Microsoft Word - 02_自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.3版】(案)(溶け込み)


自治体デジタル・トランスフォーメーション
(DX)推進計画
【第 2.3 版】
総務省
2024 年(令和6年)2月5日 1目次
1. はじめに ......................................................................2
1.1 自治体における DX 推進の意義 .................................................2
1.2 本計画の趣旨 ................................................................4
1.3 本計画の対象期間 ............................................................5
2. 自治体における DX の推進体制の構築 .............................................5
(1) 組織体制の整備 ..............................................................5
(2) デジタル人材の確保・育成 ....................................................8
(3) 計画的な取組 ...............................................................13
(4) 都道府県と市区町村の連携による推進体制の構築 ...............................15
3. 取組事項 .....................................................................16
3.1 自治体 DX の重点取組事項 ....................................................16
(1) 自治体フロントヤード改革の推進 .............................................16
(2) 自治体の情報システムの標準化・共通化 .......................................24
(3) 公金収納における eLTAX の活用 ...............................................31
(4) マイナンバーカードの普及促進・利用の推進 ...................................34
(5) セキュリティ対策の徹底 .....................................................38
(6) 自治体の AI・RPA の利用推進 .................................................39
(7) テレワークの推進 ...........................................................40
3.2 自治体 DX の取組とあわせて取り組むデジタル社会の実現に向けた取組 ............42
(1) デジタル田園都市国家構想の実現に向けたデジタル実装の取組の推進・地域社会のデジ
タル化 .........................................................................42
(2) デジタルデバイド対策 .......................................................48
(3) デジタル原則を踏まえた規制の点検・見直し ...................................52
3.3 各団体において必要に応じ実施を検討する取組 .................................56
(1) BPR の取組の徹底............................................................57
(2) オープンデータの推進・官民データ活用の推進 .................................58
4. おわりに ....................................................................61
別紙1 自治体の主な取組スケジュール
別紙2 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において示された方針及び KPI 21. はじめに
1.1 自治体における DX 推進の意義
新型コロナウイルス対応において、地域・組織間で横断的にデータが十分に活用で
きないことなど様々な課題が明らかとなったことから、
こうしたデジタル化の遅れに
対して迅速に対処するとともに、
「新たな日常」
の原動力として、
制度や組織の在り方
等をデジタル化に合わせて変革していく、言わば社会全体のデジタル・トランスフォ
ーメーション(DX)が求められている。
こうした認識に基づき、
「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」
(2020 年
(令和2年)12 月 25 日閣議決定)において、目指すべきデジタル社会のビジョンと
して「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことがで
き、多様な幸せが実現できる社会〜誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化〜」
が示された。
また、2021 年(令和3年)5月には、デジタル社会形成基本法、地方公共団体情報
システムの標準化に関する法律を含めたデジタル改革関連法が成立・公布され、デジ
タル社会形成基本法において、
「地方公共団体は、基本理念(注:同法第2章に定めるデ
ジタル社会の形成についての基本理念)にのっとり、デジタル社会の形成に関し、国との
適切な役割分担を踏まえて、
その地方公共団体の区域の特性を活かした自立的な施策
を策定し、及び実施する責務を有する」
(第 14 条)こととされている。
2023 年(令和5年)6月には、デジタル社会形成基本法第 37 条第1項等に基づく
「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(以下「重点計画」という。
)が閣議決定さ
れ、本重点計画においても、先述のビジョンが目指すべきデジタル社会のビジョンと
して改めて位置づけられている。このビジョンの実現のためには、住民に身近な行政
を担う自治体、とりわけ市区町村の役割は極めて重要であり、自治体の DX を推進す
る意義は大きい。
自治体においては、まずは、
・自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利
便性を向上させるとともに、
・デジタル技術や AI 等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービス
の更なる向上に繋げていく
ことが求められるとともに、
DX を推進するに当たっては、
住民等とその意義を共有
しながら進めていくことも重要となる。 3さらには、データが価値創造の源泉であることについて認識を共有し、データの様
式の統一化等を図りつつ、
多様な主体によるデータの円滑な流通を促進することによ
って、
EBPM1
等により自らの行政の効率化・高度化を図ることが可能となる。
加えて、
多様な主体との連携により民間のデジタル・ビジネスなど新たな価値等が創出される
ことにより、我が国の持続的かつ健全な発展、国際競争力の強化にも繋がっていくこ
とが期待される。
また、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法
の3本の法律を1本の法律に統合するとともに、
自治体の個人情報保護制度について
も全国的な共通ルールを法律において規定した上で統合後の法律を個人情報保護委
員会が所管する仕組みとすることとする法律が 2021 年(令和3年)の通常国会にて
成立し、地方公共団体の関連規定については、2023 年(令和5年)4月から施行され
ている。
個人情報保護に関する法律の一元化等を通じて制度面でのデータの流通基盤
が整備されれば、本計画における自治体の情報システムの標準化・共通化、マイナン
バーカードの普及促進と相まって、
自治体におけるデータ活用の可能性が拡大するこ
とも認識すべきである。
さらに、重点計画においては、デジタル社会の実現に向けた戦略・施策として、
「デ
ジタル社会の実現に向けた構造改革」及び「デジタル田園都市国家構想の実現」が掲
げられている。
「デジタル社会の実現に向けた構造改革」については、デジタル社会の目指す姿を
実現する上で、国や地方公共団体の情報システムの改革に取り組むだけでは、書面や
対面などデジタル活用を前提としていない規制・制度や行政組織の縦割りによって一
部だけのデジタル化しか達成することができない場合が多く、
不十分という問題意識
の下、2021 年(令和3年)11 月に内閣総理大臣を会長とする「デジタル臨時行政調
査会」が発足し、デジタル改革、規制改革、行政改革といった構造改革に係る横断的
課題の一体的な検討や実行が強力に推進されている
(同調査会は、
2023 年
(令和5年)
10 月6日に廃止)。また、
「デジタル田園都市国家構想」
については、
様々な社会課題に直面する地方に
こそ、新たなデジタル技術を活用するニーズがあることに鑑み、デジタル技術の活用
によって、地域の個性を活かしながら地方が抱える人口減少や少子高齢化、産業空洞
化などの社会課題の解決、魅力向上のブレークスルーを実現し、地方活性化を加速す
ることをその意義としている。1EBPM:Evidence-Based Policy Making の略。統計や業務データなどの客観的な証拠に基づく
政策立案のこと 4本構想を通じて、暮らす場所、年齢、性別にかかわらずあらゆる国民が、それぞれ
のライフスタイルやニーズに合ったゆとりと安心を兼ね備えた心豊かな暮らしを営
むことができ、地方における仕事や暮らしの向上に資する新たなサービスの創出、持
続可能性の向上、
Well-being の実現等を通じてデジタル化の恩恵を国民や事業者が享
受できる社会、いわば「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指すこ
ととしている。2022 年(令和4年)12 月 23 日には、本構想を実現するために各府省
庁の施策を充実・強化し、施策ごとに 2023 年度(令和5年度)から 2027 年度(令和
9年度)までの5か年の KPI(重要業績評価指標)とロードマップ(工程表)を位置
づけた「デジタル田園都市国家構想総合戦略」が閣議決定されている。
これらは、
国・自治体が歩調を合わせて取り組むデジタル社会の実現に向けた戦略・
施策であり、自治体においてもこれらに基づいた取組が期待される。
併せて、重点計画においては、
「Web3.0 の推進」も戦略として取り組む政策群の一
つとして掲げられており、
Web3.0 の健全な発展に向けて、
様々なチャレンジが不合理
な障壁なく行える環境整備に取り組むとされているなど、
新たなデジタル技術が日々
進展している状況を自治体においても注視し、
各団体それぞれの地域課題に応じたデ
ジタル実装の取組へ活かすことができるか検討していく必要がある。
加えて、2023 年(令和5年)10 月には、急激な人口減少社会への対応として、利用
者起点で我が国の行財政の在り方を見直し、
デジタルを最大限に活用して公共サービ
ス等の維持・強化と地域経済の活性化を図り、社会変革を実現するため、デジタル行
財政改革会議の設置が閣議決定されたところであり、
同会議の動きも注視していく必
要がある。
1.2 本計画の趣旨
政府においては、
利用者起点で行政のデジタル化の集中改革を強力に推進するため、
マイナンバー制度と国・地方を通じたデジタル基盤の在り方を含め、抜本的な改善を
図るとされ、重点計画においても、自治体に関連する施策も多く盛り込まれたところ
である。こうした住民と行政との接点(フロントヤード)の多様化・充実化や情報シ
ステムの標準化・共通化といった自治体における施策を効果的に実行していくために
は、国が主導的に役割を果たしつつ、自治体全体として、足並みを揃えて取り組んで
いく必要がある。
さらに、デジタル社会形成基本法においては、
「国は、
(中略)デジタル社会の形成
についての基本理念にのっとり、デジタル社会の形成に関する施策を策定し、及び実
施する責務を有する」
(第 13 条)こととされ、また、
「国及び地方公共団体は、デジタ 5ル社会の形成に関する施策が迅速かつ重点的に実施されるよう、
相互に連携を図らな
ければならない」
(第 15 条)こととされている。
このため、総務省は、国と地方公共団体との連絡調整に関することを所掌する観点
から、重点計画等における各施策について、自治体が重点的に取り組むべき事項・内
容を具体化するとともに、総務省及び関係省庁による支援策等を取りまとめ、
「自治
体 DX 推進計画」として策定し、デジタル社会の構築に向けた取組を全自治体におい
て着実に進めていく。
なお、
本計画に記載された自治体の取組に関する内容については、
地方自治法第 245
条の4第1項に基づく技術的助言である。
1.3 本計画の対象期間
2021 年(令和3年)1月から 2026 年(令和8年)3月までを本計画の対象期間と
する。
本計画は、共通的な基盤・機能を提供するガバメントクラウドの活用に向けた検討
など国の動向を反映させるよう適宜見直しを行う。
2. 自治体における DX の推進体制の構築3.「取組事項」にて示す DX 推進のために自治体が取り組むべき事項を着実に実施
するためには、以下の取組を実施し、DX 推進体制の構築に取り組むことが望ましい。
【DX 推進体制の構築に向けた取組内容】
(1)組織体制の整備
(2)デジタル人材の確保・育成
(3)計画的な取組
(4)都道府県による市区町村支援
(1)組織体制の整備
限られた予算の中、組織の壁を越えて、全体最適化の見地から住民と行政の接点
(フロントヤード)の多様化・充実化や自治体の情報システムの標準化・共通化等
の自治体における DX を推進するためには、効果的な推進体制の構築が不可欠であ
る。
今回の DX の取組は、極めて多くの業務に関係する取組を短期間で行おうとする
ものであることから、以下の役割を参考として、全庁的・横断的な推進体制とする 6必要がある。具体的な取組に先んじて、速やかに体制整備に着手することが望まれ
る。
[首長]
DX の推進に当たっては、仕事の仕方、組織・人事の仕組み、組織文化・風土その
ものの変革も必要となる中、首長自らがこれらの変革に強いコミットメントを持っ
て取り組む。
[CIO]
首長の理解とリーダーシップの下、
最高情報統括責任者
(CIO:Chief Information
Officer)を中心とする全庁的な DX 推進体制を整備する。CIO は、言わば庁内マネ
ジメントの中核であり、庁内全般を把握するとともに部門間の調整に力を発揮する
ことができるよう、副市長等であることが望ましい。
[CIO 補佐官等]
CIO を補佐する体制を強化するため、CIO 補佐官等の任用などの取組を進める。
また、CIO のマネジメントを専門的知見から補佐する CIO 補佐官等については、
外部人材の活用を積極的に検討する。
[情報政策担当部門]
情報政策担当部門は、団体の保有する情報資産や情報関係予算を一元的に把握し、
重複投資の排除や情報システムの全体最適化に役立てる。
[行政改革・法令・財政担当部門]
行政改革・法令・財政担当部門は、自治体 DX の必要性を十分に認識し、管理部門
として、CIO・情報政策担当部門と連携強化を図りつつ、自ら DX を推進していく役
割を果たす。
[人材育成・人事担当部門]
人材育成・人事担当部門は、
「人材育成・確保基本方針策定指針」
(2023 年(令和
5年)12 月)等を踏まえ、現在の職員のデジタルスキル等を把握したうえで、将来
的な業務量や配置必要数を見込み、外部人材の確保の必要性及び任用形態の検討、
既存職員による育成の目標人数の設定や職員全体の研修計画との整理を行うなど、 7DX 推進担当部門との緊密な連携を図る。
[業務担当部門(特に窓口担当部門)]DX は、業務改革の契機であることを踏まえ、DX の取組を通じてどのように業務
を変えていくのかという観点から、主体性を持って DX 推進に参画する。
また、情報セキュリティ対策を確実に実施するため、最高情報セキュリティ責任
者(CISO:Chief Information Security Officer)の設置など情報セキュリティ対
策に取り組む体制の確実な整備も重要であり、連携して取り組む必要がある2。なお、各自治体における DX 推進体制の構築状況は、以下のとおりである。
【参考】DX 推進体制の構築状況2情報セキュリティ体制の整備については、
「地方公共団体における情報セキュリティポリシー
に関するガイドライン」
(総務省)を参照。 8(出典)総務省「自治体 DX・情報化推進概要(令和4年度) 」
(2)デジタル人材の確保・育成
だいやまーく「経済財政運営と改革の基本方針 2023」
(2023 年(令和5年)6月 16 日閣議
決定)抜粋
第2章 新しい資本主義の加速
2.投資の拡大と経済社会改革の実行
(2)グリーントランスフォーメーション(GX)
、デジタルトランスフォーメーシ
ョン(DX)等の加速
(デジタルトランスフォーメーション(DX)
、AIへの対応)
(中略)
また、総務省は、推進計画 42 に基づき、デジタル人材の確保・育成やデジタル
技術の活用、住民との接点(
「フロント」
)の改革 43 など、行財政の効率化等につ
ながるデジタル化の取組 44 を推進する。
40 2023 年6月 11 日時点の累計の申請件数の人口に対する割合が 77.2%。
42 「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第 2.0 版】」(令和4年9月2日総務省策定)。43 オンライン申請の推進・強化や多様な窓口の実現など。
44 自治体マイナポイントの効果的な活用を含む。
だいやまーく「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(2023 年(令和5年)6月9日閣議
決定)抜粋
第3 デジタル社会の実現に向けた戦略・施策
第3-2 各分野における基本的な施策
5.デジタル社会を支えるシステム・技術
(2)地方の情報システムの刷新
4統一・標準化を進めるための支援
イ その他の支援
(中略)
デジタル庁及び総務省は、都道府県と連携して、複数市区町村での兼務を含め、
デジタル人材の CIO 補佐官等としての任用等が推進されるように支援する。また、
地方公共団体職員との対話や研修、人事交流等を通じて地方公共団体のデジタル人 9材育成に寄与する。あわせて、総務省は、民間企業と連携した伴走支援等により、
都道府県等における市区町村支援のためのデジタル人材の確保を推進するほか、地
方公共団体において職員に求められるスキルの明確化等を通じて、デジタル化の取
組の中核を担う職員の集中的な育成を支援する。さらに、各地方公共団体における
デジタル人材の確保・育成に係る取組事例の横展開に取り組む。
(デジタル人材の確保)
先の推進体制にあるとおり、
自治体における DX の推進に当たっては、
CIO のマネ
ジメントを専門的知見から補佐する CIO 補佐官等の役割が鍵となることから、ICT
の知見を持った上で、自治体現場の実務に即して技術の導入の判断や助言を行うこ
とのできるデジタル人材を確保することが必要であるが、市区町村においては、適
任者が見つけられないなどその人材確保が課題となっており、
CIO 補佐官等として、
外部からデジタル人材を任用等している市区町村は 2022 年(令和4年)9月時点
で 198 団体3
となっている。
なお、自治体が CIO 補佐官等として、外部人材を任用する場合、職務の内容や量
に応じて、任期付職員や特別職非常勤職員として任用することが考えられる。これ
らの任用形態については、いずれも、
・ 民間企業との雇用関係を継続し、従業員としての地位を保有したまま任用す
ること
・ 民間水準を考慮して給与を設定すること
が可能である(任期付職員については、所属する民間企業から給与その他の報酬を
得てその業務に従事することは、地方公務員法第 38 条による制限を受ける。)。
自治体は、DX の推進体制を検討するに当たり、CIO 補佐官等について内部に適切
な人材がいない場合には、国の支援等も活用して、外部人材の活用を積極的に検討
すべきである。その際は、CIO 補佐官等に求める業務の内容や量によっては、限ら
れた人材を有効活用する観点からも、他の団体との兼務等を前提とした任用も検討
することが望ましい。
都道府県においては、市区町村との連携による DX 推進体制を構築する中で、市
区町村の人材確保のための支援にも取り組むことが期待されるところであり、総務
省において、市区町村の人材確保のための支援に取り組む都道府県等に対する伴走
支援を実施するとともに、都道府県や複数市町村間で確保した外部人材を共有する
仕組みについて、課題や手順、外部人材の働き方等のノウハウを整理することとし3総務省:令和4年度「地方公共団体におけるデジタル人材の活用に関する調査(C 調査)」 10
ている。
(デジタル人材の育成)
また、自治体における DX の推進を担う職員の育成も課題となっている(DX 推進
担当課室・情報政策担当課室の職員数が0人又は1人の市区町村は 12%4
。DX・情
報化に係る職員の育成にあたっての課題として「育成方針を立てることが困難」と
回答した市区町村は 75%5)。
DX の推進に当たっては、
自治体の各部門の役割に見合ったデジタル人材が職員と
して適切に配置されるよう人材育成に取り組むことが必要であり、特に、一般行政
職員の中でも、デジタル分野における専門知識を身につけ、一般行政職員や高度専
門人材と連携し、中核となって実務をとりまとめることができる職員(
「DX 推進リ
ーダー」)の存在が重要であることから、
各自治体において、
一般行政職員のデジタ
ルリテラシー向上だけでなく、
DX 推進リーダーの育成にも積極的に取り組むことが
求められる。
各自治体が DX 推進のための人材育成に取り組むに当たっては、中長期的な観点
で、一般職員も含めた人材育成の重要性や意義、所属や職位に応じて身につけるべ
きデジタル技術等の知識・能力・経験、研修体系等を設定した体系的な人材育成方
針を持つことが望ましい。
その際、標準化や個人情報保護法の改正等の最新動向を踏まえた研修等に取り組
む必要があるとともに、管理職等向けの意識改革のための研修や、各担当職員向け
の DX に伴う課題理解や分析、
解決策検討等の業務に活かせるような実践的な研修、
職員研修の中に職層別研修として位置づけたり、悉皆研修と選択別研修を効果的に
組み合わせたりするなど、各団体の創意工夫を活かした職員育成の取組が期待され
る。
(デジタル人材の確保・育成に係る方針の策定)
「2.自治体における DX の推進体制の構築」の冒頭に記載のとおり、
「3.取組
事項」にて示す DX 推進のために自治体が取り組むべき事項を着実に実施するため
には、その取組を推進するための組織体制の整備や、DX の取組を担うデジタル人材
の確保・育成など、DX 推進体制の構築に取り組むことが求められる。
こうした組織体制の整備やデジタル人材の確保・育成は、DX の取組を推進するた4総務省:令和4年度「自治体 DX・情報化推進概要」集計データ5総務省:令和4年度「地方公共団体における職員の育成に関する調査(B 調査)」 11
め、どのような組織体制のもと、どのような人材を確保・育成していくか、組織的・
計画的に方針を決定した上で取り組む必要がある。また、それらに取り組むにあた
っては、デジタル人材が官民問わずひっ迫する中で、育成した職員のエンゲージメ
ントの向上を図る手法や、外部人材を受け入れ組織力を高める手法など、デジタル
人材であるか否かにかかわらず、組織全体の組織管理・人事管理に関する方針を踏
まえ、検討を進めることが望ましい。そのため、庁内全体の組織体制の整備や人事
管理を担う人材育成・人事担当部門の役割が特に重要であり、人材育成・人事担当
部門が中心となり、DX の取組の司令塔を担い、あるべき将来像や DX 手法の検討を
行う DX 推進担当部門との緊密な連携の下で、デジタル人材の確保・育成に係る方
針を策定し、全庁的に取組を進めることが求められる。
こうしたことを踏まえ、総務省において、各自治体が人材育成の目的、方策等を
明確にした人材育成に関する基本方針(以下「基本方針」という。
)を改正等する際
の新たな指針として、
「人材育成・確保基本方針策定指針」
(2023 年(令和5年)12
月。以下「策定指針」という。
)を策定し、新たに、自団体で求められるデジタル人
材像を明確化すべきことや、確保・育成すべき目標の設定など、デジタル人材の確
保・育成に関する留意点を盛り込んだところである。
デジタル人材の確保・育成に係る方針を策定していない団体においては、策定指
針に示す留意点を踏まえ、人材育成・人事担当部門が中心となり、DX 推進担当部門
との緊密な連携の下で、基本方針の改正等に当たって、新たな事項としてデジタル
人材の確保・育成に係る内容を盛り込むなどの方法により、可能な限り早期に方針
を策定の上、取組を進めることが求められる。
(都道府県等との連携)
デジタル人材の確保・育成に係る方針を策定し、人材確保・育成に取り組むに当
たっては、自団体において取組を推進することが基本となるが、デジタル人材の確
保等に関しては、官民を問わず人材が不足していることに加え、特に小規模団体に
ついては、人材の確保・育成において、困難な面が生ずることも想定される。この
ような状況においては、都道府県は、各地域における広域的な行政主体として、人
材の確保・育成の面でも、市区町村の相談に応じ、また、支援を行うことが重要で
ある。
そのため、策定指針に記載のとおり、都道府県においては、自らの基本方針にお
いて、自団体の人材の確保・育成の取組に加え、DX 推進担当部門との連携のもと、
市区町村担当部門を中心に各市区町村の状況を十分に把握した上で、当該都道府県 12内の市区町村の現状を踏まえた支援策についても検討することが求められる。
他方、市区町村側でも、指定都市・中核市等の比較的人口規模の大きな自治体、
先進的な取組を進める自治体など、内部にデジタル人材を擁する自治体を中心に、
共同研修の実施や、当該デジタル人材を他自治体の庁内研修の講師として派遣する
ことも含め、地域の実情に応じてデジタル人材の共同活用を進めるなど、市区町村
間での連携についても検討することが望ましい。
さらに、企業や地域の大学等多様な主体と連携しながら、人材の確保・育成、自
治体における DX に取り組んでいる例もあり、
地域の実情に応じて有効な人材確保・
育成策を各団体で検討していく必要がある。
【国の主な支援策等】
(デジタル人材の確保)
1 市区町村における外部人材の募集情報を収集の上、総務省ウェブサイトで公
表するとともに、
協力企業に展開し、
市区町村の取組を後押しする。
【総務省】
2 市町村が CIO 補佐官等として、外部人材の任用等(特別職非常勤職員として
任用する場合及び外部に業務委託する場合)
を行うための経費及び募集に要す
る経費について所要の財政措置(特別交付税(措置率 0.7)
)を講じる。
【総務
省】
3 都道府県等(連携中枢都市及び定住自立圏中心市のほか、他市町村の支援業
務のためにデジタル人材を確保する市町村を含む。
)における市町村支援のた
めのデジタル人材の確保に要する職員の人件費、
民間事業者への委託費等につ
いて、所要の財政措置(特別交付税(措置率 0.7)
)を講じる。
【総務省】
4 三大都市圏に所在する企業等の社員を一定期間受け入れ、そのノウハウや知
見を活かしながら地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事して
もらい、地域活性化を図る地域活性化起業人(企業人材派遣制度)に関して、
ICT 分野に従事する人材(デジタル人材)の派遣元企業に対する負担金など起
業人の受け入れの期間中に要する経費等について、所要の財政措置を講じる。
【総務省】
5 総務省と地方公共団体金融機構の共同事業である「地方公共団体の経営・財
務マネジメント強化事業」において、地方公共団体の DX に係るアドバイザー
の派遣を行う。
【総務省】
6 自治体が外部人材を確保する際の参考となるよう、外部人材が備えておくこ
とが望ましいスキルや経験を類型化した「自治体 DX 推進のための外部人材ス 13キル標準」に基づき、一定のスキルや経験を有する民間人材を公募し、研修を
修了した者に関する情報をとりまとめ、
「外部人材リスト」として情報提供を
行う。
【総務省】
7 都道府県・市町村の連携による広域的な人材確保や民間事業者との連携によ
る人材確保の取組等について、総務省で情報収集を行い、
「自治体 DX 推進参考
事例集」として情報提供を行う。
【総務省】
8 市区町村の人材確保のための支援に取り組む都道府県等に対する伴走支援
を実施するとともに、都道府県や複数市区町村間で確保した外部人材を共有す
る仕組みについて、課題や手順、外部人材の働き方等のノウハウを整理し、こ
れから広域的な人材確保に取り組む都道府県等への事例の横展開に取り組む。
【総務省】
(デジタル人材の育成)
1 地方公共団体におけるデジタル化の取組の中核を担う職員
(DX 推進リーダー)
の育成に係る経費(研修に要する経費、民間講座の受講料等)について、所要
の財政措置(特別交付税(措置率 0.7)
)を講じる。
【総務省】
2 総務省及びデジタル庁との連携のもと、自治体職員との対話や研修、人事交
流等を通じて自治体のデジタル人材育成に寄与する。
【総務省・デジタル庁】
3 職員研修について、総務省において、標準化・共通化や個人情報保護法改正
等の最新動向を踏まえつつ、
J-LIS 等の関係機関と連携しながら、
自治体 DX に
関する研修の充実を図るとともに、
研修情報を取りまとめて各自治体に情報提
供を行う。
【総務省】
4 体系的に整理された人材育成方針等に基づく育成プログラムの策定や業務に
活かせるような実践的な研修など創意工夫を活かした職員育成の取組につい
て、総務省で情報収集を行い、
「自治体 DX 推進参考事例集」として情報提供を
行う。
【総務省】
5 地方公共団体において職員に求められるスキルの明確化等を通じて、デジタ
ル化の取組の中核を担う職員の集中的な育成を支援する。
【総務省】
6 地方公共団体がデジタル人材の確保・育成に係る方針を円滑に策定できるよ
う、方針策定や人材育成手法に係る先進事例等に関する調査を行い、デジタル
人材育成の参考となるガイドブックを策定する。
【総務省】
(3)計画的な取組
情報システムの標準化・共通化についての目標時期が 2025 年度(令和7年度) 14とされており、自治体の行政手続のオンライン化についても継続的な推進が求めら
れていることから、本計画に示す取組を一定の期間の中で実現するには、現行のシ
ステムの調査や、スケジュール策定をはじめとして計画的な導入に向けた検討を行
うことが求められる。
また、情報システムの標準化・共通化や行政手続のオンライン化等による手続の
簡素化、迅速化、行政の効率化等の成果を得るためには、単なるシステム更改にと
どまらず、標準準拠システムを前提としたオンライン手続前提の業務プロセスの見
直しや関連業務も含めたシステム最適化などに取り組むことが必要となるため、別
紙1で示す「自治体の主な取組スケジュール」を参考にしながら、早期から計画的
に取り組むことが必要となる。
相互に関連する DX の取組を総合的かつ効果的に実施し、全庁的に DX を強力に推
進していくためには、DX 推進のビジョン及び工程表から構成される全体的な方針
(以下「全体方針」という。
)が決定される必要があり、その全体方針は、広く自治
体内で共有されるべきである。
各自治体が、本計画を踏まえて、着実に DX に取り組めるよう、全体方針の決定等
を含め想定される一連の手順を示した「自治体 DX 全体手順書」を策定・公表してい
るので、積極的に参考にされたい。
なお、各自治体の全体方針の策定状況は、次のとおりである。
【参考】DX を推進するための全体方針策定状況
(出典)総務省「自治体 DX・情報化推進概要(令和4年度) 」
【国の主な支援策等】
2023 年(令和5年)1月、各自治体が着実に DX に取り組めるよう、取組を進め
るに当たって想定される一連の手順等を示した「自治体 DX 推進手順書」の改定版
を公表した。なお、本手順書については、国の取組の進捗等を踏まえて、適宜見直
すこととしている。
【総務省】 15(4)都道府県と市区町村の連携による推進体制の構築
住民と行政の接点
(フロントヤード)
の多様化・充実化や情報システムの標準化・
共通化等の自治体における DX の取組を効果的に実行していくためには、国が主導
的な役割を果たしつつ、市区町村を含め、自治体全体として、足並みを揃えて取り
組んでいく必要がある。その着実な取組のためには、都道府県と市区町村が連携し
て DX を推進する体制を構築し、都道府県が市区町村に対し、本計画に記載された
自治体 DX 推進の具体的な内容を十分に伝えるとともに、
必要な助言を行うことで、
市区町村の計画的な取組を支援するなど、都道府県が一定の役割を果たすことが期
待される。
また、限られたデジタル人材を市区町村が活用するには、都道府県による市区町
村の人材ニーズの把握・調整等を通じた複数の市区町村での兼務等の手法も考えら
れる。さらに、デジタル技術の導入に当たっては、データの集積による機能の向上
や導入費用の負担軽減、共通する地域課題の解決のノウハウを効果的に市区町村間
で情報共有する等の観点から、共同導入・共同利用の推進が有効であるため、都道
府県の主導も効果的である。
【国の主な支援策等】
1 [再掲]市区町村の人材確保のための支援に取り組む都道府県等に対する伴走支
援を実施するとともに、
都道府県や複数市区町村間で確保した外部人材を共有する
仕組みについて、課題や手順、外部人材の働き方等のノウハウを整理し、これから
広域的な人材確保に取り組む都道府県等への事例の横展開に取り組む。
【総務省】
2 [再掲]
総務省と地方公共団体金融機構の共同事業である
「地方公共団体の経営・
財務マネジメント強化事業」において、地方公共団体の DX に係るアドバイザーの
派遣を行う。
【総務省】
3 情報通信技術
(ICT)
を地域の課題解決に活用する取組に対して、
自治体等からの
求めに応じて、
ICT の知見、
ノウハウを有する専門家(「地域情報化アドバイザー」)を派遣し、助言・提言・情報提供等を行うことにより、地域における ICT 利活用
を促進し、活力と力ある地域づくりに寄与するとともに、地域の中核を担える人材
の育成を図る。
【総務省】
4 デジタルを活用した地域課題解決に取り組もうとする地方公共団体と、
地域の DX
に知見と実績を有している民間企業のデジタル専門人材等のマッチングを支援す
る。
【内閣官房・内閣府】
5 都道府県と市町村等の連携による推進体制の構築・拡充に対して、総務省におい 16て伴走支援に取り組む。
【総務省】
3. 取組事項
以下、重点計画等における各施策のうち、自治体が取り組むべき事項・内容につい
て以下の分類に基づき、具体的内容と国の主な支援策等を示す。なお、必要に応じ、
取組方針の前提となる現状や考え方についても記載する。
【自治体 DX の重点取組事項】
(1)自治体フロントヤード改革の推進
(2)自治体の情報システムの標準化・共通化
(3)公金収納における eLTAX の活用
(4)マイナンバーカードの普及促進・利用の推進
(5)セキュリティ対策の徹底
(6)自治体の AI・RPA の利用推進
(7)テレワークの推進
【自治体 DX の取組とあわせて取り組むデジタル社会の実現に向けた取組】
(1)デジタル田園都市国家構想の実現に向けたデジタル実装の取組の推進・地域
社会のデジタル化
(2)デジタルデバイド対策
(3)デジタル原則を踏まえた条例等の規制の点検・見直し
【各団体において必要に応じ実施を検討する取組】
(1)BPR の取組の徹底
(2)オープンデータの推進・官民データ活用の推進
3.1 自治体 DX の重点取組事項
(1)自治体フロントヤード改革の推進
だいやまーく「経済財政運営と改革の基本方針 2023」
(2023 年(令和5年)6月 16 日閣議
決定)抜粋 17第2章 新しい資本主義の加速
2.投資の拡大と経済社会改革の実行
(2)グリーントランスフォーメーション(GX)
、デジタルトランスフォーメーシ
ョン(DX)等の加速
(デジタルトランスフォーメーション(DX)
、AIへの対応)
(中略)
デジタル社会のパスポートとしてのマイナンバーカードについて、政府が一丸
となって制度の安全と信頼の確保に努めるとともに、ほぼ全国民に行きわたりつ
つある状況を踏まえ 40、今後は官民様々な領域での利活用シーンの拡大など、マ
イナンバーカードの利便性・機能向上、円滑に取得できる環境整備に取り組む。
(中略)
また、総務省は、推進計画 42 に基づき、デジタル人材の確保・育成やデジタル
技術の活用、住民との接点(
「フロント」
)の改革 43 など、行財政の効率化等につ
ながるデジタル化の取組 44 を推進する。
40 2023 年6月 11 日時点の累計の申請件数の人口に対する割合が 77.2%。
42 「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第 2.0 版】」(令和4年9月2日総務省策定)。43 オンライン申請の推進・強化や多様な窓口の実現など。
44 自治体マイナポイントの効果的な活用を含む。
だいやまーく「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(2023 年(令和5年)6月9日閣議
決定)抜粋
第1 安全・安心で便利な国民の生活や事業者の活動に向けた重点的な取組
3.国・地方公共団体を通じた DX の推進
(4)自治体窓口 DX「書かないワンストップ窓口」
マイナポータルや地方自治体独自の電子申請システムの利用によるオンライン
申請の推進に加え、デジタルを前提とした業務改革(BPR)を通じて、従来の窓口
業務を住民目線で利便性を向上させることで、デジタルに不慣れな方もその恩恵
を受けられる、
「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を実現する。
その一つとして、
住民サービスの向上と自治体窓口業務の効率化を実現する
「書
かないワンストップ窓口」の取組の横展開を推進するため、ガバメントクラウド
上で窓口 DXSaaS を提供することや、自治体窓口 DX に精通した窓口 BPR アドバイ
ザーの派遣等を実施するなど、
「書かないワンストップ窓口」
を含めた
「書かない」 18「待たない」
「迷わない」
「行かない」窓口を目的とする「フロント」改革を加速
し、
「バックヤード」改革や推進体制づくりを含む優良事例の横展開を促進する。
第3-1 戦略として取り組む政策群
2.デジタル田園都市国家構想の実現
(3)デジタル田園都市国家構想の実現に向けた重点検討課題3(中略)
地方公共団体による行政サービス分野においては、地方公共団体と住民との接
点である「フロント」について、従来型の対面・紙申請から、非対面のオンライ
ン申請へのシフトを進めるとともに、対面でも「書かないワンストップ窓口」を
導入する等、
総合的な取組を推進する。
「書かないワンストップ窓口」
については、
デジタル庁が地方公共団体と連携して策定した共通仕様に基づく「窓口 DXSaaS」
機能をガバメントクラウド上で提供し、
「書かないワンストップ窓口」の導入に係
る住民の利便性向上や自治体の負担軽減を図る。あわせて、地方公共団体の取組
(BPR を含む。)に対する人的・財政的支援の充実を図ることで、
「書かないワンス
トップ窓口」を含めた「書かない」
「待たない」
「迷わない」
「行かない」窓口を目
的とする「フロント」改革を加速し、
「バックヤード」改革や推進体制づくりを含
む優良事例の横展開を促進する。
今後、
多くの地方公共団体において、
少子高齢化・人口減少が進み、
行政資源が益々
制約されていく一方、住民の生活スタイルやニーズが多様化している中においては、
行政手続のオンライン化だけでなく、
「書かないワンストップ窓口」
など、
住民と行政
との接点(フロントヤード)の改革を進めていく必要がある。これにより、住民サー
ビスの利便性向上と業務の効率化を進め、
企画立案や相談対応への人的資源のシフト
を促し、持続可能な行政サービスの提供体制を確保していくことが重要である。
フロントヤード改革については、現在、地方公共団体の創意工夫のもと、デジタル
田園都市国家構想交付金等も活用しつつ、様々な取組が行われているものの、個別の
取組に留まっていることや自治体間で取組の進捗に差が生じていることなどの課題
がある。
多様な住民ニーズに対応するためには、
デジタル手続法6
の基本原則
(1デジタルフ6情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成十四年法律第百五十一号) 19ァースト、2ワンスオンリー、3コネクテッド・ワンストップ)7
に則って、デジタル
ツール等を有効に活用し、
対面・非対面の対応を適切に組み合わせ、
庁舎はもとより、
自宅に加え、支所や公民館、郵便局といった住民に身近な場所でも対応可能とするな
ど、住民との接点の多様化・充実化(オムニチャネル化)を図る必要がある。また、
対面で手続等を行う場合であっても、紙ではなく、データによる対応を前提とするこ
とで、住民の利便性向上を図るとともに、業務効率化による業務改善に繋げることが
求められる。これらの改革を通じて、庁舎空間が単なる手続の場から様々な主体が集
う地域課題の解決の場として活用されていくことも期待される。
【取組方針】71デジタルファースト:個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する/2ワンスオン
リー:一度提出した情報は、二度提出することを不要とする/3コネクテッド・ワンストッ
プ:民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現する
地方公共団体の創意工夫のもと行われている窓口改革の様々な取組
(出典)第 33 次地方制度調査会 第 13 回専門小委員会(2023 年(令和5年)4月 11 日)
資料2(審議項目2関係資料)抜粋 201 住民との接点の多様化・充実化
1 行政手続のオンライン化については、2022 年度(令和4年度)には、マイナポ
ータルを通じ、全ての市区町村でオンラインによる転出届の提出を転出元市区町
村に、来庁予定の連絡を転入予定市区町村にできるようになった。 また、本計画
【第 2.0 版】において、積極的・集中的にマイナポータルを活用したオンライン
化を進めることとしていた特に国民の利便性向上に資する手続
(31 手続)
のうち、
子育て・介護関係手続(26 手続)については、2022 年度(令和4年度)末時点で
1,133 団体(全 1,741 団体の 65.1%)においてマイナポータルからマイナンバー
カードを用いたオンライン手続が可能となっている。
2023 年度(令和5年度)は、2022 年度(令和4年度)に引き続き「地方公共団
体が優先的にオンライン化を推進すべき手続」のうち、処理件数の多い手続を中
心に、関係府省庁と連携しながらオンライン・デジタル化を推進する。
(対象手続一覧)
「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(2023 年(令和5年)6月9日閣議決定)に
おける「地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき手続」
a)処理件数が多く、オンライン化の推進による住民等の利便性の向上や業務の効率化
効果が高いと考えられる手続
1) 図書館の図書貸出予約等
2) 文化・スポーツ施設等の利用予約
3) 研修・講習・各種イベント等の申込
4) 地方税申告手続(eLTAX)
5) 自動車税環境性能割の申告納付
6) 自動車税の賦課徴収に関する事項の申告又は報告
7) 自動車税住所変更届
8) 水道使用開始届等
9) 港湾関係手続
10)道路占用許可申請等
11)道路使用許可の申請
12)自動車の保管場所証明の申請
13)駐車の許可の申請
14)建築確認 2115)粗大ごみ収集の申込
16)産業廃棄物の処理、運搬の実績報告
17)犬の登録申請、死亡届
18)感染症調査報告
19)職員採用試験申込
20)入札参加資格審査申請等
21)入札
22)衆議院・参議院選挙の不在者投票用紙等の請求
23)消防法令における申請・届出等
b)住民のライフイベントに際し、多数存在する手続をワンストップで行うために必要
と考えられる手続
ア.子育て関係
1) 児童手当等の受給資格及び児童手当の額についての認定請求
2) 児童手当等の額の改定の請求及び届出
3) 氏名変更/住所変更等の届出
4) 受給事由消滅の届出
5) 未支払の児童手当等の請求
6) 児童手当等に係る寄附の申出
7) 児童手当に係る寄附変更等の申出
8) 受給資格者の申出による学校給食費等の徴収等の申出
9) 受給資格者の申出による学校給食費等の徴収等の変更等の申出
10)児童手当等の現況届
11)支給認定の申請
12)保育施設等の利用申込
13)保育施設等の現況届
14)児童扶養手当の現況届の事前送信
15)妊娠の届出
イ.介護関係
1) 要介護・要支援認定の申請
2) 要介護・要支援更新認定の申請
3) 要介護・要支援状態区分変更認定の申請
4) 居宅(介護予防)サービス計画作成(変更)依頼の届出
5) 介護保険負担割合証の再交付申請 226) 被保険者証の再交付申請
7) 高額介護(予防)サービス費の支給申請
8) 介護保険負担限度額認定申請
9) 居宅介護(介護予防)福祉用具購入費の支給申請
10)居宅介護(介護予防)住宅改修費の支給申請
11)住所移転後の要介護・要支援認定申請
ウ.被災者支援関係
1) 罹(り)災証明書の発行申請
2) 応急仮設住宅の入居申請
3) 応急修理の実施申請
4) 障害物除去の実施申請
5) 災害弔慰金の支給申請
6) 災害障害見舞金の支給申請
7) 災害援護資金の貸付申請
8) 被災者生活再建支援金の支給申請
エ.転出・転入手続関係
1) 転出届
2) 転入予定市区町村への来庁予定の連絡
2 多様な住民ニーズに応えられるよう、マイナンバーカードの基盤も活用し、行
政手続のオンライン化に加え、自宅でのオンライン来庁予約、近場の郵便局・公
民館での申請サポートやリモート相談、来庁時の総合案内やセルフ端末、書かな
いワンストップ窓口の手続、個別ブースでの丁寧な相談など、対面・非対面の対
応を適切に組み合わせ、住民との接点をトータルで捉えて、多様化・オムニチャ
ネル化を実現する(その際、複数のデジタルツールを前提としたフロントヤード
業務全体の改革(BPR)を実施することが求められる。)。
2 データ対応の徹底
3 基幹業務システムの標準化と併せて、フロントヤードの手続を直接「データ」
で対応し、その徹底を図ることで、内部事務(バックヤード)の効率化・集約化
(入力業務の削減等の効率化や審査業務の集約化等)を進める。
4 システムの申請処理に係るデータ(処理件数・処理時間・待ち時間等)を把握
した上で、処理工程の見える化等により業務上の課題を分析し、対策を図ること 23で、データに基づく業務改善(データドリブンな行政経営)につなげる。
3 改革による人的・空間的リソースの最適配置
5 業務改善により生まれた人的リソースを最適に配置し直すことで、政策の企画
立案等の充実を図るほか、窓口業務でも、より手を差し伸べるべき方への相談業
務等きめ細やかな業務にシフトしていく。
6 これらの改革に応じた窓口空間の再整理(記載台や手続専用カウンター等の削
減)を行うことは、住民スペースの拡大にも繋がる可能性があり、庁舎空間が単
なる手続の場だけでなく、様々な主体が集って相談・交流する、地域課題の解決
の場としても活用可能となる。
【国の主な支援策等】
1 総合的なフロントヤード改革の事例創出と横展開のための支援
1 住民と行政との接点である自治体フロントヤードについて、各団体の取組状況
を調査し、先行・優良事例を周知することなどにより、個別の取組の導入にとど
まらない総合的な改革の必要性を示して理解を広め、普及啓発を図る。
そのような改革を目指す自治体に必要な人的・財政的支援を行い、総合的な改
革のモデルとなる事例を創出するとともに、横展開を促進するための調査・研究
を行う。
【総務省】
2 人的支援
1 窓口 BPR アドバイザー派遣事業【デジタル庁】
窓口 DX を推進する地方公共団体に対して、デジタル庁が委嘱した窓口 DX に深
い知識と経験のある地方公共団体職員等による支援を行い、地方公共団体の窓口
BPR の「自走」を目的とした、
「きっかけづくり」のためのノウハウを提供する。
2 窓口 BPR アドバイザー育成事業【デジタル庁】
窓口 BPR に係る取組の中核を担う地方公共団体職員を育成し、窓口 DX に係る
地方公共団体間の共創の輪を拡大することで、地方公共団体の窓口 DX を促進す
る。
3 [再掲]地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業(地方公共団体の DX
関係)
【総務省】
「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」において、地方公共団体
の DX に係るアドバイザーの派遣を行い、
地方公共団体の DX 推進に係る財政運営・ 24
経営の質の向上を図る。
4 [再掲]地域情報化アドバイザー派遣制度【総務省】
情報通信技術(ICT)を地域の課題解決に活用する取組に対して、自治体等から
の求めに応じて、ICT の知見、ノウハウを有する専門家(
「地域情報化アドバイザ
ー」
)を派遣し、助言・提言・情報提供等を行うことにより、地域における ICT 利
活用を促進し、活力と魅力ある地域づくりに寄与するとともに、地域の中核を担
える人材の育成を図る。
3 財政的支援
1 デジタル田園都市国家構想交付金【内閣府】
申請書作成支援システムや証明書自動交付機、各種証明書発行(住民票等)の
オンライン申請などの導入といったフロントヤード改革に資する個別の取組も推
進する。
4 環境支援
1 自治体窓口 DXSaaS【デジタル庁】
デジタル庁が整備するガバメントクラウド上に、デジタル庁が選定した複数の
事業者が「窓口 DX に資するパッケージ」機能(SaaS)を構築し、その機能を地方
公共団体が選択して利用することで、地方公共団体が窓口 DX「書かないワンスト
ップ窓口」に取り組みやすくなる環境の提供を行う。
(2)自治体の情報システムの標準化・共通化
だいやまーく「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(2023 年(令和5年)6月9日閣議
決定)抜粋
第3 デジタル社会の実現に向けた戦略・施策
第3-2 各分野における基本的な施策
5.デジタル社会を支えるシステム・技術
(2) 地方の情報システムの刷新
地方公共団体の職員が真に住民サービスを必要とする住民に手を差し伸
べることができるようにする等の住民サービスの向上を目指すとともに、業務全体に係るコストを抑え、
他ベンダーへの移行をいつでも可能とすること
により競争環境を適切に確保する等の行政の効率化を目指し、業務改革
(BPR)の徹底を前提にして、地方公共団体情報システムの標準化に関する
法律 104 (以下「標準化法」という。
)第6条第1項及び第7条第1項に規定
する標準化基準(以下「標準化基準」という。
)への適合とガバメントクラ 25ウドの活用を図る、地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化 105
を、地方公共団体と対話を行いながら進める。
具体的には、
地方公共団体又は民間事業者が基幹業務等のアプリケーショ
ン 106 をガバメントクラウド上に構築し、地方公共団体がそれらの中から最
適なアプリケーションを利用することが可能となるような環境の整備を図
る。
その結果、
地方公共団体が基幹業務等のアプリケーションをオンラインで
利用することにより、従来のようにサーバ等のハードウェアや OS・ミドル
ウェア・アプリケーション等のソフトウェアを自ら整備・管理することが不
要となる環境の実現を目指す。
また、ガバメントクラウドが提供する共通的な基盤や機能を活用しなが
ら、
アプリケーションレベルにおいては複数の民間事業者による競争環境を
確保して、ベンダーロックインによる弊害を回避するとともに、スタートア
ップや地方のベンダーも含め、各ベンダーにおいては、自らクラウド基盤を
整備することなく自社開発したアプリケーションを全国展開する可能性が
広がることとなる。
さらに、標準準拠システムは、データ要件・連携要件に関する標準化基準
に適合することにより、
当該データの公共サービスメッシュへの連携を迅速
かつ円滑に行える拡張性を有することとなるとともに、地方公共団体は、独
自施策等を講ずるため、
当該地方公共団体が保有する標準準拠システムで利
用する標準化されたデータを、
必要なサービスを提供するためのシステムに
利用することができる。
基幹業務システムを利用する原則全ての地方公共団体が、
目標時期である
2025 年度
(令和7年度)
までに、
ガバメントクラウド上に構築された標準準
拠システムへ円滑かつ安全に移行できるよう、その環境を整備することと
し、その取組に当たっては、地方公共団体の意見を丁寧に聴きながら、必要
な支援を積極的に実施する。
地方公共団体情報システムの統一・標準化の取組について、
デジタル庁は
情報システム整備方針との整合性の確保の観点から、
総務省は地方公共団体
との連絡調整の観点から、
標準化対象事務を所管する省庁とともに、
標準化
法第5条第1項に基づき、2022 年(令和4年)10 月に地方公共団体情報シ
ステム標準化基本方針を定めたところであり、
移行期間、
運用経費等の削減
目標、
地方公共団体の基幹業務システム等が活用するガバメントクラウドの
利用料に係る地方公共団体の負担の在り方その他の統一・標準化の取組の推
進に関する基本的な事項については、
今後、
地方公共団体情報システム標準
化基本方針において定めることとする。
また、デジタル庁及び制度所管省庁は、2023 年(令和5年)3月までに、
標準化法第6条第1項に定める機能標準化基準の内容となる標準仕様書を
作成及び改定するとともに、
標準化法第7条第1項に定める共通標準化基準
の内容となるデータ要件・連携要件及び共通機能に係る標準仕様書を作成及 26び改定するなど、
地方公共団体情報システムの統一・標準化に向けて必要と
なる環境の整備を進めてきたところであり、2023 年度(令和5年度)以降、
国は、
地方公共団体における標準準拠システムへの円滑かつ安全な移行に向
けて、必要な支援を積極的に行う。
標準化対象事務に関する情報システムの運用経費等については、
標準準拠
システムへの移行完了後に、2018 年度(平成 30 年度)比で少なくとも3割
の削減を目指すこととし、
国は、
デジタル3原則に基づく BPR を含めた業務
全体の運用費用の適正化のため、当該目標の実現に向けた環境を整備する。
地方公共団体の基幹業務システム等は、
ガバメントクラウドを活用するこ
とにより、
例えば環境の自動設定機能を利用してインフラの構築期間の短縮
や運用の効率化を行うことや、
各種マネージドサービスを利用してアプリケ
ーションのメンテナンス費用を抑えることや、
機能の迅速な拡張や改変が可
能となる。
地方公共団体においてガバメントクラウドを円滑に活用できるようにす
るため、デジタル庁は、2023 年(令和5年)3月までに、ガバメントクラウ
ド上に構築することができるシステムやガバメントクラウドの利用方法、責任分界の考え方等について定める地方公共団体情報システムのガバメント
クラウドの利用に関する基準を策定するとともに、
ガバメントクラウドの利
用に当たって必要となる文書等を整理したところであり、2023 年度(令和
5年度)においては、早期にガバメントクラウドに移行し、国が行う検証等
の取組に積極的に参加する地方公共団体について支援し、
より効果的かつ効
率的なガバメントクラウドへの移行の実現を図る。
また、
地方公共団体の基幹業務システムを取り扱う事業者が、
ガバメント
クラウドを活用して、
よりクラウドネイティブなアプリケーションの構築や
運用を行い、
安価で高い性能を出すためには技術習得が必要な場合があるこ
とから、
デジタル庁は、
学ぶ意欲のある国内事業者に対しガバメントクラウ
ドの環境の適切かつ効果的な利用のための情報提供等を行うとともに、
事業
者の協調領域として標準準拠システムの共通部品について早期の情報提供
に努め、2023 年度(令和5年度)中を目処に提示する。
地方公共団体情報システム標準化基本方針の推進
基本方針において、2023 年(令和5年)4月から「移行支援期間」と位
置付けられたことを踏まえ、
ガバメントクラウドを活用した標準準拠シス
テムへの移行に向けた支援として、デジタル庁及び総務省は、都道府県と
連携し、
地方公共団体における標準準拠システムへの移行に向けた取組の
進捗状況や課題等を継続的に把握する。
また、全ての地方公共団体におい
て、遅くとも 2024 年(令和6年)3月までに標準準拠システムへの移行
を担うベンダーが選定されるようにするなど、
移行作業のできる限りの前
倒しにより、移行時期の分散がされるよう、必要な支援を実施する(移行 27支援に関する具体的な施策について、後述の
「標準準拠システムへの移行
支援に関する具体的な施策」を参照。)。
標準化基準における共通事項の策定等
標準化基準における共通事項(データ要件・連携要件の標準、非機能要
件の標準、地方公共団体によるガバメントクラウドの利用に関する基準、
共通機能の標準など)について、デジタル庁及び総務省において、制度所
管省庁における制度改正等による標準仕様書の改定との整合性を図るな
ど、業務横断的な観点から適切に運用を行う。
制度所管府省庁による標準化基準の策定等
標準化基準のうち、2の共通事項を除いたもの(機能要件等)について
は、地方公共団体情報システム標準化基本方針に基づき、
制度所管省庁に
おいて、
制度改正等に伴う政策上必要な標準仕様書の改定について、デー
タ要件
・連携要件の内容との整合性の確保を図った上で改定するなど適切
に運用を行う。
統一・標準化を進めるための支援
ア 財政支援
目標時期である 2025 年度(令和7年度)までにガバメントクラウド
上で基準に適合した情報システムを利用する形態に移行することを目
指すため、デジタル庁は、2020 年度(令和2年度)第3次補正予算によ
り地方公共団体情報システム機構(J-LIS)に造成された基金の執行に
ついて、情報システム整備方針に基づき、総務省を通じて適切に統括・
監理を行う。
×ばつ政府機
関職員デジタル改革共創プラットフォーム」
を活用し地方公共団体と対
話を行う。
加えて、デジタル庁及び総務省は、都道府県と連携して、複数市区町
村での兼務を含め、
デジタル人材の CIO 補佐官等としての任用等が推進
されるように支援する。また、地方公共団体職員との対話や研修、人事
交流等を通じて地方公共団体のデジタル人材育成に寄与する。あわせ
て、総務省は、民間企業と連携した伴走支援等により、都道府県等にお
ける市区町村支援のためのデジタル人材の確保を推進するほか、
地方公
共団体において職員に求められるスキルの明確化等を通じて、
デジタル
化の取組の中核を担う職員の集中的な育成を支援する。さらに、各地方
公共団体におけるデジタル人材の確保・育成に係る取組事例の横展開に 28取り組む。
104 令和3年法律第 40 号
105 「統一」とは、地方公共団体の情報システムに必要とされる機能等
のうち、
共通的に利用できるものを地方公共団体が利用することを
指す。例えば、地方公共団体がシステムを共通のクラウド基盤に構
築することにより、共通のハードウェアや OS などを利用すること
等を指す。
「標準化」
とは、
地方公共団体が各団体で共通した事務を
行っている場合に、
機能等について統一的な基準に適合したシステ
ムを利用すること等を指す。
106 複数のアプリケーション開発事業者が標準化基準に適合して開発した
基幹業務のアプリケーション及び基幹業務と付属又は密接に関連する
業務のアプリケーションをいう。
自治体の基幹業務システムは、これまで、自治体が独自に発展させてきた結果と
して、次のような課題を抱えている。
(1) 維持管理や制度改正時の改修等において自治体は個別対応を余儀なくされ
負担が大きいこと
(2) 情報システムの差異の調整が負担となり、クラウド利用が円滑に進まない
こと
(3) 住民サービスを向上させる最適な取組を迅速に全国へ普及させることが難
しいこと
このような自治体の基幹業務システムの状況を踏まえ、自治体に対し、標準化基
準(地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第 40 号。以
下「標準化法」という。
)第6条第1項及び第7条第1項に規定する標準化基準を
いう。以下同じ。
)に適合する基幹業務システム(以下「標準準拠システム」とい
う。
)の利用を義務づけ、標準準拠システムについてガバメントクラウド(デジタ
ル社会形成基本法第 29 条に規定する「全ての地方公共団体が官民データ活用推進
基本法第2条第4項に規定するクラウド・コンピューティング・サービス関連技術
に係るサービスを利用することができるようにするための国による環境の整備」としてデジタル庁が整備するものをいう。以下同じ。
)を利用することを努力義務と
すること等を規定する標準化法が 2021 年(令和3年)5月に成立し、標準化法に
基づき、自治体情報システムの標準化・共通化を推進することとしている。
また、2022 年(令和4年)1月には、標準化法第2条第1項の規定に基づき、標
準化対象事務として基幹系 20 業務(児童手当、子ども・子育て支援、住民基本台
帳、戸籍の附票、印鑑登録、選挙人名簿管理、固定資産税、個人住民税、法人住民 29税、軽自動車税、戸籍、就学、健康管理、児童扶養手当、生活保護、障害者福祉、
介護保険、国民健康保険、後期高齢者医療、国民年金)を政令で定めた。
さらに、
2022 年
(令和4年)
10 月には、
標準化法第5条第1項の規定に基づき、
地方公共団体情報システム標準化基本方針を策定し、
その後、
2023 年
(令和5年)
9月に所要の改定を行っている。
【取組方針】
自治体は、標準化法に基づく基本方針の下、基幹系 20 業務システムについて、
標準準拠システムに移行する必要がある。
【国の主な支援策等】
1 自治体の標準準拠システムへの移行に要する経費に対して、2020 年度(令
和2年度)第3次補正予算により地方公共団体情報システム機構(J-LIS)に
造成したデジタル基盤改革支援基金を活用し、
補助率 10/10 により、
国が必要
な財政支援を行う。
【総務省】
【2020 年度(令和2年度)第3次補正予算 国費 10/10 1,508.6 億円 基金(2025 年
度(令和7年度)まで)】【2021 年度(令和3年度)補正予算 国費 10/10 316.8 億円 基金(2025 年度(令和
7年度)まで)】2 地方公共団体への意見聴取・情報提供等【総務省・デジタル庁・制度所管省
庁】
i)デジタル庁は、デジタル改革共創プラットフォームを活用し地方公共団体
と対話を行う。
ii)制度所管省庁は、各制度所管省庁で策定した機能標準化基準の作成、変更
及び解釈に関する問合せ窓口を、デジタル庁は、共通標準化基準の作成、変
更及び解釈に関する問合せ窓口を、それぞれ設けることにより、地方公共団
体及び地方公共団体の基幹業務システムの標準化に取り組む事業者に対し、
標準化基準の作成、変更及び解釈に関する情報提供を行う。
iii)デジタル庁及び制度所管省庁は、議論の過程の透明化やウェブサイト等へ
の公表、目標・取組・スケジュール等の段取りに係る地方公共団体への情報
提供、地方公共団体への丁寧な意見聴取、地方3団体等と連携した計画的な
移行推進等を行う。
3 地方公共団体の進捗管理等【総務省・デジタル庁・制度所管省庁】 30i)総務省は、2023 年(令和5年)9月に行った「自治体情報システムの標準
化・共通化に係る手順書」
(以下「手順書」という。
)改定内容について周知
を図り、各地方公共団体が手順書を踏まえて、標準準拠システムへの円滑か
つ安全な移行が行えるよう、デジタル庁及び制度所管省庁並びに都道府県と
も連携して地方公共団体の進捗管理等の支援を行う。
ii)総務省は、地方公共団体からの進捗状況等の報告、標準準拠システムへの
移行に向けた課題や質問の問合せ機能等を有する地方公共団体の進捗管理等
支援ツールを構築し、
デジタル庁及び制度所管都道府県と連携して運用する。
iii)デジタル庁においては、地方公共団体の進捗確認や課題把握のため、各都
道府県からの派遣職員等による支援体制として
「標準化リエゾン」
を設置し、
総務省及び都道府県と連携して地方公共団体の支援を行う。
4 デジタル人材に関する支援【総務省・デジタル庁】
i)デジタル庁及び総務省は、都道府県と連携して、複数市区町村での兼務を
含め、デジタル人材の CIO 補佐官等としての任用等が推進されるように支援
する。また、地方公共団体職員との対話や研修、人事交流等を通じて地方公
共団体のデジタル人材育成に寄与する。
ii)総務省は、標準準拠システムへの移行に課題を抱える地方公共団体におい
て、外部専門家による技術的・専門的な助言を受けることが可能となるよう
支援する。
5 アプリケーションのデータ要件・連携要件への適合は、ワンスオンリーの推
進やベンダーロックインの排除の観点から、十分に担保される必要がある。こ
のため、デジタル庁は、アプリケーションのデータ要件・連携要件への適合性
を地方公共団体が容易に確認するためのツールを作成し、
ツールを使った適合
確認試験開始を目指す。
【デジタル庁】
6 ガバメントクラウドへの移行等に係る検証【デジタル庁・総務省】
i)デジタル庁は、ガバメントクラウド上に構築された標準準拠システムを地
方公共団体が安心して利用できるようにするため、ガバメントクラウドへの
移行に係る課題の検証を行う先行事業を 2021 年度(令和3年度)から 2023
年度(令和5年度)にかけて実施する。
ii)ガバメントクラウドと地方公共団体の庁内システムとの接続方法の選択肢
の1つとして検討が行われてきた LGWAN については、地方公共団体の庁内シ
ステムからガバメントクラウドへの当面の接続回線として利用可能となるよ
う更改を行い、総務省は更改に当たって必要な支援を行う。 31iii)デジタル庁は、クラウドロックインとならないための対策やマルチクラウ
ド・マルチベンダーの相互接続・運用を円滑に行う方策等についても検討を
行う。
【主な取組スケジュール】
図表1 自治体の情報システムの標準化・共通化のスケジュール
(3)公金収納における eLTAX の活用
だいやまーく「規制改革実施計画」
(2023 年(令和5年)6月 16 日閣議決定)抜粋
<共通課題対策分野>
(1) 行政手続に関する見直し
ii その他手続き
9 地 方 公 共
団 体 へ の
公 金 納 付
等 の デ ジ
タル化
a デジタル庁及び総務省は、地方公共団
体が公金納付にeLTAXを活用することがで
きるようにするため、
民間事業者や地方公
共団体等からの意見を踏まえつつ、
令和6
年通常国会において、
所要の立法措置を講
ずることを目指すとともに、
システム改修
を進め、関係者への必要な周知も行いつ
つ、
遅くとも令和8年9月までに eLTAX を
活用した公金収納を開始する。
b デジタル庁及び総務省は、民間事業者
からの各種公金の取扱いに関する意見や
地方公共団体等からの業務の効率化・合理
化に係る意見等を踏まえ、公金の性質上、
全国的に共通の取扱いとする必要がある
ものについて、
公金納付者がいずれの地方
公共団体に対してもeLTAXを活用して納付
a:所要の法
令 上 の 措 置
に つ い て は
令 和 6 年 通
常 国 会 へ の
提 出 を 目 指
す、遅くとも
令 和 8 年 9
月 ま で に
eLTAX を活用
し た 公 金 収
納を開始
b:速やかに
検 討 を 開 始
し、令和5年
中 に 一 定 のa,b:デジタル庁総務省
c,d :
(略)
都道府県と連携した移行支援の実施
データ要件・連携要件の適合確認ツール作成・提供ガバメントクラウドへの移行等に係る検証
ガバメントクラウドにおける共同利用方式等の検証
ガバメントクラウド利用に関する受付等システム環
境整備
ガバメントクラウド利用地方公共団体 順次拡大
標準準拠システムへの移行4Q2022年度
(令和4年度)
2023年度
(令和5年度)
2024年度
(令和6年度)
2025年度
(令和7年度)
取組内容
取組名
2026年度
(令和8年度)
1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q
1Q 2Q 3Q
4統一・標準化を進めるための支援
(2)地方の情報システムの刷新
1地方公共団体情報システム標準化基本
方針の推進 32を行い関係者の業務効率化を図ることが
できるようにするため、
その公金収納の開
始時期等の検討を速やかに行い、
一定の結
論を得る。
c・d (略)
結論を得るc,d:(略)
【取組方針】
1 「規制改革実施計画」
(2023 年
(令和5年)
6月 16 日閣議決定)
等に基づき、
デジタル庁及び総務省並びに地方公共団体が収入する公金に係る制度を所管
する関係府省庁(以下「関係府省庁」という。
)は、地方公共団体における公金
収納の事務の効率化・合理化や、住民・民間事業者による公金納付の利便性を
向上させる観点から、地方公共団体のほか、住民・民間事業者等のユーザーと
なる関係者の意見を聞きながら、所要の取組を推進していく。
2 地方公共団体(都道府県・市区町村をいう。以下同じ。
)の普通会計に属する
全ての公金並びに公営事業会計に属する公金のうち水道料金及び下水道使用
料について、地方公共団体の判断により eLTAX(地方税共同機構が運用してい
る地方税ポータルシステム)を活用した納付を行うことができるよう、所要の
立法措置を講ずるなど、必要な取組を行う。
eLTAX を活用した公金納付については、住民・事業者の公金の納付の煩雑さ
を生じさせないため、
「地方税統一 QR コード」を使用する方法等、地方税と同
様の方法に統一することを基本とする。
3 特に、以下の公金については、全国的に共通の取扱いとして eLTAX を活用し
た納付を行うことができるよう、納付者がどの地方公共団体に対しても eLTAX
を活用した納付を行うことができるようにする。
・いずれの市区町村においても相当量の取扱件数がある国民健康保険料、介護
保険料及び後期高齢者医療保険料(これらの公金に係る事務は、標準化法に
基づく標準化対象事務であることから、標準仕様書に eLTAX を活用して各公
金の収納を行うことができることを機能要件として規定する。)・その性質上、当該地方公共団体の区域外にも納付者が広く所在する公金であ
る公物の占有に伴う使用料等の公金(道路占用料、行政財産目的外使用許可
使用料、港湾法上の占用料等、河川法上の流水占用料等など)
4 また、デジタル庁、総務省及び関係府省庁は、上記以外の公金8
についても、8規制改革推進に関する中間答申(2023 年(令和5年)12 月 26 日規制改革推進会議)におい 33地方公共団体において eLTAX を活用した納付が積極的に行われるよう、
所要の
取組を推進していく。
5 2024 年(令和6年)通常国会において、所要の立法措置を講ずることを目指
す。その上で、eLTAX や地方公共団体の公金システムの改修等を進め、標準準
拠システムへの移行の目標時期が 2025 年度(令和7年度)末までとされてい
ることにも留意し、遅くとも 2026 年(令和8年)9月までに eLTAX を活用し
た公金収納を開始することを目指す。
【国の主な支援策等】
1 地方公共団体において、システム改修等の準備を確実に進めていただける
よう、
全国説明会や進捗状況調査を通じて説明や意見聴取を行うとともに、地方公共団体における検討状況や課題について把握し、eLTAX の公開仕様書(見
積もり参考資料)や Q&A の提供など、地方公共団体に必要な情報の提供・助言
を行う【総務省、デジタル庁、関係府省庁】。2 このほか、地方税共同機構における eLTAX のシステム改修や公金収納を行
うための体制整備等の公金収納の実施に向けた準備や、地方公共団体による
公金納付への eLTAX の活用を促進するための環境整備等の所要の取組に係る
検討を行う【総務省、デジタル庁、関係府省庁】。【主な取組スケジュール】
(2023 年度(令和5年度))1 各地方公共団体においては、eLTAX を活用した公金収納の取組を円滑に開始
することができるよう、まずは、本取組をとりまとめる担当課9
を決定するとと
もに、eLTAX を活用した納付を可能とする公金の種類の検討や、公金の収納管
て、
「全国共通の取扱いとするべきとの要請がある土地賃貸料、放置違反金、保育所利用料、認
定こども園利用料、幼稚園利用料、高校授業料、学校給食費及び住宅使用料について、納付書の
取扱いがない又はその件数が極めて少ないなど、費用対効果が不十分であると地方公共団体が判
断した場合を除き、公金納付者の判断によりいずれの地方公共団体に対しても eLTAX を活用し
た納付が可能となるよう必要な措置を講ずる。
」とされていることに留意が必要である。9総務省が 2023 年(令和5年)12 月に実施した「地方公共団体の公金収納のデジタル化
(eLTAX の活用)の取組に関する進捗状況調査」によれば、本取組をとりまとめる担当課を決
定している団体においては、当該担当課として、都道府県、指定都市では、すべての団体が会計
担当課としており、市区町村では、会計担当課(約 45%)のほか、総務担当課(約 15%)や税
務担当課(約 15%)としている団体もある(総務担当課や税務担当課において会計事務を担っ
ている場合を含む。)。 34理を行っているシステム構成の把握及び改修内容の検討などの取組を進める。
(2024 年度(令和6年度))2 eLTAX の公開仕様書(見積もり参考資料)の内容や、標準仕様書の改定を踏
まえ、各公金の収納管理を行っているシステムを提供する事業者(ベンダー)
と仕様の調整を行った上で、事業者(ベンダー)から見積もりを取得し、シス
テム改修に必要な予算要求を行う。
(2025 年度(令和7年度)以降)
3 各公金の収納管理を行っているシステムについて、eLTAX を活用した収納を
行うことができるよう、必要な改修を行う。
(4)マイナンバーカードの普及促進・利用の推進
だいやまーく「経済財政運営と改革の基本方針 2023」
(2023 年(令和5年)6月 16 日閣議
決定)抜粋
第2章 新しい資本主義の加速
2.投資の拡大と経済社会改革の実行
(2)グリーントランスフォーメーション(GX)
、デジタルトランスフォーメーション
(DX)等の加速
(略)
デジタル社会のパスポートとしてのマイナンバーカードについて、政府が一丸
となって制度の安全と信頼の確保に努めるとともに、ほぼ全国民に行きわたりつ
つある状況を踏まえ 40、今後は官民様々な領域での利活用シーンの拡大など、マ
イナンバーカードの利便性・機能向上、円滑に取得できる環境整備に取り組む。
(中略)
また、総務省は、推進計画 42 に基づき、デジタル人材の確保・育成やデジタル
技術の活用、住民との接点(
「フロント」
)の改革 43 など、行財政の効率化等につ
ながるデジタル化の取組 44 を推進する。
40 2023 年6月 11 日時点の累計の申請件数の人口に対する割合が 77.2%。
42 「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第 2.0 版】」(令和4年9月2日総務省策定)。43 オンライン申請の推進・強化や多様な窓口の実現など。
44 自治体マイナポイントの効果的な活用を含む。
だいやまーく「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(2023 年(令和5年)6月9日閣議
決定)抜粋 35第3 デジタル社会の実現に向けた戦略・施策
第3-2 各分野における基本的な施策
1.国民に対する行政サービスのデジタル化
(3)マイナンバーカードの普及及び利用の推進
マイナンバーカードは、対面・非対面問わず確実・安全な本人確認・本人認証が
できる「デジタル社会のパスポート」である。2024 年(令和6年)秋の健康保険証
廃止を見据え、マイナンバーカードへの理解を促進し、希望する全ての国民が取得
できるよう、円滑にカードを取得していただくための申請環境及び交付体制の整備
を更に促進する。また、その利活用の推進に向け、
「オンライン市役所サービス」の
徹底と、生活の様々な局面で利用される「市民カード化」を推進する。また、マイ
ナポータルの継続的改善・利用シーン拡大等を通じ、その利便性向上を図るととも
に、マイナンバーカードが持つ本人確認機能の民間ビジネスにおける利用の普及に
取り組む。
だいやまーく「デジタル田園都市国家構想総合戦略」
(2022 年(令和4年)12 月 23 日閣議
決定)抜粋
第2章 デジタル田園都市国家構想の実現に必要な施策の方向
1.取組方針
(2)デジタル基盤整備
2マイナンバーカードの普及促進・利活用拡大
【マイナンバーカードの普及促進】
マイナンバーカードの取得の徹底、
カードの手続・様式の見直しの検討等を進めた
上で、2024 年度秋に、現在の健康保険証の廃止を目指す。さらに、2024 年度末と
している運転免許証とマイナンバーカードの一体化について、システムに障害が起
こらないようにするための品質の確保やデータ移行にどの程度の期間が必要となる
かを勘案しつつ、更に少し前倒しできないか検討を進める。
だいやまーく「マイナンバー制度及びマイナンバーカードに関する政策パッケージ」
(2023 年
(令和5年)8月8日総点検本部会議資料)抜粋
4.国民の信頼回復に向けた対応
(2)マイナンバーカード取得の円滑化
マイナンバーカードの取得の円滑化に向け、それぞれの国民の方のニーズに対応し 36た、カード取得に向けた環境整備を進める。
第一に、
マイナンバーカードについては、
紛失時等の再発行に時間がかかることが、
その利便性を妨げる要因となっている。このため、新生児、紛失等による再交付、海
外からの転入者など、速やかにカードを取得する必要がある場合を対象に、申請から
1週間以内(最短5日)で交付できる特急発行・交付の仕組みの構築等に取り組む 。
第二に、 福祉施設・支援団体においては、施設に入っていらっしゃる方や支援を必
要とする方々のマイナンバーカードの取得や管理について、悩みや不安が多いのが実
態である。このため、福祉施設・支援団体の方々の声を踏まえ、本年8月に「福祉施
設・支援団体の方向けマイナンバーカード取得・管理マニュアル」を策定した。今後、
同マニュアルの内容の普及を図ることにより、福祉施設・支援団体におけるマイナン
バーカードの取得・管理を広げていくとともに、介護・障害福祉施設等での出張申請
受付や希望する者の個人宅等を訪問する形での出張申請受付を推進するなど、こうし
た方々のマイナンバーカードの取得の円滑化に努めていく。
第三に、
認知症などで暗証番号の設定に不安がある方が安心してカードを利用でき、
代理交付の負担軽減にもつながるよう、暗証番号の設定が不要なカードの交付を可能
とする。本カードの取扱については、関係者の方々のご意見も踏まえつつ、その詳細
を検討した上で、本年11月頃に交付開始することを目指す。
第四に、先の通常国会における法改正を踏まえ、住民が最寄りの郵便局でカード申
請・交付の手続をできるよう郵便局窓口を活用した申請受付の実施を進進する。具体
的には、自治体が早期にサービスを開始できるよう、標準的な業務フローの周知等、
引き続き、制度活用に向けたサポート等を実施する。
【取組方針】
マイナンバーカードは、対面でもオンラインでも確実・安全に本人確認・本人認証
ができ、デジタル社会の基盤となるものである。現在でも、本人確認書類としての利
用はもとより、健康保険証利用やオンラインでの確定申告、各種証明書のコンビニ交
付サービスなど様々な場面で利活用がなされるなど住民の利便性の向上につながっ
ているほか、
このような利活用が進むことで各種窓口事務の効率化にも寄与している
ところである。今後も、マイナンバーカードと各種カードとの一体化や、行政手続の
オンライン・デジタル化など利活用シーンは拡大することが見込まれている。
これを踏まえ、マイナンバーカードの取得の円滑化に向け、それぞれの国民の方の
ニーズに対応した、カード取得に向けた環境整備を進めるため、以下の内容に取り組
む。 37・ 新生児、紛失等による再交付、海外からの転入者など、速やかにカードを取得
する必要がある場合を対象に、申請から1週間以内(最短5日)で交付できる特
急発行・交付の仕組みの構築等に取り組む。
・ 2023 年(令和5年)8月に策定した「福祉施設・支援団体の方向けマイナンバ
ーカード取得・管理マニュアル」に基づいた取組の普及に努め、介護・障害福祉
施設等での出張申請受付や希望する者の個人宅等を訪問する形での出張申請受
付を推進する。
・ 認知症などで暗証番号の設定に不安がある方が安心してカードを利用でき、代理交付の負担軽減にもつながるよう、暗証番号の設定が不要なカードの交付を可
能とする。
・ 住民が最寄りの郵便局でカード申請・交付の手続をできるよう郵便局窓口を活
用した申請受付の実施を推進する。自治体が早期にサービスを開始できるよう、
標準的な業務フローの周知等、引き続き、制度活用に向けたサポート等を実施す
る。
【国の主な支援策等】
1 自治体における、出張申請受付・申請サポートに要する経費や交付体制の整
備に係る経費について、以下のとおり、対象経費の拡充・追加を行うなど、引
き続きマイナンバーカード交付事務費補助金による支援を行う。
【総務省】
・ 施設や支援団体等が行う申請サポート、代理交付によるカードの受取に対
して市区町村が助成を行う場合に要する経費を対象に追加
・ 市区町村がマイナンバーカードの交付等に係る事務を郵便局に委託する場
合に要する経費を対象に追加
【2022 年度(令和4年度)補正予算・2023 年度(令和5年度)当初予算 301.3 億円】
2 市町村が指定した郵便局においても交付申請の受付等ができるようにする法
改正を実施した。
【総務省】
3 マイナンバーカード交付事務費補助金の対象経費の範囲について改めて周知
し、積極的な活用を促すとともに、人口に対する交付枚数率の高い自治体の交
付体制や申請促進のための取組事例・実績をまとめた資料を横展開することな
どにより、自治体のカードの普及促進に向けた取組を支援する。
【総務省】
4 マイナンバーカードを活用した各種カード等のデジタル化等について、重点
計画における工程表に基づいて推進する。
【関係府省】
5 給付事業との組合せによる自治体施策の効果的な推進や地域経済の活性化な 38ど、自治体マイナポイントの効果的な活用を推進する。
【総務省】
6 地方財政計画の歳出項目である「地域デジタル社会推進費」について事業期
間を 2023 年度(令和5年度)〜2025 年度(令和7年度)に延長するとともに、
マイナンバーカード利活用特別分として、2023 年度(令和5年度)〜2024 年度
(令和6年度)にかけて 500 億円を増額して計上する。
【総務省】
(5)セキュリティ対策の徹底
だいやまーく「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(2023 年(令和5年)6月 9 日閣議
決定)抜粋
第3 デジタル社会の実現に向けた戦略・施策
第3-2 各分野における基本的な施策
1.国民に対する行政サービスのデジタル化
(1)国・地方公共団体・民間を通じたトータルデザイン
2実装に向けた取組
イ 安全性と利便性の両立を追求するネットワーク環境
インフラの検討は、技術的・環境的な変化や地方公共団体の課題を踏まえ、不断
に進める。国・地方を通じたデジタル基盤に関して、全体最適かつ効率的なネット
ワーク構成となるよう、強固なセキュリティ基盤の具備、ユーザー利便性の向上、
安定的な運用体制、強靭(きょうじん)性の確保の観点も念頭に、将来像及び実現シ
ナリオについて、具体的に検討を進めることとする。
特に、
地方公共団体のセキュリティについては、
ガバメントクラウドや SaaS 等の
クラウドサービスの利活用、職員の効率的な働き方の実現、新しい住民サービスの
迅速な提供等を可能にするため、
「地方公共団体における情報セキュリティポリシ
ーに関するガイドライン」を継続的に見直す。具体的には、現行のいわゆる「三層
の対策」について、地方公共団体の意見も聞きながら、抜本的な見直しを行うとと
もに、将来的には、政府情報システムと歩調を合わせつつ、ゼロトラストアーキテ
クチャの考えに基づくネットワーク構成に対応するよう検討を行う。
【取組方針】
地方公共団体の業務システムの標準化・共通化の取組やサイバーセキュリティの
高度化・巧妙化を踏まえ、情報セキュリティ対策の徹底に取り組む。
【国の主な支援策等】 391 地方公共団体の業務システムの標準化・共通化の取組を踏まえた、ガバメン
トクラウドの利活用や、新しい住民サービスの提供、高度化・巧妙化している
サイバー攻撃への対応を可能とするため、
最新のセキュリティ関連技術の動向
や地方公共団体の実態の調査を行い、
最適なネットワーク構成となるような自
治体情報セキュリティ対策の在り方について検討を行う。
【総務省】
2 国・地方を通じたデジタル基盤に関して、全体最適かつ効率的なネットワー
ク構成となるよう、強固なセキュリティ基盤の具備、ユーザー利便性の向上、
安定的な運用体制、強靭(きょうじん)性の確保の観点も念頭に、将来像及び実
現シナリオについて、具体的に検討を進める。
【総務省・デジタル庁】
3 「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」
及び「地方公共団体における情報セキュリティ監査に関するガイドライン」の
改定を行うなど継続して支援する。
【総務省】
(6)自治体の AI・RPA の利用推進
2023 年(令和5年)6月末時点の調査10
において、AI の導入割合は都道府県、指
定都市が 100%、その他の市区町村が 45%となっている。RPA の導入割合について
は、都道府県が 94%、指定都市が 100%、その他の市区町村が 36%となっている。
AI・RPA のいずれも導入している団体は、567 団体であり、人口規模の大きな団体
のみならず、規模の小さな団体においても導入が進んでいる。
(留意事項)
自治体の定型的な業務の効率化については、業務プロセスの見直しや情報システ
ムの標準化・共通化など、根本的な対応策を検討し、その上で RPA の利用による自
動化を行うことが有効である。
【取組方針】
自治体は国の作成する「自治体における AI 活用・導入ガイドブック」及び「自治
体における RPA 導入ガイドブック」を参考に、AI や RPA の導入・活用を進める。ま
た、こうした最先端の技術の導入については、データの集積による機能の向上や導
入費用の負担軽減の観点から、
複数団体による共同利用を検討する。
都道府県は AI・RPA を含めたデジタル技術の市区町村のニーズを踏まえ、共同利用を支援する。
【国の主な支援策等】10総務省:令和5年6月 30 日版「自治体における AI・RPA 活用促進」 401 AI 活用サービスの導入手順や先行団体における AI 導入事例等を記載した、
「自治体における AI 活用・導入ガイドブック」
(2022 年
(令和4年)
6月策定)
を策定し、自治体に共有する。
【総務省】
2 RPA を導入する際の検討の進め方や、導入対象業務の選定の方法、取組事例
などを盛り込んだ、
「自治体における RPA 導入ガイドブック」
(2023 年(令和5
年)6月策定)を自治体に共有する。
【総務省】
3 AI の利活用を中心に、各自治体における最新の取組事例について、総務省で
情報収集を行い、
「自治体 DX 推進参考事例集」を充実化する。
【総務省】
4 2023 年(令和5年)度の AI・RPA 導入に関する経費については、情報システ
ムの標準化・共通化を行う 20 業務を除き、所要の財政措置(特別交付税(措
置率 0.3)
)を講ずることとし、都道府県、市町村が協定の締結等をした上で共
同調達を行う場合には財政措置を拡充(特別交付税(措置率 0.5)
)する。
【総
務省】
(7)テレワークの推進11
だいやまーく「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(2023 年(令和5年)6月9日閣議
決定)抜粋
第3 デジタル社会の実現に向けた戦略・施策
第3-2 各分野における基本的な施策
6.デジタル社会のライフスタイル・人材
(1)新たなライフスタイルへの転換
ア テレワークの推進
働く時間や場所を柔軟に活用できる働き方であるテレワークは、働き方を変える
だけでなく、人々の日常生活における時間の使い方に大きな変化をもたらすもので
あり、その更なる導入・定着は不可欠である。そのためには、使用者が適切に労務
管理を行いながら、労働者が安心して働くことのできる良質なテレワークを推進し
ていくことが必要である。
テレワークは、ICT を活用して時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であ11「テレワーク」とは、職員が所属する組織の所在場所(オフィス)から離れたところにおいて、通
信ネットワーク及び ICT 機器を活用して業務に従事することをいう。具体的には、
「在宅勤務」
「サテ
ライトオフィス勤務」
「モバイルワーク」の 3 つの形態がある。 41り、職員一人ひとりのライフステージに合った多様な働き方を実現できる「働き方
改革」の切り札でもある。また、ICT の活用により業務の効率化が図られることで
行政サービスの向上にも効果が期待されるとともに、重大な感染症や災害発生時に
は、行政機能を維持するための有効な手段となる。
自治体におけるテレワークの導入状況は、総務省の調査12
によれば、2022 年(令
和4年)10 月1日現在で、都道府県・政令市では 100%、市区町村では 62.9%とな
っており、前年(849 団体(49.3%)
)より着実に増加傾向にある一方で、未導入の
理由として「情報セキュリティの確保に不安がある」との回答が多いことから、情
報セキュリティの確保が課題となっている。
今後も、本計画に基づく自治体フロントヤード改革や自治体の情報システムの標
準化・共通化の推進過程も捉えた上で、人事評価などのマネジメントや人材育成、
公務の特性を踏まえた勤務管理等の在り方、職員間の適切なコミュニケーションの
促進、職員の健康管理等にも留意しつつ、引き続き、デジタル化時代の業務運営に
対応する自治体のテレワークを推進していく必要がある。
【取組方針】
自治体は、
国が提供する
「地方公共団体におけるテレワーク推進のための手引き」
(2021 年(令和3年)4月)や「市町村におけるテレワーク導入事例集」
(2023 年
(令和5年)4月)等を参考に、在宅勤務だけでなく、サテライトオフィス勤務や
モバイルワークも含め、テレワーク導入・活用に積極的に取り組む。テレワーク導
入の際は、
「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライ
ン」
(2023 年(令和5年)3月)や「テレワークセキュリティガイドライン第5版」
(2021 年(令和3年)5月)等に基づき、情報セキュリティの確保にも努める。ま
た、自治体フロントヤード改革や、情報システムの標準化・共通化による業務見直
し等の進捗に合わせ、テレワーク対象業務の拡大に取り組む。
【国の主な支援策等】
1 J-LIS(地方公共団体情報システム機構)及び IPA(独立行政法人情報処理推
進機構)が共同で、自治体職員が自宅の PC から自治体庁内にある LGWAN 接続
系の PC へのリモートアクセスを可能とする機能を提供し、LGWAN を活用した
自治体におけるテレワークの試行事業を実施する。2021 年度(令和3年度)ま
でに行った実証実験による実証結果は LGWAN ポータルサイト内で公開する。12総務省:令和4年度「地方公共団体におけるテレワークの取組状況調査」 42【総務省】
2 小規模団体における導入が引き続き課題となっていることを踏まえ、テレワ
ークを積極的に活用している小規模団体における好事例を収集し、
2023 年(令和5年)4月に「市町村におけるテレワーク導入事例集」として取りまとめ、
横展開を実施する。
【総務省】
3 テレワーク・ワンストップ・サポート事業13
として、テレワークの導入・実施
時の ICT(情報通信技術)や労務管理に関して、テレワーク相談センターにお
いて相談を受け付ける他、専門家(テレワークマネージャー)による個別コン
サルティングを実施する。
【総務省・厚生労働省】
4 テレワークの導入に要する経費について所要の財政措置(特別交付税(措置
率 0.5)
)を講ずる。
【総務省】
3.2 自治体 DX の取組とあわせて取り組むデジタル社会の実現に向けた取組
(1)デジタル田園都市国家構想の実現に向けたデジタル実装の取組の推
進・地域社会のデジタル化
だいやまーく「デジタル田園都市国家構想総合戦略」
(2022 年(令和4年)12 月 23 日閣議決定)
抜粋
第4章 各分野の施策の推進
1.分野横断的な施策の推進
1全般的な支援
i地方の自主的・主体的な取組に対する全般的な支援
【具体的取組】
(a)デジタル田園都市国家構想交付金
・デジタル田園都市国家構想の実現による地方の社会課題解決や魅力向上の取組の
加速化・深化を図る観点から、
「デジタル田園都市国家構想交付金」を創設する。ま
た、各地方公共団体が目指す地域ビジョンの実現を総合的・効果的に支援する観点
から、関係省庁と連携しつつ、政策分野横断的に支援を行う同交付金の活用を促進
する。
・具体的には、デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上の実現に向けて、他
の地域等で既に確立されている優良モデル等を活用した実装の取組や、オープンな13テレワークに関する「ICT(情報通信技術)
」と「労務管理の双方」について、ワンストップ
で相談できる窓口(テレワーク相談センター)を設置し、テレワークを導入しようとする企業や
自治体等に対し、総合的な支援を実施するもの。 43データ連携基盤を活用するモデルケースとなり得る取組、地方への新たな人の流れ
を創出する取組等を行う地方公共団体を支援する。また、地方からデジタル実装を
進め、ボトムアップの成長を実現するため、これからデジタル実装に取り組もうと
する地域の計画づくりをデジタル人材がきめ細かくサポートする伴走支援を推進す
る。さらに、デジタルの活用等による観光や農林水産業の振興等の地方創生に資す
る取組、拠点施設の整備、道・汚水処理施設・港の整備等を進めるため、地方公共
団体が、地方版総合戦略に基づき行う事業を安定的かつ継続的に支援する枠組みを
維持するとともに、所要額を確保する。加えて、官民一体となって地域の課題解決
に取り組めるよう、民間事業者の施設整備も支援対象とするなど、これまでの交付
金から支援内容を拡充する。
(b)地域の実情に応じた取組に対する地方財政措置
・2015 年度から 2022 年度までにおいて、地方財政計画の歳出にまち・ひと・しご
と創生事業費1兆円を計上するとともに、
2021 年度及び 2022 年度において、
地域
デジタル社会推進費 2,000 億円を計上したところである。2023 年度においては、
地方公共団体が、地域の実情に応じ、自主的・主体的に地方創生に取り組むととも
に、地域の実情に応じた、デジタル実装を通じた地域が抱える課題の解決に取り組
めるよう、地方財政計画の歳出にデジタル田園都市国家構想事業費(仮称)1兆
2,500 億円を計上し、その内訳として、地方創生推進費(仮称)1兆円及び地域デ
ジタル社会推進費 2,500 億円を計上する。
iiデジタル実装の取組の横展開
【具体的取組】
(a)事例集を活用した一元的な周知
・デジタル田園都市国家構想交付金の採択事例について、KPI の達成状況や事業効
果等を検証し、交付金活用の事例集を取りまとめる。
2.分野別の施策の推進
(2)デジタル基盤整備
2マイナンバーカードの普及促進・利活用拡大
(f)自治体マイナポイントの全国展開
・マイナンバーカードを活用し、地域独自のポイント給付を行う自治体マイナポイ
ント事業を全国展開することで、マイナンバーカードの利便性の向上を図るとと
もに、地域経済の活性化・消費喚起を推進する。
(g)キャッシュレス基盤の構築による地域活性化 44・地方における住民の利便性向上や消費喚起促進等による地域活性化のため、一般
社団法人キャッシュレス推進協議会と協力して統一コード
(JPQR)
の普及に向けた
取組を実施し、
自治体マイナポイントの活用場面の拡大等、
地域のキャッシュレス
化を促進する。
【取組方針】
「デジタル田園都市国家構想総合戦略」(2022 年(令和4年)12 月 23 日閣議決
定)において、
地方は
「それぞれが抱える社会課題について、
地方公共団体を中心と
して十分に議論、認識した上で、その解決を図っていくため、自らの地域ビジョン
(地域が目指すべき理想像)を描き、デジタル技術を活用しつつ、1地方に仕事を
つくる、2人の流れをつくる、3結婚・出産・子育ての希望をかなえる、4魅力的
な地域をつくるという4つの取組を進めていくことが求められる。このため、地方
公共団体は総合戦略を勘案し、地域の個性や魅力を生かした地域ビジョンを再構築
し、都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略及び市町村まち・ひと・しごと創生
総合戦略(以下、これらを合わせて「地方版総合戦略」という。
)を改訂するよう努
め、具体的な地方活性化の取組を果敢に推進するものとする」とされている。
地方がデジタルの力を活用した社会課題解決・魅力向上を図るうえで、
「地域幸
福度(Well-being)指標を用いた取組の評価手法等を積極的に活用しながら、特定
の事業者だけでなく、地域の事業者や市民を幅広く取組に巻き込んでいくことで、
地域が一体となって、幸福度の高い地域社会の実現を図り、その持続可能性を高め
ていくことが重要」であるとされており、各自治体においては、デジタル技術を活
用してどのように住民サービスを提供するのか、どのようにまちづくりを進めてい
くのかを地域の事業者や市民を幅広く巻き込みながらデザインする視点が求めら
れる。
一方、
「国においては、デジタル田園都市国家構想の実現に向け、引き続き、デジ
タル実装の前提となる3つの取組(ハード・ソフトのデジタル基盤整備、デジタル
人材の育成・確保、誰一人取り残されないための取組。以下「デジタル実装の基礎
条件整備」という。
)を強力に推進する」とともに、
「全都道府県でデジタル実装の
姿が実感できるよう、全国津々浦々で地域ビジョンのモデルの実現に向け、政府一
丸となって総合的・効果的に支援する観点から、必要な施策間の連携をこれまで以
上に強化しつつ、様々な施策をフル活用し、地方の自主的・主体的な取組を支援し
ていく。また、同様の社会課題を抱える複数の地方公共団体が連携して、効果的か
つ効率的に課題解決に取り組むことができるよう、地域間連携の在り方や推進策を 45提示していく」こととされている。
また、地域の創意工夫を活かした各自治体の自主的・主体的なデジタル実装の取
組を促進するため、各自治体の事業担当部局が地域社会のデジタル化に係る事業を
検討・実施する際に参考となるよう、
地域活性化、
医療・健康・福祉
(PHR14
を含む)、環境、交通、ローカル5G など幅広い分野の事業に係る事例を収集し、各団体に周
知する。
その際、単に他団体の事業をそのまま模倣して導入するのではなく、各団体それ
ぞれの地域課題に応じたデジタル実装の取組を推進していくことが重要であるた
め、各団体が取組に至った経緯・課題認識や、同様の取組を検討する他団体へのア
ドバイス等も含めて情報収集を行い、横展開する。
加えて、こうした取組を全国津々浦々に広げるため、都道府県等と市町村等が連
携して具体的な地域課題解決に取り組む推進体制づくりを伴走型で支援しつつ、得
られたノウハウの横展開に取り組む。
地域デジタル社会形成に向け想定される取組(例)14Personal Health Record 46しろまるデジタル社会の恩恵を高齢者など多くの住民が実感できるためのデジタル活
用支援
しろまる地域におけるデジタル人材の確保・育成
しろまる条件不利地域等におけるデジタル技術を活用したサービスの高度化
しろまるデジタル技術を活用した観光振興や働く場の創出など魅力ある地域づくりの
推進
しろまるデジタル技術を活用した安心・安全の確保
しろまる中小企業のデジタル・トランスフォーメーション支援
このほか、ポイントの受取を各自治体の住民に限定することや、年齢・所得・子
育て世帯など施策目的に応じて対象を限定すること、給付額・期間を設定すること
などにより、各自治体独自のポイント給付施策を効果的に実施できる「自治体マイ
ナポイント事業」を推進することにより、キャッシュレス決済の利用促進や地域の
消費喚起、地域経済の活性化を推進する。
【国の主な支援策等】
1 [再掲]地方財政計画の歳出項目である「地域デジタル社会推進費」について事
業期間を 2023 年度(令和5年度)〜2025 年度(令和7年度)に延長するととも
に、マイナンバーカード利活用特別分として、2023 年度(令和5年度)〜2024 年
度(令和6年度)にかけて 500 億円を増額して計上する。加えて「まち・ひと・
しごと創生事業費」を「地方創生推進費」に名称変更した上で、これと「地域デ
ジタル社会推進費」を内訳として、
「デジタル田園都市国家構想事業費」
(1兆
2,500 億円)を計上する。
【総務省】
2 地方公共団体等によるデジタル技術を活用して地域課題の解決を図る取組に対
して、計画策定・先進的なソリューションの実用化・地域の通信インフラの整備
等の総合的な支援を実施する(地域デジタル基盤活用推進事業)。【総務省】
【2022 年度(令和4年度)2次補正予算】20.0 億円
【2023 年度(令和5年度)当初予算】1.4 億円
3 地域社会のデジタル化に係る取組事例について、
各自治体向けの分かりやすい情
報発信や自治体を対象とした普及啓発の取組強化を通じて、
各自治体におけるデ
ジタル実装の取組を推進する。
【総務省】
4 「デジタル田園都市国家構想交付金」により、デジタルを活用した地域の課題解 47決や魅力向上に向けたデジタル実装に必要な経費、
デジタルの活用などによる観
光や農林水産業の振興等の地方創生に資する取組や拠点施設の整備などを支援
する。
【内閣府】
【2022 年度(令和4年度)補正予算】800 億円
【2023 年度(令和5年度)当初予算】1,000 億円
5 「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用した自治体の取組事例を参考事例集
として公開することで、各自治体におけるデジタル実装の取組を推進する。
【内
閣府】
6 [再掲]給付事業との組合せによる自治体施策の効果的な推進や地域経済の活性
化など、自治体マイナポイントの効果的な活用を推進する。
【総務省】 48(2)デジタルデバイド対策
だいやまーく「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(2023 年(令和5年)6月9日閣議
決定)抜粋
第2 重点計画の基本的考え方
1.デジタルにより目指す社会の姿
4誰一人取り残されないデジタル社会
我が国においては、少子高齢化、男女共同参画(女性の活躍)
、様々な障害者への
理解促進、
在留外国人の増加等を背景に様々な課題が存在する一方、
近年、
5G、
IoT、
AI 技術等のデジタル技術が進展し、データのメディア変換も容易になり、自分に合
ったスタイル(音声、視線の動き等)でデジタル機器・サービスが利用可能となる
等、従来できないと諦めていたことが可能な時代になってきている。
このため、以下のアからオまでに掲げる基本的な考え方を共通認識とし、官民を
挙げて「皆で支えあうデジタル共生社会」の構築に向けた環境整備を行う。
ア 機器・サービスに不慣れな人のほか、
機器等の利用が困難な人や利用しない人も、
例えば、行政手続の「書かない窓口」構想に見られるように、サービス提供者側で
の対応によりデジタル化の恩恵を実感できること。また、デジタルを利用する人に
向けては、利用者の視点を第一に、ユーザー体験、ユーザビリティ及びアクセシビ
リティに最大限配慮したデジタル機器・サービスを利用シーンに応じ、様々なニー
ズも踏まえ、例えば、単一障害専用ではなく、重度・重複障害も意識した複数障害
に対応する等、きめ細かく提供すること。
イ 高齢者や障害者に対してデジタル機器・サービスの利用を支援する場合、機器等
の操作方法等とともに、機器等で何ができて、どのような課題を解決できるかを分
かりやすく情報共有すること。
ウ 障害者を対象とするデジタル機器・サービスのアクセシビリティ確保は、障害者
のみならず、高齢者のフレイル対策9、社会参加に資することに加え、
こどもを含む
幅広い国民一般にその利便性が裨益(ひえき)するものであり、新たなイノベーショ
ン創出や市場形成につながること。
エ デジタル市場自体は国際性を内包していることから、アクセシビリティに係るガ
イドラインやその実効性の確保に関し、法的措置も含め、国際的な整合性を図りつ
つ対応すること。また、そのことが我が国企業等による関連技術やアイデアを生か
した国際競争力の強化にもつながること。
オ デジタル化のメリットのみならず、SNS 等を通じた誹謗(ひぼう)中傷、社会の分 49断化等の負の影響についても社会全体として情報共有を促進し、国内外を問わず、
安全・安心なデジタル社会を実現していくこと。その際の対応としては、事業者に
よる削除等の自主的な取組を原則としつつ、情報モラルに関する教育や啓発活動、
被害者のためのアフターケアの強化等、負の側面の影響を最小化する施策を総合的
に展開すること。
これらの実現に当たっては、デジタル社会における情報リテラシー、人権・プラ
イバシー・アイデンティティ等に係る意識改革に向け、民間団体等の活動も支援し
つつ、
国や地方公共団体においてもその普及啓発を促進していくことも必要となる。
これらの取組により、地理的な制約、年齢、性別、障害や疾病の有無、国籍、経
済的な状況等にかかわらず、誰もが日常的にデジタル化の恩恵を享受でき、様々な
課題を解決し、豊かさを真に実感できる「誰一人取り残されない」デジタル社会の
実現を目指す。
(中略)
第3 デジタル社会の実現に向けた戦略・施策
第3-2 各分野における基本的な施策
3.アクセシビリティの確保
(3) 皆で支え合うデジタル共生社会の実現
高齢者等が、身近な場所で身近な人からスマートフォンを使ったオンライン行政
手続等の利用方法を学ぶことができる講習会等について、全国の携帯ショップや地
域の ICT 企業、社会福祉協議会等での「デジタル活用支援」の取組を推進する。
また、障害者に対するデジタル機器の紹介・貸出・利用に係る相談等を行う総合
的なサービス拠点(サポートセンター)の設置や、サピエ 82 などの障害者がアクセ
スしやすいネットワークを通じたサービスの利活用、デジタル機器の操作支援を行
うパソコンボランティアの養成・派遣などの取組を支援する。
さらに、教育委員会や学校における ICT 環境の整備・活用に関する相談等に対応
するため、ICT 支援員の配置等を通じて教育現場の取組を推進するほか、公民館等
の社会教育施設や学校等の多様な場を活用したデジタル講座等の実施を推進する。
これらの取組も含め、デジタルに不慣れな方を対象に、関係府省庁や地方公共団
体・関連団体、ボランティア団体等と連携し、マイナンバーカード・マイナポータ
ル、各地で実装されているデジタルサービス及びデジタル機器・サービスの利用方
法をサポートするなど、国民運動としての「デジタル推進委員」の取組を 2022 年度
(令和4年度)にスタートさせ、2023 年(令和5年)5月時点で 26,000 人を超える 50方々を任命している。今後、図書館や公民館、鉄道駅など身近な場所を活用し、全
国津々浦々に展開できるよう、デジタルコンテンツの充実等の工夫もした上で、更
なる拡大を図る。
9 年齢を重ねることで身体や心の働きが低下し要介護に近づきつつある状態(フレ
イル)を予防・改善するための様々な取組をいう。
82 視覚障碍者情報総合ネットワーク
だいやまーく「デジタル田園都市国家構想総合戦略」
(2022 年(令和4年)12 月 23 日閣議
決定)抜粋
第2章 デジタル田園都市国家構想の実現に必要な施策の方向
1.取組方針
(4)誰一人取り残されないための取組
1デジタル推進委員の展開
(施策の方向)
高齢者等のデジタル活用の不安解消に向けて、身近な場所でスマートフォンを経
由したオンライン行政手続等に対する助言・相談等を実施するデジタル活用支援推
進事業に取り組み、これまでのデジタル活用支援による全国の携帯ショップ、地域
の ICT 企業、社会福祉協議会、シルバー人材センター、公民館等での講習会等の実
施の成果を踏まえつつ、更なる質・量の向上を図る。
また、障害者に対するデジタル機器の紹介・貸出・利用に係る相談等を行う総合
的なサービス拠点(サポートセンター)の設置や、サピエなどの障害者がアクセス
しやすいネットワークを通じたサービスの利活用、デジタル機器の操作支援を行う
パソコンボランティアの養成・派遣などの取組を支援するほか、教育委員会や学校
における ICT 環境の整備・活用に関する相談等に対応するため、ICT 支援員の配置
等を通じて教育現場の取組を推進する。
これらの取組も含め、デジタルに不慣れな方をサポートするため、関係省庁、地
方公共団体・関連団体・ボランティア団体等と連携し、スマートフォンの基本的な
使い方を始めマイナンバーカードを利用したオンライン手続や地域のデジタルサー
ビスの利用方法をサポートするなど、国民運動として、
「デジタル推進委員」の取組
を 2022 年度に2万人以上でスタートさせ、今後、全国津々浦々に展開できるよう、
デジタルコンテンツの充実等の工夫もした上で、更なる拡大を図りつつ、地域にお
けるデジタル利用のよろず相談体制を整備する。 51【取組方針】
オンラインによる行政手続等のスマートフォンの利用方法について、高齢者等が
身近な場所で相談や学習を行えるようにする「デジタル活用支援」事業の周知等の
利用の促進を行うとともに、NPO や地域おこし協力隊等の地域の幅広い関係者と連
携し、講座の開催やアウトリーチ型の相談対応など地域住民に対するきめ細かなデ
ジタル活用支援を実施する。
【国の主な支援策等】
1 デジタル社会の形成に当たり、
民間企業や地方公共団体等と連携し、
高齢者
等のデジタル活用の不安解消に向けて、
スマートフォンを利用したオンライン
行政手続等に対する助言・相談等を行う「講習会」を実施する(デジタル活用
支援推進事業)。【総務省】
【2022 年度(令和4年度)補正 40.0 億円】
(注記) 上記支援に当たっては、事業者と自治体が連携して地域の実情等を踏まえた効果
的な事業が行われるよう、国は事業者に対して自治体との連携について働きかける。
2 [再掲]地方財政計画の歳出項目である「地域デジタル社会推進費」につい
て事業期間を 2023 年度(令和5年度)〜2025 年度(令和7年度)に延長する
とともに、マイナンバーカード利活用特別分として、2023 年度(令和5年度)
〜2024 年度
(令和6年度)
にかけて 500 億円を増額して計上する。
加えて、
「ま
ち・ひと・しごと創生事業費」を「地方創生推進費」に名称変更した上で、こ
れと
「地域デジタル社会推進費」
を内訳として、
「デジタル田園都市国家構想事
業費」
(1兆 2,500 億円)を計上する。
【総務省】 52(3) デジタル原則を踏まえた規制の点検・見直し
(デジタル臨時行政調査会については、
2023 年
(令和5年)
10 月6日に廃止された。)【取組方針】
政府においては、デジタル改革、規制改革、行政改革といった構造改革に係る横
断的課題の一体的な検討や実行を強力に推進するため、2021 年(令和3年)11 月
に内閣総理大臣を会長とする
「デジタル臨時行政調査会」
(以下
「調査会」
という。)が創設された。
調査会では、構造改革に通底する5つの原則(1デジタル完結・自動化原則2ア
ジャイルガバナンス原則3官民連携原則4相互運用性確保原則5共通基盤利用原
則)からなる「構造改革のためのデジタル原則」を共通の指針として 2021 年(令
和3年)12 月に策定し、このデジタル原則に沿って、4万以上の法令等を対象にア
ナログ規制を横断的に見直し、2024 年(令和6年)6月までの2年間で規制・制度
のデジタル原則への適合の実現を目指している。 53(構造改革のためのデジタル原則)
代表的なアナログ規制として、目視規制、定期検査・点検規制、実地監査規制、
常駐・専任規制、書面掲示規制、対面講習規制、往訪閲覧・縦覧規制の7項目の規
制及びフロッピーディスク等の記録媒体を指定する規制を取り上げ、
現場のデジタ
ル化を阻害する規制・制度の見直しを進めることで、デジタル技術の活用による現
場の人手不足の解消や生産性の向上、新たな産業の創出による経済成長への寄与、
日本社会のデジタル・トランスフォーメーションの進展が期待される。
これらのアナログ規制に関して、法律・政令・省令について調査し、それらの規
制の点検・見直し方針を含む「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」
(以下「一括見直しプラン」という。
)を取りまとめた上で、それぞれの見直しに
向けた工程表を作成した(2022 年(令和4年)12 月)
。各府省庁は、工程表に基づ
き、原則として 2022 年(令和4年)7月から 2024 年(令和6年)6月までの2年
間で調査会事務局と連携し、規制・制度の見直し等を行うこととされている。
国の法令と同様、各地方公共団体で定める条例・規則等においても、アナログ規
制が存在すると考えられる。特に、我が国において、福祉、消防、道路・河川等の
インフラ整備など、国民生活に密接に関連する行政サービスの多くは、地方公共団
体が実施していることを踏まえると、
より多くの国民がデジタル技術を活用したよ
り良いサービスを享受し、成長を実感するためには、全国の地方公共団体における
デジタル化の取組が不可欠である。調査会においても、2022 年(令和4年)11 月 54に、各地方公共団体がアナログ規制の点検・見直しに取り組むに当たり必要となる
推進体制の構築や作業手順の参考となる情報を整理した
「地方公共団体におけるア
ナログ規制の点検・見直しマニュアル【第 1.0 版】
」を公開することなどにより、
各地方公共団体の取組を支援している。
各地方公共団体においては、
こうしたマニュアルや国における取組状況等を参考
にしながら、条例・規則等の点検・見直しを実施することが望ましい。
なお、
上記の他、
調査会においては経済界から寄せられた要望等を踏まえ、
書面・
対面の行政手続(書面による交付・通知を行う手続を含む。
)の見直しについて検
討しており、地方公共団体においても適切に対応することが求められる。
【国の主な支援策等】
1 調査会における国の法令等の見直しの考え方や先行団体の取組を紹介すると
ともに、地方公共団体が条例等の見直しに取り組むための推進体制や作業手順の
案を示した「地方公共団体におけるアナログ規制の点検・見直しマニュアル【第
1.0 版】
」を 2022 年(令和4年)11 月に公開し、各地方公共団体におけるアナロ
グ規制の点検・見直しを支援する。
【デジタル庁】
2 地方公共団体におけるアナログ規制の見直しについて、
より全国の取組を推進
する観点から、モデルとなる地方公共団体と連携し、条例等のアナログ規制の点
検・見直しに係る課題調査を実施する。当該調査結果等を踏まえて、2023 年(令
和5年)中を目途に、上記マニュアルを改訂する。
3 アナログ規制の類型と、その見直しに活用可能な技術の対応関係を整理、可
視化した「テクノロジーマップ」の初版を策定し、公表する。今後、技術検証結
果や技術の進展等を踏まえ、随時更新する。
【デジタル庁】
4 地方公共団体におけるアナログ規制の見直しを踏まえた、
デジタルの活用によ
る地域の課題解決等を図る取組について、デジタル田園都市国家構想交付金によ
る後押しを進める。 55 56
3.3 各団体において必要に応じ実施を検討する取組
各自治体において、
重点取組事項以外の事項についても、
DX を推進するための全体
的な方針に位置づけて取組が進められている。
全体方針を策定している各自治体における重点取組事項以外の取組内容の状況に
ついては、以下の通りであり、BPR の取組、オープンデータ、ペーパーレス化、キャ
ッシュレス化の推進などは多くの自治体で取り組まれている。
自治体 DX の取組は、地域の実情や課題、住民ニーズに応じ、自主的・主体的に取
り組まれるべきものであり、
単に他団体の事業をそのまま模倣して導入するのではな
く、他団体の取組も参考にしつつ、どのような取組が自団体において必要か積極的に
検討していただきたい。
なお、オープンデータについては、デジタル庁が 2023 年(令和5年)4月に、従来
の「推奨データセット」を「自治体標準オープンデータセット」として見直し、自治
体の取組状況に応じて公開が望ましいデータを選べるようにするとともに、
利用者が
より利活用しやすい形式に変更するなど、
自治体のオープンデータに係る環境の整備
を実施していることから、デジタル庁の最新の動向等も踏まえつつ、取組の参考とさ
れたい。
【各自治体における重点取組事項以外の取組内容の状況】 57以下、
各事項の重点計画等における方向性を記載するので、
取組の参考とされたい。
(1)BPR の取組の徹底
だいやまーく「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(2023 年(令和5年)6月9日閣議
決定)抜粋
第2 重点計画の基本的考え方
2.デジタル社会の実現に向けての理念・原則
(2)BPR と規制改革の必要性
デジタル化を進めるに際しては、オンライン化等が自己目的とならないように、
本来の行政サービス等の利用者の利便性向上及び行政運営の効率化等に立ち返っ
て、業務改革(BPR)に取り組む必要がある。
業務改革(BPR)の実施に当たっては、
「情報システムの整備及び管理の基本的な
方針」
(2021 年(令和3年)12 月 24 日デジタル大臣決定。以下「情報システム整備
方針」という。
)に定めるサービス設計 12 箇条に基づき、利用者のニーズ、利用状
況及び現場の業務を詳細に把握・分析した上で、あるべきプロセスを制度・体制・
手法を含めて一から検討する。
第1条 利用者のニーズから出発する第7条 利用者の日常体験に溶け込む
第2条 事実を詳細に把握する 第8条 自分で作りすぎない 58第3条 エンドツーエンドで考える 第9条 オープンにサービスを作る
第4条 全ての関係者に気を配る 第 10 条 何度も繰り返す
第5条 サービスはシンプルにする 第 11 条 一遍にやらず、一貫してやる
第6条 デジタル技術を活用し、サ
ービスの価値を高める
第 12 条 情報システムではなくサービ
スを作る
また、デジタル改革と規制改革は言わば「コインの裏表」の関係にあり、デジタ
ル化の効果を最大限発揮するため、規制の見直しも併せて行う必要がある。
さらに、アナログをデジタルへ切り替えた途端、アナログより厳格な確認を求め
る等といった運用については、逆に国民や事業者の手間やコストが増えることにな
ることから、利便性の観点から国民や事業者の立場に立って、手続や業務フローを
実装・運用する。
(2)オープンデータの推進・官民データ活用の推進
だいやまーく「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
(2023 年(令和5年)6月9日閣議
決定)抜粋
第3 デジタル社会の実現に向けた戦略・施策
第3-1戦略として取り組む政策群
6.包括的データ戦略の推進と今後の取組
(3)当面重点的に取り組むべき事項
7オープンデータ
公共データを誰もが利用しやすい形でアクセスできるようオープンデータの取組
を推進しており、
利活用についても、
地域の住民や企業等による取組に加えて RESAS
等を活用した地域経済データの分析等の取組が行われてきている。
オープンデータ基本指針について、2023 年度(令和5年度)中に策定当初からの
社会環境等の変化に対応した内容へ見直しを図る。また、オープンデータの更なる
推進のため、具体的なニーズに基づきオープンデータを活用したサービス等の事例
について更なる展開、推進を検討するほか、地域のオープンデータの利活用の面で
は、
RESAS 等の情報支援を行い、
オープンデータを活用した施策分析・評価基盤を提
供する。
また、e-Gov データポータルサービスの更なる活用に向けた周知・啓発等を行い、
国民・企業・行政機関等における積極的なオープンデータの活用を促進する。
オープンデータである公的統計の元となる調査票情報についても、個人情報等の
適切な保護をしつつ、その二次的利用を迅速化及び円滑化するため、必要なリソー
スを確保の上、提供手続の標準化及び効率化、オンサイト施設の充実、リモートア 59クセス方式による提供に向けた実証実験等に取り組む。
しろまるデジタル社会の実現に向けた基本的な施策に係る施策集
〔No.9-7〕地方におけるオープンデータの促進
・官民データ活用推進基本法では、地方公共団体は、国と同様に、保有するデータを
国民が容易に利用できるよう必要な措置を講ずるものとされている。オープンデー
タに取り組む地方公共団体の割合は着実に増え、人口カバー率では9割を超えたも
のの、データの質の面が伴わず活用しづらい等の事業者からの声があがっており、
2022 年度(令和4年度)において、地方公共団体のオープンデータ取組の質評価指標
を公開し、地方公共団体が自発的にデータの質を高められる仕組みづくりを行った。
一方で、運用を開始したばかりであり、効果的な仕組みなのかの検証が必要。
・そこで、地方公共団体のオープンデータ取組の質評価指標が効果的に運用されてい
るか確認し、必要に応じて見直しを行う。
・これにより、公開するデータの量のみならず、データの質の向上を図り、結果的に
民間事業者等によるアプリ開発や行政機関自身によるデータ分析、政策立案等の利
活用の促進を図る。
KPI:地方公共団体のオープンデータ取組の質評価指標の分析と見直し(2023 年度(令
和5年度)末まで)
地方公共団体のオープンデータ取組の質評価指標の運用団体数
だいやまーく「地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン」
(2021 年(令和3年)6月
15 日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)抜粋
4 取組体制等
(3) 地方公共団体間の連携等
複数の地方公共団体が連携してオープンデータに取り組むこと 38 は、人材育成、
データ公開に係る業務の効率化や、地域横断的なデータ利活用の促進、行政サービ
スの向上等に関する合同でのアイデア公募やその成果の共有等、大きな効果が期待
される。
例えば、高梁川流域の隣接7市3町が連携して一つのデータポータルサイト
(http://dataeye.jp/)でオープンデータを公開している。また、職員のオープン
データに対する理解を深め、機運を盛り上げるために、複数の市区町村が共同で勉
強会を開催するといった取組も進められている。限りある資金、人材等を有効活用
する観点からは、
近隣自治体が連携してオープンデータに取り組むことが望ましい。 60福井県、静岡県や埼玉県では、県が構築したサイト上に共通のフォーマットで市
区町村のデータを公開するといった取組も進められている。データの利活用を促進
する観点からは、都道府県が、域内市区町村のデータを必要に応じ集約した上でオ
ープンデータとして積極的に公開することに加え、データ形式、利用規約の整合化
を働きかけることも有効である。
さらに、都道府県の範囲を超えて市区町村が連携することも、上記の効果をより
増大するものとして積極的に取り組むことが望まれる。
38 例えば、武雄市、千葉市、奈良市、福岡市、三重県、室蘭市の「ビッグデータ・
オープンデータ活用推進協議会」
(https://www.facebook.com/bigdataopendata4city)等がある。 614. おわりに
本計画は、
ガバメントクラウドの活用に向けた検討など国の動向を反映させるよう
適宜見直しを行うとともに、
別紙2に示す「「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
において示された方針及び KPI」
を踏まえ、
自治体の取組状況に応じた PDCA サイクル
により進捗管理を行う。
総務省は、
業務改革
(BPR)
を含めた標準化等の進め方について記載した
「自治体 DX
推進手順書」を 2023 年(令和5年)1 月に改定したところであり、今後も国の動向等
を踏まえ、
適宜見直しを行う予定である。
また、
当該手順書の改定時期にかかわらず、
自治体の検討に資する情報を、自治体に随時提供する。併せて、自治体が足並みを揃
えて、情報システムの標準化・共通化等の施策を推進するためには、その前提となる
事業者(ベンダー)の速やかかつ円滑なシステムの開発等の対応も求められることか
ら、関係省庁と連携して、事業者(ベンダー)への情報提供を丁寧に行っていく。
本計画に示す取組を一定の期間の中で実現するには、
早期の現行のシステムの調査、
スケジュール策定をはじめとして計画的な導入に向けた検討を行うことが求められ
ることから、速やかに全庁的・横断的な推進体制を整える必要がある。その上で、各
自治体においては、本計画の記載及び今後国から提供される情報を参考に、早期に検
討に着手し、可能な取組から実行することが望ましい。
別紙1 自治体の主な取組スケジュール
別紙2 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において示された方針及び KPI
重点取組事項 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において示さ
れた方針及び KPI
1自治体の情報システムの
標準化・共通化
【デジタル庁、総務省、関係省
庁】
・地方公共団体の職員が真に住民サービスを必要とする
住民に手を差し伸べることができるようにする等の住民
サービスの向上を目指すとともに、業務全体に係るコス
トを抑え、他ベンダーへの移行をいつでも可能とするこ
とにより競争環境を適切に確保する等の行政の効率化を
目指し、業務改革(BPR)の徹底を前提にして、地方公
共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法
律第 40 号)第6条第1項及び第7条第1項に基づく標
準化基準への適合とガバメントクラウドの活用を図る、
地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化を、
地方公共団体と対話を行いながら進める。
・今後、基幹業務システムを利用する原則全ての地方公
共団体が、目標時期である 2025 年度(令和7年度)ま
(注記)に、ガバメントクラウド上に構築された標準準拠シ
ステムへ円滑かつ安全に移行できるよう、その環境を整
備することとし、その取組に当たっては、地方公共団体
の意見を丁寧に聴きながら、必要な支援を積極的に実施
する。
(注記)地方公共団体情報システム標準化基本方針(令和5年(2023 年)9月8日閣
議決定)では、移行の難易度が極めて高いと考えられるシステムについては、
主務省令において、例外的に所要の移行完了の期限を設定することとされてい
る。
<KPI>
・対象である基幹業務に係る標準仕様書及び当該業務シス
テムに関するガバメントクラウドの活用に関する方針に
ついて、2022 年度(令和4年度)に策定した。
(注記) 対象基幹業務:住民基本台帳、戸籍、戸籍の附票、固
定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、印鑑
登録、選挙人名簿管理、子ども・子育て支援、就学、児
童手当、児童扶養手当、国民健康保険、国民年金、障害
者福祉、後期高齢者医療、介護保険、生活保護、健康管
理(20 業務)地方公共団体の情報システムの運用経費の
削減(2026 年度(令和8年度)に 2018 年度(平成 30 年
度)比で少なくとも3割削減)。
2マイナンバーカードの普及促進
【デジタル庁、総務省、関係省庁】
2024 年(令和6年)秋の健康保険証廃止を見据え、マイ
ナンバーカードへの理解を促進し、希望する全ての国民
が取得できるよう、円滑にカードを取得していただくた
めの申請環境及び交付体制の整備を更に促進する。

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