AEDの利用環境整備に関する実態調査(結果報告書)


AED の利用環境整備に関する実態調査
-緊急時の敷地外での使用を中心として-
結果報告書
令 和 元 年 1 1 月
東北管区行政評価局
目 次
第1 調査の目的等 ································································ 1
第2 調査結果 ····································································· 2
1 一般市民による AED の使用とその効果 ··········································· 2
(1) AED の普及·································································· 2
(2) 一般市民による AED の使用とその効果 ········································· 3
2 緊急時の敷地外での AED の使用の推進 ··········································· 4
(1) AED の使用事例の把握・分析·················································· 5
(2) AED 設置施設の表示状況······················································ 8
(3) 敷地外での AED の使用に係る課題 ············································· 9
ア 敷地外での AED の使用を推進するための取組及び意見 ························· 9
イ AED の配置······························································· 15
ウ 敷地外での AED の使用要請への対応に関する取決め ·························· 16
エ AED 設置場所の職員への周知及び救命講習の受講機会の確保 ··················· 22
3 AED 設置場所に関する情報の登録・公開········································· 26
(1) AED 設置場所に関する情報の AED マップ等への登録・公開状況 ··················· 28
ア AED マップ等への登録・公開状況··········································· 28
イ AED マップ等への登録・公開促進の取組····································· 29
ウ 参考事例(AED マップ等以外の AED 設置場所を周知するための取組) ············· 29
(2) AED 設置場所に関する情報の消防本部への登録状況 ····························· 30
ア 消防本部による AED 設置場所に関する情報の活用状況 ························ 30
イ AED 設置場所に関する情報の消防本部への登録状況 ··························· 31
ウ AED 設置場所に関する情報の消防本部への登録促進の取組 ····················· 32
4 緊急時の敷地外での AED の使用を推進するために必要な取組 ······················ 33
参 考 図 表 目 次
参考図表1 「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用について」(平成16年
7月1日付け医政発第0701001号都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知。
平成25年9月27日最終改正)(抜粋) ········································ 36
参考図表2 "日本におけるAEDを用いた市民による電気ショックと救命数増加".京都大学
ホームページ.http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/161027_1/01.pdf,
(参照 令和元年10月10日)(抜粋) ········································· 36
参考図表3 「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の有効活用等について」(平成27年
8月25日付け医政発0825第7号都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知)(抜粋)·· 37
参考図表4 「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の適切な更新等について(依頼)」
(平成27年8月25日付け医政発0825第8号関係省庁宛て厚生労働省医政局長通知)
(抜粋) ································································· 37
参考図表5 AED設置施設の表示状況(国の合同庁舎内訳) ····························· 38
参考図表6 AEDの適正配置に関するガイドライン(平成25年9月9日一般財団法人日本
救急医療財団(平成30年12月25日補訂))(抜粋) ·························· 38
参考図表7 敷地外でのAEDの使用要請への対応(国の合同庁舎の内訳) ················· 43
参考図表8 救命講習の実施状況(国の合同庁舎の内訳) ······························ 44
参考図表9 AED設置場所に関する情報の登録に係る関係通知 ··························· 45
参考図表10 「自動体外式除細動器(AED)の更なる有効活用に向けた取組の推進につ
いて(通知)」(平成26年7月7日付け消防救第116号 都道府県消防防災主管
部(局)長宛て消防庁救急企画室長通知)
(抜粋) ··························· 48
参考図表11 通信指令員の救急に係る教育テキスト(平成26年3月消防庁)
(抜粋) ········ 49
参考図表12 AED設置場所に関する情報のAEDマップ等への登録状況(国の合同庁舎の内訳)··· 50
参考図表13 AED設置場所に関する情報の消防本部への登録状況(国の合同庁舎の内訳)······ 51
第1 調査の目的等
1 目的
自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator。以下「AED」という。
)は、救
急隊員の到着までの間に、現場に居合わせた者が電気的除細動を速やかに行うことが心肺
停止者の救命に有効であるとの観点から、平成 16 年 7 月に、非医療従事者による使用が認
められ、医療機関のみならず学校、駅、公共施設、商業施設等を中心に、国内において急速
に普及している。
(AED 販売台数の推移:平成 16 年 1,307 台→平成 28 年 688,329 台(注))
(注) 公益財団法人日本心臓財団ホームページによる公共施設などに設置される一般市民が利用できる AED の
販売台数(累計)。
総務省消防庁の「救急・救助の現況」
(平成 30 年版)によると、一般市民による AED の
使用件数も増加し、平成 29 年には 2,102 件となっている。また、平成 29 年中に一般市民
が心原性心肺停止の時点を目撃した傷病者 2 万 5,538 人のうち、一般市民が AED を使用し
除細動を実施した傷病者 1,260 人の「1 か月後生存率」
(53.5%)は、実施されなかった傷
病者(適応でなかった傷病者を含む。
)2 万 4,278 人の生存率(11.4%)の約 4.7 倍、同じ
く AED を使用し除細動を実施した傷病者の「1 か月後社会復帰率」
(45.7%)は、実施され
なかった傷病者(適応でなかった傷病者を含む。
)の社会復帰率(6.8%)の約 6.7 倍であ
ったとされており、
AED による心肺蘇生の有無は、
傷病者の生存や社会復帰にも影響を及ぼ
す結果となっている。
他方、AED の普及台数に対して救命された人数が不十分との有識者の指摘があり、また、
AED の普及について、
「設置数を増やすことに重点が置かれてきたが、今後はより効果的か
つ戦略的な AED 配備と管理を進めていく必要がある」
(一般財団法人日本救急医療財団
「AED
の適正配置に関するガイドライン」
)とされている。
そのような中、一般財団法人日本 AED 財団によると、昨年、東北 6 県内の商業施設にお
いて、敷地外で発生した傷病者のため、施設から AED を持ち出そうとした際、施設がその
許可に戸惑った例があるとしており、AED が設置された施設内のみならず、敷地外でも AED
を躊躇なく使用される環境の整備が課題となっている。
この調査は、緊急時の AED の利用環境を整備する観点から、敷地外での AED の使用に関
する実態を中心として、
AED の使用の促進に関する取組等を把握し、
関係行政の改善に資す
るために実施したものである。
2 調査対象機関
AED 設置者(国の合同庁舎(12)、県(6)、市(6)、民間事業所(24))、消防本部(6)、関係団体等
3 担当部局
総務省東北管区行政評価局評価監視部第 2 評価監視官
4 実施時期
令和元年 6 月〜10 月
- 1 -
- 2 -
第2 調査結果
1 一般市民によるAEDの使用とその効果
調査結果等 参考図表
(1) AEDの普及
AEDは、通常の心肺蘇生法では対応できない心室細動の発症時に、心臓に
電気ショックを与え心臓の異常な興奮を抑制し、
正常な心臓の動きを取り戻
すための医療機器である。AEDの使用について、厚生労働省は、従来、医師
法(昭和23年法律第201号)に基づき医療従事者や救命救急士などに制限して
いたが、救急医療の充実強化を図るため、平成16年7月に、
「非医療従事者に
よる自動体外式除細動器(AED)の使用について」
(平成16年7月1日付け医政
発第0701001号都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知。
平成25年9月27日
最終改正)
を都道府県知事に対して発出し、
非医療従事者にも一定の条件の
下で使用を認めることとした(図表1-(1)-1)。図表1-(1)-1 AEDを用いても医師法違反とならないものとされる非医療従事者
しろまる 救命の現場に居合わせた一般市民
(業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心停止者に対し応急の
対応をすることが期待・想定されている者を除く。)しろまる 業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心停止者に対し応急の
対応をすることが期待・想定されている者
(以下の条件を満たす場合)
1 医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対
応を得ることが困難であること
2 使用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確認していること
3 使用者が、AED使用に必要な講習を受けていること
4 使用されるAEDが医療用具として薬事法上の承認を得ていること
(注) 非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会報告書(平成16
年7月1日非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会)を基
に、当局が作成した。
これを機に、
AEDは、
図表1-(1)-2のとおり、
医療機関のみならず学校、
駅、
公共施設、商業施設等を中心に、国内において急速に普及し、一般市民が利
用できるAEDの販売台数(累計)は、平成28年時点で約69万台となっている。
図表1-(1)-2 AEDの販売台数(累計)の推移
(単位:台)
区 分 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28
消防機関 108 2,179 4,061 5,097 6,304 7,345 9,022 10,452 11,690 13,300 15,151 17,220 19,240
医療機関 5,946 15,766 26,659 35,927 51,100 60,478 67,878 75,296 83,639 93,412 104,721 115,737 127,810
PAD(注2) 1,307 10,961 45,417 96,545 164,343 218,050 264,165 310,075 364,959 428,821 516,135 602,382 688,329
(注)1 公益財団法人日本心臓財団の資料による。
2 PADとは、公共施設などに設置される一般市民が利用できるAEDを示す。
1 H16 厚 生 労
働省医政局
長通知
- 3 -
(2) 一般市民によるAEDの使用とその効果
総務省消防庁の「救急・救助の現況」
(平成 30 年版)によると、一般市民
による AED の使用件数も増加し、
心肺機能停止傷病者全搬送人員のうち、一般市民により除細動が実施された件数は、図表 1-(2)-1のとおり、平成 29
年には全国では 2,102 件、東北 6 県では 140 件となっている。
図表 1-(2)-1 心肺機能停止傷病者全搬送人員のうち、一般市民により
除細動が実施された件数(東北 6 県)
(単位:件)
区 分 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29
青森県 3 20 16 35 17 23 18 18 14 18
岩手県 8 15 14 30 25 16 13 23 13 23
宮城県 10 10 17 19 17 18 25 29 33 29
秋田県 5 9 11 8 23 9 16 9 8 12
山形県 6 7 6 11 15 16 11 20 21 28
福島県 10 12 17 15 32 34 27 17 32 30
東北6県 計 42 73 81 118 129 116 110 116 121 140
全国 807 1,007 1,298 1,433 1,802 1,489 1,664 1,815 1,968 2,102
(注) 総務省消防庁「救急・救助の現況」
(平成 30 年版)を基に、当局が作成した。
また、図表 1-(2)-2のとおり、平成 29 年中に一般市民が心原性心肺機能
停止の時点を目撃した傷病者 2 万 5,538 人のうち、一般市民が AED を使用
し除細動を実施した傷病者 1,260 人の「1 か月後生存率」
(53.5%)は、実
施されなかった傷病者(適応でなかった傷病者を含む。
)2 万 4,278 人の生
存率(11.4%)の約 4.7 倍、同じく AED を使用し除細動を実施した傷病者の
「1 か月後社会復帰率」
(45.7%)は、実施されなかった傷病者(適応でな
かった傷病者を含む。
)の社会復帰率(6.8%)の約 6.7 倍であったとされて
おり、AED による心肺蘇生の有無は、傷病者の生存や社会復帰にも影響を及
ぼす結果となっている。
図表1-(2)-2 一般市民が目撃した心原性心肺機能停止傷病者のうち、
除細動実施の有無別の生存率(平成29年)
(注)1 総務省消防庁「救急・救助の現況」
(平成30 年版)による。
2 OPC/CPCとは、心肺蘇生が成功した傷病者のその後の生活の質を評価するために
用いられる分類法であり、OPC/CPCが共に1又は2であった者を社会復帰者という。
- 4 -
2 緊急時の敷地外でのAEDの使用の推進
調査結果等 参考図表
上記1のとおり、AEDの普及に伴い、一般市民によるAEDの使用件数も増加
し、
AEDによる心肺蘇生は、
傷病者の生存や社会復帰にも影響を及ぼしている。
他方、AEDの普及台数に対し、救命された人数が不十分、AED設置施設の敷地
外でのAEDの使用の推進が必要などとの有識者の指摘がある。
AEDの普及、啓発、教育及び訓練に関する取組を実施する一般財団法人日本
AED財団(以下「(一財)日本AED財団」という。)は、AED設置者が敷地外でのAED
の使用を戸惑った事例を背景として、図表2-1のとおり、AED設置者にあって
は、
敷地外でのAEDの使用の想定や準備をしておくとともに、
敷地外でもAEDを
使用することを明確にし、職員等が十分に認識しておくこと、市民にあって
は、
緊急時にAEDを速やかに取りに行けるようにするため、
事前に周辺のAEDの
設置場所をAEDマップ等(AEDマップ(注1)及びAEDリスト(注2)をいう。以下同
じ。)で把握しておくことなど、AED設置者、市民の双方が敷地外であっても躊
躇なくAEDを使用する風土を作り上げる必要があるとしている。
(注)1 AED設置施設を地図上にプロットしたものをいう。
2 AED設置施設を一覧にしたものをいう。
図表2-1 緊急時の敷地外でのAEDの使用の推進のために必要な取組の例
1 AED設置者・敷地外でのAEDの使用の想定や準備をしておくとともに、
敷地外でもAED
を使用することを明確にし、職員等が十分に認識
・誰もがアクセス可能な分かりやすい場所にAEDを配置
・市民が、事前にAEDの設置場所を把握しておき、緊急時にAEDを取り
に来られるようにするため、
AED設置場所に関する情報をAEDマップ等で
登録・公開
2 市民
・緊急時にAEDを速やかに取りに行けるようにするため、
事前に周辺のAED
の設置場所をAEDマップ等で把握
3 その他
1 行政機関・関係団体
・AED設置者への支援(敷地外でのAEDの使用に協力する事業所の標章
制度・顕彰制度)
・市民への啓発
2 救命講習実施者
・救命講習において、受講者に、敷地外でのAEDの使用の想定や、事前
に周辺のAEDの設置場所を確認しておくよう助言
(注) 当局が(一財)日本AED財団から聴取した結果による。
2 AED 救 命 人
数について
の有識者に
よる指摘
- 5 -
(1) AEDの使用事例の把握・分析
今回、
当局が東北6県の県庁所在市内の48 AED設置者
(国の合同庁舎12、県庁・市役所12、民間事業所24。以下同じ。
)におけるAEDの使用実績について
調査したところ、
図表2-(1)-1のとおり、
使用したことがあるものは、
11 AED
設置者となっている。
このうち、AED設置施設の敷地内で使用したことがあるものは9 AED設置
者、敷地外で使用したことがあるものは3 AED設置者となっている。
図表 2-(1)-1 AED の使用実績
区 分 国の合同庁舎 県・市 民間事業所 合計
調査対象機関数 12 12 24 48
AED を使用したことがある
AED 設置者
2 5 4 11
敷地内で AED を使用した
ことがある AED 設置者
1 4 4 9
敷地外で AED を使用した
ことがある AED 設置者
1 2 0 3
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、東北 6 県の県庁所在市内の国の合同庁舎(青森市内 2、盛岡市内 2、仙台
市内 4、秋田市内 2、山形市内 1、福島市内 1)
、県庁・市役所、AED を設置する民間
事業所(青森市内 4、盛岡市内 4、仙台市内 6、秋田市内 4、山形市内 3、福島市内
3)における AED の使用実績を示す。
3 AED 設置者に記録が残されている範囲内において、AED の使用実績を把握し、敷地
内・敷地外の別に整理した。
4 敷地内・敷地外の双方で AED を使用したことがある AED 設置者がいるため、AED を
使用したことがある AED 設置者(11)と敷地内・敷地外で AED を使用したことがある
AED 設置者の合計(12)は一致しない。
敷地内でAEDを使用したことがある国・県・市の5 AED設置者の使用事例を
みると、図表2-(1)-2のとおり、4事例は、傷病者の発生を把握したAED設置
施設の職員等がAEDを持って駆けつけ、AEDの使用に至っている。残る1事例
は、AED設置施設の職員等ではない市民による使用事例である。
図表2-(1)-2 AED設置者から把握した敷地内でのAEDの使用事例
AED 設置者 AED の使用事例の概要
青森県庁
県庁舎 2 階で作業していた工事作業員が倒れたため、
職員が 1 階に設置された AED を持って応援に駆けつけ、
応急手当を実施した。
(平成 30 年)
岩手県庁
県庁舎 2 階で職員が倒れ、心肺停止状態となった。
傷病者の発生を把握した職員が、1 階に設置された AED
を持って駆けつけ、2 回除細動を実施し、救急隊に引き継
いだ。
(平成 30 年)
仙台合同庁舎(国)
入居官署の職員が倒れ、当該官署の他の職員が 1 階に
AED を取りに来て、応急手当を実施した。
(平成 30 年)
- 6 -
宮城県庁
県庁舎 16 階で職員が倒れたため、他の職員が1階に設
置されていた AED を持って応援に駆けつけ、応急手当を
実施した。
(平成 30 年)
秋田市本庁舎
3 階多目的ホールでのサークル活動中に、
参加者が倒れ
たため、同サークルの代表者が、3 階に設置された AED を
使用し、応急手当を実施した。
(平成 29 年)
(注) 当局の調査結果による。
他方、敷地外でAEDを使用したことがある3 AED設置者の使用事例をみる
と、図表2-(1)-3のとおり、傷病者の発生を把握した市民が、近くにAEDがな
いか探し、取り寄せるか、又は、取りに行き、次に、AED設置施設の職員等
が敷地外にAEDを持ち出すか、又は、一時的に貸し出し、AEDの使用に至って
いる。
図表2-(1)-3 AED設置者から把握した敷地外でのAEDの使用事例
AED 設置者 AED の使用事例の概要
青森市本庁舎
市役所前の歩道を歩いていた男性が転倒して頭部を打
ち、
心肺停止状態となった。
現場に居合わせた通行人が心
肺蘇生を試みる中、AED が必要と声が上がり、市職員が庁
舎の AED を持ち出して使用した。
救急隊到着時には、
意識
レベルは低いものの心臓は動いており、救急車の中では
会話可能な状態まで回復した。
(平成 28 年)
盛岡第 2 合同庁舎(国)
庁舎外で交通事故が発生したため、傷病者を発見した
看護師が盛岡第 2 合同庁舎の職員に声をかけて、合同庁
舎の AED を持ち出し、電極パッドを装着した。その結果、
除細動不要と判定され、到着した救急隊に引き継いだ。
(平成 26 年)
宮城県庁
勾当台公園で開催されたイベントに参加した高齢者が
急に倒れたため、居合わせた介護士が救命措置を行うと
ともに、
近くの宮城県庁の職員に声をかけて、
県庁 1 階玄
関ホールの AED を持ち出し、
電極パッドを装着した。
その
結果、AED から「対応不要」のメッセージが表示された。
(平成 25 年)
(注) 当局の調査結果による。
また、東北6県の県庁所在市を管轄する消防本部から把握した敷地外での
AEDの使用事例をみても、図表2-(1)-4のとおり、同様に、傷病者の発生を把
握した市民が、AEDを探し、AED設置施設の職員等にAEDの使用又は貸出しを
要請しており、
中には、
119番通報を受けた消防本部が現場近くのAED設置施
設に持ち出し及び使用を要請したケースもある。
- 7 -
図表2-(1)-4 消防本部から把握した敷地外でのAEDの使用事例
消防本部 AED の使用事例の概要
盛岡地区
広域消防組合
道路(バス停)で人が倒れていて、目撃者が 119 番通報
し、
救急車を要請する一方、
そばにいた人が近くの公民館
に AED があると知っていたため、当該公民館の職員に声
をかけて、AED を持ち出した。電極パッドを貼り付けたと
ころで救急車が到着し、
救急隊に引き継いだ。
(平成 31 年)
仙台市
高齢の男性が、歩道上で倒れており心肺停止状態とな
っていた。通行人から傷病者の発生を知らされた近隣施
設の警備員が AED を持って駆けつけ、
胸骨圧迫及び AED に
よる除細動を実施。
その後、
救急隊到着まで胸骨圧迫を継
続した。
(平成 28 年)
秋田市
小学生がキャッチボール中、ワンバウンドしたボール
が胸に当たり心室細動を起こした。その場にいた野球の
指導者及び父兄が、近くの遊技場の職員に声をかけて、
AED を持ち出して、除細動を実施。その後、心拍再開、社
会復帰した。
(平成 29 年)
山形市
町役場近隣で傷病者が発生。
119 番通報を受けた市消防
本部が当該町役場に AED の持ち出し及び使用を要請し、
要請を受けた町役場職員が、
敷地外に AED を持ち出し、応急手当が実施された。(平成 29 年)
(注) 当局の調査結果による。
これらのAEDの使用事例を基に、AEDを使用するまでの流れを整理すると、
図表2-(1)-5のとおり、
路上など、
AED設置施設の敷地外で傷病者が発生した
場合には、
i) 傷病者の発生を把握した市民が近くにAEDがないか、表示等を頼りに探
すこと、
ii) AED設置施設の入口付近に居合わせ、敷地外での傷病者の発生を知らさ
れた職員等が、敷地外にAEDを持ち出すか、又は一時的に貸し出すこと、
が必要であり、AED設置施設内での場合に比べ、除細動までに、より多くの
時間を要する可能性が高い。
以上の敷地外におけるAEDを使用するまでの流れを踏まえると、
AED設置者
が、敷地外での傷病者の発生への備えとして、
i) 施設入口にステッカー等によりAED設置施設であることを表示し、敷地
外で傷病者の発生を把握した市民が、AEDにたどり着けるようにしておく
こと、
ii) 職員等が、傷病者の発生を知らされた際に、速やかに敷地外にAEDを持
ち出し、又は一時的に貸し出せるようにしておくこと、
が重要になると考えられる。
- 8 -
図表2-(1)-5 AEDを使用するまでの流れ
AED設置施設内で
傷病者が発生した場合
AED設置施設の敷地外で
傷病者が発生した場合
AED設置施設の職員 傷病者の応急手当に当たる市民 AED設置施設の職員
傷病者の発生 傷病者の発生
↓ ↓
反応なし(呼吸なし・死戦期呼吸) 反応なし(呼吸なし・死戦期呼吸)
↓(周囲の職員に協力要請) ↓(往来する人に協力要請)
119番通報 119番通報
↓ ↓
心肺蘇生
(胸骨圧迫と人工呼吸)
心肺蘇生
(胸骨圧迫と人工呼吸)
↓ ↓
AEDを取り寄せる。
(傷病者の発生を把握した職員等が
AEDを持って応援に駆けつけ)
近くにAEDがあれば
AEDを取り寄せる。
(協力者が近くにAED設置施設がないか、
表示等を頼りに探し、取りに行く。)
入口付近に居合わ
せ、傷病者の発生
を知らされた職員
等 が AED を 持 ち 出
し又は貸出し
(現場に協力者が少な
いなどの場合には、心肺蘇生にも協力)
AED使用 AED使用
救急隊と交代するまで、
又は、
傷病者に正常な呼吸や目的の
ある仕草が認められるまで
心肺蘇生、AED使用を継続
救急隊と交代するまで、又は、
傷病者に正常な呼吸や目的の
ある仕草が認められるまで
心肺蘇生、AED使用を継続
(注) 当局が把握した敷地外でのAEDの使用事例及び
「救急蘇生法の指針2015」
(厚生労働省)
を基に、当局が作成した。
(2) AED設置施設の表示状況
上記(1)のとおり、AED設置施設の敷地外で傷病者が発生した場合、少しで
も除細動までの時間を短縮するため、AED設置者が、施設入口にステッカー
等によりAED設置施設であることを表示し、
傷病者の発生を把握した市民が、
AEDにたどり着けるようにしておくことが重要となる。
厚生労働省においても、
平成27年8月に、
施設入口へのAED設置施設の表示
について、関係省庁、都道府県に対し、庁舎(出先機関含む。
)等において
設置・管理しているAEDについて、
必要なときにAEDを設置している場所にた
どり着けるよう、施設入口への表示や、市町村、関係団体等への周知を要請
している。
3 H27 厚 生 労
働 省 通 知
( 都 道 府 県
知事宛て)
4 H27 厚 生 労
働 省 通 知
( 関 係 省 庁
宛て)
- 9 -
今回、当局が東北6県の県庁所在市内の国・県・市の24 AED設置者(国の
合同庁舎12、県庁・市役所12。以下同じ。
)における施設入口のAED設置施設
の表示状況を調査したところ、図表2-(2)-1のとおり、2 AED設置者は、表示
していなかった。
図表 2-(2)-1 AED 設置施設の表示状況
区 分 国の合同庁舎 県・市 合計
調査対象機関数 12 12 24
施設入口に AED 設置施設である
ことを表示している AED 設置者11(91.7%)11(91.7%)22(91.7%)
施設入口に AED 設置施設である
ことを表示していない AED 設置者1(8.3%)1(8.3%)2(8.3%)
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、東北 6 県の県庁所在市内の国の合同庁舎(青森市内 2、盛岡市内 2、仙台
市内 4、秋田市内 2、山形市内 1、福島市内 1)
、県庁・市役所における AED 設置施設
の表示状況を示す。
3 ( )内は、調査対象機関数に占める構成比を示す。
施設入口にAED設置施設であることを表示していない2 AED設置者は、
その
理由について、i)耐震工事により表示を取り外した際、工事完了後の再表
示に関する引継ぎが不十分(国)、
ii)設置から年数が過ぎており不明(県・市)、
としているが、敷地外で傷病者の発生を把握した市民がAEDにたどり着きや
すくなるように、特段の理由がない限りは施設入口にAED設置施設であるこ
とを表示することが望まれる。
(3) 敷地外でのAEDの使用に係る課題
ア 敷地外でのAEDの使用を推進するための取組及び意見
上記(1)のとおり、AED設置施設の敷地外で傷病者が発生した場合、職員
等が、
傷病者の発生を知らされた際に、
速やかに敷地外にAEDを持ち出し、
又は一時的に貸し出せるようにしておくことが重要となる。
今回、調査対象とした消防本部、県の中には、図表2-(3)-1のとおり、
応急救護体制の整備・救命率の向上等を目的として、
緊急時に敷地外でも
AEDを使用するAED設置者を認定、登録又は把握する取組がみられた。
5 AED 設 置 施
設の表示状
況 ( 国 の 合
同庁舎の内訳) - 10 -
図表 2-(3)-1 緊急時に敷地外でも AED を使用する AED 設置者を
認定、登録又は把握する取組
機関名 取組の概要
青森地域
広域事務組合
消防本部
青森地域広域事務組合は、AED 設置者における応急救護体制
の整備を促進し、救命率の向上に寄与することを目的として、
平成 25 年から、AED を設置し、一定の要件を満たした AED 設置
者を、
「まちかどハートステーション」として認定し、認定され
た AED 設置者は、緊急時には、現場へ AED を搬送し、除細動を
含む応急手当を実施する。
(まちかどハートステーションの要件)
・AED を設置している。
・救命講習受講者がいる。
・緊急時に現場へ AED を搬送して、AED の使用に協力するこ
とができる。
・公表に承諾。
まちかどハートステーションに認定された AED 設置者は、ま
ちかどハートステーション標章を掲示するとともに、事業所
名・場所が公表される。
(注) 青森地域広域事務組合ホームページによる。
(まちかどハートステーション標章)
- 11 -
仙台市
消防局
仙台市消防局は、市民による AED の使用を促すため、平成 21
年から、AED を設置し、一定の要件を満たした事業所を「応急
手当協力事業所」として登録し、事業所の近隣で発生した傷病
者に対し、従業員や市民が AED を持って駆けつけ、救急車が到
着するまで応急手当を行うことで、救命率の向上を図る「杜の
都ハートエイド」制度(応急手当協力事業所表示制度)を導入
している。
(応急手当協力事業所の要件)
・AED が設置されている。
・応急手当講習の受講経験者などが勤務している。
・事業所の近隣で発生した傷病者への応急手当に協力する意
思がある。
応急手当協力事業所に登録された事業所は、応急手当協力事
業所であることが分かるステッカーを掲示するとともに、事業
所名・場所が公表される。
(注) 仙台市ホームページによる。
(杜の都ハートエイド応急手当協力事業所ステッカー)
また、AED 設置者は、施設の近隣で発生した傷病者に AED を
使用した場合に、AED の電極パッドの補填のための助成を受け
ることができる。
これらの取組を通じて、実際に、応急手当協力事業所に登録
された AED 設置者が、敷地外に AED を持ち出し、応急手当を実
施している。
- 12 -
敷地外での AED 使用事例の概要(再掲)
高齢の男性が、歩道上で倒れており心肺停止状態とな
っていた。通行人から傷病者の発生を知らされた近隣施
設の警備員が AED を持って駆けつけ、胸骨圧迫及び AED
による除細動を実施。その後、救急隊到着まで胸骨圧迫
を継続した。
(平成 28 年)
秋田市
消防本部
秋田市消防本部は、AED を用いた心肺蘇生等の一次救命処置
が迅速、的確に実践される体制構築を目指して、平成 18 年か
ら、一定の要件を満たした AED 設置者に対して、AED 設置施設
標章を交付するとともに、地域住民等に公表する制度を導入し
ている。
(AED 設置施設標章の交付要件)
・市民等が容易に視認でき、かつ、使用できる場所に AED を
設置してあること。
・従業員等が救命講習等を受講するなど、安全・安心への取
組が積極的であること。
AED 設置施設標章を交付された AED 設置者は、市民等が容易
に視認でき、かつ使用できる場所に AED を配置し、敷地外も含
めた AED の使用を推進する。
(AED 設置施設標章)
また、AED 設置施設標章の交付を受けた施設は、傷病者が発
生し、
AED が使用された場合は、
AED の電極パッドの無償給付を
受けることができる。
さらに、消防本部が、毎年、AED 設置施設標章の交付を受け
た AED 設置者を訪問し、
電極パッドの使用期限を点検するなど、
AED の使用体制を整備している。
山形県
村山保健所
山形県村山保健所は、平成 29 年度に、市民が AED を使用で
きる環境を整備するため、一般財団法人日本救急医療財団が運
営する AED マップに登録されている山形市、山辺町及び中山町
の AED 設置者を対象に、施設周辺で起きた事故や急病などの緊
急時に AED を一時的に貸し出しすることができるか調査してい
る。
同保健所は、調査により把握した、緊急時に AED を一時的に
貸し出しすることができる AED 設置者(約 400 施設)を、地域ご
とに一覧表にし、ホームページ上に公開している。
(注) 当局の調査結果による。
- 13 -
また、調査対象としたAED設置者の中にも、図表2-(3)-2のとおり、これ
らの取組を実施している例がみられた。
図表 2-(3)-2 敷地外での AED の使用を推進するための取組
機関名 取組の概要
青森市本庁舎 青森市本庁舎は、敷地外で傷病者が発生し、AED の使用を要
請された際には、施設の入口付近に居合わせた職員が、速やか
に、
敷地外に AED を持ち出し、
応急手当を実施するとしている。
この体制を整備するため、毎年度、職員に救命講習を受講さ
せ、救命講習受講者の勤務などの要件を満たした上、まちかど
ハートステーションの認定を受けるとともに、まちかどハート
ステーション認定事業所であることを施設入口に掲示し、緊急
時には、現場へ AED を搬送し、AED を使用することを職員等に
明確にしている。
仙台合同庁舎
(国)
仙台合同庁舎は、敷地外で傷病者が発生し、AED の使用を要
請された際には、施設の入口付近に居合わせた職員又は警備員
が、速やかに、敷地外に AED を持ち出し、応急手当を実施する
としている。
この体制を整備するため、救命講習受講経験者の勤務などの
要件を満たした上、仙台市杜の都ハートエイド制度の応急手当
協力事業所に登録するとともに、応急手当協力事業所であるこ
とを施設入口に掲示し、
近隣で傷病者が発生した場合には、AEDを敷地外に持ち出して、応急手当に協力することにしている。
(杜の都ハートエイド応急手当協力事業所の掲示)
宮城県庁 宮城県庁は、仙台市杜の都ハートエイド制度の応急手当協力
事業所に登録している。
この制度に基づき、応急手当協力事業所であることを施設の
入口付近に掲示するとともに、敷地外で傷病者が発生した場合
には、AED の使用など、応急手当に協力することとしている。
- 14 -
仙台市内
百貨店
敷地外で傷病者が発生し、AED の使用を要請された際には、
防災センターに情報が集約され、防災センター担当者が、速や
かに、店舗外に AED を持ち出し、応急手当を実施する。
この体制を整備するため、救命講習受講経験者の勤務などの
要件を満たした上、仙台市杜の都ハートエイド制度の応急手当
協力事業所に登録するとともに、応急手当協力事業所であるこ
とを施設入口に掲示し、
近隣で傷病者が発生した場合には、AEDを店舗外に持ち出して、応急手当を実施することを明確にして
いる。
さらに、毎年、新入社員を中心として救命講習を受講させ、
AED の操作方法を習熟させている。
(注) 当局の調査結果による。
さらに、図表2-(3)-3のとおり、AEDの使用を敷地内に限定せず、敷地外
での使用も念頭に規程を整備している例もみられた。
図表 2-(3)-3 敷地外での AED の使用も念頭に置いた規程整備の取組
機関名 取組の概要
盛岡第 2
合同庁舎
(国)
盛岡第 2 合同庁舎は、敷地外で傷病者が発生し、AED の使用
を要請された際には、基本的には、施設の入口付近に居合わせ
た職員が、速やかに、敷地外に AED を持ち出し、応急手当を実
施するとしている。
また、AED は、敷地内外にかかわらず、傷病者に対して、誰で
も使用できるようにしておくべきものであることから、内規に
よって、AED の使用者や、使用の対象となる傷病者を、来庁者
や職員に限定しないとしており、敷地内外を問わず、誰でも使
用できることを明確にしている。
(注) 当局の調査結果による。
他方、これらの取組を行っているAED設置者を含め、当局が48 AED設置
者から、敷地外にAEDを持ち出し、又は一時的に貸し出すに当たって、ど
のようなことが課題になり、
どのような対策が必要になるか聴取したとこ
ろ、
i)施設入口付近へのAEDの配置、
ii)敷地外でのAEDの使用要請への対応に関する取決め、
iii)全ての職員等がAED設置場所を把握し、
救命講習の受講等により、
速や
かにAEDを使用できるようにすること、
が必要などの意見が聴かれた。
なお、AEDの設置場所や配置に関して、具体的で根拠ある指標を示すた
め、一般財団法人日本救急医療財団(以下「(一財)日本救急医療財団」と
いう。)が平成25年9月に作成し、厚生労働省が公表している「AEDの適正
6 AED の 適 正
配置に関す
るガイドラ
イン
- 15 -
配置に関するガイドライン」(平成30年12月補訂。以下「ガイドライン」
という。
)等において、敷地外でのAEDの使用に関する特段の記載はない。
イ AEDの配置
ガイドラインでは、施設内のAEDはアクセスしやすい場所に配置されて
いることが望ましいとされている。
AEDの配置について、
AED設置者の中には、
まずは敷地内で発生する傷病
者を優先して考える必要があるが、
施設周辺の人通りが多い場合には、敷地外で発生する傷病者も考慮して、
敷地外からもアクセスしやすい、
施設
の入口付近にAEDを配置する必要があるのではないかとする意見が聴かれ
た。
敷地外でのAEDの使用を前提とすると、施設の入口付近への配置が適当
と考えられる。
今回、当局が国・県・市の24 AED設置者におけるAEDの配置状況を調査
したところ、全てのAED設置者が、少なくとも1台は、施設内からもアクセ
スしやすく、かつ、敷地外にも速やかにAEDを持ち出すことが可能な玄関
やロビーなど施設の入口付近にAEDを配置していた。
なお、
AED設置者の中には、
図表2-(3)-4のとおり、
施設の入口付近にAED
を設置することに加えて、高層階でAEDを使用する際に、運搬に時間を要
した経験などを踏まえて、施設の入口付近以外にも増設した例がみられ
た。
予算やAEDを設置可能なスペースなどの制約もあるが、
AEDの使用事例
や訓練結果などを踏まえて、
適時、
増設を検討することも有効と考えられ
る。
図表 2-(3)-4 AED の使用事例等を踏まえた AED 増設の取組
機関名 取組の概要
宮城県庁 宮城県庁は、従前、1 階正面玄関に AED を設置しており、平
成 25 年には敷地外の傷病者への AED の使用実績がある(前掲
図表 2-(1)-3)。平成 30 年 1 月に 16 階で職員が倒れた際、AED を 1 階から 16
階に運ぶのに時間を要したため、平成 30 年度、AED を 1 階に加
えて、2 階から 18 階の偶数階に増設配置した。
また、これに伴い、時間外や閉庁日の対応を考慮し、1 階の
AED の設置場所を、正面玄関から警備員が常駐している北口防
災センター前に変更した。
盛岡市内
百貨店
店舗外での事故や傷病者の発生にも対応できるよう 1 階中央
口に AED を設置していたが、AED が 1 階の 1 台だけでは店舗内
の傷病者への対応が万全ではないとの意見があったことから、
平成 29 年の AED 講習の際に、実際に AED を 1 階から高層階ま
で運搬するのに要する時間を測定した。
6 AED の 適 正
配置に関す
るガイドラ
イン(再掲)
- 16 -
その結果、1 階の AED だけでは高層階に運搬するまでに時間
が掛かり、緊急時の対応が万全ではないことが確認できたこと
から、
平成 29 年に、
高層階(閉店時間の遅い 7 階飲食店フロア)
にも AED を増設している。
(注) 当局の調査結果による。
ウ 敷地外でのAEDの使用要請への対応に関する取決め
AEDを有効に機能させるため、ガイドラインでは、いざという時の対応
に関しても、
取決めをしておくことが求められるとされている。
敷地外で
のAEDの使用は、敷地内での場合に比べ、除細動までに、より多くの時間
を要する可能性が高いことから、
誰が対応するのかなど取決めをしておく
ことが重要と考えられる。
今回、当局が、国・県・市の24 AED設置者が敷地外でのAEDの使用要請
があった場合、
どのような対応を考えているか調査したところ、
図表2-(3)
-5のとおり、職員等が敷地外にAEDを持ち出すとしているものは14 AED
設置者、
AEDを一時的に貸し出すとしているものは2 AED設置者、
未定とし
ているものは8 AED設置者となっている。
図表 2-(3)-5 敷地外での AED の使用要請への対応
区 分 国の合同庁舎 県・市 合計
調査対象機関数 12 12 24
職員等が敷地外にAEDを持ち出す
AED 設置者7(58.3%)7(58.3%)14(58.3%)敷地外にAEDを持ち出す職員等1(施設入口付近にいる)
職員・警備員・AED 管理
担当職員5(41.7%)6(50.0%)11(45.8%)
2(警備員等から連絡を
受けた)庁舎管理者等2(16.7%)1(8.3%)3(12.5%)
AED を一時的に貸し出す AED 設置者2(16.7%)0(0%)2(8.3%)
敷地外での AED の使用要請への
対応を未定とする AED 設置者3(25.0%)5(41.7%)8(33.3%)
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、東北 6 県の県庁所在市内の国の合同庁舎(青森市内 2、盛岡市内 2、仙台
市内 4、秋田市内 2、山形市内 1、福島市内 1)
、県庁・市役所における敷地外での AED
の使用要請への対応を示す。
3 ( )内は調査対象機関数に占める構成比を示す。構成比については、四捨五入によ
る表記のため、合計が 100 にならないことがある。
7敷地外での
AED の 使 用
要請への対
応 ( 国 の 合
同庁舎の内訳)6 AED の 適 正
配置に関す
るガイドラ
イン(再掲)
- 17 -
(ア) 職員等による敷地外へのAEDの持ち出しに係る課題
a (施設入口付近にいる)職員・警備員・AED管理担当職員による敷地
外へのAEDの持ち出し
職員等が敷地外にAEDを持ち出すとしている14 AED設置者のうち、
11 AED設置者は、施設の入口付近にいる職員、警備員又はAED管理担
当職員が、速やかに、敷地外にAEDを持ち出すとしている。
しかし、これらのAED設置者の中には、図表2-(3)-6のとおり、合同
庁舎のように複数の機関が入居している場合や、案内業務・警備業務
を外部に委託している場合など、職員、委託職員等がAEDを設置・管
理する庁舎管理者等に確認の連絡を取ろうとすることも考えられる
などの意見が聴かれた。
なお、民間事業所においても同様に、入居テナントがビル管理者に
確認の連絡を取ろうとすることも考えられるとする意見が聴かれた。
図表2-(3)-6 職員等による敷地外へのAEDの持ち出しに係る課題と必要
な対策
区 分
職員等による敷地外への AED の持ち出しに
係る課題と必要な対策(意見)
国の合同庁舎 ・ 敷地外で発生した傷病者に対しても、
施設の入口付近に居
合わせた職員が AED を使用する前提で、
毎年度、
救命講習を
実施している。しかし、AED は管理官署が設置したものであ
るため、
敷地外での AED の使用要請を受けた入居官署の職員
は、
敷地外に持ち出して使用することを十分に認識できてい
るとは思えず、
庁舎管理者に確認の連絡を取ろうとすること
も考えられる。
救命講習の受講機会が限られている中で、施設の入口付
近に居合わせた職員に、敷地外でも速やかに AED を使用さ
せるには、事前に AED を設置している 1 階の入居官署の職
員に、敷地外でも速やかに AED を使用することを行き届か
せることが課題となっている。
・ 敷地外での AED の使用要請があった際には、
警備員と庁舎
管理者が連携して対応することとしているが、
庁舎外に係る
ことを警備業務として予定しておくことは難しく、
警備員は
庁舎管理者に指示を仰いで対応することになると考えられ
るため、迅速に対応できないおそれがある。このため、施設
の入口付近に居合わせた職員による応援があることが望ま
しいが、
具体的にどのような事象が生じるか不明な中で、入口付近に居合わせた職員の対応を含めたルールを作ること
は難しい。
- 18 -
県・市 ・ 職員には、AED 設置場所や敷地外に AED を持ち出して使用
することを周知しているが、
総合案内や警備業務を実施する
委託職員は、
敷地外に AED を持ち出して使用することなどを
認識しておらず、敷地外での AED の使用の要請があった際
に、戸惑うことも考えられる。
民間事業所 ・ AED はビル管理者が設置したものであるため、入居テナン
トは、
AED を使用する際にビル管理者に確認を取ると考えら
れるが、
より迅速に対応するには、
傷病者が発生した際には
即座に AED を使用するように、
周知していく必要があるので
はないか。
(注) 当局の調査結果による。
施設の入口付近にいる職員等による対応の場合、
庁舎管理者等に確
認の連絡を取ることなく、速やかにAEDを使用することを徹底するこ
とが課題となっている。
他方、AED設置者の中には、図表2-(3)-7のとおり、全職員に定期的
に受講させている救命講習において、
敷地外で傷病者が発生した場合
には、施設の入口付近にいる職員が速やかにAEDを使用することを徹
底する取組や、店内放送を合図に売場責任者等が参集し、敷地外でも
AEDを使用することをルールとして共有するなどの取組がみられた。
図表 2-(3)-7 職員等による敷地外への AED の持ち出しに係る
取決めの徹底・ルール共有の取組
機関名 取組の概要
仙台市 仙台市市有施設では、近隣の敷地外で傷病者が発生した際、
施設の職員が速やかに敷地外へ AED を持ち出し、応急手当を実
施するとしている。
本庁舎を含む市有施設は、仙台市杜の都ハートエイド制度
(応急手当協力事業所表示制度)に登録され、その旨を示すス
テッカーを施設入口に掲示している。また、全職員を対象に 3
年に 1 度を目安に受講させている救命講習において、応急手当
協力事業所として、敷地外で傷病者が発生した場合には職員が
迅速に応急手当を実施することを徹底している。
仙台市内
商業施設
敷地外で傷病者が発生し、敷地外での AED の使用を要請され
た際には、
施設の入口付近に居合わせた職員等が、
店舗外に AED
を持ち出すか、又は一時的に貸し出す。
この体制を整備するため、毎年度実施する防災訓練の中で、
自社職員だけではなく、全テナントの職員も対象として、店舗
内外で発生する傷病者に円滑に AED を使用できるよう救命講習
を実施し、店舗内外に関わらず、速やかに AED を使用できるよ
うにしている。
- 19 -
福島市内
総合スーパー
緊急時、店内放送を合図に、売場責任者等(10 名程度)が参集
し、緊急対応することを社内ルールにしている。近隣であれば
敷地外であっても、店舗内に準じて対応することを職員間で共
有している。
(注) 当局の調査結果による。
b 庁舎管理者等による敷地外へのAEDの持ち出し
職員等が敷地外にAEDを持ち出すとしている14 AED設置者のうち、
3 AED設置者は、AED周辺には警備員が常駐しているが、庁舎警備業務
には庁舎外に係ることが含まれておらず、
警備員による積極的な対応
を望めないことなどを理由として、
警備員等から連絡を受けた庁舎管
理者等が敷地外にAEDを持ち出すとしている。
しかし、これらAED設置者の中には、図表2-(3)-8のとおり、庁舎管
理者等がAEDを使用する場合、タイムロスが生じる可能性があるなど
の意見が聴かれた。
図表2-(3)-8 庁舎管理者等による敷地外へのAEDの持ち出しに係る課題
と必要な対策
区 分
庁舎管理者等による敷地外への AED の持ち出しに係る
課題と必要な対策(意見)
国の合同庁舎 ・ 庁舎管理業務委託契約には庁舎外に関することを含まな
いため、
敷地外での AED の使用要請があった場合、
庁舎管理
業務委託職員が、
庁舎管理者に指示を仰いで対応することに
なる。
基本的には、
庁舎管理者が敷地外に AED を持ち出して
使用することを考えているが、
この流れでは敷地外で AED を
使用するまでの間にタイムロスが生じる可能性があり、
ルー
ルや体制の整備が課題になるのではないか。
・ 傷病者発生の第一報を受けた警備員が庁舎管理者に指示
を仰ぎ、対応することになる。基本的には、庁舎管理者が対
応することを考えているが、
より迅速に対応するには、
誰が
敷地外に AED を持ち出すかなど、
ルールの精査が必要と考え
られる。
県・市 ・ 敷地外での AED の使用を要請された場合、
庁内にいる消防
職員など、
応急手当を実施できる職員が同行することを考え
ているが、
当該職員への連絡体制が確立できているわけでは
なく、
傷病者がいる現場に迅速に向かうことができるかが課
題になるのではないか。
(注) 当局の調査結果による。
- 20 -
庁舎管理者等による対応の場合、施設の入口付近に居合わせた職
員、警備員等が、敷地外にAEDを持ち出す場合に比べると、庁舎管理
者等の到着を待たなければならないため、
速やかに対応できないおそ
れがあり、速やかに対応できるよう、ルールの精査や連絡体制の確立
が課題となっている。
なお、上記のとおり、庁舎警備業務には庁舎外に係ることが含まれ
ていないため、
施設の入口付近にいる警備員による積極的な対応を望
めないとするAED設置者がみられたが、仙台合同庁舎は、消防本部へ
の登録や、施設への掲示を行っていることに加え、警備員も庁舎の近
くなど、庁舎警備業務に付随する範囲内であれば、庁舎管理者の了解
を得ずとも、
敷地外での救命救急活動にAEDを使用できるとしている。
(イ) AEDの一時的な貸出し
24 AED設置者のうち、2 AED設置者は、図表2-(3)-9のとおり、AED周
辺に職員等が常駐しておらず、庁舎管理者等が敷地外にAEDを持ち出す
こととすると、
速やかにAEDが使用されることが期待できないことから、
傷病者の発生を把握した市民から、AEDのそばのインターフォン又は内
線電話で庁舎管理者に連絡してもらい、すぐにAEDを持っていくよう伝
えるとともに、応援に駆けつけるとしている。
また、このうち1 AED設置者は、AEDに、敷地外での使用時には内線電
話で庁舎管理者に連絡してもらうよう表示することで、
庁舎管理者に確
実に連絡が入るように工夫している。
これらのAED設置者は、
庁舎管理者の到着まで時間を要する場合など、
AEDの使用が1分1秒を争うことを考えれば、
AEDが速やかに使用されるよ
う、傷病者の発生を把握した市民に、AEDを持っていってもらう方が望
ましいとしている。
なお、民間事業所の中にも、体制面の制約から、店舗外で傷病者が発
生した際には、AEDを一時的に貸し出すことをルールとして明確にし、
職員に周知している取組がみられた。
図表 2-(3)-9 敷地外での AED の使用要請に対して一時的に AED を
貸し出す取組
機関名 取組の概要
秋田合同庁舎
(国)
秋田合同庁舎は、AED 周辺に職員等が常駐しておらず、庁舎
管理者等が AED を持ち出すこととすると、速やかに使用される
ことが期待できないことから、敷地外の傷病者の発生を把握し
た市民から、AED のそばのインターフォンで庁舎管理者に連絡
してもらい、すぐに AED を持っていくよう伝えるとともに、応
援に駆けつけるとしている。
- 21 -
また、傷病者の発生を把握した市民等に AED を使用できるこ
とを認識してもらえるよう、AED 設置施設標章の交付を受ける
とともに、施設入口に掲示している。
(AED 設置施設標章の掲示)
山形地方
合同庁舎
(国)
山形地方合同庁舎は、敷地外の傷病者の発生を把握した市民
から、AED のそばの内線電話で庁舎管理者に連絡してもらい、
速やかに AED を貸与するとともに、主として庁舎管理者が敷地
外の傷病者まで帯同し、状況に応じて応急手当に協力するとし
ている。
AED が設置されている 1 階ホールには、職員等が常駐してい
ないことから、この手順を傷病者の発生を把握した市民に伝え
るため、AED に、庁舎外での使用時には、庁舎管理者に内線電
話により連絡してもらうよう表示し、庁舎管理者に確実に連絡
が入るように工夫している。
(庁舎外での AED の使用に係る表示)
秋田市内
商業施設
社内で取扱いを検討し、体制面の制約から、職員が敷地外ま
で AED を持ち出し、
応急手当を実施するまでは難しいことから、
店舗外で傷病者が発生した際には、AED を一時的に貸し出すこ
とをルールとして明確にし、職員に周知している。
(注) 当局の調査結果による。
「庁舎外で AED を使用することを希望するお客様は、以下の内線
番号へ連絡願います。なお、内線電話は 1 階ホールにあります。」 - 22 -
(ウ) 敷地外でのAEDの使用要請への対応に関する取決めの必要性
24 AED設置者のうち、8 AED設置者は、AED設置施設内において職員や
来庁者にAEDを使用することを考え、
これまで敷地外でのAEDの使用につ
いて考えたことがないことを理由として、敷地外でのAEDの使用要請に
対してどのように対応するか未定であるとしている。
この場合、
敷地外での傷病者の発生を知らされた職員等が、
判断に迷
うなど、
速やかに敷地外にAEDを持ち出すことができないおそれがある。
上記(ア)、(イ)のとおり、AED設置場所や対応者に応じた課題があり、
これらを踏まえた具体的な対応を取り決めておくことが望まれる。
エ AED 設置場所の職員への周知及び救命講習の受講機会の確保
(ア) AED 設置場所の職員への周知
ガイドラインでは、施設の全職員が、施設内における AED の正確な
設置場所を把握していることが求められるとされている。敷地外での
AED の使用事例からも明らかなように、傷病者の発生を知らされた職
員等が速やかに対応できることが除細動までの時間の短縮につながる
と考えられる。
今回、
当局が国・県・市の24 AED設置者におけるAED設置場所の周知状
況を調査したところ、いずれのAED設置者も、施設の入口付近の人目に
付きやすい場所にAEDを配置するとともに、施設への掲示や、救命講習
の機会等を活用してAED設置場所を周知しているとしている。
しかし、AED設置者の中には、図表2-(3)-10のとおり、施設の入口付近
に居合わせた職員が、敷地外での傷病者の発生を知らされ、AEDを取り
に行くことになると考えられるが、職員の異動が頻繁にあり、
施設の入
口も複数あることから、例えば、異動直後で、AEDの付近を通行したこ
とがなく、救命講習も受講していない職員などはAED設置場所を認識し
ていないおそれがあるなどの意見が聴かれた。
図表2-(3)-10 AED設置場所の職員への周知に係る課題と必要な対策
区 分
AED 設置場所の職員への周知
に係る課題と必要な対策(意見)
国の合同庁舎 ・ AED は施設の入口付近に設置しており、救命講習の機会等
に設置場所を周知している。
しかし、
合同庁舎には複数の官
署が入居しており、
職員数も相当数に上る。
更には職員の異
動も頻繁にある。施設の入口も複数あることから、例えば、
異動直後で、AED の付近を通行したことがなく、救命講習も
受講していない職員などは AED 設置場所を認識していない
おそれがある。
6 AED の 適 正
配置に関す
るガイドラ
イン(再掲)
- 23 -
敷地外で発生した傷病者に AED を使用する場合、
偶然、施設の入口付近に居合わせた職員が敷地外での傷病者の発生
を知らされ、AED を取りに行くことになるが、救命講習の機
会も限られていることから、庁舎内の全ての職員が速やか
に AED を取りに行けるように AED 設置場所の周知が課題と
なっている。
県・市 ・ AED は施設の入口付近の人目に付きやすい場所に設置して
いるが、
人事異動により職員の入れ替わりがあり、
庁舎には
複数の入口があることから、
日常的に AED の付近を通行しな
い職員などは、AED 設置場所を把握していない可能性があ
る。
全ての職員が、
敷地外での傷病者の発生を知らされる可
能性があるため、速やかに AED を取りに行けるように、AED
設置場所の周知を充実させる必要があるのではないか。
民間事業所 ・ AED は 1 階受付付近に設置しており、
1 階にいる職員は AED
設置場所を認識している。
しかしながら、
敷地外で傷病者が
発生し、偶然、施設の入口付近に居合わせた職員が、普段、
高層階で勤務するパートやアルバイトの職員だった場合、
AED 設置場所を分かっておらず、
速やかに AED を取りに行け
ないおそれがある。
・ AED は施設の入口付近に設置しており、毎年の救命講習の
際に、AED 設置場所を周知している。しかし、職員の入れ替
わりが激しく、
例えば、
入居テナントの新入社員などが、AED設置場所を正しく認識しているかは不安がある。
敷地外での
AED の使用を要請された際に、
速やかに AED を持ち出せるよ
うにしておくため、
AED 設置場所を繰り返し周知していく必
要がある。
(注) 当局の調査結果による。
なお、民間事業所の中には、図表2-(3)-11のとおり、救命講習等の機
会を活用した周知に加えて、
施設内の全ての職員が、いつでも確認でき
るように、携行用の事故対応マニュアルにAED設置場所を記載している
取組がみられた。
図表 2-(3)-11 携行用事故対応マニュアルを活用した AED 設置場所
の周知の取組
機関名 取組の概要
仙台市内
百貨店
全従業員に、AED 設置場所などが記載された折りたたむとカ
ードサイズ(10 c×ばつ7 cm)になる事故対応マニュアルを携行さ
せている。これにより、全従業員がいつでも AED 設置場所を把
握し、緊急時に迷わず応急手当に当たれるようにしている。
- 24 -
(店内事故対応マニュアル(抜粋))
(注) 当局の調査結果による。
(イ) 救命講習の受講機会の確保
AED の使用の教育・訓練の重要性について、ガイドラインでは、AED
設置施設関係者は、
より高い頻度で AED を用いた救命処理を必要とする
現場に遭遇する可能性があるため、AED を含む心肺蘇生の訓練を定期的
に受けておくことが必要とされている。
AED 設置場所の周知や敷地外での AED の使用を推進するためには、救
命講習の受講は有効な方策の一つと考えられる。
今回、当局が国・県・市の 24 AED 設置者における AED の使用の教育・
訓練を含む救命講習の実施状況を調査したところ、図表 2-(3)-12のとお
り、定期的に実施しているものは 14 AED 設置者、不定期に実施してい
るものは 9 AED 設置者、未実施のものは 1 AED 設置者となっている。
図表 2-(3)-12 救命講習の実施状況
区 分 国の合同庁舎 県・市 合計
調査対象機関数 12 12 24
定期的に救命講習を実施7(58.3%)7(58.3%)14(58.3%)
不定期に救命講習を実施4(33.3%)5(41.7%)9(37.5%)
救命講習を未実施1(8.3%)0(0%)1(4.2%)
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、東北 6 県の県庁所在市内の国の合同庁舎(青森市内 2、盛岡市内 2、仙台
市内 4、秋田市内 2、山形市内 1、福島市内 1)
、県庁・市役所における救命講習の実
施状況を示す。
3 ( )内は、調査対象機関数に占める構成比を示す。構成比については、四捨五入に
よる表記のため、合計が 100 にならないことがある。
8救命講習の
実 施 状 況
( 国 の 合 同
庁 舎 の 内訳)6 AED の 適 正
配置に関す
るガイドラ
イン(再掲)
- 25 -
定期的に救命講習を実施している AED 設置者の中には、AED 設置施設
の敷地外で傷病者が発生した場合には、
施設の入口付近に居合わせた職
員等のみで応急手当を実施することになると考えられるため、
できるだ
け多くの職員に AED の使用の教育・訓練を含む救命講習を受講させてお
くことが望ましいとする意見が聴かれた。
他方、救命講習を未実施の 1 AED 設置者は、その理由について、これ
まで救命講習を実施する機運が高まっていなかったことを挙げている。
また、不定期に救命講習を実施する 9 AED 設置者のうち、2 AED 設置
者(国の合同庁舎)は、
直近の救命講習では、自組織の職員研修として計
画されたもののため、管理官署の職員のみを対象として実施している。
(ウ) 職員の意識向上のための取組の必要性
上記(ア)のとおり、職員数が多く、異動が頻繁にあり、施設規模も大
きい場合などは、
継続して、
施設内の全ての職員に AED 設置場所を認識
させることが課題となっている。
敷地外で傷病者が発生した場合、
施設の入口付近に居合わせた職員等
が敷地外での AED の使用要請を受ける場面に遭遇する可能性があるこ
とから、
基本的な対応を取り決めるとともに、
救命講習を不定期に実施
している AED 設置者、
管理官署の職員のみを対象として救命講習を実施
している AED 設置者、
救命講習を未実施の AED 設置者については、
定期
的に救命講習を実施するなど、
できるだけ多くの職員が救命講習を受講
する機会を設けることにより、AED 設置場所の把握を含め、職員の意識
の向上を図っていくことが望まれる。
- 26 -
3 AED 設置場所に関する情報の登録・公開
調査結果等 参考図表
(一財)日本AED財団は、図表2-1のとおり、AED設置施設の敷地外でのAEDの
使用を推進するために必要な取組として、市民が事前にAEDの設置場所を把握
できるようにしておくため、AED設置者がAED設置場所に関する情報をAEDマッ
プ等で登録・公開することを挙げている。
図表2-1 緊急時の敷地外でのAEDの使用の推進のために必要な取組の例
(一部再掲)
1 AED設置者・敷地外でのAEDの使用の想定や準備をしておくとともに、
敷地外でもAED
を使用できることを明確にし、職員等が十分に認識
・誰もがアクセス可能な分かりやすい場所にAEDを配置
・市民が、事前にAEDの設置場所を把握しておき、緊急時にAEDを取り
に来られるようにするため、
AED設置場所に関する情報をAEDマップ等で
登録・公開
2・3 (略)
(注)1 当局が(一財)日本AED財団から聴取した結果による。
2 下線は当局が付した。
市民が AED マップ等により、事前に AED 設置場所を把握しておくことで、
施設入口への AED 設置施設の表示と合わせて、敷地外で傷病者の発生を把握
した市民が、AED にたどり着くための一助となる。
厚生労働省においては、図表 3-1のとおり、平成 27 年 8 月、(一財)日本救
急医療財団が運営する AED マップ(以下「財団全国 AED マップ」という。)への AED 設置場所に関する情報の登録・更新について、
関係省庁、
都道府県、AED製造販売業者等に対し、庁舎(出先機関含む。
)等において設置・管理してい
る AED の情報の登録・更新や、
市町村、
AED 設置者等への周知を要請している。
財団全国 AED マップには、AED 設置者が AED に同梱されている登録書(注)に
必要事項を記入し、(一財)日本救急医療財団に郵送するか、又は、登録書を基
に、インターネット上の入力フォームに必要事項を入力することで登録され、
その登録・公開台数は約 32 万 8,000 台(令和元年 10 月末現在)となってい
る。
(注) 平成 27 年 6 月 30 日以前に購入又はリースした AED の場合、登録書が同梱されていない
ため、AED 製造販売業者に問合せ、登録書を入手する必要がある。
図表 3-1 AED 設置場所に関する情報の登録の必要性
(財団全国 AED マップ)
(一財)日本救急医療財団は、
平成19年4月から、
AEDを管理する設置者を明
らかにし、市民がAEDにアクセスしやすくなるようにAED製造販売業者の協
- 27 -
力を得て、AED設置場所に関する情報を登録し、ホームページ上に公開して
いる。
厚生労働省は、
平成21年4月に、
AED設置場所に関する情報の(一財)日本救
急医療財団への登録を含め、適切なAEDの管理等の徹底について、i)AED製
造販売業者に対し、AED設置者等への周知(注1)を、ii)都道府県に対し、設
置・管理しているAEDの適切な管理等の徹底及び市町村等への周知(注2)を、
iii)関係省庁等に対し、庁舎(出先機関含む。)等において設置・管理してい
るAEDの適切な管理等の徹底及び所管の関係団体への周知(注3)を要請して
いる。
また、(一財)日本救急医療財団は、AED設置場所に関する情報について、
位置情報のみでは場所の特定が容易ではないなどの課題があったこと等を
踏まえ、
平成27年6月に、
AED設置施設を地図上にプロットした
「財団全国AED
マップ」をホームページ上に公開した。
これを受けて、
厚生労働省は、
平成27年8月に、
財団全国AEDマップへのAED
の設置登録情報の登録・更新について、
i)AED製造販売業者が加盟する団体
に対し、AED設置者等への周知(注4)を、ii)都道府県に対し、管下のAED設置
者への呼びかけ及び市町村等への周知(注5)を、iii)関係省庁等に対し、庁舎
(出先機関含む。
)等において設置・管理しているAEDの登録・更新及び所管
の関係団体への周知(注6)を要請している。
(注)1 「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について」
(平成21年4月16日
付け薬食安発第0416001号厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知)
2 「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について(注意喚起及び関係
団体への周知依頼)」(平成21年4月16日付け医政発第0416001号、薬食発第0416001号
厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食品局長連名通知)
3 「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について(注意喚起及び関係
団体への周知依頼)」(平成21年4月16日付け医政発第0416002号、薬食発第0416002号
厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食品局長連名通知)
4 「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報に係る取りまとめの協力依頼について」
(平成27年8月25日付け医政地発0825第3号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)
5 「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の有効活用等について」
(平成27年8月
25日付け医政発0825第7号厚生労働省医政局長通知)
6 「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の適切な更新等について(依頼)」(平
成27年8月25日付け医政発0825第8号厚生労働省医政局長通知)
また、
ガイドラインでは、
AED を有効に機能させるため、
地方公共団体が AED
マップ等を運営している場合には、AED 設置施設は、地方公共団体の求めに応
じ、AED 設置場所に関する情報を積極的に登録・公開することが望ましいとさ
れている。
さらに、これらの AED 設置場所に関する情報は、図表 3-2のとおり、消防
本部による 119 番通報者に対する情報提供等への活用も推進されており、119
番通報者に近くの AED の設置場所を伝えて使用を要請などする消防本部が当
該 AED の設置場所を認識できるよう、消防本部に AED 設置場所に関する情報
を登録しておくことも重要である(注)。
(注) 消防本部が AED 設置場所に関する情報を収集している場合。
9 AED 設 置 場
所に関する
情報の登録
に係る関係
通知
6 AED の 適 正
配置に関す
るガイドラ
イン(再掲)
- 28 -
図表 3-2 消防本部による AED 設置場所に関する情報の活用の推進
消防庁は、
「自動体外式除細動器(AED)の更なる有効活用に向けた取組の
推進について(通知)」(平成26年7月7日付け消防救第116号)により、AED設
置場所に関する情報の収集及び住民に対する情報提供の推進、AED設置場所
に関する情報の通信指令システムへの登録及び通報者に対する口頭指導
(注)における当該情報の活用の推進等について、
都道府県及び都道府県を経
由して市町村に助言している。
(注) 119番通報者に対する通信指令員の電話による応急手当等についての指示をいう。
また、
「通信指令員の救急に係る教育テキスト」
(平成26年3月消防庁)で
は、救急隊員の到着までの間に救急現場に居合わせた人によってAEDが使用
されれば、救命にとって有効となることが期待されることから、AEDが近く
にあることが想定される通報内容であれば、通報者にAEDを取り寄せ、現場
に届けば直ちに使用させるよう口頭指導することも考慮すべきとされてい
る。
(1) AED 設置場所に関する情報の AED マップ等への登録・公開状況
ア AED マップ等への登録・公開状況
今回、当局が国・県・市の24 AED設置者におけるAED設置場所に関する
情報のAEDマップ等への登録・公開状況を調査したところ、
7 AED設置者は、
図表3-(1)-1のとおり、財団全国AEDマップ、地方公共団体が運営するAED
マップ等のいずれにも登録・公開していなかった。
図表 3-(1)-1 AED 設置場所に関する情報の AED マップ等への登録状況
区 分 国の合同庁舎 県・市 合計
調査対象機関数 12 12 24
AED 設置場所に関する情報を AED
マップ等で登録・公開している
AED 設置者6(50.0%)11(91.7%)17(70.8%)
AED 設置場所に関する情報を AED
マップ等で登録・公開していない
AED 設置者6(50.0%)1(8.3%)7(29.2%)
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、東北 6 県の県庁所在市内の国の合同庁舎(青森市内 2、盛岡市内 2、仙台
市内 4、秋田市内 2、山形市内 1、福島市内 1)
、県庁・市役所における AED マップ等
への登録状況を示す。
3 ( )内は、調査対象機関数に占める構成比を示す。
AED設置場所に関する情報をAEDマップ等で登録・公開していない7 AED
設置者は、
その理由として、
登録を求められているとの認識が不足してい
たことを挙げている。
AEDには、
財団全国AEDマップへの登録書が同梱されていることから、AED設置者の認識不足が主な原因と考えられ、市民がAED設置場所を把握でき
12 AED 設 置 場
所に関する
情 報 の AED
マップ等へ
の登録状況
( 国 の 合 同
庁 舎 の 内訳)10 H26 消 防 庁
通知
11通信指令員
の救急に係
る教育テキ
スト
- 29 -
るようにするため速やかな登録が求められるが、
AED設置者に対してAEDマ
ップ等への登録の必要性を、
継続して周知していくことも重要であること
がうかがわれる。
イ AEDマップ等への登録・公開促進の取組
AEDを設置するに当たっては、医療機器販売業又は貸与業の許可を有す
る事業者から購入又はリースすればよく、
行政機関に対する許認可等の手
続は不要であるため、行政機関は個別のAED設置者を把握することができ
ず、AEDマップ等への登録などを直接、周知することもできない。
このような中、青森県は、平成28年度から、財団全国AEDマップへの登
録が促進されるよう、
毎年度、県内55の関係団体に構成機関(企業・施設・
学校等)への働きかけを求める依頼文書を発出している。青森県がその効
果を測るために把握した青森県内の財団全国AEDマップへの登録・公開台
数は、平成28年10月時点で2,427台のところ、令和元年6月時点で2,877台
(450台増加)となっている。
ウ 参考事例(AEDマップ等以外のAED設置場所を周知するための取組)
約1,700店舗をチェーン展開するドラッグストアでは、全店舗にAEDを
設置し、AEDを設置していることを店舗周辺に配布するチラシ(図表3-(1)
-2)や自社ホームページ上に掲載するとともに、指導者の認定を受けた
社員が、訓練用AED及び訓練用マネキンを活用して、従業員に繰り返し救
命講習を実施するほか、店舗周辺にも呼びかけて合同で救命講習を実施
している。これについて、同社は、会長、社長のリーダーシップの下、地
域貢献を目的として救命講習受講経験者の意見を踏まえて行ったものと
している。
同社では、これらの取組等を通じて、周辺の住家で傷病者が発生し、
AEDを貸してほしいと駆け込んできた例や、敷地外でのAEDの使用事例(年
間20件程度)もあるとしており、AEDマップ等による登録・公開のほか、
AED設置場所を周知し、救命効果を向上させる有効な方法と考えられる。
図表 3-(1)-2 チラシを活用して AED を設置していることを店舗周辺に
周知する取組
(注) 赤枠は当局が付した。
- 30 -
(2) AED設置場所に関する情報の消防本部への登録状況
ア 消防本部によるAED設置場所に関する情報の活用状況
東北6県の県庁所在市を管轄する消防本部は、
図表3-(2)-1のとおり、AED設置場所に関する情報を活用し、
119番通報者に対して、
AED設置場所を伝
えたり、AEDの使用を要請するなどしている。
図表3-(2)-1 消防本部が活用するAED設置場所に関する情報
消防本部 活用している AED 設置場所に関する情報
青森地域広域事務組合 「まちかどハートステーション」認定事業所
盛岡地区広域消防組合 「財団全国 AED マップ」登録 AED 設置者
仙台市 「杜の都ハートエイド」登録事業所
秋田市 「自動体外式除細動器(AED)設置施設標章」交付施設
山形市 市町有施設
福島市 市有施設
(注)1 当局の調査結果による。
2 青森地域広域事務組合消防本部、仙台市消防局及び秋田市消防本部は、その管轄
区域内において、AEDを設置し、応急手当に協力できるなどの要件を満たしたAED設
置者を認定又は登録(前掲図表2-(3)-1参照)し、119番通報者への情報提供等にも活
用している。
3 盛岡地区広域消防組合消防本部は、財団全国AEDマップに登録されたAED設置者を
通信指令システムに登録し、119番通報者への情報提供等に活用している。
4 山形市消防本部及び福島市消防本部は、確実にAEDを使用することが可能な市町
有施設に設置されているAEDの情報を119番通報者への情報提供等に活用している。
消防本部から把握した AED 設置施設の敷地外での AED の使用事例の中
には、消防本部が AED 設置場所に関する情報を活用し、AED 設置者に、敷
地外への AED の持ち出し及び使用を要請し、応急手当が実施された例も
みられた(図表 3-(2)-2)。
図表 3-(2)-2 AED 設置場所に関する情報を活用した消防本部による AED
の使用要請の事例
町役場近隣で傷病者が発生。119番通報を受けた市消防本部が当該町役
場にAEDの持ち出し及び使用を要請し、要請を受けた町役場職員が、敷地
外にAEDを持ち出し、応急手当が実施された。
(平成29年)
(注)1 山形市の資料を基に、当局が作成した。
2 前掲図表 2-(1)-4(消防本部から把握した敷地外での AED の使用事例)と同様の事例で
ある。
国、民間事業所を含めた消防本部への登録の仕組みがある4消防本部
(注)は、
確実にAEDを使用することが可能と見込まれる場合には、
登録され
たAED設置場所を119番通報者に伝え、AEDの使用を促すこともあり得るこ
とから、開庁時間内であれば確実にAEDを使用することが可能な公共施設
- 31 -
を中心として、AED設置者には、可能な限り、AED設置場所に関する情報を
消防本部に登録してほしいとしている。
(注) 青森地域広域事務組合消防本部、盛岡地区広域消防組合消防本部、仙台市消防局及
び秋田市消防本部をいう。
イ AED設置場所に関する情報の消防本部への登録状況
今回、当局が上記4消防本部の管轄区域内の国・県・市の18 AED設置者
(国の合同庁舎10、県庁・市役所8)におけるAED設置場所に関する情報の
消防本部への登録状況を調査したところ、図表3-(2)-3のとおり、12 AED
設置者は、消防本部に登録していなかった。
この場合、
消防本部は119番通報者に当該AEDの情報を提供できないこと
となる。
図表 3-(2)-3 AED 設置場所に関する情報の消防本部への登録状況
区 分 国の合同庁舎 県・市 合計
調査対象機関数 10 8 18
AED 設置場所に関する情報を消防
本部に登録している AED 設置者2(20.0%)4(50.0%)6(33.3%)
AED 設置場所に関する情報を消防
本部に登録していないAED設置者8(80.0%)4(50.0%)12(66.7%)
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、
国、
民間事業所を含めた消防本部への登録の仕組みがある青森市、
盛岡市、
仙台市及び秋田市内の国の合同庁舎(青森市内2、盛岡市内2、仙台市内4、秋田市内2)、県庁・市役所における消防本部への登録状況を示す。
3 盛岡地区広域消防組合消防本部は、
財団全国AEDマップに登録されたAED設置者を通
信指令システムに登録しているため、
盛岡市内のAED設置者については財団全国AEDマ
ップへの登録状況を示す。
4 ( )内は、調査対象機関数に占める構成比を示す。
AED設置場所に関する情報を消防本部に登録していない12 AED設置者
は、
その理由として、
登録を求められているとの認識が不足していたこと
を挙げており、AED設置者に対して消防本部への登録の必要性を、継続し
て周知していくことが重要であることがうかがわれる。
なお、
青森地域広域事務組合消防本部、
仙台市消防局及び秋田市消防本
部へのAED設置場所に関する情報の登録については、応急手当に協力でき
ることなどが要件とされていることから、
職員数が少ない民間事業所の中
には、AEDを一時的に貸し出すことは可能であるが、応急手当に協力する
までは難しく、
消防本部への登録の要件を満たせないとする意見も聴かれ
た。
13 AED 設 置 場
所に関する
情報の消防
本部への登
録 状 況 ( 国
の合同庁舎
の内訳)
- 32 -
ウ AED設置場所に関する情報の消防本部への登録促進の取組
AED設置場所に関する情報の消防本部への登録を促進する取組として、
消防本部が、消防法(昭和23年法律第186号)に基づく立入検査等により
把握したAED設置者を個別訪問して登録を働きかけている例や、救命講習
を受講する事業所に登録を働きかけている例がみられた(図表3-(2)-4)。図表 3-(2)-4 AED 設置場所に関する情報の消防本部への登録促進の取組
消防本部 実施内容
秋田市 平成 29 年に、
AED 設置者による AED 設置施設標章交付制度の
申請を促すため、消防法に基づく立入検査等により把握した
AED 設置者を個別訪問して、交付申請を働きかけている。
これにより、平成 18 年の制度導入以降、毎年、5 件から 33
件の交付申請のところ、平成 29 年については、175 件の交付申
請があり、令和元年 6 月末までに 415 施設が AED 設置施設標章
交付施設として登録されるに至っている。
青森地域広域
事務組合
救命講習などの普及啓発活動を行う際には、緊急時に現場へ
AED を搬送して、
AED の使用に協力する
「まちかどハートステー
ション」制度について説明するとともに、同制度の認定事業所
への登録を呼びかけている。
これらの取組等を通じて、令和元年 5 月現在、83 事業所がま
ちかどハートステーション認定事業所として登録されている。
仙台市 事業所を対象とした救命講習では、近隣敷地外で発生した急
病人に対しても当該事業所の AED を活用していただけるよう説
明している。また、講習を受講することで救命処置が必要な場
面に遭遇したときに行動できるよう指導している。
さらに、AED が設置されている事業所に対しては、事業所内
だけではなく、近隣(敷地外)での応急手当にも協力してもら
えるよう「杜の都ハートエイド」を紹介し、登録を募っている。
これらの取組等を通じて、令和元年 8 月末現在、1,220 事業
所が杜の都ハートエイド登録事業所として登録されている。
(注) 当局の調査結果による。
- 33 -
4 緊急時の敷地外での AED の使用を推進するために必要な取組
通 知 参考図表
当局が把握したAEDの使用事例をみると、AEDを必要とする傷病者は、AED設
置施設の敷地内外を問わず発生している。これらのAEDの使用事例からも明ら
かなように、AED設置者が、敷地外での傷病者の発生に備えて、
i) 施設入口にAED設置施設であることを表示し、敷地外で傷病者の発生を把
握した市民が、AEDにたどり着けるようにしておくこと、
ii) 職員等が、傷病者の発生を知らされた際に、速やかに敷地外にAEDを持ち
出し、又は一時的に貸し出せるようにしておくこと、
が重要になると考えられる。
調査対象とした消防本部、県の中には、応急救護体制の整備・救命率の向上
等を目的として、
緊急時に敷地外でもAEDを使用するAED設置者を認定、
登録又
は把握する取組がみられた。また、AED設置者の中にも、これらの取組を実施
している例がみられた。
他方、
緊急時の敷地外でのAEDの使用について、
AED設置者の実態を調査した
ところ、以下の状況がみられた。
1 項目2(2)で述べたように、一部のAED設置者は、施設入口にAED設置施設で
あることを表示していなかった。
2 項目2(3)ウで述べたように、敷地外でのAEDの使用要請への具体的な対応
を取り決めていないAED設置者がみられたほか、警備員等から連絡を受けた
庁舎管理者等が敷地外にAEDを持ち出すとしているなど、速やかに対応でき
ないおそれがあるAED設置者がみられた。
また、施設の入口付近にいる職員等が敷地外に持ち出すとしているAED設
置者にあっては、庁舎管理者等に確認の連絡を取ることなく、速やかにAED
を使用することを徹底することが課題となっている。
3 項目2(3)エで述べたように、職員数が多く、異動が頻繁にあり、施設規模
も大きい場合などは、継続して、施設内の全ての職員にAED設置場所を認識
させることが課題となっている。AED設置場所の周知や敷地外でのAEDの使
用を推進するためには、救命講習の受講が有効な方策の一つと考えられる
が、
救命講習を未実施又は不定期実施となっており、
救命講習の受講機会が
確保されていないAED設置者がみられた。
4 項目3で述べたように、
AED設置場所に関する情報をAEDマップ等や、
119番
通報者にAEDの設置場所を情報提供等する消防本部に登録していないAED設
置者がみられた。
緊急時の敷地外でのAEDの使用は、
AED設置施設内での場合に比べ、
除細動ま
でに、より多くの時間を要する可能性が高いことから、上記の状況を踏まえ
て、
AED設置者が、
以下のような取組を推進することが望ましいと考えられる。
- 34 -
【緊急時の敷地外でのAEDの使用を推進するために必要な取組】
1 敷地外で傷病者の発生を把握した市民が、AEDにたどり着けるように、施
設入口にAED設置施設であることを表示
2 敷地外でのAEDの使用要請への対応について、速やかにAEDを使用できる
よう、AED設置場所や対応者に応じて具体的に取り決めるとともに、その内
容を職員、警備員等に徹底
3 定期的に救命講習を実施するなど、できるだけ多くの職員が救命講習を
受講する機会を設けることにより、AED設置場所の把握を含め、職員の意識
を向上
4 市民や119番通報者にAED設置場所を情報提供等する消防本部がAEDの所
在を事前に把握することができるようにするため、AED設置場所に関する情
報をAEDマップ等や消防本部に登録
ガイドラインにより、市民への啓発、AED設置・管理の規範となるという点
からもAEDの配置等に配慮することが望ましいとされている国の合同庁舎を
含めた規模の大きな公共施設については、より一層の取組の推進が期待され
る。
6 AED の 適 正
配置に関す
るガイドラ
イン(再掲)
- 35 -
〔参考図表〕
- 36 -
参考図表1 「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用について」(平成 16 年 7 月 1
日付け医政発第 0701001 号都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知。
平成 25 年 9 月 27
日最終改正)(抜粋)
2 非医療従事者による AED の使用について
救命の現場に居合わせた一般市民(報告書第3の3の(4)
「講習対象者の活動領域等に
応じた講習内容の創意工夫」
にいう
「業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心停止
者に対し応急の対応をすることが期待・想定されている者」
に該当しない者をいうものとす
る。以下同じ。)が AED を用いることには、一般的に反復継続性が認められず、同条違反に
はならないものと考えられること。
一方、業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心停止者に対し応急の対応をする
ことが期待、想定されている者については、平成 15 年 9 月 12 日構造改革特区推進本部の
決定として示された、非医療従事者が AED を用いても医師法違反とならないものとされる
ための4つの条件、すなわち、
1 医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対応を得ることが
困難であること
2 使用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確認していること
3 使用者が、AED 使用に必要な講習を受けていること
4 使用される AED が医療用具として薬事法上の承認を得ていること
については、報告書第2に示す考え方に沿って、報告書第3の通り具体化されたものであ
り、これによるものとすること。
参考図表2 "日本における AED を用いた市民による電気ショックと救命数増加".京都大学ホーム
ペ ー ジ .http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/161027_1/01.pdf,( 参 照
令和元年 10 月 10 日)(抜粋)
3.波及効果、今後の予定
国家規模での AED の普及が心臓突然死対策として有効であることが示唆され、世界的に
AED の更なる普及の後押しに繋がると考えられます。一方で、AED の普及台数に対して救
命された人数は不十分とも言え、さらに AED の利活用を促すための教育と実践のための社
会運動を進めていく予定です。
普及の成果は実証されましたが、
更なる普及には費用対効果の検討が求められます。
スマ
ートフォンなどの SNS を活用して、AED と救助者を効率よく心停止現場に派遣する取り組
みなど、AED の活用率を高める仕組みの構築と評価も進めています。
(注) 下線は当局が付した。
- 37 -
参考図表3 「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の有効活用等について」
(平成 27 年 8 月 25
日付け医政発 0825 第 7 号都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知)
(抜粋)
1〜4 (略)
5 AED を有効に使用するための表示に係る必要な整備について
(1)誘導表示の充実について
AED が必要な時に AED を設置している場所にたどり着けるよう、
施設の入口において
はステッカーを表示すること、
施設内では AED の設置場所まで誘導する案内表示を置く
ことなどの取組をすること。
(2)(略)
(注) 下線は当局が付した。
参考図表4 「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の適切な更新等について(依頼)」(平成
27 年 8 月 25 日付け医政発 0825 第 8 号関係省庁宛て厚生労働省医政局長通知)(抜粋)
今般、
別添のとおり各都道府県知事に対して通知を発出しましたので、
その内容について御
了知いただくとともに、貴省庁等がその庁舎(出先機関を含む。
)等において設置・管理して
いる自動体外式除細動器(以下「AED」という。
)の設置登録情報の適切な更新等をお願いしま
す。
また、
貴省庁等所管の事業所等及びその会員が設置・管理している AED の設置登録情報につ
いても適切な更新等が行われるよう、別添の通知の内容について周知いただきますよう御協
力をお願いします。
(注) 上記通知文中の「別添」は、
「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の有効活用等について」
(平成 27
年 8 月 25 日付け医政 0825 第 7 号都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知)
(参考図表3)を指す。
- 38 -
参考図表5 AED 設置施設の表示状況(国の合同庁舎の内訳)
区 分
施設入口に AED 設置施設であること
を表示している AED 設置者
青森合同庁舎 しろまる
青森第 2 合同庁舎 しろまる
盛岡合同庁舎
盛岡第 2 合同庁舎 しろまる
仙台合同庁舎 しろまる
仙台第 2 合同庁舎 しろまる
仙台第 3 合同庁舎 しろまる
仙台第 4 合同庁舎 しろまる
秋田合同庁舎 しろまる
秋田第 2 合同庁舎 しろまる
山形地方合同庁舎 しろまる
福島合同庁舎 しろまる
該当機関数 11
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、東北 6 県の県庁所在市内の国の合同庁舎における AED 設置施設の表示
状況を示す。
参考図表6 AED の適正配置に関するガイドライン(平成 25 年 9 月 9 日一般財団法人日本救急
医療財団(平成 30 年 12 月 25 日補訂))(抜粋)
2.AED 設置が求められる施設
(1)〜(2) (略)
【AED の設置が推奨される施設(例)】
1 駅・空港・長距離バスターミナル・高速道路サービスエリア・道の駅
わが国では、公共の場所のうち、特に多数の人が集まる駅での心停止発生、並びにAEDの
使用例が多いとの報告がある。都市部において鉄道は主たる移動手段で年齢を問わず多く
の人が集まる場所であり、一日の平均乗降数が10,000人以上の駅ではAED設置が望ましい。
また、
混雑する人混みの中で救命処置を円滑に行うためにも職員らによる周到な準備・訓練
が不可欠である。
空港でのAEDの必要性は1駅での理由に加え、長旅や疲労などによるストレスが高まる環
境にさらされ心臓発作を起こしやすいと報告されている。欧米でも空港におけるAED の有
効性は示されており、空港でもAEDの積極的な設置が求められる。
2 旅客機、長距離列車・長距離旅客船等の長距離輸送機関
旅客機内は、
長旅や疲労などによる心臓発作のリスクに加え、
孤立して救急隊の助けが得
- 39 -
られにくい特殊性からもAEDの必要性が高い。旅客機内ではAED使用例が一定頻度で発生し
ており、その有効性も実証されていることから、旅客機内にはAEDを設置することが望まし
い。同様に、新幹線・特急列車、旅客船・フェリーなどの長距離乗客便にはAEDを設置する
ことが望ましい。
3 スポーツジムおよびスポーツ関連施設
スポーツ中の突然死は、若い健常人に発生することも少なくない。また、心停止を目撃さ
れる可能性も高い。運動強度の高いサッカー、水泳、マラソンなどのスポーツでは心室細動
の発生が多い。また、野球やサッカー、ラグビーなどの球技、あるいは空手などの格闘技で
は心臓震盪の発生が比較的多いことが報告されている。スポーツジムおよび管理事務所を
伴うグラウンド、球場等、これらのスポーツを実施する施設にはAEDを設置することが望ま
しい。ゴルフは他のスポーツに比べ競技者の年齢が高く、ゴルフコース1施設あたりの心停
止発生率は、0.1/1年と高い。また、ゴルフ場は郊外にあることが多く、救急車到着までに
時間を要すると考えられることからも5分以内の電気ショックが可能となるようにコース
内に複数のAEDを設置することが望ましい。
4 デパート・スーパーマーケット・飲食店などを含む大規模な商業施設
わが国では従来からあるデパート、スーパーマーケット、飲食店に加えて、郊外型の大規
模複合型商業施設が一般化した。
さらに、
日用品から一般医薬品まで販売するドラッグスト
アについても規模が大きな店舗が増加している。一日5,000人以上の利用者数のある施設、
(常時、
成人が250名以上いる規模を目安とする)
には複数のAEDを計画的に配置することが
望ましい。
5 多数集客施設
アミューズメントパーク、動物園、(監視員のいる)海水浴場、スキー場、大規模入浴施
設などの大型集客娯楽施設、観光施設、葬祭場などには複数のAEDを設置することが望まし
い。
6 市役所、公民館、市民会館等の比較的規模の大きな公共施設
規模の大きな公共施設は、
心停止の発生頻度も一定数ある上に、
市民への啓発、
AED設置・
管理の規範となるという点からもAEDの配置と保守管理に配慮することが望ましい。
7 交番、消防署等の人口密集地域にある公共施設
人口密集地域にある公共施設は、
地域の住民の命を守るという視点から、
施設の規模の大
小、利用者数に関わらず、AEDを設置することが望ましい。
8 高齢者のための介護・福祉施設
50人以上の高齢者施設では、一定以上の頻度で心停止が発生しており、AEDの設置が望ま
しい。
9 学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校等)
学校における心停止は、児童・生徒等に限らず、教職員、地域住民などの成人も含め一定
頻度発生している。わが国で、学校管理下の児童・生徒等の突然死のおよそ3 割は心臓突然
死で、年間30〜40件の心臓突然死が発生していると報告されており、学校はAEDの設置が求
- 40 -
められる施設の一つである。
日本のほとんどの学校には、
少なくとも1台のAEDは設置されて
いるが、心停止発生から5分以内の電気ショックを可能とするためには規模の大きな学校で
は、複数のAEDを設置する必要がある。調査によれば、学校内の設置場所は多様である。
しかし、学校における突然の心停止の多くは、体育の授業やクラブ活動で、ランニング
や、水泳など、運動負荷中に発生しており、運動場やプール、体育館のそばなど、発生のリ
スクの高い場所からのアクセスを考慮する必要がある。
さらに、
施設が生徒や住民に開放さ
れている土日祝日や夜間でも、
こうした運動場、
体育館や学童保育で使用できるように配慮
することが望ましい。
10 会社、工場、作業場
多くの社員を抱える会社、工場、作業場などはAED設置を考慮すべき施設である。例えば、
50歳以上の杜員が250人以上働く場所・施設にはAEDを設置することが望ましい。
11 遊興施設
競馬場や競艇場、
パチンコ店などの遊興施設では極めて人口の密集した環境下で、
交感神
経機能が高まることから心停止発生のリスクが高い。
さらに、
目撃される可能性も高いこと
からAEDの設置が望ましい。
12 大規模なホテル・コンベンションセンター
ホテルやコンベンションセンターは、多人数が集まるうえに、滞在時間も長いため、AED
の設置が望ましい。
13 その他
13-1 一次救命処置の効果的実施が求められるサービス
民間救急車などのサービスの性質上、AEDを用いた一次救命処置の実践が求められる施
設は、AEDの設置および訓練が求められる。
13-2 島しょ部および山間部などの遠隔地・過疎地、山岳地域などでは、救急隊や医療の
提供までに時間を要するため、AEDの設置が求められる。
3.AEDの施設内での配置方法
我が国のAED 普及の実態と効果を検証した調査では、公共のスペースに設置されたAED
による電気ショックは心停止から平均3分以内に行われており、40%近い社会復帰率を示し
た。あわせて、電気ショックが1分遅れると社会復帰率が9%減少すること、AEDを1000m 四方
に1台から500m四方に1台、
すなわち設置密度を4倍にすると、
社会復帰率も4倍になることが
示された。愛知万博では300m毎に100台のAEDが設置され、会場内で発生した心停止5例中4
例で救命に成功した。コペンハーゲンの調査では、住宅地域では100m間隔でAEDを設置する
ことが推奨されるべきであるとしている。さらに、わが国の別の研究では、一般人が心停止
を目撃してから、119番通報(心停止を認識し行動する)までに2,3分を要することが示され
ている。
居合わせた人にその処置をゆだねるという性質上、ある程度高い救命率が期待できる状
況で、AEDの使用を促す必要があり、以下のように電気ショックまでの時間を短縮するよう
- 41 -
な配置上の工夫が望まれる。(1)目撃された心停止の大半に対し、
心停止発生から長くても5分以内にAEDの装着ができる
体制が望まれる。
そのためには、
施設内のAED はアクセスしやすい場所に配置されている
ことが望ましい。
たとえば学校では運動に関連した心停止が多いことから、
保健室より運
動施設への配置を優先すべきである。
(2)AEDの配置場所が容易に把握できるように施設の見やすい場所に配置し、位置を示す掲
示、あるいは位置案内のサインボードなどを適切に掲示することが求められる。(3)AEDを設置した施設の全職員が、
その施設内におけるAEDの正確な設置場所を把握してい
ることが求められる。
(4)可能な限り24時間、誰もが使用できることが望ましい。使用に制限がある場合は、AED
の使用可能状況について情報提供することが望ましい。地方公共団体による行政監査で、
AED収納ボックスが施錠されていたケースなどが指摘されている。
(5)インジケ―タが見えやすく日常点検がしやすい場所への配置、温度(夏場の高温や冬場
の低温)や風雨による影響などを考慮し、壊れにくい環境に配置することも重要である。
4.AED の管理と配置情報の公開
AEDを有効に機能させるために、以下が求められる。
(1)AED設置施設ではAED管理担当者や担当者が設定し、機器の定期的な保守管理を行うこ
と。
(2)AEDの活用が円滑におこなわれるように、設置目的や、担当者の責務を明確にするとと
もに、いざという時の対応に関しても、取り決めをしておくこと。
(3)地方公共団体は、管轄地域のAED設置情報を把握し、適正配置に努めることが望ましい。
また、地域のAED設置情報を積極的に日本救急医療財団や地方公共団体が運営するAEDマ
ップに登録し、住民に情報提供することが望ましい(誰もがAED設置情報にアクセス可能
で再利用可能な形で住民に情報提供を行うことも考慮する。)。
AED設置情報を把握していないもしくはマップを作成していない地方公共団体では、財
団全国AEDマップにリンクを張ることで、
県庁、
市役所等を中心とした自地域のAEDマップ
として地域住民に情報を提供することが望ましい。また自地域のAEDマップを作成してい
る場合においては、日本救急医療財団に登録されたAED設置情報のうち地方公共団体への
情報提供の承諾をAED設置者から得ているものについて、財団より情報提供を受け、AED
マップの更なる充実を図ることも考慮する。(4)AED設置施設は、
地方公共団体の求めに応じ、
AED設置情報を積極的に登録・公開し、AED保有情報(AED Inventory)を公開することが望ましい。(5)多くの地方公共団体や大学では、
スポーツイベントをはじめとするさまざまなイベント
に対して、AEDを貸し出す制度を整備しているが、地方公共団体や教育機関ではこうした
貸出システムをさらに考慮する。
(6)AEDが使用された場合、地域の救急医療体制の検証の一環として、当該地域のメディカ
- 42 -
ルコントロール協議会が中心となり、使用時の心電図データ等を検証すること。AED設置
施設は、
メディカルコントロール協議会などの求めに応じて、
これらの情報を消防機関や
医療機関へ提供することが望ましい。
6.AED 使用の教育・訓練の重要性
AEDの設置を進めるだけでは、必ずしも十分な救命率の改善を望めない。設置されたAED
を維持管理し、いつでも使えるようにしておくことが必要である。次に、設置施設の関係者
や住民等が容易にAED を見つけ出せるようにする。
そして、
教育と訓練によりAED を使用できる人材を増やすことも忘れてはならない。
心肺
蘇生法講習会を受けることで市民の救命意識は向上し、心肺蘇生の実施割合が増加するこ
とが報告されている。心肺蘇生法の普及、実施割合が不十分な現状、AED があったにもかか
わらず、使用されない事例の報告が知られている。AED を有効に活用し、心停止例の救命率
を向上させるために、
従来以上に心肺蘇生法講習会を積極的に展開し、
一般人の心肺蘇生法
に対する理解を深め、AEDを用いた心肺蘇生法を行うことができる人材を増やす必要があ
る。
胸骨圧迫とAED の操作にポイントを絞り、短時間で学ぶことのできる入門講習も積極的
に活用し、少なくとも胸骨圧迫とAED の操作が実践可能な人々を増加させ、設置が広がり
つつあるAED を有効に活用することのできる社会を築き上げる必要がある。
教育と訓練に当たっては、AED 設置施設の関係者とそれ以外の一般人に分けて対策を進
めることが有効かつ効率的と思われる。
(1)AED 設置施設関係者に対する教育と訓練
AED 設置施設関係者は、より高い頻度でAED を用いた救命処置を必要とする現場に遭
遇する可能性があるため、日ごろから施設内の最寄りのAED 設置場所を把握しておくと
ともに、AED を含む心肺蘇生の訓練を定期的に受けておくこと必要がある。合わせて、突
然の心停止が発生した際の傷病者への対応を想定した訓練を行うことが望まれる。しか
し、質の高い救命処置を行うためにAEDを用いた救命処置訓練が行われることが望ましい
と考える。
そのためには教室での講習だけでなく、
自施設内で救命訓練を行うことも重要
である。自施設内の様々な場所で心停止が発生した場合を想定し、誰がどのように動き、
119 番通報、AED運搬などにあたるかをシミュレーション体験してみることも有用であ
る。(2)・
(3) (略)
(注) 下線は当局が付した。
- 43 -
参考図表7 敷地外での AED の使用要請への対応(国の合同庁舎の内訳)
区 分 敷地外での AED の使用要請への対応
青森合同庁舎 緊急時には柔軟に対応するが、具体的な対応は未定
青森第 2 合同庁舎
(1 階庁舎管理室に常駐する委託職員から連絡を受けて)
庁舎管理者が敷地外に AED を持ち出し
盛岡合同庁舎 施設入口付近に居合わせた職員が敷地外に AED を持ち出し
盛岡第 2 合同庁舎 施設入口付近に居合わせた職員が敷地外に AED を持ち出し
仙台合同庁舎 施設入口付近に居合わせた職員又は警備員が敷地外に AED を持ち出し
仙台第 2 合同庁舎
(庁舎管理者に指示を仰ぎ)
警備員が敷地外に AED を持ち出し
仙台第 3 合同庁舎 施設入口付近に居合わせた職員又は警備員が敷地外に AED を持ち出し
仙台第 4 合同庁舎
(警備員から連絡を受けて)
庁舎管理者が敷地外に AED を持ち出し
秋田合同庁舎
(傷病者の発生を把握した市民から AED のそばのインターフォンで連絡を受けて)
AED を一時的に貸出し
秋田第 2 合同庁舎 緊急時には状況に応じて対応するが、具体的な対応は未定
山形地方合同庁舎
(傷病者の発生を把握した市民から AED のそばの内線電話で連絡を受けて)
AED を一時的に貸出し
福島合同庁舎 緊急時には状況に応じて対応するが、具体的な対応は未定
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、東北 6 県の県庁所在市内の国の合同庁舎における敷地外での AED の使用要請への対応を示す。
- 44 -
参考図表8 救命講習の実施状況(国の合同庁舎の内訳)
区 分
救命講習の実施状況
実施頻度・
直近の開催年度
内容 対象
青森合同庁舎 毎年度
AED 販売業者等を講師とした
AED の使用方法などの心肺蘇生法
全入居官署職員
青森第 2 合同庁舎 平成 26 年度
消防署職員を講師とした
普通救命講習I
管理官署職員
盛岡合同庁舎 毎年度
消防署職員を講師とした
AED の使用方法などの心肺蘇生法
全入居官署職員
盛岡第 2 合同庁舎 未実施 ― ―
仙台合同庁舎 平成 28 年度
AED 販売業者等を講師とした
AED の使用方法などの心肺蘇生法
全入居官署職員
仙台第 2 合同庁舎 平成 24 年度
消防署職員を講師とした
普通救命講習I
全入居官署職員
仙台第 3 合同庁舎 平成 22 年度
消防署職員を講師とした
普通救命講習I
管理官署職員
仙台第 4 合同庁舎 毎年度
AED 販売業者等を講師とした
AED の使用方法などの心肺蘇生法
全入居官署職員
秋田合同庁舎 毎年度
消防署職員を講師とした
AED の使用方法などの心肺蘇生法
全入居官署職員
秋田第 2 合同庁舎 毎年度
消防署職員を講師とした
AED の使用方法などの心肺蘇生法
全入居官署職員
山形地方合同庁舎 毎年度
消防署職員を講師とした
AED の使用方法などの心肺蘇生法
全入居官署職員
福島合同庁舎 毎年度
消防署職員を講師とした
普通救命講習I
全入居官署職員
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、東北 6 県の県庁所在市内の国の合同庁舎における救命講習の実施状況を示す。
- 45 -
参考図表9 AED 設置場所に関する情報の登録に係る関係通知
i)「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について」
(平成 21 年 4 月 16 日付
け薬食安発第 0416001 号製造販売業者代表者宛て厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知)(抜粋)
1.〜2. (略)
3.AEDの設置情報登録について
AEDの設置に関する情報について、販売業者又は賃貸業者と連携の上、把握に努めるとと
もに、AEDの購入者又は設置者に対して、財団法人日本救急医療財団への設置者登録を依頼
すること。
4.〜6. (略)
ii)「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について(注意喚起及び関係団体へ
の周知依頼)」(平成 21 年 4 月 16 日付け医政発第 0416001 号、薬食発第 0416001 号 都道
府県知事宛て厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食品局長連名通知)
(抜粋)1.AEDの適切な管理等について、
AEDの設置者等が行うべき事項等を別紙のとおり整理したの
で、その内容について御了知いただくとともに、各都道府県の庁舎(出先機関を含む。)、都
道府県立の学校、医療機関、交通機関等において各都道府県が設置・管理しているAEDの適
切な管理等を徹底すること。
2.貴管下の各市町村(特別区を含む。以下同じ。
)に対して、各市町村の庁舎(出先機関を
含む。
)及び市町村立の学校、医療機関、交通機関等において各市町村が設置・管理してい
るAEDの適切な管理等が徹底されるよう本通知の内容について周知すること。
3.貴管下の学校、医療機関、交通機関、商業施設等の関係団体に対して、民間の学校、医療
機関、交通機関、商業施設等において当該関係団体及びその会員が設置・管理しているAED
の適切な管理等が徹底されるよう本通知の内容について周知すること。
4.各市町村及び関係団体との協力・連携の下、AEDの更なる普及のための啓発を行う際には、
AEDの適切な管理等の重要性についても幅広く周知すること。
5.各都道府県、各市町村、関係団体等が実施するAEDの使用に関する講習会において、AEDの
適切な管理等の重要性についても伝えること。
別 紙
AEDの設置者等が行うべき事項等について
1.〜3. (略)
4.AEDの設置情報登録について
AEDの設置情報登録については、平成19年3月30日付け医政発第0330007号厚生労働省
医政局指導課長通知「自動体外式除細動器(AED)の設置者登録に係る取りまとめの協
- 46 -
力依頼について」において、AEDの設置場所に関する情報を製造販売業者等を通じて財
団法人日本救急医療財団に登録いただくよう依頼しているところです。
同財団では、
AEDの設置場所について公表を同意いただいた場合には、
AEDの設置場所
をホームページ上で公開することで、地域の住民や救急医療に関わる機関があらかじ
め地域に存在するAEDの設置場所について把握し、必要な時にAEDが迅速に使用できる
よう、取り組んでおります。
また、AEDに重大な不具合が発見され、回収等がなされる場合に、設置者等が製造販
売業者から迅速・確実に情報が得られるようにするためにも、
設置場所を登録していな
い、
又は変更した場合には、
製造販売業者等を通じて同財団への登録を積極的に実施す
るようお願いします。
なお、
AEDを家庭や事業所内に設置している場合等では、
AEDの設置場所に関する情報
を非公開とすることも可能です。
iii)「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について(注意喚起及び関係団体へ
の周知依頼)」(平成 21 年 4 月 16 日付け医政発第 0416002 号、
薬食発第 0416002 号関係省
庁等宛て厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食品局長連名通知)
(抜粋)
今般、AEDの適切な管理等について、AEDの設置者等が行うべき事項等を整理し、別添のとお
り、各都道府県知事あて通知したので、貴職におかれては、その内容について御了知いただく
とともに、貴省庁等がその庁舎(出先機関を含む。
)等において設置・管理しているAEDの適切
な管理等の徹底をお願いします。
また、貴省庁等所管の学校、医療機関、交通機関、商業施設等の関係団体に対して、民間の
学校、医療機関、交通機関、商業施設等において当該関係団体及びその会員が設置・管理して
いるAEDの適切な管理等が徹底されるよう当該通知の内容について周知いただきますよう御
協力願います。
併せて、貴省庁等、地方自治体(消防本部等)及び関係団体等が実施するAEDの使用に関す
る講習会においても、AEDの適切な管理等の重要性について幅広く国民に理解されるようにす
るため、当該対策の実施を含めたAEDの適切な管理等の重要性について伝えるよう御協力願い
ます。
(注) 上記通知文中の「別添」は、
「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について(注意喚起及び
関係団体への周知依頼)」(平成 21 年 4 月 16 日付け医政発第 0416001 号、薬食発第 0416001 号 都道府県知
事宛て厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食品局長連名通知)
(参考図表9ii)を指す。
iv)「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報に係る取りまとめの協力依頼について」(平成 27 年 8 月 25 日付け医政地発 0825 第 3 号一般社団法人電子情報技術産業協会ヘルスケ
アインダストリ事業委員会委員長宛て厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)
(抜粋)
1.AED設置登録情報の円滑な登録に向けた協力依頼について
今般、AED設置登録情報の新規登録用紙が作成されることに伴い、AED販売業者において
は、製品の梱包過程での登録用紙の同梱や販売時の登録方法の説明など、AED設置登録情報
- 47 -
の円滑な登録において、
必要な対応を行っていただき、
AED設置登録情報の財団への収集(登録)率がさらに向上するよう、格別の配慮をお願いしたい。
2.すでに財団に登録されている約23万台の再登録(更新)に関する協力依頼について
AED設置登録情報については、これまで、約23万件が財団に登録されているところである
が、
新しいAED設置登録情報システムにおいては、
実際にAEDを管理している者から登録を受
け付ける仕組みとなっている。これに伴い、約23万件の追加の登録に際しては、AEDの販売
業者において、追加登録希望者が実際にAEDを管理していることを確認する必要があるた
め、貴会傘下会員の各社において、コールセンターの対応手配及び登録用紙の配布等、必要
な支援を行っていただけるよう、周知をお願いしたい。
v)「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の有効活用等について」
(平成 27 年 8 月 25
日付け医政発 0825 第 7 号都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知)
(抜粋)
1 (略)
2 日本救急医療財団全国 AED マップを用いた住民への情報提供について
今般、
財団において、
これまで登録されている情報をもとに日本救急医療財団全国 AED マ
ップを作成したので、
現時点で AED マップを作成していない地方公共団体については、
当該
マップを地方公共団体のホームページにリンクをさせることなどにより、住民への情報提
供に活用すること。
(リンク作成の必要な手順は前項の手順書等に記載されていること。)3 財団に既に登録されている AED 設置登録情報の更新の推進について
AED 設置登録情報については、AED の具体的な設置場所、使用の可否に係る情報が重要で
あるため、
財団においては設置者が登録するべき事項を増やすとともに、
適時適切に情報更
新が行われるよう従来の登録方式に代え AED 設置者が直接、財団に登録または更新をする
よう改めるとともに、その登録情報の信頼度を明示することにした。
ついては、AED 設置登録情報が適時適切に更新され、その信頼度が向上されるよう、貴管
下の AED 設置者に対し登録情報の更新について呼びかけること。
(更新の手順は AED マップ
ホームページからアクセス可。)4 財団に AED 設置登録情報を未登録の設置者に対する登録の呼びかけについて
AED 設置登録情報については、
「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施につい
て(注意喚起及び関係団体への周知依頼)」(平成 21 年 4 月 16 日付医政発第 0416001 号薬
食発第 0416001 号厚生労働省医政局長厚生労働省医薬食品局長連名通知)
において、
AED 設
置者に対して財団に登録するよう、お願いしていたところである。
貴管下において、財団に AED 設置登録情報を登録していない AED 設置者がいる場合、当
該設置者に対し財団への登録を呼びかけるなどの取組をすること。
(新規登録の手順も AED
- 48 -
マップホームページからアクセス可。)5 AED を有効に使用するための表示に係る必要な整備について
(1)誘導表示の充実について
AED が必要な時に AED を設置している場所にたどり着けるよう、施設の入口におい
てはステッカーを表示すること、施設内では AED の設置場所まで誘導する案内表示を
置くことなどの取組をすること。
(2)(略)
(注) 下線は当局が付した。
vi)「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の適切な更新等について(依頼)」(平成 27 年
8 月 25 日付け医政発 0825 第 8 号関係省庁宛て厚生労働省医政局長通知)
(抜粋)
今般、
別添のとおり各都道府県知事に対して通知を発出しましたので、
その内容について御
了知いただくとともに、貴省庁等がその庁舎(出先機関を含む。
)等において設置・管理して
いる自動体外式除細動器(以下「AED」という。
)の設置登録情報の適切な更新等をお願いしま
す。
また、
貴省庁等所管の事業所等及びその会員が設置・管理している AED の設置登録情報につ
いても適切な更新等が行われるよう、別添の通知の内容について周知いただきますよう御協
力をお願いします。
(注) 上記通知文中の「別添」は、
「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の有効活用等について」
(平成 27
年 8 月 25 日付け医政 0825 第 7 号都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知)
(参考図表9v)を指す。
参考図表10 「自動体外式除細動器(AED)の更なる有効活用に向けた取組の推進について(通知)」
(平成 26 年 7 月 7 日付け消防救第 116 号都道府県消防防災主管部(局)長宛て
消防庁救急企画室長通知)
(抜粋)
1 AED の設置場所に関する情報の収集及び住民に対する情報提供の推進
各市町村及び消防本部において、関係機関と連携し、適切な管理がなされている AED かど
うかについて留意しながら、管内の AED の設置場所に関する情報を収集し、ホームページ
等を通じて住民に対して情報を提供していただくようお願いします。
また、住民に対する情報提供の手法としては、
・施設名や住所だけでなく、何階にあるかといった詳細な位置情報を提供している
・GPS(全地球測位網)機能付きの携帯電話等でアクセスすることにより、近くにある AED
の設置場所を検索することができるシステムを導入している
など、救命の現場に居合わせた一般市民が AED の設置場所をすみやかに知ることができる
ようにしている事例を参考に、情報提供の手法を工夫していただくようお願いします。
- 49 -
2 AED を設置している施設の従業員や周辺住民等に対する応急手当の普及促進
消防庁では平成 23 年に「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」
(平成 5 年 3
月 30 日消防救第 41 号消防庁次長通知)の改正を行い、従来の普通救命講習(180 分)より
も時間を短縮した 90 分の「救命入門コース」を新設し、e-ラーニングを活用した講習を取
り入れるなど、
一般市民が応急手当講習を受講しやすい環境を整備しており、
これらの講習
も積極的に活用しながら、特に AED を設置している施設の従業員や周辺住民等に対し、更
なる応急手当の普及促進を図っていただくようお願いします。
また、
AED を設置するとともに応急手当講習を従業員等が受講している施設の情報を住民
に対して提供することで、救命の現場に居合わせた一般市民が AED の使用を依頼できる施
設をすみやかに知ることができるようにしている事例があるため、このような情報提供の
手法の導入について積極的な検討をお願いします。
3 AED の設置場所に関する情報の通信指令システムへの登録及び口頭指導における当該情
報の活用の推進
一部の消防本部では、収集した管内の AED の設置場所に関する情報を通信指令システム
へ登録し、通報者に対して最も近くの AED の設置場所を伝えて使用を要請するなど、口頭
指導において当該情報を活用している事例があります。このような仕組みの導入により、
AED の使用開始までの時間の短縮等が見込まれるため、
管内の AED の設置場所に関する情報
の収集と併せて、このような仕組みの導入について積極的な検討をお願いします。
(注) 下線は当局が付した。
参考図表11 通信指令員の救急に係る教育テキスト(平成 26 年 3 月消防庁)(抜粋)
第2節 救急指令
1.指令員に必要な医学的知識
(1)〜(5) (略)
(6) 自動体外式除細動器(AED)
心臓は電気的刺激の伝達と心筋の収縮が秩序をもって規則的に起こることで、全身
へ血液を流すという機能を果たしている。
このため、
急性心筋梗塞など心臓の血管が詰
まり、血流が途絶えて心筋が壊死し、電気的刺激の発生と伝達が不調になると、心臓の
拍動と全身への血液の流れに影響を受けることになる。
心電図が心室細動または無脈性心室頻拍の波形を示す場合(電気ショックが必要な
状態)には、救命が成功する可能性は、発症から心肺蘇生が開始されるまでの時間と、
発症から電気的除細動が行われるまでの時間によってほぼ規定され、より迅速に実施
された場合ほど救命率は良好であることが示されている。
一方で、119 番通報から救急隊員の現場到着までに要する時間は全国平均 8.3 分(平
成 24 年)となっている。救急隊員の到着までの間にバイスタンダーによって電気的除
- 50 -
細動が速やかになされれば、
救命にとって有効となることが期待される。
一部の先進的
な消防本部では、
通信指令システムに AED の位置情報を登録し、
通報者に対し心肺停止
が疑われる通報内容のときに取り寄せる口頭指導を行っている取組もある。
AED が近く
にあることが想定される通報内容であれば、
通報者に取り寄せ、
現場に届けば直ちに使
用させるよう口頭指導することも考慮するべきである。
(7) (略)
参考図表12 AED 設置場所に関する情報の AED マップ等への登録状況(国の合同庁舎の内訳)
区 分
AED 設置場所に関する情報を AED マップ等で
登録・公開している AED 設置者
財団全国 AED マップ
への登録状況
地方公共団体が運営する
AED マップ等への
登録状況
青森合同庁舎
青森第 2 合同庁舎 しろまる しろまる
盛岡合同庁舎
盛岡第 2 合同庁舎
仙台合同庁舎 しろまる しろまる
仙台第 2 合同庁舎
仙台第 3 合同庁舎 しろまる しろまる
仙台第 4 合同庁舎
秋田合同庁舎 しろまる しろまる
秋田第 2 合同庁舎 しろまる しろまる
山形地方合同庁舎 しろまる しろまる
福島合同庁舎
該当機関数 6 4 2
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、東北 6 県の県庁所在市内の国の合同庁舎における AED 設置場所に関する情報の AED マップ等へ
の登録状況を示す。
3 斜線は、国、民間事業所を含めた AED マップ等が運営されていないことを示す。
- 51 -
参考図表13 AED 設置場所に関する情報の消防本部への登録状況(国の合同庁舎の内訳)
区 分 消防本部への登録状況
青森合同庁舎
青森第 2 合同庁舎
盛岡合同庁舎
盛岡第 2 合同庁舎
仙台合同庁舎 しろまる
仙台第 2 合同庁舎
仙台第 3 合同庁舎
仙台第 4 合同庁舎
秋田合同庁舎 しろまる
秋田第 2 合同庁舎
該当機関数 2
(注)1 当局の調査結果による。
2 本表は、国、民間事業所を含めた消防本部への登録の仕組みがある青森市、盛岡
市、仙台市及び秋田市内の国の合同庁舎における消防本部への登録状況を示す。
3 盛岡地区広域消防組合消防本部は、
財団全国 AED マップに登録された AED 設置者
を通信指令システムに登録しているため、
盛岡市内の AED 設置者については財団全
国 AED マップへの登録状況を示す。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /