漁港における放置船対策に関する実態調査


令 和 3 年 3 月 1 7 日
沖 縄 行 政 評 価 事 務 所
漁港における放置船対策に関する実態調査
<調査結果の公表>
総務省沖縄行政評価事務所(所長:城間盛孝)では、沖縄県内の漁港管理者の自主的な
取組を後押しする観点から、県内にある86漁港の放置船の実態や放置船対策の実施状況を
調査しました。
本調査結果は、放置船の所有者に対する指導状況、放置船の処分の状況、放置船の未然
防止策の実施状況など、それぞれの状況に応じた取組を整理しており、これを公表すると
ともに、沖縄県や市町村の漁港管理者に対し参考として情報提供しました。
しろまる調査実施時期 令和2年9月〜3年3月
しろまる調査対象機関 沖縄総合事務局
しろまる関連調査等対象機関
沖縄県(27漁港)、24市町村(59漁港)(注)、関連事業者等
(注) 管理漁港を有する市町村は県内に25市町村あるものの、このうち
那覇市が管理する壷川漁港は、現在、埋立てにより存在しないため、
同市を除き調査を実施。
【連絡先】
総務省沖縄行政評価事務所
評価監視官室(渡邊、新井)
電話:098-866-0159
FAX :098-866-0146
本報道資料及び結果報告書は沖縄行政評価事
務所ホームページに掲載しています。
https://www.soumu.go.jp/kanku/okinawa.html
漁港における放置船対策に関する実態調査の結果(概要)
 近年、漁港は漁業活動の重要な拠点としての役割だけではなく、観光資源としての役割も担っている。
 その漁港に、長期間使用されず破損した状態の船舶等(以下「放置船」という。)が多数放置されている。
 放置船は、災害時の二次被害(台風時の他の船舶や近隣住宅への被害等)や漁業への支障、また火災や不法投棄の誘発等周辺環
境への悪影響などを生じさせている。
放置船の推移(沖縄県内)
H28年度
(2016)
697隻
R2年度
(2020)
923隻(注)
(注) 県の放置船の定義変更が影響
県 :317隻(H28)➡541隻(R2)
市町村:380隻(H28)➡382隻(R2)
(注記) 各年度の隻数は、例年5月頃の県放置
船調査で把握した隻数。以下同じ。
1漁港当たりの放置船数(R2年度)
本島漁港
約7.7隻
離島漁港
約14.2隻<約2倍の放置船が発生
放置船の支 障 事 例
公園 広場
【事例1】
船内やその周辺にゴミが不法
投棄されている
【事例2】
台風時に放置船(又はその一
部)が飛ばされ、近隣の民家に
被害が出るおそれがある
【事例3】
近隣の公園や広場にいる児童
が近づいて遊ぶなどしてけが
をするおそれがある
報告書P8〜10、P14〜161漁港管理者における放置船対策上の悩み(行政指導〜発生防止の取組)
I 所有者への行政指導に当たって
所有者探索及び所有者が死亡してい
る場合の相続人の特定が困難
II 放置船の処分に当たって
・漁港管理者による処分費用の確保が困難
・財産権を侵害するおそれがあるため廃棄物判定が困難
・自治体が処分してくれるとの前例が更なる放置を誘発
する懸念
III 放置船の未然防止に当たって
船舶所有者のモラルの欠如
背景
沖縄県内の漁港における放置船の実態
所有者への行政指導に当たって
【全体版】 【船種別】
【行政指導と直近の自主撤去の割合】
I 報告書P27〜42、P60
区分 行政指導
R1年度
放置船数
自主
撤去数
割合
県 実施 490隻 87隻 17.8%
市町村
実施 332隻 31隻 9.3%
未実施 29隻 1隻 3.4%
行政指導が自主撤去に
寄与している傾向
(注記)PB等:プレジャーボート等2行政指導の実施には
所有者の特定が必要
放置船における所有者不明船の割合
区分
R2年度
放置船数 所有者不明
県 541隻
185隻
(34.2%)
市町村 382隻
265隻
(69.4%)
市町村では県の約2倍
区分 漁船 漁船以外
(PB等)
所有者
不明
所有者
不明
県 310隻
82隻
(26.5%)
231隻
103隻
(44.6%)
市町村 214隻
127隻
(59.3%)
168隻
138隻
(82.1%)
市町村では漁船以外(PB等)の
8割以上が所有者不明
所有者探索及び所有者が死亡している場合の相続人の特定が困難(11/25漁港管理者)
所有者への行政指導に当たっての取組例
1漁船以外(PB等)の所有者探索
国交省を経由した日本小型船舶検査機構
への船舶番号等による所有者情報の照会
がH31年度から開始(無料、年4回)
☞積極的に実施されることで、PB等の所
有者探索の進捗が期待される
2放置船への書面の貼付
所有者不明船に勧告書等を貼付す
ることで、所有者等からの連絡や
近傍の漁業者等から情報提供があ
り、所有者の特定につながった漁
港管理者あり
3死亡している所有者の探索
県では、戸籍謄本等の交付請求や裁
判所への相続放棄等の確認を行い、
所有者の探索を実施
自主撤去と行政指導の関係
所有者への行政指導に係る漁港管理者の悩み
(注記) 日本小型船舶検査機構に直接、照会
することも可(有料、随時)
II 放置船の処分に当たって
・県 (H27年度〜R1年度):40隻
・市町村(H28年度〜R1年度):15隻
・処分実績がある漁港管理者は2割
(県及び4市町村/25漁港管理者)
・10m未満のFRP船(注)リサイクル処分費
用:約6万〜22万円
・リサイクル料金が記載されたチラシ
を知っている:7市町村
・リサイクルセンターにメール見積が
できることを知っている:4市町村
(注)放置船の9割以上がFRP船
・処分実績がある4市町村では、処分時以
降に発生した新規放置船の合計が最多の
ところで4隻(他は2隻以下)
・処分実績別の新規放置船の推移(参考)
1簡便な方法で正確な料金を把握
リサイクル料金表やメール見積等の
情報を入手して正確な料金(1隻6〜
7万円程度)を把握し、リサイクル処
分している漁港管理者(本島内)あり2査定を依頼
廃棄物に該当するか否かを判断する
ため、放置船の財産価値の評価に当
たり販売業者等に査定を依頼してい
る漁港管理者あり
3処分による放置の誘発例なし
処分実績のある漁港で処分時以降に
発生した新規放置船は、最多のとこ
ろでも4隻であり、放置船の増加を
誘発している状況にはない(注)
(注)当該漁港の漁港管理者では、漁業者への意識
啓発や監視カメラの設置等の未然防止策も講じ
ており、これが新規船数の抑制につながってい
る可能性もある 3
区分
実績あり(4市町村)
実績なし(20市町村)
H28年度→R2年度
41隻 → 16隻
339隻 → 366隻
放置船の処分の状況 放置船のリサイクル処分費用
報告書P42〜60
放置船処分と新規放置船
放置船の処分に係る漁港管理者の悩み➡
漁港管理者による処分費用(運搬費、リサイクル料等)の確保が困難(13/25漁港管理者)
リサイクルのための処分費用よりもはるかに高額な処分費用を想定している漁港管理者(本島内)あり
財産権を侵害するおそれがあるため、廃棄物の判定が困難(12/25漁港管理者)
自治体による処分の前例を作ることで更なる放置を誘発する懸念(12/25漁港管理者)
放置船の処分に当たっての取組例等
III 放置船の未然防止に当たって
放置船の未然防止に係る漁港管理者の悩み
船舶所有者のモラルの欠如(11/25漁港管理者)
(管理責任を負う所有者が、船舶を自ら処分せず漁港内に放置している)
・巡回・パトロールを実施(19/25漁港管理者)
・漁業者等への意識啓発(8/25漁港管理者)
・監視カメラの設置(3/25漁港管理者) 等
1関係機関と巡回
警察や第11管区海上保安本部と合
同で巡回・パトロールを実施して
いる漁港管理者あり
2協議会で意識啓発
漁協関係者等を構成員とした協議会
で放置船の現状を報告したり、漁業
者の集会で注意喚起を行っている漁
港管理者あり
3リース重機の共同使用
廃業や買換えを検討している船舶所有
者に対して、漁港管理者が所有者不明
船の処分のためにリースした重機を無
料で使用させる旨案内している漁港管
理者あり
4放置等禁止区域の指定
県管理7漁港で放置等禁止区域(注)を指定し、漁船とPB等をすみ分け(少なくとも3漁港管理者が指定を検討中)
放置等禁止区域を指定した効果について、「指定区域外に係留・保管している所有者等に対して制度の趣旨を説明・指
導することにより支障が解消できた」「放置等禁止区域という根拠ができたため、漁協が積極的に所有者等に対して移動
等を指導できるようになった」との意見あり
(注)「放置等禁止区域」とは、漁港漁場整備法第39条第5項により、漁港管理者が、漁港の保全上特に必要があると認めて指定した区域のこと。同区域に
おいては、漁港管理者が指定した船舶等を捨てること又は放置することを禁止できる。
報告書P60、P65〜704漁港管理者における未然防止対策
放置船の未然防止に当たっての取組例

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