1第9回公的統計品質向上のための特別検討チーム会合 議事概要
1 日 時 令和4年8月5日(金)10:00〜12:00
2 場 所 Web会議
3 出席者
【委 員】
川﨑 茂(座長)、清原 慶子、椿 広計
【臨 時 委 員】
清水 千弘
【専 門 委 員】
細川 努
【審議協力者】
下野 僚子、鈴木和幸、鈴木 督久
【審議協力者(各省等)】
総務省統計局統計調査部:岩佐部長
独立行政法人統計センター情報システム部:伊藤次長
【説明者】
(事務局)
上田統計委員会担当室次長
【事務局(総務省)】
明渡大臣官房審議官、北原大臣官房付
統計委員会担当室:萩野室長、上田次長
政策統括官(統計制度担当):吉開政策統括官、稲垣統計企画管理官、長嶺統計審査官
4 議 事
(1)公的統計の総合的品質向上に向けて(案)について
(2)その他
5 議事概要
冒頭、座長から7月 27 日に開催された第 180 回統計委員会の審議の中で、今回の報
告書案については、「建議」として統計委員会から総務大臣へ提出することで、委員
の皆様から賛同をいただいたので、その方向で進めたい旨の発言があった。
また、事務局から統計委員会における議論の紹介があり、その内容も踏まえ各議題
の審議を行った。
(1)公的統計の総合的品質向上に向けて(案)について
資料「公的統計の総合的品質向上に向けて【仮称】」に基づき、まず、座長から構
成について確認があり、その後事務局から個別の項目ごとの説明が行われ、1これま 2での審議内容を踏まえた適切な記載内容となっているか、2この報告書案の記載の他
に、修正や追記すべき事項はあるか、といった観点から、審議が行われた。
ア 報告書案の構成
座長から、個々の対策のグルーピングの件について、前回の会合の構成に関する
意見を踏まえ、特に「IV今後の取組」については、11ページのA、B、C、総合的
取組の4つのグループに分けて、構成を再度整理したので、このようなグルーピン
グでよいかとの説明があった。
委員等からの主な発言は以下のとおり。
・ 4つのグループ分けを行うことで、問題の所在に関する認識が的確になったと考
える。1点気づきだが、4つのグループは、Aが「・・・の推進」、Cは「・・・
の改善」、総合的取組は「・・・整備・強化」となっているが、Bだけは「・・・
のコミュニケーション」で終わっているが、例えば、「・・・のコミュニケーショ
ンの充実」や「・・・のコミュニケーションの確保」など言葉を追加すれば、主張
が鮮明になると思う。
→ Bの内容は、「組織風土の定着」や「十分な意思疎通の確保」などであり、事務
局としては「コミュニケーションの確保」が適切ではないかと考えている。
・ これまでもコミュニケーションの重要性は提起してきたので、「コミュニケー
ションの確保」とすれば、より趣旨が伝わると思う。
しろまる 委員から意見については、事務局の案のとおり「コミュニケーションの確保」
とすることで構成員の了承が得られ、構成については了承された。
イ 「I はじめに」
事務局から、記載内容の概要について説明があった。
しろまる 委員等から特段の意見はなく、当該項目は了承された。
ウ 「II 建設工事統計事案に係る分析と評価」
事務局から、記載内容の概要について説明があった。
委員等からの主な発言は以下のとおり。
・ 建設工事統計事案から何を学び全体としての公的統計の品質向上に反映してい
くかという部分。特に6ページの「3 建設工事統計事案の分析と教訓」の「教
訓」について本文中に何が教訓なのかということを原案よりも詳しく記述するよ
うにお願いしたところ、本日の資料では適切にまとめられ、全体としての公的統
計の類似事案の発生防止に向けての問題提起ができていると受けとめた。また、
特に6ページの注釈について大事な記述がされていると思っており、建設工事統
計事案からの教訓をしっかりと整理した上で、国土交通省に対する総務省の対応
についての教訓について、他府省が国土交通省の事案から学ぶとともに、この問
題について総務省が自らのこととして受け止めてしっかりと教訓を得ている部分
であるので、注釈であってもとても有意義なことが記述されていると受け止めた。
→ 記述について、賛同していただいたと受け止めた。 3・ 6ページに記載している4つの教訓がより分かりやすくなるように下線を引い
てはどうか。
→ 4つの教訓について各段落の「教訓として・・こと」(「が分かる。」の前まで)
下線を引くこととする。
しろまる 上記の修正を行うこととした上で、当該項目は了承された。
エ 「III 統計作成プロセスにおけるリスクと取組の方向性」
事務局から、記載内容の概要について説明があった。
委員等からの主な発言は以下のとおり。
・ 12 ページの「1 PDCAサイクルの確立と業務マニュアルの整備・共有の改
善」について、PDCAサイクルにおける業務マニュアルの位置づけについて記述
したほうがよいと思う。そこで「取組の意義」の上段の改定案として、「PDCA
におけるPは目的とこの目的を達成するための方法・手順とからなる。この方法・
手順の中核となるものが業務マニュアルである。」という文書を追記してはどうか。
→ PDCAサイクルの確立と業務マニュアルの繋がりが分かりにくいので、論理
的な繋がりを明らかにするため、ご提案の文書を追記しどうかということで理解し
た。ご提案を踏まえて、報告書案に追記する方向で、事務局とも相談した上で整理
したい。
・ 11ページのPDCAサイクルの注11
で、「計画(Plan)-実施(Do)-点検・評
価(Check)-対策・改善(Act)」と記載されているが、品質管理におけるPlan
は「目的と目的を達成するための方法・手順」であり、単に「計画」としていい
か疑問がある。誤解を避けるため、日本語は記載せず「Plan-Do-Check-Act」
としてはどうか。
→ この注では直訳的に言葉になっているので、型にはまった解釈にならないように、
ご指摘のとおり日本語は記載せず「Plan-Do-Check-Act」に修正することとする。
・ 16ページの「9 各府省の体制強化」について、統計委員会でも指摘があったが、
今回の事案では体制及び人材の確保に問題があったことを踏まえ、特に幹部職員に
認識を強くもってもらうことを強調するために、関連リスクに3と4を追加するこ
とを提案し、反映していただいた。また9と10の体制強化の【取組の意義】の記載
は、決して長文ではないが、32ページ以降の詳細な取組にも関連し、参議院の決算
議決にも関連することであり、非常に重要なことが記載されていると受け止めてい
る。
しろまる 上記の修正を行うこととした上で、当該項目は了承された。
オ 「IV 今後の取組」
1 「A:総合的品質管理(TQM)の推進」(1〜4)
事務局から、記載内容の概要について説明があった。
しろまる 委員等からの発言はなく、当該項目は了承された。 42 「B:ガバナンスのための組織内外のコミュニケーション」(5・6)及び
「C:デジタル化による人間系ミスの低減と業務プロセスの改善」(7)
事務局から、記載内容の概要について説明があった。
委員等からの主な発言は以下のとおり。
・ 25ページの5の情報の保存、記録の作成について、今回の事案を踏まえて適切
な対応が記載されていると認識しているが、この中に、「既に永年保存すること
とされている調査票情報の電磁的記録に加え、以下の情報等を「常用(無期限)」
として保存」とあるが、この対応をするには、法令の改正が必要になるのか。対
応の度合いについて教えてほしい。
→ 現状の運用で対応可能と考えている。
・ ここの記載の趣旨は、現状の運用を改めて明記していて、これに加え、総務省
及び内閣官房が連携して誤り発見時の対応のひな型の改定が速やかに行われれば、
この取組が徹底されると認識してよいか。
→ そのとおり。
しろまる 上記の発言の他に意見はなく、当該項目は了承された。
3 「総合的取組:品質優先の組織風土のための基盤の整備・強化」(8〜10)
事務局から、記載内容の概要について説明があった。
委員等からの主な発言は以下のとおり。
・ 32ページの「9 各府省の体制強化」の特にiv)の取組について、統計幹事
を支える統計分析審査官を統計の品質管理全般の中核となるような体制へ大幅
に見直すという点は大変重要と認識している。また、各府省の統計幹事及び見
直し後の統計分析審査官を支えるため、学識経験者、民間の統計や品質管理の
専門家などを技術的アドバイザーとして確保する点は、職員としての人材確保
だけではなくPDCAや品質管理全般を担う専門的な人材の確保に向けて大変
重要な提言だと思っている。1点だけ、33ページに、統計分析審査官は毎月勤
労統計事案を踏まえ令和元年7月に導入された体制と記載されているが、ここ
に「時限的な体制」と明記することがよいのか、明記しなくてもアンダーライ
ン部分で統計分析審査官の重要性を提案しているので、まずは、活躍する体制
を作っていくことを強調したほうがよいのか迷っていたが、議論の中で「時限
的な体制」であるという認識があったことを議事録に残していただければ、統
計分析審査官の重要性を政府においてもしっかり受け止めていただけると思う
ので原案でも十分だと認識している。
→ 一度、引き取らせていただき、ご発言の趣旨がどう表現できるか検討したい。
・ 人材の部分については非常に重要だと思っている。日本では、分散型の統計シ
ステムが採用されているが、そのデメリットとしては、人材の確保や育成が難し
いという点にある。そのような現状を踏まえ、今後、人材の確保・育成をどうし
ていくのかという問題は、公的統計にとって、次の 100 年の根幹になると思う。
今回の点検・確認結果で、一部の統計調査で人員が不足しているものがあること
が分かり、問題が明確になってきたが、この不足を解消することは非常に難しい 5課題であり、結局、提言はしたが実効性がなかったというになることを危惧して
いる。そういった意味で、機械と人間がどう分業するかをデジタル化の中で整理
し、人と人がどう分業するかを総務省、各府省及び統計分析審査官の役割分担の
中で整理し、そして、一人一人の人を強くするということで研修などといった取
組について提言がまとめられていると思う。9のiv)で学識経験者との連携が提
言されているが、実は学識経験者の育成も課題である。今の日本は、各府省の統
計人材も学識経験者も不足している状況にあるため、今後このリソースの集中化
を図っていくことも重要ではないかと認識している。
→ 産官学の連携については、次期の第IV期「公的統計の整備に関する基本的な計
画」の検討の場などで、議論を深めていきたい。
しろまる 上記の発言の他に意見はなく、当該項目は了承された。
カ 「V 報告提出後の対応」及び「VI 結びに〜公的統計の総合的品質確保に向け
て着実な実行を〜」
事務局から、記載内容の概要について説明があった。
しろまる 委員等からの発言はなく、当該項目は了承された。
キ タイトル
しろまる 川﨑座長から、報告書のタイトルの「総合的品質向上」との表現が「総合的品
質管理」と誤認させるおそれがあるため、「公的統計の総合的な品質向上に向けて」
に変更することが提案された。
委員等からの主な発言は以下のとおり。
・ 総合的品質管理というものがこの報告書で非常に大きなことを占めている。と
ころが、総合的品質管理自体は、民間の場合は、全社的品質管理というような言
い方で、むしろ取組の規模感のようなことを表現している。一方で、今回いろい
ろな側面で検討していただいているのは公的統計の品質自体を総合的に向上させ
ていくということなので、前者とは少しニュアンスを変えるべきではないかと考
えていたところであり、「総合的な」という表現にすることは適切と考える。
・ 座長の提案のとおり「総合的な品質向上」に変更することで趣旨が伝わると思
う。36 ページの「結びに」のサブタイトルを修正する必要があるが、報告書の
タイトルは、提案のように、「公的統計の総合的な品質向上に向けて」が適して
いると今の説明を聞いて理解した。
しろまる 委員等から特段の異議はなかったため、タイトルの修正は了承された。
ク 報告書全体
しろまる 各事項について、修正を行うこととしたものの文案については、座長に一任さ
れた。
しろまる 報告書案全体について、特別検討チームとして了解された。 6(2)その他
しろまる 最後に、構成員、吉開政策統括官から以下のとおり発言があった。
・ 本特別検討チームが各府省に依頼した今回の「点検・確認」については、まず
は、各府省が、既にそれぞれ自己点検を始めていただいていたことが着実に反映
され、短期間にもかかわらず、的確な回答をいただき、この報告書に反映するこ
とができた。「点検・確認」で把握した実態(エビデンス)も反映している、本
報告書に提示されたこれらの提言が、各府省の公的統計の品質向上に向けて、こ
れから具体的な活動として推進されていくことを願っている。
・ 研究者というのは新しいものを作りたいものであるため、場合によっては、今
の公的統計を批判的な立場で見てしまうこともあったが、作成の現場がどういう
状況であるのかということを改めて学ばせていただいたことで、これからこの統
計をよりよくしていくことは社会全体をよくしていくことに必ずつながるので、
どのような研究を我々がしなければならないのか、どのような教育を大学の中で
しなければならないのかということを深く考えさせていただく機会となった。そ
ういう意味で、我々は研究者でもあり、教育者でもあるので、改めてもう一度自
分の役割というのを見直し、これからも、皆様と一緒に公的統計の改善や品質の
向上に努めていきたいということを強く思った。
・ デジタル化に関する専門家として検討に参加させていただいた。その中で、統
計に関するシステム等の整備と保守をきちんと実施することの重要性を改めて認
識した。今後は、デジタル技術が進化していく状況を踏まえて、公的統計の活用
のあり方、統計業務の業務改善、品質向上、効率化についてもデジタル化の観点
で引き続き検討することが必要と考える。
・ 医療など人間の判断、行動に依存するタイプの業務プロセスの品質管理の専門
家として関わらせていただいたが、今回の事案の分析・評価を通じて、各府省の
意見、これまでの取組などについて知見をいただくことができた。また、最終的
にきちんと現状の問題を把握して、要因を分析して対策をまとめ提言することに
参画できたことに感謝する。このような専門背景を基に、複雑な統計作成プロセ
ス、それを支えるリソース、体制の中で、どの辺に脆弱性があるのかということ
を、今回の事例を通して学ぶことができたので、今後、それを活用できる機会が
あれば貢献していきたい。
・ 座長を初めとする検討チーム各位に御礼申し上げる。品質管理におけるPDC
Aという概念が、より多くの方に御理解いただけるように、先ほど申し上げたP
DCAのPというのは「目的とそれを達成するための方法、手順」であり、私た
ちは、この方法と手順を「標準」と呼んでいるが、今回は、標準の代わりに「業
務マニュアル」という形で用語を使わせていただいている。このPというものが、
そういう2つのものから構築されて、これを、教育訓練をして遵守するのが Do
であり、そして、Check というのは標準が守られたかどうかということに着目す
る、このようなPDCAの概念を多くの方々が理解され、活用いただくことを
願っている。
・ 報告書の「I はじめに」のところで下線を引いていただいた「『エラーの
発生自体を悪とする』のではなく、『エラーに対して社会や統計ユーザーを第
一に考えた対応がなされないことを悪とする』」の部分が今回の報告書に記載
されたことは大変意義がある。今回の事案では、誤りが発生した時点で責任あ 7る立場の者が直ぐに公表していればこれほどの問題にはならなかった。誤りは
発生するものであり、発生したら速やかに対応するという風土が根付いていく
ことを期待したい。
・ 今回の事案で、統計に対する国民からの厳しい批判を受けて、現場の職員は辛
い日々を送ったと推察するが、対応精査TFや特別検討チームでの審議、さらに
は点検・確認の過程で、現場の職員の皆さんから真摯な意見や改善へのアイデア
を出していただいたことは高く評価したい。今回、このようなメッセージ性の強
い報告書を取りまとめることができたのは大変インパクトのあることであり、こ
れを統計委員会としてもしっかり受け止めて、建議につなげて、次期の基本計画
に盛り込むことで実効性のあるものにしていく必要があると認識している。
・ 報告書の取りまとめに際して、各構成員、事務局、各府省に感謝したい。特に
各府省におかれては、この報告書を「これをやれ」という指示書であると考えて
ほしくない。統計を作成する各府省においては、幹部と実務担当者が、この報告
書を通じて自主的に取り組み、こうすれば統計をより上手く作成できると認識し
てもらいたい。統計を作成する各府省がドライバーだとすれば、統計委員会はナ
ビゲーターであり、ドライバーが気づかない留意点を指摘することが今回の特別
検討チームの役割であり、報告書のねらいだった。報告書はひとつの終着点であ
るが、総務省及び各府省には新たな出発点として、今後取り組んでいただきたい。
・ 特別検討チームの構成員の皆様におかれては、長期間にわたり、本当に密度の
濃い議論をしていただき感謝したい。専門家の観点から、特に品質管理という観
点から見ていただき、我々行政官ではなかなか気づかない気づきも多くあったの
で、本当に中身の濃い報告書をまとめていただくことができたと思う。本当に感
謝を申し上げる。今、座長からも話があったとおり、この報告書が終着点ではな
いので、これを出発点として、これを政府として受け止めて実行していくという
ことが重要になるので、そこを言わばバトンを受け継いで、これを各府省に実行
していただく、あるいは総務省の体制を強化していくというのが我々の務めだと
思うので、そこをしっかり行っていきたいと思う。
以上

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