佐賀県の東部に位置し、福岡県とも隣接する基山町。一見全国のどこにでもあるような地方の田舎町のようですが、お話をうかがっているとちょっと他とは違う、未来の可能性に満ちた魅力ある町のようです。今回の記事は私たち福岡移住計画の"外からの目線"で見た基山町のリアルをお届けします。
連載2回目にご登場いただくのは、県外からの移住者で基山町在住ながら職場は福岡市内という才田さんご家族のお話です。基山町からわざわざ福岡市内まで通勤なんて本当は大変なのでは?という疑問を持ちつつ本音の部分をおうかがいしてきました。
― 才田さんは基山にお住まいで、福岡市に通勤されているそうですね。基山が地元なのでしょうか?
豪幸さん:いえいえ、僕は福岡県中間市の出身で、今も中間に実家があります。2017年4月に基山町に引っ越してきたのですが、それまで全くゆかりがありませんでした。基山といえば、高速道路の基山パーキングを知っているくらいで...。
― そうだったのですか。では、中間市から基山町に移住されるまでのことをうかがってもよろしいでしょうか?
豪幸さん:実は基山に住むまでいろんなところで生活してきたんですよ。中学まで中間市で暮らし、高校は熊本、大学は神奈川。就職してからは福岡県久留米市と飯塚市に住みました。そして今の会社に転職して、本社がある兵庫県加古郡で働き、九州営業所へ異動することに。その際、家を建てるところを探して、基山に落ち着いたというわけです。
― 移住というとフリーランスの方が動きやすいというイメージなのですが、才田さんはどのようなお仕事をされているのでしょう?
豪幸さん:創業70年を超える会社(株式会社神戸工業試験場)で、素材が一定の基準を満たしているかどうか試験を行い、解析・評価する会社で営業をしています。
― フリーランスではなく一般的な職種なのですね。福岡市で働くことが決まった後、どんな基準で住むところを探されたのでしょうか?
豪幸さん:職場は博多駅のすぐ近くで、通勤が30分くらいという点にこだわりました。実家が中間市なので、まずは博多から東の赤間や福間あたりを考えたのですが、ピンとくる土地がなくて。知り合いに「基山はどう?」とすすめられて、「えっ、佐賀でしょ!?」と驚いたけど、調べてみると意外といいところだとわかり、結局は基山に決めたんです。
― 最終的に基山町に決めた理由はどういったものだったのでしょうか?
豪幸さん:博多駅から基山駅までJRの快速なら30分以内という第一条件にピッタリだったんです。それも土地が安くて、家を建てるのに町から数十万円の補助金があったというのも大きいですね。嫁は基山町のサイトを見て、子育てするのにいい環境だと思ったようです。
それで、2017年4月にまずはここからすぐ近くの賃貸アパートに引っ越し、打ち合わせを重ねて家を建て、2018年7月にここに住み始めました。
― 実際に基山で暮らしてみて、毎日の通勤はどんな感じでしょう? 正直辛くないですか?
豪幸さん:毎朝、基山駅まで平坦な道を5分歩き、朝7時くらいの電車なら座れるので、電車に乗ったら博多駅まで30分くらい寝てますね。なので正直辛いと思ったことはないですね。むしろ快適です。
― そうなのですね。しかし寝ながらだと乗り過ごしそうです...。
豪幸さん:それが大丈夫なんです。博多駅で降りる人が多いから、ゴソゴソという気配で必ず目が覚めます(笑)。もし初めに探していた赤間や福間あたりに住んでいたら、朝は電車が混んで座れないとあとで知り、やっぱり基山でよかったと思いました。帰りも座ることができて、平均すると夜7〜8時くらいには家に着いています。
― 基山への通勤は意外と快適なのですね。生活する場としての基山はいかがですか?
豪幸さん:町内で買い物ができるし、車で少し行けば筑紫野も鳥栖も小郡もあって、生活するにはとても便利ですよ。一方、自然豊かで静かで、広い草スキー場や公園も多くあり、子どもたちはのびのびと育っています。この家も当初の予算内で納得できるものが完成して、大満足です。
― 奥さまも基山にはゆかりがなかったのでしょうか?
奈美子さん:そうですね。私は神奈川出身で、結婚したあと夫と一緒に引っ越しを繰り返してきました。7歳の長男は保育園を4つ転園したので、ようやくここで落ち着いて暮らせそうで安心しています。この家なら2歳の次男が走り回ってもいいし、猫のスペースも作ってあげることができて、すごく快適ですよ。
このエリアは新しい家が4つ集まっていて、皆さんお子さんがいてすごくいい方たちばかり。一緒に遊んだり、真ん中のスペースにテーブルを出してご飯を食べたりしています。昨夜も夜まで外で飲んでました。
近所の人に限らず、基山の人はめちゃくちゃ優しいんですよ。皆さんよく挨拶してくれたり声をかけてくれたり、自転車に乗った思春期の中学生でも「こんにちは!」ってさわやかに挨拶してくれたり...これまで住んでいたところでは考えられない(笑)。うちの子も基山でそんな風に育ってくれるといいなと思っています。
― 奥さんは今、働いていらっしゃるとか。
奈美子さん:はい、上の子が小学生になり、下の子は町の保育園に入ることができたので、私も仕事をしています。前に住んでいたところでは保育園に入れず、激安の内職で疲れ切っていた時期もあるので、好きな仕事ができる今はとても幸せです。
― 基山で暮らしてみて、課題だと思うところがあれば教えてください。
豪幸さん:うーん、あえて言うなら、うちの前の川沿いにガードレールが少ないことかな。あとは、駅からうちまでの道に街灯が少ないこと(笑)。この件は町の「町民提案*」という制度を通じて、発信しようと思っています。
*まちづくりに関する施策や事業に関する提案、意見及び要望を基山町に提出することが出来る制度。提出された提案等が具体的な施策や事業等に反映できる場合は、制度の整備及び充実が図られる。
奈美子さん:あー、そういえば街灯が少ないね。でも、基山は犯罪の注意喚起がしっかりなされていて、この前なんかは「置いていた自転車が盗まれ"かけた"」ということまでが記事になっていて、防犯意識がしっかりしている町だと感じました。実際住んでみても治安の良さは実感していますし子育てには最適な町だと思いますよ。
― 地方に移住すると、地域でやらなければいけないことが多くて大変という話も聞きます。こちらではどうでしょう?
豪幸さん:うちは子どもがいるので、かえって地域のつながりがありがたいです。この前は、地域の子どもたちとプールに行って、流しそうめんしてバーベキューして、最後は花火して、というフルコース。体は疲れたけど、子どもたちはすごく喜んでくれるし、やっている僕らも楽しかったですね。地域で川やお宮を掃除したりという活動がありますが、強制ではなく、できる人ができるときに参加したらいいという感じで明るくオープンな雰囲気です。
― それはいいですね。最後に、基山町への移住を検討している人にアドバイスやメッセージをお願いします。
豪幸さん:基山は福岡に通勤するにも生活するのにも便利で、自然がいっぱいあって静かで、安く家を建てることができる。住んでいる人たちがとてもよくて、犯罪が少ない。あ、そうだ、町長さんがおもしろいのも魅力だな。
― 松田町長には前回、取材させていただきました。気さくな方ですよね。
豪幸さん:そうなんです、保育園の行事にも参加して、かつらをかぶって踊られたり(笑)。まだ家を建てる前にたまたま町長にご挨拶したら、覚えていてくださったみたいで、次に会ったときは「家はできた?」って聞かれました。一度会った人のことはよく覚えていらっしゃるようです。そんな町長がいる町って、なんかいいですよね。
今回は、住まいは基山町で職場が福岡市内というライフスタイルについてうかがってきました。よく"地方に仕事はない"と言われますが、隣接する都市・福岡市まで視野に入れるとアクセスの良い基山町の暮らしはメリットも大きいのではないでしょうか。マイホームやのびのびと子育てをしたい方など、基山町も候補に入れてみると良いかもしれません。
次回は海外の方と自治会の方との関わりから基山町という町がどういった受け入れ姿勢なのかをお届けしたいと思います。
(福岡移住計画)