11
令和 6 年 3 月 22 日
沖縄行政評価事務所
知的障害者のための投票環境の整備の推進について
〜行政改善推進会議の意見を踏まえ、県・市町村選挙管理委員会に参考連絡〜
総務省沖縄行政評価事務所(所長:仲里均)は、以下の行政相談を受け、民間の有識者で構成
する 行政 改 善 推 進会 議( 座 長: 宮國 英 男 弁 護士 )の 意見を 踏 まえ 検討し た結 果 、 本 日 、
沖縄県選挙管理委員会及び県内全 41 市町村の選挙管理委員会に対して参考連絡を行いました。
行政相談の要旨
参考連絡事項 ⇒詳細は参考連絡 p.1〜2 参照
(注)「代理投票制度」、「投票支援カード」及び「コミュニケーションボード」の説明については、p.3 の「用
語の説明」、別添の資料例を参照。
⇒ 市町村選挙管理委員会
○しろまる 代理投票制度の仕組みや、
知的障害者等の選挙人が受けられる支援
(投票支援)
につ
いて、積極的な周知を行うこと
・ 市町村広報誌、ホームページ、選挙公報を活用するなど
・ 各市町村の福祉部局と協力し、福祉窓口でも周知
○しろまる 意思確認ツールを投票所に備え置き、積極的な利用を図ること
○しろまる 投票事務従事者等に対し、十分な研修等を行うこと
⇒ 沖縄県選挙管理委員会
○しろまる 代理投票制度の仕組みや、投票支援について、積極的な周知を行うこと
・ 県広報誌、ホームページを活用するなど
・ 特別支援学校や知的障害者関係団体に対し周知
・ 県福祉部局と協力し、福祉窓口でも周知
○しろまる 市町村選挙管理委員会に対し、必要な助言・支援を行うこと
私は、NPO 法人で知的障害者の自立支援センターを運営している。
令和 4 年 7 月の参議院議員選挙の際、意思の伝達や文字を書くことは余りうまくできないもの
の、家族の補助で投票できるものと思い投票所に行った。しかし、投票所の職員から家族の補助
は認められないと言われ、やむなく投票を諦めたということを聞いたことがある。
知的障害者でも投票できるはずなのに、知的障害者を持つ世帯やその関連施設には、投票に
当たってどのような支援が受けられるのか、具体的な情報提供がない。投票を希望する知的障害
者が円滑に投票できるよう、代理投票制度の事前案内や、投票支援カード、コミュニケーションボ
ード(注)の用意など、知的障害者のための投票環境の整備を行ってほしい。2当事務所の調査結果(概要) ⇒詳細は参考連絡 p.6〜11 参照
1 代理投票制度の周知状況は?
周知していない市町村は 41 市町村中
26 市町村(約 6 割)
※(注記) 周知していない理由は、
「投票所において説明して
いるため」が 10 市町村、次いで「必要性が余りない
ため」が 7 市町村など
2 意思確認ツールの作成・用意の状況は?
作成・用意していない市町村は 41 市町村中
34 市町村(約 8 割)
※(注記) 作成・用意していない理由は、
「必要な支援は口頭
で確認しているため」が 13 市町村、次いで「どのよ
うに作成すれば良いか分からないため」が 11 市町
村など
3 投票事務従事者に対する投票支援について
の事前説明の実施状況は?
実施していない市町村は 41 市町村中
13 市町村(約 3 割)
※(注記) 実施していない理由は、
「認識が不足していたため」
が 6 市町村、
次いで
「経験豊富な職員が対応している
ため」が 3 市町村など
当事務所は、沖縄県内全 41 市町村の選挙管理委員会を対象に、知的障害者に対する
投票支援の状況について、1代理投票制度の周知状況、2投票支援カードやコミュニケー
ションボード(意思確認ツール)の作成・用意状況、3投票事務従事者に対する投票支援に
ついての事前説明の実施状況等を調査
周知している
15市町村(37%)
周知していない
26市町村(63%)
図1 代理投票制度の周知
作成・用意し
ている
7市町村(17%)
作成・用意し
ていない
34市町(83%)
図2 意思確認ツールの作
成・用意
実施している
28市町(68%)
実施していない
13市町村(32%)
図3 投票事務従事者に対する
投票支援についての事前説明3〜用語の説明〜
◆だいやまーく 代理投票制度
公職選挙法(昭和 25 年法律第 100 号)第 48 条に基づく制度で、選挙人が、心身の故障その
他の事由により、自ら候補者の氏名を記載することができない場合、投票事務従事者(投票所の
係員)に代筆してもらうことができる制度である。
◆だいやまーく 投票支援カード
投票時に支援を必要とする人が、必要とする支援の内容を記載し、投票所の係員に渡すこと
で支援してほしいことを把握してもらうためのものである(別添の資料1参照)。
◆だいやまーく コミュニケーションボード
よくある問合せ等についてイラストや文字で記載し、指さしで必要な支援を伝えることができる
ものである(別添の資料 2 参照)。
(*) 行政改善推進会議
行政改善推進会議とは、行政相談を端緒として、行政の制度・運営に係るものの改善について、民間有識者の
意見を聴取し、その公平性、中立性及び的確性の一層の確保を図り、もって国民的立場に立った行政の改善を効
果的に推進するために開催しているもので、弁護士、学識経験者、報道機関、経済団体等の関係者で構成されて
います(令和 6 年 2 月 8 日付けで行政苦情救済推進会議から名称変更)。
(行政改善推進会議の構成員(令和 6 年 2 月 8 日現在。座長以外五十音順))
(座長)宮 國 英 男 弁護士(元沖縄弁護士会会長)
赤 嶺 和 子 NPO 法人消費者センター沖縄理事長
小那覇 安 剛 (株)琉球新報社論説委員長
田 端 一 雄 (一社)沖縄県経営者協会専務理事
西 山 千 絵 琉球大学大学院法務研究科准教授
真 壁 恵 修 沖縄行政相談委員協議会会長
行政改善推進会議の審議結果
【問合せ先】
担当:主任行政相談官 永尾
行政相談官 山内
電話:098-866-0145(代表)
⇒詳細は参考連絡 p.13〜14 参照
○しろまる 選挙管理委員会は代理投票制度について周知する必要がある。
○しろまる 例えば、市町村広報誌や選挙公報に制度の説明を記載するなど、代理投票制度の事前周知
が必要ではないか。
○しろまる 選挙管理委員会と福祉部局が連携し、その両方から周知が行われると良いのではないか。
○しろまる 知的障害者支援団体や特別支援学校に対しても周知してはどうか。
○しろまる 投票支援カード等を投票所の入口に置いておくと良いのではないか。
○しろまる 障害者への対応方法を知っている必要があるため、投票事務従事者に対する研修も重要で
ある。
代理投票制度の事前周知について
意思確認ツールの利用について
投票事務従事者に対する研修等について
投 票
とうひょう
支援
し え ん
カード
投 票
とうひょう
にお手伝
て つ だ
いが必要
ひつよう
な方
かた
は、このカードに書かいて 入 場 券
にゅうじょうけん
(はがき)と一緒
いっしょ
に投 票 所
とうひょうじょ
の係員に渡してください。
あなたがしてほしいことを選
えら
んでください。
投 票
とうひょう
用紙
よ う し
に代かわりに書いてほしい(代筆
だいひつ
してほしい)。そのほかの手伝
て つ だ
ってほしいことを書かいてください。(例れい
) ・声
こえ
をかけてゆっくりと誘 導
ゆうどう
してほしい。
・手てをつないで案 内
あんない
してほしい。
・候補者名
こうほしゃめい
を読よんでほしい。
・コミュニケーションボードを使
つか
ってほしい。
・病 気
びょうき
やケガ、その他たの事 情
じじょう
によって 投 票
とうひょう
用紙
ようし
に文字
も じ
を書かくことができない 方
かた
に代かわり、 投 票 所
とうひょうじょ
の 係 員
かかりいん
がご本 人
ほんにん
の指示
し じ
どおりに代 筆
だいひつ
します。
・ご本 人
ほんにん
の代かわりに、 投 票 所
とうひょうじょ
の 係 員
かかりいん
が 投 票
とうひょう
用紙
ようし
に書かくことは法 律
ほうりつ
で認
みとめられています。
・ 投 票 所
とうひょうじょ
の 係 員
かかりいん
以外
いがい
の家族
かぞく
や同 行 者
どうこうしゃ
が代かわりに書かくことはできません。
資料1
(出典:総務省HP)
候補者氏名参議院選出議員選挙投票選挙区札幌
□しろいしかく
□しろいしかく
●くろまる
●くろまる
●くろまる選挙管理委員会? ? ?
◯◯◯◯選挙
札幌◯子様
選挙事務
△しろさんかくです?札幌□しろいしかく
△しろさんかく??
◯◯◯◯選挙 選挙事務
Q1 投票所案内はがきが
ありません。
・郵送されていない。
・家に忘れた。
・無くした。
コミュニケーションボード
と う ひ ょ う じ ょ あ ん な い
ゆ う そ う ま ち が
い え わ す なQ2投票所
投票所案内はがきに
書いてある内容が
間違っています。
と う ひ ょ う じ ょ あ ん な い
な い よ うかQ3 候補者が
分かりません。
こ う ほ し ゃわQ4 字が小さくて
読めません。
じ ちいよQ5 字が書けません。
じ か
Q6 書き間違えました。
か ま ち が
Q7 書き方が
分かりません。かわ
かた
Q8 トイレは
どこですか?
何かお手伝いできますか?
なに て つ だ
参議院議員選挙用
さ ん ぎ い ん ぎ い ん せ ん きょよう
応対方法は裏面です
お う た い ほ う ほ う り め ん
資料2
と う ひ ょ う じ ょ
(出典:総務省HP)
候補者氏名または
政党その他の
政治団体の名称
もしくは略称参議院選出議員選挙投票比例代表△しろさんかく
△しろさんかく党●くろまる
●くろまる
●くろまる選挙管理委員会候補者氏名参議院選出議員選挙投票選挙区
●くろまる
●くろまる
●くろまる選挙管理委員会選挙候補者の氏名
□しろいしかく
□しろいしかく
□しろいしかく
□しろいしかく
□しろいしかく
□しろいしかく
□しろいしかく
□しろいしかく氏 名□しろいしかく
□しろいしかく
□しろいしかく
□しろいしかく◯◯◯◯
□しろいしかく
□しろいしかく
△しろさんかく
△しろさんかく
△しろさんかく
△しろさんかく
□しろいしかく
□しろいしかく◯◯
氏名
住所
生年月日
氏名
住所
生年月日札幌
□しろいしかく
□しろいしかく □しろいしかく
△しろさんかく
札幌△しろさんかく子選挙公報
◯◯◯◯
□しろいしかく□しろいしかく□しろいしかく□しろいしかく
△しろさんかく△しろさんかく△しろさんかく△しろさんかく
□しろいしかく□しろいしかく◯◯選挙公報◯◯◯◯
□しろいしかく
□しろいしかく
□しろいしかく
□しろいしかく
△しろさんかく
△しろさんかく
△しろさんかく
△しろさんかく
□しろいしかく
□しろいしかく◯◯
□しろいしかく□しろいしかく□しろいしかく□しろいしかく選挙公報
候補者氏名参議院選出議員選挙投票選挙区札幌
□しろいしかく
□しろいしかく
●くろまる
●くろまる
●くろまる選挙管理委員会候補者氏名または
政党その他の
政治団体の名称
もしくは略称参議院選出議員選挙投票比例代表北海◯◯●くろまる
●くろまる
●くろまる選挙管理委員会A1 A2 大変失礼しました。
正しいお名前、
ご住所、生年月日を
教えてください。
A3 選挙公報をお貸し
します。
また、投票記載台に
候補者一覧を掲示し
ています。
せ ん き ょ こ う ほ う
か く だ い き ょ う か か
と う ひ ょ う き さ い だ いかこ う ほ し ゃ い ち ら ん け い じかA4 老眼鏡か
ルーペ
(拡大鏡)をお貸しします。
ろ う が ん き ょ う
A5 補助者
(職員)が代わりに書きます。
ほ じ ょ し ゃ しょくいん
A6 二重線で
訂正してください。
に じ ゅ う せ ん
て い せ い
A7 選挙区は 比例代表は
1候補者の
名前を書いて
ください。
こ う ほ し ゃ
な ま え か
2候補者
(名簿登載者)
の名前
または政党等の名前を
書いてください。
こ う ほ し ゃ
せ い と う と う な ま え
め い ぼ と う さ い し ゃ な ま えかA8 ご案内します。
あ ん な い
確認しますので、
お名前、ご住所、
生年月日を
教えてください。
か く に ん
せ い ね ん が っ ぴ せ い ね ん が っ ぴ
お し
な ま え な ま え
じゅうしょ
た い へ ん し つ れ い
じゅうしょ
お し
た だ
「公印省略」
沖 縄 相 第 1 5 号
令和 6 年 3 月 22 日
市町村選挙管理委員会委員長 殿
沖縄行政評価事務所長
知的障害者のための投票環境の整備の推進について(参考連絡)
当事務所では、総務省設置法(平成 11 年法律第 91 号)第 4 条第 1 項第 14 号の規定に
基づき、国民の皆様から行政に関する苦情や意見・要望を受け付け、その解決や実現の
促進を図る行政相談業務を行っています。
また、行政相談を端緒として、民間有識者の意見を聴取し、その公平性、中立性及び
的確性の一層の確保を図り、行政の改善を効果的に推進する必要があると考えられる事
案については、当事務所が開催する行政改善推進会議(注)
(座長:宮國英男弁護士)に付
議し、同会議の意見を踏まえて処理を行っています。
この度、当事務所において、別紙 1(相談要旨)のとおり、
「知的障害者のための投票
環境の整備を行ってほしい」旨の行政相談を受け付けました。
本件について、行政改善推進会議に諮り検討した結果を踏まえ、選挙における知的障
害者のための投票環境の整備を推進する観点から、別紙 1 及び別紙 2 のとおり参考連絡
します。
(注) 行政改善推進会議とは、行政相談を端緒として、行政の制度・運営に係るものの改善について、民
間有識者の意見を聴取し、その公平性、中立性及び的確性の一層の確保を図り、もって国民的立場に
立った行政の改善を効果的に推進するために開催しているもので、弁護士、学識経験者、報道機関、
経済団体等の関係者で構成されています(令和 6 年 2 月 8 日付けで行政苦情救済推進会議から名称変更)。
<連絡先>
担当:主任行政相談官 永尾
行政相談官 山内
電話:098-866-0145
「公印省略」
沖 縄 相 第 1 5 号
令和 6 年 3 月 22 日
沖縄県選挙管理委員会委員長 殿
沖縄行政評価事務所長
知的障害者のための投票環境の整備の推進について(参考連絡)
当事務所では、総務省設置法(平成 11 年法律第 91 号)第 4 条第 1 項第 14 号の規定に
基づき、国民の皆様から行政に関する苦情や意見・要望を受け付け、その解決や実現の
促進を図る行政相談業務を行っています。
また、行政相談を端緒として、民間有識者の意見を聴取し、その公平性、中立性及び
的確性の一層の確保を図り、行政の改善を効果的に推進する必要があると考えられる事
案については、当事務所が開催する行政改善推進会議(注)
(座長:宮國英男弁護士)に付
議し、同会議の意見を踏まえて処理を行っています。
この度、当事務所において、別紙 1(相談要旨)のとおり、
「知的障害者のための投票
環境の整備を行ってほしい」旨の行政相談を受け付けました。
本件について、行政改善推進会議に諮り検討した結果を踏まえ、選挙における知的障
害者のための投票環境の整備を推進する観点から、別紙 1 及び別紙 2 のとおり参考連絡
します。
(注) 行政改善推進会議とは、行政相談を端緒として、行政の制度・運営に係るものの改善について、民
間有識者の意見を聴取し、その公平性、中立性及び的確性の一層の確保を図り、もって国民的立場に
立った行政の改善を効果的に推進するために開催しているもので、弁護士、学識経験者、報道機関、
経済団体等の関係者で構成されています(令和 6 年 2 月 8 日付けで行政苦情救済推進会議から名称変更)。
<連絡先>
担当:主任行政相談官 永尾
行政相談官 山内
電話:098-866-014511 相談要旨
私は、NPO 法人で知的障害者の自立支援センターを運営している。
令和 4 年 7 月の参議院議員選挙の際、意思の伝達や文字を書くことは余りうまくできな
いものの、家族の補助で投票できるものと思い投票所に行った。しかし、投票所の職員か
ら家族の補助は認められないと言われ、やむなく投票を諦めたと聞いたことがある。
知的障害者でも投票できるはずなのに、知的障害者を持つ世帯やその関連施設には、投
票に当たってどのような支援が受けられるのか、具体的な情報提供がない。投票を希望す
る知的障害者が円滑に投票できるよう、代理投票制度の事前案内や投票支援カード、コミ
ュニケーションボードの用意など、知的障害者のための投票環境の整備を行ってほしい。
2 参考連絡事項
(1) 市町村選挙管理委員会は、
それぞれの実情に応じ、
以下の措置を講ずることが適切で
あると考えられる。
ア 代理投票制度や投票に当たって知的障害者等の選挙人が受けられる支援に関する積
極的な周知
(ア) 代理投票制度の仕組みや、投票に当たって知的障害者等の選挙人が受けられる
支援(以下「投票支援」という。
)について、積極的な周知を行うこと。周知に当
たっては、例えば、以下の媒体等を活用するなどして、可能な限り幅広い周知に
努めること。
・ 市町村広報誌
・ 市町村ホームページ
・ 選挙公報
・ 投票所入場券(制度紹介にリンクする QR コードを記載するなど)
(イ) 投票支援について、確実にそれらを必要とする者に周知できるよう、各市町村
の福祉部局と協力し、市町村福祉部局窓口等において、知的障害者やその家族等
が福祉サービスの利用申請をする際などの機会を利用して投票支援に係る資料を
配布すること等により、投票支援について積極的な周知を行うこと。
イ 投票支援カードやコミュニケーションボードの意思確認ツールの活用
投票支援カードやコミュニケーションボードの意思確認ツールを投票所に備え置く
とともに、例えば、支援を必要とする選挙人が投票前に投票支援カードを事前に認識・
当日に利用することができるよう、投票支援カードの様式を市町村ホームページに掲
載するなどして、その積極的な利用が可能となるよう努めること。
別紙12ウ 投票事務従事者に対する十分な研修
知的障害者から支援を求められた場合には、
投票管理者は、
知的障害者のための必要
な支援を行う必要があることから、
投票管理者や投票事務従事者に対し、
総務省作成資料(「障害のある方に対する投票所での対応例について」
(令和 5 年 1 月総務省自治行
政局選挙部管理課)
)等を活用するなどして、あらかじめ十分な研修等を行うこと。
(2) 沖縄県選挙管理委員会は、以下の措置を講ずることが適切であると考えられる。
ア 代理投票制度や投票支援に関する積極的な周知
・ 投票支援について、
県広報誌やホームページ等により積極的な周知を行うこと。
・ 特別支援学校や障害者支援団体、障害者支援事業者等の知的障害者関係団体に
対し、
投票支援に係る資料等を配布することにより、
投票支援について積極的な周
知を行うこと。
・ 県福祉部局と協力し、
県福祉部局窓口等において、
知的障害者やその家族等から
の相談受付時などの機会を利用して投票支援に係る資料を配布すること等により、
投票支援について積極的な周知を行うこと。
イ 市町村選挙管理委員会に対する助言・支援
市町村選挙管理委員会が上記(1)の措置を講ずることが可能となるよう、知的障
害者支援団体等のニーズも踏まえつつ、市町村選挙管理委員会に対し、必要な助言・
支援を行うこと。特に、比較的組織体制が小規模な市町村選挙管理委員会に対して
は、より積極的に助言・支援を行うこと。31 知的障害者、療育手帳制度について
(1) 知的障害者
ア 定義等
知的障害者の法的定義はないが、沖縄県のホームページでは、
「知的障害とは、知的
機能の障害が発達期にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別な
援助を必要とする状態にあるもので、知的機能と日常生活能力のいずれもが基準に該
当するもの」とされている。
イ 知的障害者の特性
沖縄県福祉保健部障害保健福祉課が平成 27 年に作成した「公共サービス窓口にお
ける配慮マニュアル」では、知的障害のある方の特性として、以下のとおりとしてい
る。
・ 複雑な話や抽象的な概念は理解しにくい
・ 人にたずねたり、自分の意見を言うのが苦手な方もいる
・ 漢字の読み書きや計算が苦手な方もいる
・ ひとつの行動に執着したり、同じ質問を繰り返す方もいる
(2) 療育手帳制度
ア 制度の概要
療育手帳制度は、知的障害児(者)の福祉の充実を図ることを目的として、昭和 48
年に開始されたもので、療育手帳の交付を受けた者は、障害者の日常生活及び社会生
活を総合的に支援するための法律(平成 17 年法律第 123 号)に基づく障害福祉サー
ビス(自立訓練、居宅介護等)
、地方公共団体や民間事業者が提供するサービス(公共
交通機関の割引等)を受けることができる。
イ 交付対象等
療育手帳は、
18 歳以上の者に対しては知的障害者更生相談所から交付され、
18 歳未
満の者に対しては児童相談所から交付される。
交付対象は、知的障害があると判定された者であり、判定基準は都道府県により異
なる。沖縄県における審査・発行は、沖縄県知的障害者更生相談所(18 歳未満の者は
児童相談所)が行っている。
なお、
「知的障害児(者)基礎調査」
(平成 17 年 11 月厚生労働省実施)によると、
知的障害者の中には、制度を知らない等の理由により療育手帳を申請・所持しない者
もおり、
18 歳以上の知的障害者に占める療育手帳所持者の割合は 93.4%、
同不所持者
の割合は 4.4%、不詳が 2.2%とされている。
別紙242 選挙における障害者に対する配慮、代理投票制度について
(1) 障害者基本法、障害者差別解消法に規定する配慮義務等
障害者基本法(昭和 45 年法律第 84 号)第 28 条では、国及び地方公共団体は、障害者
が円滑に投票できるようにするため、投票所の施設又は設備の整備その他必要な施策を
講ずる義務があるとされている。
また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成 25 年法律第 65 号)第
7 条では、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合
は、実施に伴う負担が過重でない限り、必要かつ合理的な配慮をしなければならないと
されている。
(2) 代理投票制度
ア 制度の概要
公職選挙法(昭和 25 年法律第 100 号)第 48 条では、代理投票制度について規定し
ており、選挙人は、心身の故障その他の事由により、自ら候補者の氏名を記載するこ
とができない場合、投票事務従事者に代筆してもらうことができるとされている。
同条は、平成 25 年に改正され、代理投票対象者は、従来の「身体の故障又は文盲」
から現行の「心身の故障その他の事由」に変更・拡大され、平成 25 年 7 月 1 日以後に
公示・告示される選挙において、知的障害者も対象者となった。
代理投票における具体的な流れは、下記(i)〜(iii)のとおりである。
(i) 選挙人自ら投票管理者に代理投票の利用を申し出る。
(ii) 投票事務従事者の中から投票管理者が指名した 2 名の補助者が選挙人の両隣に
付添い、うち 1 名が、声を出すことなく選挙人が投票したいとする候補者を選挙
人のまばたきや指さしなどから、選挙人の意思確認を行った上で、選挙人に代わ
って候補者名を投票用紙に記載する。もう 1 名の補助者は、その行為が選挙人の
意思どおり公正に行われたのかを厳正にチェックする。
(iii) 選挙人自ら投票用紙を投票箱に投函する。
イ 代理投票制度の周知
公職選挙法第 6 条第 1 項では、都道府県の選挙管理委員会や市町村の選挙管理委員
会等は、選挙に際して投票の方法、その他選挙に関し必要と認める事項等を選挙人に
周知させなければならないと規定していることから、都道府県選挙管理委員会及び市
町村選挙管理委員会においては、代理投票制度についても周知の必要があるものと考
えられる。
3 地方公共団体に対する知的障害者等の投票に関する通知等
総務省自治行政局選挙部では、下記のとおり、知的障害者を含めた障害者への投票支
援や、代理投票制度の運用等について、都道府県選挙管理委員会を通じ、市町村選挙管
理委員会に通知している。破線内は通知内容の抜粋である。
○しろまる 代理投票時における投票の秘密に配慮した取組事例等について(平成 30 年 12 月 145日付け総行管第 358 号各都道府県選挙管理委員会事務局書記長宛て総務省自治行政局
選挙部管理課長通知)
・ 投票する人の確認方法も含めて投票手順の意思を確認する投票支援シートやコミュニケ
ーションボードを作成
・ 事前に障害担当課と選挙人の家族を交えて意思確認の方法について打合せを実施
・ 知的障害者支援団体と協力するなどして、障害者への投票支援を目的に選挙の概要や投
票手順、投票支援の流れや注意点を映像で分かりやすく解説した DVD を作成
・ 知的障害のある選挙人が手をつないでいないと不安になる場合には、家族や付添人が投
票記載台を背に後ろ向きになって、寄り添えるよう配慮
・ 投票に支援が必要な選挙人、その家族、付添人などを対象に、選挙の様々な投票方法や支
援制度などについて、分かりやすく解説したパンフレットを作成し、ホームページに掲載
など
○しろまる 第 26 回参議院議員通常選挙の管理執行について(令和 4 年 5 月 18 日付け総行管第
288 号各都道府県選挙管理委員会委員長宛て総務省自治行政局選挙部長通知)
・ 代理投票制度の趣旨、投票方法等を選挙人、投票管理者等に周知徹底すること。
・ 投票はあくまでも選挙人本人の自由意思に基づいて行われるべきものであることから、
投票所の事務従事者のうちから定められた補助者 2 人が選挙人本人の意思を確実に確認し
た上で、そのうち 1 人が選挙人の指示する候補者の氏名等を記載するよう徹底すること。
○しろまる 障害のある方に配慮した選挙事務の事例について(令和 5 年 1 月 30 日付け総行管第
75 号各都道府県選挙管理委員会事務局書記長宛て総務省自治行政局選挙部管理課長通知)・ 絵・図・写真などを使用して分かりやすく説明
・ 説明のポイントをメモ書き(漢字にはふりがなをつけて)して渡す
・ コミュニケーションボードを必要に応じて利用
・ 繰り返し同じ話をされる方でも、話を途中で遮らずに応対
・ 短い文章で説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対
・ パニック状態でも、強制的に制止せず、少し落ち着いてから応対
※(注記) 総務省自治行政局選挙部では、障害者のある方に対する投票所での対応例につ
いて、同省ホームページに掲載しており、併せて、障害者の投票環境の整備向上の
参考となるよう、
都道府県選挙管理委員会を通じ、
市町村選挙管理委員会に対し通
知している。
また、同通知では、総務省ホームページに一部選挙管理委員会が実際に使用し
ているコミュニケーションボード、投票支援カード、代理投票制度のリーフレッ
ト等を例示している旨を記載している。
4 沖縄県内における状況
(1) 沖縄県内における療育手帳所持者数
沖縄県内における 18 歳以上の療育手帳所持者数(令和 3 年度末現在)は、表 1 のとお
り、1 万 2,859 人で、増加傾向にあり、沖縄県内の選挙人名簿登録者数は 117 万 3,7856人(令和 3 年 9 月 1 日現在)であることから、18 歳以上の療育手帳所持者は選挙人名簿
登録者の 1.1%となる。
なお、市町村別の 18 歳以上の療育手帳所持者数は別添資料のとおりである。
表 1 沖縄県内における 18 歳以上の療育手帳所持者数の推移
(単位:人、%)年 度 平成 29 年度 30 年度 令和元年度 2 年度 3 年度
療育手帳所持
者数 a
11,880 12,190 12,375 12,384 12,859
選挙人名簿登
録者数 b
1,153,766
(平成29年9月1日 現在)
1,158,602
(平成30年9月20日 現在)
1,163,426
(R1.7.3 現在)
1,168,778
(R2.5.28 現在)
1,173,785
(R3.9.1 現在)
a/b 1.0 1.1 1.1 1.1 1.1
(注)1 「療育手帳所持者数」は沖縄県知的障害者更生相談所資料により、
「選挙人名簿登録者数」は沖縄県資
料による。
2 各年度の療育手帳所持者数は、各年度末時点である。
(2) 沖縄県内における代理投票件数
沖縄県内で実施された近年の選挙における代理投票件数は表 2 のとおりであり、直近
の国政選挙においては 1,544 件である。ただし、当該件数は、知的障害者による利用だ
けではなく、怪我によるもの、高齢によるもの、その他障害等により、文字を記入する
ことが難しい者による利用を含む、全体の件数である。
表 2 沖縄県内における代理投票件数
(単位:件、%)
区 分
平成 30 年 9 月
沖縄県知事選挙
令和元年 7 月
参議院議員選挙
令和 3 年 10 月
衆議院議員選挙
代理投票件数 a 2,119 1,541 1,544
(注)
「代理投票件数」は沖縄県資料による。
5 書面調査結果
当事務所は、令和 5 年 11 月〜12 月に、沖縄県内全市町村(41 市町村)の各選挙管理委
員会(以下「市町村選挙管理委員会」という。
)を対象に、同 4 年 7 月の参議院議員選挙時
点における知的障害者に対する投票支援の状況について書面調査を行い、代理投票制度の
周知状況、
投票支援カードやコミュニケーションボード
(以下
「意思確認ツール」
という。)の利用状況、投票事務従事者に対する投票支援に係る事前説明(研修等)の実施状況等に
ついて確認した。その結果は次のとおりである。
(1) 代理投票制度の周知状況等
ア 代理投票制度の周知状況
市町村選挙管理委員会における代理投票制度の周知状況は、
表 3 のとおり、
「周知し
ている」は 15 市町村(36.6%)、「周知していない」は 26 市町村(63.4%)である。7表 3 代理投票制度の周知の有無
(単位:市町村、%)
周知の有無 市町村数
周知している 15 (36.6)
周知していない 26 (63.4)
計 41 (100)
(注)1 当事務所が行った書面調査結果による。
2 ( )内は構成比である。
イ 代理投票制度の周知方法
代理投票制度を周知している 15 市町村における周知方法は表 4 のとおり、
「ホーム
ページによる周知」が 12 市町村(80.0%)と最も多い。
表 4 代理投票制度の周知方法(複数回答)
(単位:市町村、%)
周知方法 市町村数
ホームページによる周知 12 (80.0)
障害者支援団体を通じた周知 2 (13.3)
明るい選挙推進員による周知 1 (6.7)
選挙管理委員会委員による周知 1 (6.7)
防災行政無線を活用した周知 1 (6.7)
電子相談 FAQ に掲載して周知 1 (6.7)
(注)1 当事務所が行った書面調査結果による。
2 ( )内は 15 市町村を母数とする割合である。
ウ 周知していない理由
代理投票制度を周知していない 26 市町村における周知していない理由は表 5 のと
おり、
「投票所において説明しているため」が 10 市町村(38.5%)と最も多く、次い
で「必要性が余りないため」が 7 市町村(26.9%)である。
また、周知していない理由の詳細は、表 6 のとおりである。
表 5 代理投票制度を周知していない理由(複数回答)
(単位:市町村、%)
区 分 市町村数
投票所において説明しているため 10 (38.5)
必要性が余りないため 7 (26.9)
国や県が行うものと思っているため 4 (15.4)
周知のための参考資料等を未作成のため 3 (11.5)
その他(職員の態勢がない等) 2 (7.7)
(注)1 当事務所が行った書面調査結果による。82 回答は複数回答可であるが、複数回答した市町村はない。
3 ( )内は 26 市町村を母数とする割合である。
表 6 代理投票制度を周知していない理由の詳細
(自由記述欄から主な回答を引用)
○しろまる 投票所において説明しているため
・ 投票に来られた方については、
投票会場において代理投票できる旨を必要に応じて説
明しているが、投票日前に代理投票制度に係る周知は行っていない。
・ 現場での対応で事足りていると認識している。
・ 投票所において必要があった場合に案内していることで足りている。
○しろまる 必要性が余りないため(これまで必要性を感じていなかったため)
・ 事前周知の必要性を感じていなかった。
・ 認識不足により行っていなかった。
○しろまる 必要性が余りないため(他の手段で対応できているため)
・ 離島で小規模のため、
要支援者が把握でき、
親族とやり取りし、
支援、
対応している。
○しろまる 国や県が行うものと思っているため
・ 選挙広報は国や県の業務であるため。
・ 代理投票制度に関する広報は、国及び県が行うもの。
○しろまる 周知のための参考資料等を未作成のため
・ 代理投票制度についての周知のための資料を未作成であった。
・ 周知内容の精査など、まだ周知できる準備ができていないため。
○しろまる その他
・ 選挙管理委員会の職員は全員兼任であり、周知などの業務に取り組めていない。
(注)当事務所が行った書面調査結果による。
(2) 意思確認ツールの利用状況等
ア 意思確認ツールの利用状況
投票に当たって、知的障害者等の支援を必要とする人のために利用可能なツールと
して、必要とする支援の内容を記載するための「投票支援カード(又は投票支援シート)」や、よくある問合せ等についてイラストや文字で記載した「コミュニケーション
ボード」などがある。
市町村選挙管理委員会における意思確認ツールの利用状況
(作成・用意の状況)
は、
表 7 のとおり、
「作成・用意している」は 7 市町村(17.1%)、「作成・用意していな
い」は 34 市町村(82.9%)である。
表 7 意思確認ツールの作成・用意の有無
(単位:市町村、%)
作成・用意の有無 市町村数
作成・用意している 7 (17.1)
作成・用意していない 34 (82.9)
計 41 (100)
(注)1 当事務所が行った書面調査結果による。
2 ( )内は構成比である。
イ 利用している意思確認ツールの内容
意思確認ツールを作成・用意している 7 市町村における意思確認ツールの内容は表98 のとおり、
「コミュニケーションボード」が 4 市町村(57.1%)、「投票支援カード」
が 2 市町村(28.6%)である。
表 8 作成・用意している意思確認ツールの種類(複数回答)
(単位:市町村、%)
意思確認ツールの種類 市町村数
コミュニケーションボード 4 (57.1)
投票支援カード 2 (28.6)
その他(候補者氏名一覧) 1 (14.3)
(注)1 当事務所が行った書面調査結果による。
2 回答は複数回答可であるが、複数回答した市町村はない。
3 ( )内は 7 市町村を母数とする割合である。
ウ 意思確認ツールを作成・用意していない理由
意思確認ツールを作成・用意していない 34 市町村における作成・用意していない理
由は表 9 のとおり、
「必要な支援は口頭で確認しているため」が 13 市町村(38.2%)
と最も多く、次いで「どのように作成すれば良いか分からないため」が 11 市町村
(32.4%)である。
また、意思確認ツールを作成・用意していない理由の詳細は、表 10 のとおりであ
る。
表 9 意思確認ツールを作成・用意していない理由(複数回答)
(単位:市町村、%)
区 分 市町村数
必要な支援は口頭で確認しているため 13 (38.2)
どのように作成すれば良いか分からないため 11 (32.4)
筆談メモ等を用意しているため 6 (17.6)
必要性が余りないため 5 (14.7)
準備が不足していたため 2 (5.9)
(注)1 当事務所が行った書面調査結果による。
2 ( )内は 34 市町村を母数とする割合である。
表 10 意思確認ツールを作成・用意していない理由の詳細
(自由回答欄から主な回答を引用)
○しろまる 必要な支援は口頭で確認しているため
・ 投票所内での声掛けで対応している。
・ 投票所事務従事者などが直接、本人などへ声掛け確認を行って対応している。
・ 受付段階で、会場整理係が声掛けして支援内容を確認の上、対応している。
○しろまる どのように作成すれば良いか分からないため
・ どのように投票支援カードを作成すれば良いか、
どのタイミングで利用すれば良いか
分からない。
・ コミュニケーションボードの導入を検討しているが、どういった内容で作成するか
等、調査・検討している段階
・ 当時必要性を認識していたが、
コミュニケーションボードのひな形自体がなく、
作成10方法や使用方法についても承知していなかった。
○しろまる 筆談メモ等を用意しているため
・ 筆談用の紙及びホワイトボードの準備は行っており問題ないと考えていたが、
現在は
コミュニケーションボードを用意しており、次回選挙より活用予定
・ 筆談用のホワイトボードの準備は行っており必要なコミュニケーションは取れてい
て問題ないと認識していた。
○しろまる 必要性が余りないため
・ これまで必要とする場面が無かった。
・ 対象者が限られるため特に用意していなかった。
○しろまる 準備が不足していたため
・ これまで代理投票や配慮が必要な方への対応の仕方は、
投票事務の手引や説明会にて
事務従事者等に説明していたため、新しく投票支援カード等を使用する準備ができて
いなかった。
(注)当事務所が行った書面調査結果による。
(3) 投票事務従事者に対する投票支援に係る事前説明の実施状況等
ア 投票事務従事者に対する投票支援に係る事前説明の実施状況
市町村選挙管理委員会における投票事務従事者に対する投票支援に係る事前説明
の実施状況(知的障害者とのコミュニケーション方法や必要な配慮を習得させるため
の説明・研修・資料配布等の状況)は、表 11 のとおり、
「実施している」は 28 市町村
(68.3%)、「実施していない」は 13 市町村(31.7%)である。
表 11 投票事務従事者に対する事前説明の有無
(単位:市町村、%)
事前説明の有無 市町村数
実施している 28 (68.3)
実施していない 13 (31.7)
計 41 (100)
(注)1 当事務所が行った書面調査結果による。
2 ( )内は構成比である。
イ 事前説明の方法
投票事務従事者に対する事前説明を実施している 28 市町村における事前説明の方
法は表 12 のとおり、
「研修や説明会」は 22 市町村(78.6%)、「対応マニュアルの配
布」は 10 市町村(35.7%)である。
表 12 投票事務従事者に対する事前説明の方法(複数回答)
(単位:市町村、%)
実施方法 市町村数
研修や説明会 22 (78.6)
対応マニュアルの配布 10 (35.7)
(注)1 当事務所が行った書面調査結果による。
2 ( )内は 28 市町村を母数とする割合である。11ウ 事前説明を実施していない理由
投票事務従事者に対する事前説明を実施していない 13 市町村における事前説明を
実施していない理由は表 13 のとおり、
「認識が不足していたため」
が 6 市町村
(46.2%)
と最も多い。
また、投票事務従事者に対する事前説明を実施していない理由の詳細は表 14 のと
おりである。
表 13 投票事務従事者に対する事前説明を実施していない理由(複数回答)
(単位:市町村、%)
区 分 市町村数
認識が不足していたため 6 (46.2)
経験豊富な職員が対応しているため 3 (23.1)
準備が不足していたため 2 (15.4)
その他(家族等と調整して対応、必要性がない) 2 (15.4)
(注)1 当事務所が行った書面調査結果による。
2 回答は複数回答可であるが、複数回答した市町村はない。
3 ( )内は 13 市町村を母数とする割合である。
表 14 投票事務従事者に対する事前説明を実施していない理由の詳細
(自由回答欄から主な回答を引用)
○しろまる 認識が不足していたため
・ 知的障害者に対する支援の認識が不足していた。
・ 知的障害者に対する対応方法について、認識不足であった。
・ 知的障害者に対する認識が不足していた。
今後は研修やマニュアル等で知識を深めた
い。
○しろまる 経験豊富な職員が対応しているため
・ 投票場前で整理を行う職員は、
知的障害者に支援内容を確認する方法に長けている者
を充てているため、あえて当該職員にコミュニケーション方法や配慮に関する事前レ
クは実施していない。
・ 投票所の事務従事職員が長年にわたり選挙事務に携わっており、
経験豊富のため、そ
の都度対応している。
○しろまる 準備が不足していたため
・ 令和 4 年度の参議院選挙では、このような取組の準備ができていなかった。同 5 年 2
月に「選挙事務における障がいのある方等への接遇マニュアル」を作成したので、今後
の選挙では市の投票事務従事者及び期日前投票の委託業者へ研修や説明会を実施して
いきたい。
(注)当事務所が行った書面調査結果による。
6 沖縄県選挙管理委員会、関係団体等の意見
(1) 沖縄県選挙管理委員会
沖縄県選挙管理委員会に対し、知的障害者の投票環境整備に関する市町村選挙管理委
員会との連携状況について照会した結果は、次のとおりである。12国政選挙に係る選挙管理費用は、公職選挙法、国会議員の選挙等の執行経費の基準
に関する法律(昭和 25 年法律第 179 号)に基づき、国は基準額に基づいて算定した
都道府県及び市町村において要する経費を都道府県に交付し、
都道府県は市町村分を
各市町村に交付することとなっている。また、国政選挙は、第一号法定受託事務とな
っているため、国から都道府県宛てに発出された通知で市町村の事務に関わるもの
は、全て市町村に通知している。
投票所(期日前投票所を含む。
)における投票事務は、公職選挙法で市町村の事務
とされているため、その運用等について相談・助言することはあっても、法令違反や
著しく適性を欠き明らかに公益を害していると認められない限り、
是正の指示等はで
きないこととなっている。
県では毎年度、
市町村選挙管理委員会の担当者を対象に市町村選挙事務研修会を開
催しており、その際に国の関係通知の確認をしてもらうなどの支援を行っている。
市町村選挙管理委員会においては、代理投票の補助者になり得る事務従事者に対
し、十分な制度趣旨の周知、意識付けを行うことが重要と思われる。
(2) 沖縄県外の市町村選挙管理委員会
検討の参考とするため、知的障害者の投票環境整備に関し、沖縄県外の市町村選挙管
理委員会に対し、意思確認ツールの導入状況及び効果を照会した結果は次のとおりであ
る。
<導入理由>
障害者団体から意思表示が難しい方への対応として、他都市で事例のある「投票支
援カード」の導入の相談があり、他都市の状況などを聞き取り、調査する中で導入し
た。
<導入後の効果>
令和 5 年 2 月の市長選挙及び同年 4 月の統一地方選挙で利用があり、
「カードがあ
ったので投票しようと思った」
「こうしたサポートがあり一人で投票しやすかった」
等の声があったので、引き続き周知等を行いたいと考えている。
なお、投票支援カードは、投票所受付にも置いているが、当市のホームページから
入手でき、できれば選挙人の自宅で記載してもらい、投票所の受付に提出してもらう
ことを前提にしている。
(3) 公益社団法人沖縄県手をつなぐ育成会
検討の参考とするため、知的障害者に関する社会啓発事業や相談事業等を行っている
沖縄県手をつなぐ育成会に対し、
知的障害者の投票環境に関する意見を照会した結果は、
次のとおりである。
知的障がい者が、投票時に候補者や政党の名前を書くことが難しくても、投票所の
職員が代筆で投票できる代理投票制度があることや、
一人での投票に不安を感じる知
的障がい者には、
家族や付添人が投票記載台まで寄り添えるよう配慮してもらえるこ13とを保護者や支援者のほとんどが知らない状況にある。
一方で県外の市区町村の中には、i)事前に代理投票のやり方を絵図や漢字にひら
がなを付したチラシを作成・配布する、ii)投票時に知的障がい者の特性に合わせた
支援内容を確認するための投票支援カードなどを投票所前や受付で配布するなど、知的障がい者の投票行動を支援する取組が行われている。
少なくとも当会が承知している限り、沖縄県内では、車椅子用の投票台、聴覚障が
い者のための筆談ボード、
視覚障がい者のための点字表示などの用意はあったとして
も、
知的障がい者の投票を念頭に置いた代理投票制度の事前案内や投票支援カードな
どを用意している市町村はなく、
知的障がい者を持つ保護者や支援者から知的障がい
者が置き去りにされているとの声をよく聞く。
現在の投票率の低さは、保護者の政治への関心度の低下も原因かと思われるが、代
理投票制度の啓発は家庭のみならず、知的障がい者の就労場所、障がい者施設・事業
所への周知活動も必要である。その啓発の一例として、市町村発行の広報誌掲載も必
要ではないかと思う。
知的障がい者も国政に参加する権利があるため、
知的障がいのある人に積極的な参
加を促すための投票環境の整備が必要である。
7 行政改善推進会議の審議結果
知的障害者が選挙において、円滑に投票するための投票環境の整備の必要性について、
行政改善推進会議に諮ったところ、次のような意見があった。
(代理投票制度の事前周知について)
○しろまる 一般の有権者は代理投票制度をほとんど知らないと思われるし、知的障害者の家族に
おいても知らないと思われるので、県や市町村の選挙管理委員会は代理投票制度につい
て周知する必要がある。
○しろまる 代理投票制度に不安を感じている方もいるのではないか。プライバシーに十分配慮し
ていることが分かれば警戒感も下げることができると思う。代理投票制度があるという
ことだけを周知するのではなく、具体的にどのような支援が受けられるのかについて周
知すると、制度に対する安心感を持ってもらうことができるのではないか。
○しろまる 代理投票制度の事前周知として、例えば、市町村広報誌や選挙公報に制度の説明を記
載する、
制度上可能であれば投票所入場券に説明文や制度紹介にリンクする QR コードを
掲載するなどの方法が考えられるのではないか。また、ホームページやポスターによる
周知も重要である。
○しろまる 選挙管理委員会と福祉部局が連携し、その両方から周知が行われると良いのではない
か。
○しろまる 知的障害者支援団体に対し、確実に周知すると良いのではないか。また、選挙権は 18
歳以上の者にあるので、特別支援学校に対しても周知してはどうか。14(意思確認ツールの作成・用意について)
○しろまる 知的障害者でも一人で投票する方もいる。投票支援カード等を投票所の入口に置いて
おくと良いのではないか。
○しろまる 意思確認ツールを活用すれば、相談要旨のケースのように投票を諦めることはなかっ
たかもしれない。
(投票事務従事者に対する事前説明について)
○しろまる 選挙人と投票事務従事者においてコミュニケーションが取れていれば、起こらなかっ
たことである。選挙事務に従事する以上、障害者への対応について知っておかなければ
ならない。投票事務従事者に対する研修も重要である。
○しろまる 投票事務従事者が知的障害者に対する支援について十分な知識を有していて、適切な
支援を行っていれば、相談要旨のケースのように投票を諦めることはなかったのではな
いか。
(別添資料)
(単位:人)
番号 市町村名
18歳以上の療育
手帳所持者数
1 名 護 市 649
2 国 頭 村 62
3 大 宜 味 村 43
4 東 村 23
5 今 帰 仁 村 107
6 本 部 町 200
7 伊 江 村 42
8 伊 平 屋 村 19
9 伊 是 名 村 16
10 う る ま 市 1,166
11 沖 縄 市 1,275
12 宜 野 湾 市 675
13 恩 納 村 69
14 宜 野 座 村 37
15 金 武 町 124
16 読 谷 村 346
17 嘉 手 納 町 146
18 北 谷 町 205
19 北 中 城 村 111
20 中 城 村 169
21 那 覇 市 2,632
22 浦 添 市 901
23 糸 満 市 675
24 豊 見 城 市 410
25 南 城 市 483
26 西 原 町 329
27 与 那 原 町 170
28 南 風 原 町 308
29 八 重 瀬 町 290
30 久 米 島 町 106
31 渡 嘉 敷 村 5
32 座 間 味 村 7
33 粟 国 村 16
34 渡 名 喜 村 6
35 南 大 東 村 7
36 北 大 東 村 2
37 宮 古 島 市 471
38 多 良 間 村 4
39 石 垣 市 497
40 竹 富 町 39
41 与 那 国 町 17
ー 計 12,859
(注)「令和4年度事業概要」(沖縄県知的障害者更生相談所)
のデータを基に当事務所で作成した。
沖縄県における市町村別の18歳以上の療育手帳所持者数