AEDの利用環境整備に関する実態調査(公表資料)

1AEDの利用環境整備に関する実態調査
-緊急時の敷地外での使用を中心として-
(調査結果)
自動体外式除細動器(以下「AED」という。)は、平成16年に、非医療従事者による使用が認められ、国内において急速に普及し、今日では、
AEDによる心肺蘇生の有無が傷病者の生存や社会復帰にも影響を及ぼす結果となっています。
他方、AEDの普及台数に対し、救命された人数が不十分、AED設置施設の敷地外でのAEDの使用の推進が必要などとの有識者の指摘があります。
総務省東北管区行政評価局は、東北6県の県庁所在市内の48 AED設置者(国の合同庁舎12、県庁・市役所12、民間事業所24)における緊急時の敷地外
でのAEDの使用に関する実態を、令和元年6月から調査し、11月19日、国の合同庁舎の管理官署に調査結果を通知しました。
調査結果の
ポイント
通知事項
【緊急時の敷地外でのAEDの使用
を推進するために必要な取組】
令 和 元 年 1 1 月 1 9 日
東 北 管 区 行 政 評 価 局
しろまる 本報道資料・結果報告書は、東北管区行政評価局のホームページに掲載しています。
http://www.soumu.go.jp/kanku/tohoku.html
〈照会先〉
総務省東北管区行政評価局
評価監視官 佐々木 猛 ☎ 022-262-9234
評価監視調査官 佐野 友則 〃
AEDの使用事例を把握・分析
・敷地外で傷病者が発生した場合、除細動までに、
より多くの時間を要する可能性が高い。
・AED設置者が敷地外での傷病者の発生に備え、
i) 施設入口にAED設置施設であることを表示
し、敷地外で傷病者の発生を把握した市民が
AEDにたどり着けるようにしておくこと
ii) 速やかに敷地外にAEDを持ち出し、又は
一時的に貸し出せるようにしておくこと
が重要
1施設入口にAED設置施設であることが表示
されていない。
2敷地外でのAEDの使用要請への具体的な対応を
取り決めていないなど、速やかに対応できない
おそれあり。
3救命講習を未実施又は不定期実施となっており、
救命講習の受講機会が確保されていない。
(AED設置場所の周知や敷地外でのAEDの使用を推進
するためには、救命講習の受講が有効な方策の一つ)
4AED設置場所に関する情報がAEDマップ等*や、
119番通報者にAEDの設置場所を情報提供等
する消防本部に登録されていない。
*(一財)日本救急医療財団や地方公共団体が運営するAEDマップ・リスト
1施設入口にAED設置施設で
あることを表示
2敷地外でのAEDの使用要請
への対応を具体的に取り決め
3できるだけ多くの職員が救命
講習を受講する機会を設ける
ことにより、職員の意識を向上
4AED設置場所に関する情報を
AEDマップ等や消防本部に
登録
(一財)日本AED財団*の意見
・昨年、東北6県内の商業施設において、敷地外
で発生した傷病者のため、施設からAEDを持ち出
そうとした際、施設がその許可に戸惑った例あり
・AED設置者、市民の双方が敷地外であっても
躊躇なくAEDを使用する風土を作り上げる必要あり
*AEDの普及、啓発、教育及び訓練に関する取組を実施 2AEDを使用するまでの流れ
*救急隊と交代するまで、又は、傷病者に正常な呼吸や目的のある仕草が認められるまで
心肺蘇生、AED使用を継続
AED設置施設内で
傷病者が発生した場合
AED設置施設の敷地外で
傷病者が発生した場合
AED設置施設の職員 傷病者の応急手当に当たる市民 AED設置施設の職員
傷病者の発生 傷病者の発生
↓ ↓
反応なし(呼吸なし・死戦期呼吸) 反応なし(呼吸なし・死戦期呼吸)
↓(周囲の職員に協力要請) ↓(往来する人に協力要請)
119番通報 119番通報
↓ ↓
心肺蘇生
(胸骨圧迫と人工呼吸)
心肺蘇生
(胸骨圧迫と人工呼吸)
↓ ↓

AEDを取り寄せる。
(傷病者の発生を把握した職員等が
AEDを持って応援に駆けつけ)
近くにAEDがあれば
AEDを取り寄せる。
(協力者が近くにAED設置施設がないか、
表示等を頼りに探し、取りに行く。)
入口付近に居合わせ、
傷病者の発生を知ら
された職員等がAEDを
持ち出し又は貸出し
AED使用*
AED使用*
AED設置者から把握したAEDの使用事例を基に、AEDを使用する
までの流れを整理(右図)
路上など、AED設置施設の敷地外で傷病者が発生した場合、
i) 傷病者の発生を把握した市民が近くにAEDがないか、表示等を頼り
に探すこと、
ii) AED設置施設の入口付近に居合わせ、敷地外での傷病者の発生
を知らされた職員等が、敷地外にAEDを持ち出すか、又は一時的に
貸し出すこと、
が必要であり、AED設置施設内での場合に比べ、除細動までに、より
多くの時間を要する可能性が高い。
AED設置者が、敷地外での傷病者の発生への備えとして、以下の対策を
実施することが重要
i) 施設入口にステッカー等によりAED設置施設であることを表示し、
敷地外で傷病者の発生を把握した市民が、AEDにたどり着ける
ようにしておくこと。
ii) 職員等が、傷病者の発生を知らされた際に、速やかに敷地外に
AEDを持ち出し、又は一時的に貸し出せるようにしておくこと。
⇒ これらの実態を実地に調査
調査対象機関:東北6県の県庁所在市内の48 AED設置者、6消防本部
(国の合同庁舎12、県庁・市役所12、民間事業所24)
調査実施時期:令和元年6月〜10月
しろまる AED設置者におけるAED使用事例の把握・分析 結果報告書 P5〜 3〈国、県・市のAED設置施設の表示状況〉
にじゅうまる 施設入口に表示 11/12 国の合同庁舎 11/12 県・市
1 AED設置施設の表示状況
厚生労働省の通知
・厚生労働省は、H27.8に、関係省庁、都道府県、市町村等に対し、
必 要 な と き に A E D を 設 置 し て い る 場 所 に た ど り 着 け る よ う 、
施設入口への表示を要請
調査結果1
緊急時の敷地外でのAEDの使用を推進するために必要な取組1
敷地外で傷病者の発生を把握した市民が、AEDにたどり着けるように、施設入口にAED設置施設であることを表示
結果報告書 P8〜
【表示していない理由】
・耐震工事により表示を取り外した際、工事完了後の再表示に関する引継ぎが不十分
・AEDの設置から年数が過ぎており不明
施設入口にAED設置施設であることが表示されていない。
2 敷地外でのAEDの使用要請への対応に関する取決め
ガイドライン*
・AEDを有効に機能させるため、いざという時の対応に関しても、
取決めをしておくことが求められる。
*ガイドラインとは、AEDの設置場所や配置に関して、具体的で根拠ある指標を示すため、
(一財)日本救急医療財団が平成25年9月に作成し、厚生労働省が公表している「AEDの適正
配置に関するガイドライン」(平成30年12月補訂)を指す。以下同じ。
・敷地外でのAEDの使用は、敷地内での場合に比べ、除細動までに、
より多くの時間を要する可能性が高いことから、誰が対応するのか
など取決めをしておくことが重要
緊急時の敷地外でのAEDの使用を推進するために必要な取組2
敷地外でのAEDの使用要請への対応について、速やかにAEDを使用できるよう、AED設置場所や対応者に応じて具体的に取り決める
とともに、その内容を職員等に徹底
調査結果2
敷地外でのAEDの使用要請への具体的な対応を取り決めていないなど、
速やかに対応できないおそれあり。
結果報告書 P16〜
〈国、県・市の敷地外でのAEDの使用要請への対応〉
にじゅうまる 具体的な対応は未定 3/12 国の合同庁舎 5/12 県・市
全職員に定期的に受講させている救命講習において、敷地外で傷病者が発生した場合には、施設の
入口付近にいる職員が速やかにAEDを使用することを徹底(仙台市)
【未定の理由】
・職員や来庁者にAEDを使用する
ことを考え、これまで敷地外での
AEDの使用を考えたことがない。
にじゅうまる 施設の入口付近にいる職員等が対応すると決めていても、敷地外でのAEDの使用要請を受けた職員
が、AEDを設置・管理する庁舎管理者等に確認の連絡を取ろうとすることも考えられるなどの意見あり
⇒庁舎管理者等に確認の連絡を取ることなく、速やかにAEDを使用することを徹底することも課題
にじゅうまる 他方、敷地外へのAEDの持ち出しに係る取決めを徹底する推奨的な取組もみられた。等(仙台第3合同庁舎の施設入口の表示) 4調査結果3
3 AED設置場所の職員への周知及び救命講習の受講機会の確保
ガイドライン
・AED設置施設関係者は、より高い頻度でAEDを用いた救命処理を
必要とする現場に遭遇する可能性があるため、AEDを含む心肺蘇生
の訓練を定期的に受けておくことが必要
・AED設置場所の周知や敷地外でのAEDの使用を推進するために
は、救命講習の受講は有効な方策
結果報告書 P22〜
定期的に救命講習を実施する
AED設置者の意見
・敷地外で傷病者が発生した場合には
施設の入口付近に居合わせた職員等
のみで応急手当を実施することになると
考えられるため、できるだけ多くの職員
の救命講習の受講が望ましい。、AED設置場所の周知に係る課題
・AED設置者の中には、掲示等によりAED設置場所を周知しているが、
例えば、異動直後で、AEDの付近を通行したことがなく、救命講習も
受講していない職員などはAED設置場所を認識していないおそれが
あるなどの意見あり
救命講習を未実施又は不定期実施となっており、受講機会が確保されていない。
〈国、県・市の救命講習の実施状況〉
i) 定期的に実施 7/12 国の合同庁舎 7/12 県・市
ii) 不定期に実施 4/12 国の合同庁舎 5/12 県・市
iii) 未実施 1/12 国の合同庁舎 0/12 県・市
緊急時の敷地外でのAEDの使用を推進するために必要な取組3
定期的に救命講習を実施するなど、できるだけ多くの職員が救命講習を受講する機会を設けることにより、AED設置場所の把握を含め、職員の意識を向上
緊急時の敷地外でのAEDの使用を推進するために必要な取組4
市民や119番通報者にAED設置場所を情報提供等する消防本部がAEDの所在を事前に把握することができるようにするため、
AED設置場所に関する情報をAEDマップ等や消防本部に登録
4 AED設置場所に関する情報のAEDマップ等及び消防本部への登録
AEDマップ等への登録の必要性
・(一財)日本救急医療財団や地方公共団体は、市民がAEDにアク
セスしやすくなるようにAED設置施設を地図上にプロットした
AEDマップ等(「財団全国AEDマップ」等)をホームページ上に公開
・厚生労働省は、H27.8に、関係省庁、都道府県、市町村等に、
財団全国AEDマップへの登録を要請
調査結果4
AED設置場所に関する情報がAEDマップ等や、119番通報者にAEDの設置
場所を情報提供等する消防本部に登録されていない。
〈国、県・市のAEDマップ等への登録状況〉
にじゅうまる AEDマップ等に登録 6/12 国の合同庁舎 11/12 県・市
〈国、県・市の消防本部への登録状況〉
にじゅうまる 消防本部に登録 2/10*国の合同庁舎 4/8*県・市
・AEDには、財団全国AEDマップへの登録書が同梱されていることから、AED設置者の認識不足が未登録の
主な原因と考えられ、市民がAED設置場所を把握できるようにするため速やかな登録が求められる。
・未登録の場合、消防本部は119番通報者に当該AEDの情報を提供できないこととなる。
*国、民間事業所を含めた消防本部への登録の仕組みがある青森市、盛岡市、仙台市及び秋田市内の国の合同庁舎、県・市
結果報告書 P26〜
消防本部への登録の必要性
・消防本部は、AED設置場所に関する情報を、119番通報者への
情報提供等に活用
【消防本部の意見】
・可能な限り、AED設置場所に関する情報を消防本部に登録してほしい。 5(1) AEDの普及
しろまる AEDは、通常の心肺蘇生法では対応できない心室細動の発症時に、心臓に電気ショックを与え心臓の異常な興奮を抑制し、正常な心臓の動きを
取り戻すための医療機器
しろまる AEDの使用について、厚生労働省は、従来、医師法(昭和23年法律第201号)に基づき医療従事者や救命救急士などに制限していたが、救急医療の
充実強化を図るため、平成16年7月に、「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用について」(平成16年7月1日付け医政発第0701001
号都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知。平成25年9月27日最終改正)を都道府県知事に対して発出し、非医療従事者にも一定の条件の下で
使用を認可。これを機に、AEDは国内において急速に普及
AEDの販売台数(累計)の推移
区 分 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28
消防機関 108 2,179 4,061 5,097 6,304 7,345 9,022 10,452 11,690 13,300 15,151 17,220 19,240
医療機関 5,946 15,766 26,659 35,927 51,100 60,478 67,878 75,296 83,639 93,412 104,721 115,737 127,810
PAD(注2) 1,307 10,961 45,417 96,545 164,343 218,050 264,165 310,075 364,959 428,821 516,135 602,382 688,329
(単位:台)
(注)1 (公財)日本心臓財団の資料による。
2 PADとは、公共施設などに設置される一般市民が利用できるAEDを示す。
【参考資料】
(2) 一般市民によるAEDの使用とその効果
しろまる 一般市民によるAEDの使用件数も増加し、心肺機能停止傷病者全搬
送人員のうち、一般市民により除細動が実施された件数は、平成29年に
は全国では2,102件、東北6県では140件
区 分 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29
青森県 3 20 16 35 17 23 18 18 14 18
岩手県 8 15 14 30 25 16 13 23 13 23
宮城県 10 10 17 19 17 18 25 29 33 29
秋田県 5 9 11 8 23 9 16 9 8 12
山形県 6 7 6 11 15 16 11 20 21 28
福島県 10 12 17 15 32 34 27 17 32 30
東北6県 計 42 73 81 118 129 116 110 116 121 140
全国 807 1,007 1,298 1,433 1,802 1,489 1,664 1,815 1,968 2,102
心肺機能停止傷病者全搬送人員のうち、一般市民により
除細動が実施された件数(東北6県)
(注) 総務省消防庁「救急・救助の現況」(平成30 年版)を基に、当局が作成した。
(単位:件)
一般市民が目撃した心原性心肺機能停止傷病者
のうち、除細動実施の有無別の生存率(平成29年)
(注) 総務省消防庁「救急・救助の現況」(平成30 年版)による。
約4.7倍
約6.7倍
しろまる 一般市民により除細動が実施された傷病者と、実施されなかった
傷病者*を比較すると、1か月後生存率は約4.7倍、1か月後社会復帰
率は約6.7倍と、生存や社会復帰に大きく影響 *適応でなかった傷病者を含む。

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