令和3年度 地方公務員の過労死等に係る公務災害認定事案に関する調査研究(概要)
自治行政局公務員部
1.内 容
地方公務員災害補償基金が平成22年1月から令和2年3月までの期間に、公務上の災害と認定した事案(468件※(注記))について、
認定理由書や裁決書等を基に事案の収集 ・ データベース構築 ・ 集計(クロス集計)・ 分析を実施し、 地方公務員の過労死等の実
態を把握。 ※(注記) 脳・心臓疾患182件、精神疾患286件
1 被災者の個人属性、被災傷病名、職員区分、職務における負荷要因などの " データベースを構築 "
2 認定事案を 「脳・心臓疾患」 「精神疾患・自殺」 に区分し、" 基本集計、クロス集計を中心とした分析を実施 "
3 認定時の疾患名(決定時疾患名)をカテゴリ別に分類したことにより、" 基礎情報を整理 "323181373534230171080 20 40 60
狭心症
心筋梗塞
心停止(心臓性突然死を含む。)
重症の不整脈(心室細動等)
肺塞栓症
大動脈瘤破裂(解離性大動脈瘤を含む。)
くも膜下出血
脳出血
脳梗塞(脳血栓症、脳塞栓症、ラクナ梗塞)
高血圧性脳症心・血管疾患65件脳血管疾患117件
脳・心臓疾患182件中、心・血管疾患は65件(35.7%)、脳血管疾患は
117件(64.3%)。男女別でみると、男性が約9割(156件、85.7%)、
女性が約1割(26件、14.3%)であった。また、女性の認定件数については、
「心・血管疾患」 は1件のみであり、残りの25件はすべて「脳血管疾患」であった。
心・血管疾患(65件)の内訳は、
・ 心筋梗塞 23件(12.6%)
・ 心停止 18件( 9.9%)
・ 重症の不整脈 13件( 7.1%)
・ 大動脈瘤破裂 8件( 4.4%)
・ 狭心症 3件( 1.6%)であり、
脳血管疾患(117件)の内訳は、
・ 脳出血 44件(24.2%)
・ くも膜下出血 42件(23.1%)
・ 脳梗塞 31件(17.0%)であった。
図1-1 決定時疾患名の分布
脳・心臓疾患12.成 果
3.主な分析結果
■しかく男性(156) ■しかく女性(26) 総数(182)0自治行政局公務員部4721348100045146150 20 40 60 80
義務教育学校職員
義務教育学校職員以外の教育職員
警察職員
消防職員
電気・ガス・水道事業職員
運輸事業職員
清掃事業職員
船員
その他の職員(一般職員等)15134676503426111830 50 100 150 200
異常な出来事・突発的事態に遭遇
日常の職務に比較して特に過重な職務に
従事(長時間労働)
交代制勤務職員の深夜勤務・仮眠時間
不健康な勤務環境下
緊急呼出等公務の性質
精神的緊張を伴う職務
その他
自治行政局公務員部2■しかく男性(156) ■しかく女性(26) 総数(182)106件
過重負荷が認められる職務従事状況292件の主な内訳は、
・ 『日常の職務に比較して特に過重な職務に従事(長時間労働)』
160件(54.8%)
・ 『精神的緊張を伴う職務』 58件(19.9%)
・ 『その他』 37件(12.7%)
であった。
『日常の職務に比較して特に過重な職務に従事(長時間労働)』
の件数は男女ともに最も多く、男性は252件のうち134件(53.2%)、
女性は40件のうち26件(65.0%)となっている。
職員区分別の事案数(182件)の内訳は、
・ 義務教育学校職員 61件(33.5%)
・ その他の職員(一般職員等) 50件(27.5%)
・ 警察職員 35件(19.2%)
・ 義務教育学校職員以外の教育職員 27件(14.8%)
・ 消防職員 8件( 4.4%)
・ 電気・ガス・水道事業職員 1件( 0.5%)
であり、運輸事業職員、清掃事業職員、船員の事案はなかった。
男女別でみると、全ての職員区分で男性が大半を占めているが、
女性は26件のうち、義務教育学校職員が14件であり、女性の
事案数の半分以上を占めている。
図1-3 過重負荷が認められる職務従事状況
図1-2 職員区分別の事案数
■しかく男性(252) ■しかく女性(40) 総数(292)
(注)脳・心臓疾患は182件(男156件、女26件)であるが、1つの事案に複数の職務従事状況が含まれる場合はそれぞれを1件としてカウントしているため、総数(292件)とは一致しない。
脳・心臓疾患
脳・心臓疾患338(1)
23(17)
82(51)4(3)16(10)8(7)38(21)4(4)5(4)
53(27)
19(10)
41(0)4(0)16(4)1(0)1(0)
14(4)1(0)2(0)
28(3)
31(5)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
異常な出来事への遭遇
仕事内容
仕事の量
勤務形態
異動
昇任
業務執行体制
仕事の失敗
不祥事
対人関係等
住民等との関係
業務負荷が認められる出来事の該当状況429件の主な内訳は、
・ 『仕事の量』 98件(22.8%)
・ 『対人関係等』 81件(18.9%)
・ 『異常な出来事への遭遇』 79件(18.4%)
・ 『業務執行体制』 52件(12.1%)であった。
男女別でみると、男性290件のうち、『仕事の量』82件(28.3%)、
『対人関係等』53件(18.3%)、女性139件のうち、『異常な出来事への
遭遇』41件(29.5%)、『住民等との関係』31件(22.3%)が多くなって
いる。
(自殺事案)
自殺事案は171件で、主な内訳は、『仕事の量』55件(32.2%)、
『対人関係等』30件(17.5%)、『業務執行体制』25件(14.6%)
となっている。
男女別でみると、男性は『仕事の量』が多く51件、女性は『住民等との
関係』が多く5件となっている。
図2-2 業務負荷が認められる出来事の該当状況
110(75)
57(0)
90(63)2(1)10(0)
17(0)
12(0)2(0)33(9)
73(0)
28(7)
16(0)
12(0)
17(0)1(0)0 50 100 150
気分・感情の障害 F3計(a、b、他)
ストレス関連の障害 F4計(c〜f、他)
F32: うつ病エピソード a
F33: 反復性うつ病性障害 b
F43.0: 急性ストレス反応 c
F43.1: 心的外傷後ストレス障害 d
F43.2: 適応障害 e
F45: 身体表現性障害 f
図2-1 決定時疾患名の分布
精神疾患
精神疾患286件中、気分・感情の障害(F3)は143件(50.0%)、
ストレス関連の障害(F4)は130件(45.5%)、分類できなかった事案
は13件(4.5%)。男女別でみると、男性は気分・感情の障害(F3)が
多く110件、女性はストレス関連の障害(F4)が多く73件となっている。
細分化した疾患名のうち、うつ病エピソード(注) 118件、心的外傷後ス
トレス障害29件、適応障害29件、急性ストレス反応26件となっている。(
注)うつ病エピソードとは、抑うつ(気分の落ち込み)の症状を示す疾患。
(自殺事案)
自殺事案は90件で、分類できなかった6件を除く84件すべてが
気分・感情の障害(F3)であり、このうち70件がうつ病エピソードであった。主な内数
■しかく男性(167) ■しかく女性(106) 総数(273)
(注)1.精神疾患286件(男178件、女108件)の内訳を示したもの。
2.( )は、うち自殺事案の数。
3.a〜fは、国際疾病分類(ICD)コードに基づき、障害別に区分できた事案を集計。
4.F3(a, b)に区分できなかった事案23件、F4(c〜f)に区分できなかった事案43件(計66件)については、
それぞれF3計、F4計に含めている。
5.いずれにも分類できなかった事案13件については、上記グラフに含めていない。
■しかく男性(290) ■しかく女性(139) 総数(429)
(注)1.精神疾患は286件(男178件、女108件)であるが、1つの事案に複数の業務負荷に該当すると判断された
事案が含まれる場合はそれぞれを1件としてカウントしているため、総数(429件)とは一致しない。
2.( )は、うち自殺事案の数。
精神疾患
12(0)
11(0)4(0)13(1)2(0)1(0)1(0)35(0)
10(8)
14(9)9(6)4(0)01(1)060(31)
12(1)
12(4)9(7)13(5)1(0)1(1)1(0)32(12)
22(7)4(3)001(0)00
23(5)
0 10 20 30 40 50 60
義務教育学校職員:56件
義務教育学校職員以外の教育職員:41件
警察職員:22件
消防職員:30件
電気・ガス・水道職員:4件
運輸職員:3件
清掃職員:2件
その他の職員(一般職員等):150件
異常な出来事への遭遇
仕事の量
対人関係等
住民等との関係
図2-3 ×ばつ業務負荷が認められる出来事の該当状況
業務負荷が認められる出来事の該当状況308件について、
職員区分別にクロス集計すると、それぞれも最も多いのは、
・ 義務教育学校職員
→ 『住民等との関係』 56件中22件(39.3%)
・ 義務教育学校職員以外の教育職員
→ 『仕事の量』 41件中14件(34.1%)
・ 警察職員
→ 『仕事の量』 、 『対人関係等』
22件中各9件(40.9%)
・ 消防職員
→ 『異常な出来事への遭遇』、『対人関係等』
30件中各13件(43.3%)
・ その他の職員(一般職員等)
→ 『仕事の量』 150件中60件(40.0%)
であった。
住民等との関係
仕事の量4(注)1.精神疾患は286件であるが、1つの事案に複数の業務負荷に該当すると判断された事案が含まれる場合はそれぞれを1件としてカウントしているため、出来事数(308件)とは一致しない。
2.業務負荷が認められる出来事のうち、主な4項目のみを抽出して記載している。
3.( )は、うち自殺事案の数。
仕事の量
精神疾患