向けて


(写真/PIXTA)

縁起のよい瑞鳥(ずいちょう)として日本人にとうとばれてきたタンチョウ。かつては、北海道から関東地方へと渡る優美な姿も見られましたが、明治時代の乱獲や湿原の開発で激減し、絶滅したと考えられていました。ところが、1924年に釧路湿原の奥地で十数羽が再発見されたのです。二度と同じ目にあわせたくない――その思いを胸に、地域の人々とタンチョウを守り続け、今年で「再発見」から100年になりました。ようやく約1900羽まで復活しましたが、今もなお新たな試練に直面しています。

[画像:タンチョウ 絶滅危惧II類(VU)]
タンチョウ 絶滅危惧II類(VU)

日本で繁殖する唯一のツルで、国の特別天然記念物。北海道東部を中心に生息。
全長140cm、羽を広げると240cmにもなる日本最大の野鳥。古くから日本文化を彩り、日本画や民話、地名などにも登場する。アイヌ語で「サルルン・カムイ(湿原の神)」。

「再発見」から100年、これからタンチョウに必要なこと

当会は1987年、北海道鶴居(つるい)村でタンチョウの保護活動を続けていた故・伊藤良孝さんの協力を得て、鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリを開設しました。以降、レンジャーが常駐し、食べものが不足する冬期にはデントコーンをまいたり、繁殖地が開発されないよう湿原を購入し独自の野鳥保護区を設置するなどして、タンチョウを守ってきました。

[画像:命をつないだ給餌活動]
命をつないだ給餌活動
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリには、一日最大250羽近くのタンチョウがエサを求めて飛来する

[画像:命をつないだ給餌活動]
デントコーン
飼料用のトウモロコシ

多くの人々の努力や当会の活動が実を結び、現在タンチョウの数は約1900羽まで回復しました。しかし、給餌により人を恐れなくなったタンチョウが、人間の生活圏に近づきすぎて、交通事故や農業被害など、別の問題が深刻化してきています。また、冬期給餌場にタンチョウが密集することで、鳥インフルエンザの集団感染のリスクも高まっています。もし感染が拡大すれば何百羽も大量死するおそれがあるのです。

[画像:道路を歩いて横断、交通事故にあうこともある]
道路を歩いて横断、交通事故にあうこともある

[画像:タンチョウがデントコーン畑に侵入し、種や芽をついばむ]
タンチョウがデントコーン畑に侵入し、
種や芽をついばむ

冬でもタンチョウが自然に食べものを採れる場所が必要だ――当会は2007年から鶴居村の中で冬でも自然採食できる場所を整備し、タンチョウの自立を助けてきました。2013年には環境省が給餌量を削減して越冬地を分散させる方針を決め、冬の自然採食地はさらに重要な存在となっています。

[画像:整備した自然採食地を利用するタンチョウ(タイマーカメラで撮影)]
整備した自然採食地を利用するタンチョウ
(タイマーカメラで撮影)

数が増えたタンチョウは北海道東部から分布を広げつつあります。自分の力で生きようと羽ばたいた先々で、彼らが人と距離を取り、冬も飢えず、繁殖期に安全に子育てができる環境を整えるには、その地域の人々の理解と協力が不可欠です。
当会は、タンチョウの情報や自然採食地づくりのノウハウを地域社会と共有し、地域主体の保護活動を推し進めていきます。また、タンチョウの新たな生息地である自然豊かな勇払(ゆうふつ)原野が、ラムサール条約の枠組みで恒久的に保全されるよう働きかけていきます。タンチョウと人が共生する社会の実現のため、ご支援をお願いします。

タンチョウと共生を目指す当会の活動にご支援をお願いします

[画像:(左)「タンチョウ」の記念ブローチ<縁enishi>(右)カムイの羽根しおりセット]
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(左)「タンチョウ」の記念ブローチ<縁enishi>(右)カムイの羽根しおりセット

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鶴居村で活動するレンジャー

タンチョウは身近な隣人(原田修チーフレンジャー)

タンチョウは優美なだけではなく、仕草や行動が人間くさいのも大きな魅力です。彼らを絶滅の淵から救った冬期給餌は、地域の方々にとって「身近な隣人」を助ける思いやりだったのでしょう。一方で給餌により人との距離が近くなり、人里での事故や農業被害、過密化による鳥インフルエンザの脅威といった課題も生じています。これからもタンチョウと共に暮らす感動と共生への覚悟を胸に、地域の人達と連携して取り組んでいきます!

[画像:鶴居小学校6年生 総合的な学習の時間]
鶴居小学校6年生 総合的な学習の時間
タンチョウとの共生をテーマにした授業で講師として招かれた

当会の取り組み

冬の間、タンチョウが自然の中で生きていけるように

2007年から冬期のタンチョウの採食行動を調査し、凍らない水辺を利用している状況がわかりました。そこで、鶴居村の方々やボランティアの方々の協力を得て、夏は水路を掘り藪(やぶ)を払うなどの造成作業をし、冬はタンチョウの利用状況を調査し評価するサイクルをくり返し、17か所の自然採食地を完成させました。しかし、タンチョウの分布は拡大しつつあり、当会だけの採食地整備には限界があります。今後は、この取り組みのノウハウをテクニカルレポートとしてまとめ、一般に公開し、タンチョウの分散先となる地域社会で自然採食地を増やせるよう、あと押ししていきます。

[画像:ボランティアの皆さんと自然採食地を整備]
ボランティアの皆さんと自然採食地を整備
水路を掘り、食べものとなる水生昆虫などのすみかをつくる

勇払原野をラムサール条約で守る

日本の湿地が過去100年で6割も消失したなかで、北海道の勇払原野には、数万羽の水鳥が飛来し、オジロワシやチュウヒなど絶滅危惧種が繁殖する豊かな湿原が残されています。2013年からはタンチョウも飛来しはじめ、2020年には、130年ぶりにヒナの姿が確認されました。重要度が増す勇払原野ですが、湿原の多くが工業地帯に指定されており、湿原の保全と経済活動との両立が課題です。

当会は、勇払原野の弁天沼周辺の湿原やウトナイ湖へ流れこむ美々川(びびがわ)をラムサール条約の枠組みで保全し、また工業地帯については自然共生サイト等の枠組みを利用して、ワイズユース(賢明な利用)を実現する共生社会のモデルをつくるため、働きかけていきます。

[画像:新天地で命を育むタンチョウ]
新天地で命を育むタンチョウ
2020年5月に当会レンジャーが130年ぶりに勇払原野で確認したヒナは、秋には飛べるまでに育った

ラムサール条約

おもに水鳥の生息地として重要な湿地を保全し、ワイズユース(賢明な利用)を進める国際条約。日本から湿地を登録するには、1「定期的に2万羽以上の水鳥を支えている湿地」等の国際基準を満たし、2国指定鳥獣保護区の特別保護地区であるなど国内法で保全され、3地域の合意を得られている必要があります。登録の過程では関係者が湿地のワイズユースを考えていくことになります。

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

1987年、全国からの募金で建設されました。タンチョウ保護を進める拠点として、冬期給餌をはじめ、生息地の保全や調査、普及教育活動などを行っています。

[画像:ボランティアの皆さんと自然採食地を整備]
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリのホームページはこちら

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