しかしながら、工業用水道事業を取り巻く経営環境は、産業構造の変化や水利用の合理化による水需要の伸び悩み、ダム建設期間の長期化に伴う負担増など、厳しい経営を余儀なくされている事業が数多く存在する一方で、純利益を生じている事業であっても、当初計画していた水需要が減少することにより、これまで整備を行ってきた施設等が未稼動状態になっている場合もある。
こうした中、今後も安定的・効率的に事業を継続していくためには、経費節減、需要開拓など、これまでの経営健全化の努力に加え、的確な需要予測に基づく建設投資計画の作成やその見直しが必要であるとともに、未売水、未稼動水の他用途への転換など事業規模の適正化を目指した努力、民間的経営手法の導入、地方行革新指針を踏まえた総人件費改革など、更なる経営改革に取り組むことにより経営基盤を一層強化していく必要がある。
また、平成20年4月には「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」が施行されるところであり、工業用水道事業の経営状況についても一層の説明責任を果たしていくとともに、住民生活に支障をきたすことのないよう、健全な運営の維持に自主的・自立的に取り組んでいくことが強く求められるものと考える。
こういった工業用水道事業を取り巻く厳しい環境の中で、事業の経営状況を客観的に捉え、類型別に分類比較をし、経営分析を行うための資料として「工業用水道事業経営指標」を作成しているところである。
本指標は、平成18年度地方公営企業決算状況調査を基礎とし、営業中の工業用水道事業
(245施設及びその施設を運営する147団体)について類型別に分類し、収益性、資産、財務状況、効率性・生産性等の観点に立ち、様々な角度から分析したものである。
本指標を、今後の経営改善に当たっての尺度として積極的に活用され、経営の健全性確保の一助としていただければ幸いである。
総務省自治財政局公営企業経営企画室長
井上 宜也