1 経営指標の趣旨

1.対象事業
本経営指標は、平成19年度地方公営企業決算状況調査を基礎とし、末端給水事業1,325事業(用水供給事業、簡易水道事業及び建設中(未稼働)の事業を除く。)について、集計したデータに基づき作成した。

2.経営指標の意義
水道事業の経営環境は、その置かれている歴史的、地理的条件により様々であり、健全経営のための基準を一律に設定することは困難である。しかし、個々の水道事業をいくつかの要素により分類し、類型化することにより、類似した経営環境の事業との比較が可能となり、自らの事業体の特徴、問題点を把握することができる。
こうした観点から本書では、給水人口規模、水源による分類を行うとともに、給水区域面積1ha当たりの年間有収水量により個々の事業体を類型化し、経営分析に有効な指標について類型ごとに平均値を示している。
各事業体においては、本書を用いて、自己の類型を求めるとともに類似団体と数値を比較・検討することにより、それぞれの問題点や特殊性を明らかにし、健全経営を行っていくうえでの参考とすることができる。

3.経営指標の構成
本書では、事業の概況、施設の効率性、経営の効率性、財務の状況の4項目を中心に経営指標をまとめている。
まず、「2経営指標の利用方法」では、代表的な経営指標をとりあげて各指標の算式及び内容を解説するとともに、給水人口規模別、水源別及び有収水量密度別の傾向をグラフ化して示した。
次に、「3各指標」においてさらに詳しい経営分析を行うことができるように、前章までにおいて用いられた代表的な指標以外の経営指標も取り扱うこととした。これらの指標を9つの項目に分類し、前章までで扱わなかった指標の解説を行ったあと、給水人口規模別及び水源別の各類型における詳細なデータを示した。
また、参考までに「5参考資料」において、「2経営指標一覧」でとりあげた各指標の過去数年間のデータ等の資料を示してあるので、参考にされたい。
以上の分析は、各事業体における経営上の問題点を明らかにし、今後の具体的改善策の検討に資するものと考えられる。

4.分類区分とその考え方
(1) 給水人口規模
経営規模の基準になるものは、給水人口、配水能力、配水量、所有する資産額等が挙げられるが、給水人口規模による分類は、地方公営企業年鑑にも採用されているなど、経営指標を利用する団体にとっては利用しやすく、また簡明であることから、本書では給水人口規模による分類を行った。
なお、本書における給水人口は、各年度末における給水人口を指している。

【給水人口規模別区分】
(1) 都及び政令市
(2) 給水人口30万人以上の事業
(3) 給水人口15万人以上30万人未満の事業
(4) 給水人口10万人以上15万人未満の事業
(5) 給水人口5万人以上10万人未満の事業
(6) 給水人口3万人以上5万人未満の事業
(7) 給水人口1.5万人以上3万人未満の事業
(8) 給水人口1万人以上1.5万人未満の事業
(9) 給水人口5千人以上1万人未満の事業
(10) 給水人口5千人未満の事業

(2)水源
水道事業の経費に占める割合が高い資本費に着目し、その規模を決定する大きな要因である水源の種類に基づく分類を行った。

【水源別区分】
(1) ダムを主な水源とする事業
(2) 受水を主な水源とする事業
(3) 表流水(ダムを除く。)を主な水源とする事業
(4) その他(地下水、伏流水等)を主な水源とする事業業

(3) 有収水量密度
水道事業の経営を左右する要因の一つとして、地理的条件による差異を挙げることができる。地理的条件別分類の基準としては、人口密度や単位面積当たりの有収水量による密度等が考えられるが、人口密度の場合は商業施設等の事業所の立地状況が反映されない点に問題があるため、ここでは給水区域面積1ha当たりの年間有収水量(以下、「有収水量密度」という。)に基づく分類を行った。
なお、平成19年度末における有収水量密度の全国平均値は1.53千m3/ha(加重平均)となっている。

【有収水量密度別区分】
(1) 全国平均以上の事業
(2) 全国平均未満の事業

なお、分析に当たっては末端給水事業(建設中の事業及び簡易水道事業を除く。)を対象としているが、類型別の事業数については、「5参考資料」中「(3)都道府県別類型別事業数」を参照されたい。

5.本書の活用方法
「4.分類区分とその考え方」における(1)〜(3)の分類区分の組み合わせによる類型区分を示したものが次頁の類型区分一覧表である。なお、東京都及び指定都市については、まとめて「都及び指定都市」という1つの類型として取り扱っている。
本指標の利用に当たっては、まず「4団体別類型一覧表」により、自らの事業体がどの類型区分に該当するか確認した上で、「3各指標」における、自らの事業体が属する類型区分の経営指標のうち、「2経営指標の利用方法」で示されている代表的な経営指標の数値を「2経営指標の利用方法」の表に転記し、自らの事業体の数値と比較分析を行うことが望ましい。
また、その他の指標を用いてさらに詳細な分析を行い、さらに、自らの事業体が属する類型区分以外のものや合計についても参照することが可能である。なお、本書と『地方公営企業年鑑』を利用することにより、同一類型に分類される事業の他の特定の事業との比較も行うことができる。

〔 類型区分一覧表 〕
  〈水源別区分〉  〈給水人口規模別区分〉  〈有収水量密度別区分〉 〈類型区分〉
                  ――――都及び指定都市
A ダムを主とするもの―┬1 30万人以上   ―┬全国平均以上 ―――――A1
      |       └全国平均未満 ―――――a1
      |
      ├2 15万人以上30万人未満 ―┬全国平均以上 ―――――A2
      |       └全国平均未満 ―――――a2
      |
      ├3 10万人以上15万人未満 ―┬全国平均以上 ―――――A3
      |       └全国平均未満 ―――――a3
      |
      ├4 5万人以上10万人未満 ―┬全国平均以上 ―――――A4
      |       └全国平均未満 ―――――a4
      |
      ├5 3万人以上5万人未満 ―┬全国平均以上 ―――――A5
      |       └全国平均未満 ―――――a5
      |
      ├6 1.5万人以上3万人未満 ―┬全国平均以上 ―――――A6
      |       └全国平均未満 ―――――a6
      |
      ├7 1万人以上1.5万人未満 ―┬全国平均以上 ―――――A7
      |       └全国平均未満 ―――――a7
      |
      ├8 5千人以上1万人未満 ―┬全国平均以上 ―――――A8
      |       └全国平均未満 ―――――a8
      |
      └9 5千人未満   ―┬全国平均以上 ―――――A9
              └全国平均未満 ―――――a9
       ┌――――――――――――――――――――――┐
B 受水を主とするもの ─┤           ├───B1〜B9
       |  「A ダムを主とするもの」と同様の ├───b1〜b9
       |  区分をする。       |
C 表流水を主とするもの─┤           ├───C1〜C9
       |           ├───c1〜c9
       |           |
D そ の 他 ―――┤           ├───D1〜D9
       |           ├───d1〜d9
       └──────────────────────┘

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平成19年度水道事業経営指標

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