1青森県「核燃料物質等取扱税」の変更について
1.変更の理由[青森県協議書抜粋]
本県としては、
これまで、
原子燃料サイクル施設及び原子力発電所の立地に当たっては、
安全確保を第一義に、慎重に手順を踏みながら、地域住民及び県民の理解と協力を得るべ
く諸施策の実施に努めてきたところです。
今回、全国初の使用済燃料中間貯蔵事業者として、本県むつ市に設立されたリサイクル
燃料貯蔵株式会社から、令和6年3月、本県に対して、令和6年度第2四半期の事業開始
を目指す旨の報告がされるとともに、同社から原子力規制委員会に対して貯蔵計画の変更
届出が行われたところです。
このような状況の下で、本県としては、使用済燃料中間貯蔵施設の立地に伴う安全性の
確保のための諸施策、民生安定対策、生業安定対策等の諸施策を実施するための財源とし
て、地方税法第4条第3項の規定により実施している法定外普通税である核燃料物質等取
扱税の納税義務者として、使用済燃料貯蔵事業者を追加するものであります。 22.概要[青森県協議書抜粋]
課税団体 青森県
税目名 核燃料物質等取扱税(法定外普通税)
課税客体
1 核燃料物質の加工事業の許可を受けた者が行うウランの濃縮
2 原子炉の設置の許可を受けた者が行う原子炉の設置
3 原子炉の設置の許可を受けた者が行う核燃料の挿入
4 使用済燃料の貯蔵事業の許可を受けた者が行う使用済燃料の貯蔵
5 使用済燃料の再処理事業の指定を受けた者が行う使用済燃料の受入れ
6 使用済燃料の再処理事業の指定を受けた者が行う使用済燃料の貯蔵
7 核燃料物質又は核原料物質に汚染された物(放射性廃棄物)の埋設の方法に
よる最終的な処分(廃棄物埋設)事業の許可を受けた者が行う廃棄物埋設
8 廃棄物埋設等の最終的な処分がされるまでの間において行われる廃棄物管理
事業の許可を受けた者が行う廃棄物管理
課税標準
1 各課税標準の算定期間内の濃縮に係る製品ウランの重量
2 各課税標準の算定期間の末日における実用発電用原子炉の熱出力
3 核燃料の挿入に係る核燃料の価額
4 各課税標準の算定期間内の使用済燃料の貯蔵に係る原子核分裂をさせる前の
ウランの重量
(各課税標準の算定期間における各月末日の重量の合計重量を12
で除して得た使用済燃料の貯蔵に係る原子核分裂をさせる前のウランの重量)
5 各課税標準の算定期間内に受け入れた使用済燃料に係る原子核分裂をさせる
前のウランの重量
6 各課税標準の算定期間内の使用済燃料の貯蔵に係る原子核分裂をさせる前の
ウランの重量
(各課税標準の算定期間における各月末日の重量の合計重量を12
で除して得た使用済燃料の貯蔵に係る原子核分裂をさせる前のウランの重量)
7 各課税標準の算定期間内の廃棄物埋設に係る廃棄体の容量(各課税標準の算
定期間における各月末日の容量の合計容量を12で除して得た廃棄体に係る容
器の容量)
8 各課税標準の算定期間内の廃棄物管理に係る廃棄物に係る容器の数量(各課
税標準の算定期間における各月末日の数量の合計数量を12で除して得た容器
の数量)
納税義務者
1 核燃料物質の加工事業の許可を受けてウランの濃縮を行う者
2・3 原子炉の設置の許可を受けた者
4 使用済燃料の貯蔵事業の許可を受けて使用済燃料の貯蔵を行う者
5・6 再処理事業の指定を受けて再処理を行う者
7 廃棄物埋設の事業の許可を受けて廃棄物埋設を行う者
8 廃棄物管理事業の許可を受けて廃棄物管理を行う者
税率
1 36,500円/kg
2 38,250円/千kw(3か月)
3 100分の8.5
4 620円/kg
5 19,400円/kg
6 1,300円/kg(当分の間 8,300円/kg)
7 96,500円/m3
8 2,971,300円/本
徴収方法 申告納付
収入見込額 (平年度)25,150百万円
非課税事項 ―
徴税費用見込額 ―
課税を行う期間
5年間(令和6年4月1日〜令和11年3月31日)
(注記)上記4については、改正前の条例の適用期間の残存期間
(注記)下線部が変更箇所を示す。 33.同意要件との関係
核燃料物質等取扱税について、
地方税法第261条に規定する不同意要件に該当する事由が
あるかどうか検討する。
しろまる 地 方 税 法 ( 昭 和 25年 法 律 第 226号 ) ( 抄 )
( 総 務 大 臣 の 同 意 )
第 261条 総 務 大 臣 は 、 第 259条 第 1 項 の 規 定 に よ る 協 議 の 申 出 を 受 け た 場 合 に
は 、 当 該 協 議 の 申 出 に 係 る 道 府 県 法 定 外 普 通 税 に つ い て 次 に 掲 げ る 事 由 の い
ず れ か が あ る と 認 め る 場 合 を 除 き 、 こ れ に 同 意 し な け れ ば な ら な い 。
一 国 税 又 は 他 の 地 方 税 と 課 税 標 準 を 同 じ く し 、 か つ 、 住 民 の 負 担 が 著 し く 過
重 と な る こ と 。
二 地 方 団 体 間 に お け る 物 の 流 通 に 重 大 な 障 害 を 与 え る こ と 。
三 前 二 号 に 掲 げ る も の を 除 く ほ か 、 国 の 経 済 施 策 に 照 ら し て 適 当 で な い こ と 。
(1)国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となる
こと。
1 課税標準
発電事業に関連する税としては、電源開発促進税(国税)があるが、青森県核燃料
物質等取扱税の課税標準は「濃縮に係る製品ウランの重量」、「発電用原子炉の熱出
力」、「核燃料の挿入に係る核燃料の価額」、「(中間貯蔵施設における)使用済燃
料の貯蔵に係る原子核分裂をさせる前のウランの重量」、「(再処理施設に)受け入
れた使用済燃料に係る原子核分裂をさせる前のウランの重量」、「(再処理施設にお
ける)使用済燃料の貯蔵に係る原子核分裂をさせる前のウランの重量」、「廃棄物埋
設に係る廃棄体の容量」及び「廃棄物管理に係る廃棄物に係る容器の数量」である一
方、電源開発促進税の課税標準は「販売電気の電力量」とされていることから、課税
標準を異にしている。
核燃料に対する税としては、青森県むつ市が「(中間貯蔵施設における)使用済燃
料の貯蔵に係る原子核分裂をさせる前のウランの重量」を課税標準として使用済燃料
税を課することとしており、核燃料物質等取扱税とは一部の課税標準を同じくしてい
ると考えられる。
2 住民の負担
・ 他の地方団体で既に課税されている使用済燃料の貯蔵に係る税率は、550円〜
1,500円/kg程度であり、本税税率の「620円/kg」は、先行団体の税率水準と比較し
て著しく高いとはいえないこと
・ また、今回の変更協議において課税対象に追加される(中間貯蔵施設における)
使用済燃料の貯蔵については、青森県のほか、むつ市(税率620円/kg)も課税を予
定している(令和4年9月6日総務大臣同意済)が、両者を合わせた税額(1,240
円/kg)については、県と市町村の両者が課税している事例(愛媛県と伊方町の合
計で1,150円/kg、佐賀県と玄海町の合計で1,300円/kg)と比較して著しく高いとは
いえないこと
・ 変更協議における本税の納税義務者は、核燃料サイクルの推進を基本方針とする 4我が国において、使用済燃料を再処理するまでの間、貯蔵しておく施設である当該
中間貯蔵施設を管理・運営するために設立された会社であり、特定納税義務者とそ
の親会社との間では、貯蔵の事業の実施に伴い発生する費用を負担するという基本
的な役務契約が定められていること
・ なお、青森県の試算によると、仮に本税が、親会社である東京電力の料金等に転
嫁された場合の標準家庭1世帯あたりの1月当たりの増額は0.24円程度(青森県分
0.12円程度)であること
等を総合的に勘案すると、本税の負担が著しく過重となるとはいえないと考えられる。
したがって、他の地方税と課税標準を同じくするものの、住民の負担が著しく過重と
なるとはいえないことから、「国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民
の負担が著しく過重となること」には該当しないと考えられる。
(2)地方団体間の物の流通に重大な障害を与えること。
核燃料物質等取扱税は、地方団体間の物の円滑な流通を阻害するような内国関税的な
ものとはいえず、「地方団体間の物の流通に重大な障害を与えること」には該当しない
と考えられる。(3)(1)
及び(2)に掲げるものを除くほか、
国の経済施策に照らして適当でないこと。
地方税法第261条第3号に規定する「国の経済施策」とは、経済活動に関して国の各省
庁が行う施策のうち、特に重要な、又は強力に推進を必要とするものをいうところ、第
6次エネルギー基本計画においては、核燃料サイクルの推進及び中間貯蔵施設の建設・
活用の促進を位置づけるとともに、原子力利用を進めていく上で、立地地域との共生に
向けた取組が不可欠としている。
青森県むつ市の中間貯蔵施設は、使用済燃料を再処理工場で処理するまでの間、貯蔵
・管理するための重要な役割を持つものであり、事業者が本税を負担しつつ、青森県が
当該税収により防災安全対策事業等を進めていくこと等を踏まえると、本税は「1及び
2に掲げるものを除くほか、国の経済施策に照らして適当でないこと」には該当しない
と考えられる。

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