街に、ルネッサンス UR都市機構

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街に、ルネッサンス UR都市機構

トップメッセージ

2024年07月01日

はじめに

ごあいさつ

令和6年4月に理事長に就任しました石田です。この度はURの事業報告書にご関心をお寄せいただき、誠にありがとうございます。

はじめに、改めて能登半島地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。
発災以降、URは、石川県と国及び市町の関係部署と連携し、住家の被害認定、UR賃貸住宅の提供、応急仮設住宅の建設支援、復興まちづくり支援など、できる限りの支援を進めています。引き続き、阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震などでの災害対応経験を最大限に活かし、被災地の一日も早い復興に向けて力を尽くしてまいります。

私たちURは、令和6年4月より新たな中期計画(第5期中期計画)をスタートさせ、7月には設立20年の節目を迎えました。前身の日本住宅公団の設立から数えると69年の歳月を重ねてきましたが、その間、国の政策実施機関として、戦後の住宅不足から始まり、足許では、世界の都市間競争の激化、人口減少・少子高齢化、地域経済の縮小、災害の激甚化・頻発化等、多くの社会課題と向き合い、その解決に向けて力を注いできました。これからも変わらず、培ってきたノウハウや知見を活かし、自主性を発揮しながら、まちとくらしの様々な社会課題の解決に取り組んでまいります。
政策実施機関たるURの変わらぬ存在基盤は、広く国民の皆さまからいただくご理解とご支持です。本書を通じて、財務情報はもとより、都市再生、賃貸住宅、震災復興支援、災害対応支援、海外展開支援等の広範な事業について、皆さまに分かりやすくお伝えしたいと思います。

新しい価値を生み出すDNA

昨年9月にヌーヴェル赤羽台(東京都北区)の団地の一画に「URまちとくらしのミュージアム」を開設しました。この施設では、歴史的に価値の高い集合住宅の復元住戸を始め、充実した映像や模型展示を通して、都市や集合住宅における、くらしの歴史やまちづくりの変遷をご紹介しています。その一つに、当時としては先進的な取組みであった、日本住宅公団が導入した「ダイニングキッチン」があります。これは食事と就寝の空間を分ける「食寝分離」を図るために考案したものですが、この導入を契機にテーブルで食事をするという、戦後住宅の原型となる新しい暮らし方が社会に根付いていきました。これ以外にも、新たな暮らし方を探求してきたことをご理解いただける展示等が多数ございます。
私もこのミュージアムを訪れ、その時代の社会課題に対して新しい価値を生み出してきた先人の足跡に触れると、そのDNAを引き継ぐ我々に対する期待と責任を強く感じて、身が引き締まる思いになります。ご来場いただく皆さまにも、まちとくらしづくりの歴史を通じて、新しい価値を生み出さんとする、進取の精神が宿るURのDNAを少しでも感じ取っていただければ幸いです。

第4期中期計画期間の取組み

モードチェンジを掲げて

平成31年4月に始まった第4期中期計画期間においては、URの新しい時代をつくるため、「モードチェンジ」を掲げて様々なことにチャレンジしてきました。
そこで必要としたものは、既存の業務のやり方にとらわれず、URの持つ専門性、ノウハウ、アセット等をいかに活用できるかを考えて取り組む、「チャレンジングかつイノベーティブなマインド」と、より良い成果を導き出すための「多様な主体との連携」です。外部との協働や連携を通じた創意工夫、そして変化を恐れない前向きなチャレンジは、周囲を惹きつけ、「URと一緒に何かをすれば、新しいことが生まれるのではないか」との期待をもたらします。
こうした考えのもと、国や地方公共団体を始め、大学、NPO、民間事業者等と連携し、知恵を有する外部の発想を積極的に取り入れ、新たな取組みに前向きにチャレンジしてきました。最近では、URに期待し頼りにしていただく機会も増えてきたように感じます。それが、UR職員のこの5年間の取組みと成果の肯定につながり、励みや自信となって、次なるチャレンジに続いていくと思います。

<まちづくり> 安全で魅力あるまちづくり

都市再生では、地方公共団体や民間事業者、地域の皆さまとともに、URの持つ「ノウハウ」と「調整力」を発揮し、様々な地域で、都市機能の更新、密集市街地の改善や防災公園の整備など、安全で魅力あるまちづくりを進めてきました。こうしたノウハウと調整力に加えて、公平・中立性を有するURの立ち位置を活かし、多様で異なる事業関係者の立場やお考えを踏まえながら、社会課題の解決に資するまちづくりを行うことが、皆さまから特に期待されているものだと理解しています。
大都市においては、「うめきたエリア」(大阪府大阪市)や「バスターミナル東京八重洲」(東京都中央区)など、民間事業者のみでは実施が困難で政策的意義の高い事業を進めてきました。また、地方都市においては、「米百俵プレイス」(新潟県長岡市)のような中心市街地の再開発に加え、防災まちづくり、エリアマネジメントによる賑わい創出など、地域の実情に即して支援の幅を広げてきました。さらに海外においては、本邦企業の海外進出の素地を築くべく、コロナ禍を乗り越え、多くの国や都市と連携協定を締結するなど関係性を深めることができました。

<住まいづくり> 多様な世代が安心して暮らし続けられる住まいづくり

賃貸住宅では、団地を新たな社会サービスを創出する場と捉え、「団地」という枠を超えて、団地を核とした「地域」全体のバリューアップを目指して取り組んできました。
具体的には、地方公共団体のまちづくりと合わせた団地再生を目指し、団地だけでなく地域にお住まいの皆さまにもご利用いただける子育て施設や高齢者施設を誘致しました。また、生活支援アドバイザーやUR子育てサポーターを配置するなど、安心して暮らし続けられる環境を整えました。さらに、多くの方が気軽に参加できるイベントを開催するなど、世代を越えた交流が自然に生まれるよう、「ミクストコミュニティ」を育むきっかけづくりにも力を注いできました。一例に、洋光台団地(神奈川県横浜市)で実施中の、新しい住まい方や地域のあり方を創造する「団地の未来プロジェクト」があります。広場や集会所などのリニューアルに合わせて、地域やお住まいの方と連携して始めたコミュニティ活動も、今では多くのイベントが定期開催され、団地内外から沢山の方にご来場いただくまでに発展しました。これは、交流機会の減少という、全国の地域やコミュニティが直面する共通の社会課題に対して、様々な分野の有識者の方の知恵を集めて導き出した、URの一つの答えです。

<復興支援> 災害からの復旧・復興支援

平成23年の発災直後から行ってきた東日本大震災からの復興支援は、津波被災地域での事業を令和3年度にすべて完了し、地元での営みが軌道に乗りつつあります。また、原子力災害被災地域の福島県大熊町、双葉町、浪江町の3町では、避難指示の解除や町民の帰還により、復興が着実に芽吹いています。URは、これら3町の復興を後押しするため、町民の住まいやなりわいの場となる復興拠点や建築物の整備支援を行っています。また、こうしたハード面の支援に加えて、コミュニティ再生のための活動拠点「KUMA・PRE」(大熊町)の設置や、賑わいづくりのイベント等を行う「ちいさな一歩プロジェクト」(双葉町)の開催など、交流人口や関係人口の拡大に資するソフト面の支援にも取り組んでいます。
また、能登半島地震を始め、豪雨災害など近年頻発する大規模な自然災害等への復旧・復興支援はもとより、平時から地方公共団体等へのノウハウ提供や技術支援にも力を入れてきました。多くの地方公共団体等に足を運び、有事の備えに役立つご支援を行うとともに、広く多くの方にご参加いただける「UR防災セミナー」を開催するなど、活動の幅を広げています。

<事業連携> 全国のまちの魅力を発信する新たなプロジェクト

URの都市再生、賃貸住宅、復興支援という複数の異なるフィールドを活かした「URふるさと応援プロジェクト」に、URグループ一丸となり取り組んでいます。これは、まちづくりや復興支援でお付き合いのある自治体等と連携し、URの団地・事業地区でのイベントで全国の地方都市の特産品の販売や観光PRを行うもので、URを介してお互いの地域の魅力を知っていただき、まちやくらしの活性化につなげていこうという施策です。昨年9月には、栄の「森の地下街」(愛知県名古屋市)に、日本全国のまちの魅力を発信する情報交流施設「まちのたね」をオープンするなど、その取組みを団地の中と外で広げています。

経営状況全般

第4期中期計画期間の経営は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止と経済活動の両立という難しい舵取りを迫られましたが、安定した業務実績を残すことができました。賃貸住宅の稼働率向上や都市再生における土地譲渡等により、第4期中期計画期間の5年間で、経常利益は累計6,431億円(令和5年度は1,357億円)、純利益は累計1,235億円(令和5年度は24億円)を計上し、安定的な決算を確保することができました。また、有利子負債は、キャッシュ・フローを安定的に確保することで、第4期中期計画期間で合計1兆654億円を削減でき、有利子負債残高は9兆6,606億円まで減少し、財務体質の改善が着実に進みました。
債券発行に関しては、令和2年度のソーシャルボンドに続き、令和5年度には新たにサステナビリティボンドの発行を始めました。調達した資金をSDGsへの貢献や脱炭素社会に向けた活動に活用しており、投資家の皆さまにも共感いただくことで、安定的な資金調達にもつながっています。
URは、一部の財政支援を除いては、事業収益を原資に事業を進めることを基本にしており、目指すところは、自立した健全な経営基盤のもとでの持続可能な組織の実現です。第4期中期計画期間中は安定的に収益を確保することで、様々な施策を実施することができました。足許では金利上昇や工事費高騰が見られる経営環境にありますが、自立的な経営のもと、政策実施機関として長く社会に貢献していきたいと思います。

第5期中期計画期間の始まりにあたって

広い視野で地域の未来につながる価値向上を目指して

この4月からスタートした令和10年度までの第5期中期計画期間は、「モードチェンジ」を深化させるとともに、周囲を巻き込んで新たなことにもチャレンジし、事業や地域の質をさらに向上させる期間だと考えています。
例えば、まちづくりでは、エリアの価値向上に一層力を入れたいと思います。広域的な視点を持ち、地域の実情に応じてエリアに長期的に関与し、まちづくりの課題に切れ目なく対応していきます。また、全国の地方公共団体や地域の皆さまと協力して、地域のまちづくりの担い手育成に取り組んでいくほか、防災性向上による安全・安心なまちづくりを推進していきます。
住まいづくりにおいては、引き続き団地とその周辺地域にお住まいの皆さまが安心して健やかに暮らし続けられるよう、生活支援サービスの充実やイベント開催など、若年世帯、子育て世帯、高齢者世帯といった多様な世帯が互いに交流し支え合う環境づくりを進め、団地や地域の価値向上を目指します。また、アフターコロナの多様化するライフスタイルを踏まえ、共用部や屋外空間等の利活用を始め、賃貸住宅ストックの活用と再生を一層推進し、良質な住まいづくりとまちづくりを進めていきます。
このほか、福島の原子力災害被災地域でのハードとソフト両面からの復興まちづくり支援、地方公共団体等への災害発生時の復旧・復興支援と平時のノウハウ提供、本邦企業の海外進出を後押しする海外展開支援等の取組みにおいても、創意工夫しURならではの発想で社会に貢献していきたいと思います。
こうしたURの広範な事業を一層効果的に進めていく上では、昨今の急速なデジタル化の進展も意識し、デジタル技術を積極的に活用していく必要があります。URにおいても、DXへの積極的な取組みとDX人材の育成に力を注いでおり、今後は、事業の高度化やお客さまサービスの向上、業務の効率化という具体的な成果に結びつけていきたいと考えています。

URの目指すサステナビリティ

人を大切にする組織づくり

「モードチェンジ」の中で目指したのは、変化を恐れず、自ら考え行動する、チャレンジングかつイノベーティブな組織です。複雑化する社会課題に対峙していくには、これまでのノウハウや知見を活かしつつ、外部の知恵もお借りしながら創意工夫し、多くのことにチャレンジしなければなりません。URでは、その主体となる職員一人ひとりの成長のため、自らが意欲的に知識やスキルを習得できるよう、様々な学びの機会を提供しています。特に新しい時代を担う若い世代の職員に対しては、各部門の業務内容や身に付くスキル、その業務に役立つ資格を見える化し、幅広いノウハウの習得と将来のキャリアプランの形成を促しています。また、職員がそうした能力やスキルを最大限に発揮できるよう、柔軟な働き方を可能にする制度や多様な人材が活躍できる職場環境の整備など、制度と環境面の双方よりダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
加えて、率直に物を言い合える、風通しの良い組織も目指したことの一つです。役職員同士はもとより、URが事業を進めていくうえで必要不可欠な関係法人や業務の委託先との間においても、多様な価値観を認め合い、お互いを尊重し合う、良好なコミュニケーションを大切にしています。最近では、部門間や事業パートナーとの連携機会を増やしていく中で、部門や組織を超えて課題を共有し解決していこうというマインドが育ってきました。風通しの良い組織づくりを通じて、人材の成長や業務遂行を支えていくとともに、内部統制やコンプライアンスも強化し、一層のガバナンス強化につなげていきたいと思います。

脱炭素・環境配慮の取組み

脱炭素・環境配慮は、安全で快適なまちづくりを目指すURにとって重要なミッションだと捉えています。従来から独自にURの「環境配慮方針」を定め、関係する皆さまと「対話を通して」「ともに」考えていくという姿勢で行動しています。さらに、地球温暖化対策の実行計画である「UR-eco Plan」を策定し、率先して脱炭素施策を推進しています。具体的には、賃貸住宅建替え時のZEH相当仕様の標準化や太陽光発電設備の設置に加え、既存住宅の窓建具改修時の複層ガラス化等を進めてきました。気候変動は年々深刻化する地球規模の課題であり、その解決に向け、国際社会の一員として取り組んでいきたいと思います。

「人が輝く都市」の実現に向けて

URのミッションにある「人が輝く都市」に込めた思いは、社会課題を背景に元気をなくしたまちを再生させ、すべての人が都市を舞台に生き生きと活躍することにあります。国民や関係者の皆さまにも、そうしたURの思いをご理解いただき、皆さまから必要とされる存在であり続けたいと願っています。
「社会課題を、超えていく。」 人が輝く都市の実現には、いくつもの社会課題を超えなければなりません。それらは時代によって変化し、常に存在し続け、すべてが解決することはないでしょう。だからこそURは、皆さまのご期待とご協力のもと、挑戦を止めず、歩みを続けてまいりたいと思います。

引き続きURへのご理解とご支持を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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