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第 74 回人口・社会統計部会議事概要
1 日 時 平成28年11月7日(月)10:00〜12:05
2 場 所 総務省第2庁舎6階特別会議室
3 出席者
【委 員】
白波瀬 佐和子(部会長)、嶋﨑 尚子、河井 啓希、関根 敏隆
【専 門 委 員 】
神林 龍(一橋大学経済研究所教授)
重川 純子(埼玉大学教育学部教授)
【審議協力者】
財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、日本銀行、
東京都、神奈川県
【調査実施者】
総務省統計局統計調査部消費統計課:阿向課長、佐藤調査官ほか
【事務局(総務省)】
横山大臣官房審議官
統計委員会担当室:山澤室長、吉野政策企画調査官
政策統括官(統計基準担当)付統計審査官室:澤村統計審査官、内山国際統計企画官ほか4 議 題 家計調査の変更について
5 概 要
しろまる 審査メモの「3 平成 26 年度審議結果報告書で示された『家計統計』に係る今後
の取組の方向性に関する取組状況」について、調査実施者の説明を基に審議を行った
結果、おおむね統計委員会が示した方向性に沿った対応が進められていることを確認
したものの、一部の事項については、次回部会において調査実施者から事実関係等を
再度説明することとされた。
委員からの主な意見等は、以下のとおり。
(1)家計調査の改善に関する事項
ア 調査事項
しろまる 数量調査の継続検討 2・ 数量データを把握すべきとの国際機関の決議を踏まえ、諸外国においても数量
調査を実施しているのか。また、その際、報告者負担が特に重いと思われる計量
器(はかり)を用いた調査も、行われているのか。
→ 諸外国においても、数量調査を実施しているものと認識しているが、計量器
を使用しているかまでは把握していない。
・ 「ICT技術を活用した数量調査の見直し」とは、具体的にどのような検討を
行っているのか。
→ 具体的に検討しているものではないが、将来的には、レシート情報の数量デ
ータや、JAN コードの利用等、外的な調査環境の変化も踏まえた検討が必要と
考えている。
・ 数量調査は、報告者の記入負担は大きいものの、家計の分析において重要な平
均購入価格の動向や、それと収入との関係分析を行うために必要な調査であり、
継続する方向で検討していただきたい。
・ 平成 14 年に食料の数量記入期間を短縮した際に、期間短縮による結果への影響
等は分析したのか。調査事項を見直す際は、そのような分析結果も踏まえた結果
精度の観点からの議論が必要ではないか。
→ 平成 14 年の変更に際しては、事前に行った結果数値への影響分析を踏まえ、
承認されたものと認識している
・ 現状としては、現行の方法により継続すると認識しているが、将来的に、IC
T技術等を活用した数量調査の記入負担の軽減を考えているのであれば、数量を
調べる方法の変更に際して、どのような影響が生じるのかについても、検討して
ほしい。また、数量調査の必要性は否定しないが、報告者負担の軽減は引続き検
討すべきと考えられるため、今後の課題とすることを含めて整理したい。
イ 調査方法
1 タブレット端末による回答の実現
2 高齢者に配慮した記入支援方法の検討
・ オンライン調査システムの導入に対する都道府県の意見を具体的に教えていた
だきたい。また、高齢者の記入支援における個人情報の保護については、どのよ
うに担保する計画か。
→ 都道府県からは、オンライン化の方向は望ましいとする一方で、1調査員の
更なる負担増となることは避けてほしい、2調査員の習熟期間をしっかり確保
してほしい、3システムトラブルへの対応のためコールセンターを設置して欲
しい等の意見が見られた。また、個人情報の保護については、総務省セキュリ
ティポリシーに則り、必要な対策を講じることとしている。 3・ 平成 30 年からオンライン調査を導入するとのことであるが、他の統計調査の変
更時期等と重なると、
実査事務を担う都道府県の負担が大きくなるのではないか。
→ 都道府県においては、調査により担当が異なることから、負担は分散される
と認識している。
・ 調査員による記入支援の度合いや内容等を把握しているのか。本人が記入した
場合と、調査員による記入支援や代行記入した場合では、記入内容に違いが生じ
るのではないか。調査票のどの部分について本人が記入し、どの部分について記
入支援が必要であったかという情報を蓄積することにより、今後、調査票を変更
する際の参考情報として活用できるのではないか。
→ 調査員の関与により記入内容に違いが生じる可能性はあるが、家計調査固有
の問題ではなく、調査員調査で行っている統計全体に係る問題かと思われる。
→ 家計調査については、報告者に対する調査員の支援や指導により、記入の正
確性を担保しているところが大きいため、今後の負担軽減等を検討する上では、
調査員の支援状況を把握することは基礎情報として重要と考える。
→ オンライン調査の導入後も、調査員の関与は継続する計画である。御指摘い
ただいた調査員の支援状況と記入内容の差の把握については、家計調査の実務
の中で行うのか、それとも、別の調査で把握する方がよいのか検討したい。
・ 都道府県の負担という観点から、東京都と神奈川県からも御意見を伺いたい。
→ 調査票の回収に当たっては、確かに調査員の支援によるところは大きいが、
マンション等では調査員の立入そのものを拒否される場合も多く、これも大き
な問題である。これについても、統計調査の重要性を周知する等、対応を検討
していただきたい。
→ オンライン回答の導入については、高齢の調査員も多いため、使いやすいシ
ステムとし、調査員への使い方の説明をしっかり行う必要がある。また、高齢
者への記入支援については、一般化できるものや、他県の事例で参考になるも
のがあれば教えていただきたい。
・ 平成 30 年のオンライン導入に向けて、今後、試験調査を行う場合には、調査員
の関与の度合いや、
入力をタブレットで行ったかどうかなどを把握していただき、
調査方法の違いによって何らかの差があるかどうかということをよく検討した上
で導入していただきたい。また、調査員の高齢化により、今後、調査事務の民間
委託等も考えられると思うので、調査のノウハウが引き継がれるような方策も検
討していただきたい。
→ オンライン調査を導入する際には、過去のデータとのギャップが生じる可能
性を否定できないが、そのギャップをいかに抑えるかが重要と考えている。家
計消費状況調査(一般統計調査)におけるオンライン調査導入時の回答率が約
10%であったことや、家計調査の報告負担を勘案すると、家計調査のオンライ 4ン回答率は家計消費状況調査よりも低くなると見込まれる。また、オンライン
調査は、順次導入する計画であり、導入時の平成 30 年1月に直ちに大きなギ
ャップが生じるとは想定していない。
ウ 集計・情報提供
1 世帯主の年齢階級分布を用いた推定結果の参考提供
2 他の世帯属性を用いた推定方法の研究
3 他の関連統計との相違についての説明
4 タイムリーな情報提供
・ 資料2のP5及びP6で示された 2015 年8月の公表値と参考値(試算値)との
差異について、P5は「0.7」である一方、P6は「-1.5」になっている。有業人
員の変数が加わることで、このような差が生じているのはなぜか。また、こうい
った参考値や標準誤差の情報等を公表する場合には、その根拠等を示すことも必
要である。
→ 差異が大きいか小さいかは、利用者によって捉え方が異なると思うが、景気
動向をみる上では、この差は大きい。前年同月比がこれだけ異なると、景気の
見方が決定的に変わってくる。
→ 集計結果が取り得る幅については、統計的にフォローした上で、上限と下限
に関する情報を具体的に示す必要があるのではないか。
→ P5及びP6のそれぞれの推定方法において、
なぜ公表値と参考値
(試算値)
にこのような差異が生じるのかを解説した上で、情報提供した方が良いのでは
ないか。次回、この差異の理由等について、もう少し詳しく説明していただき
たい。
・ 説明資料2のP4からP6の1及び2に関しては、
標準誤差を小さくするため、
標本数を増やす以外に考えられる方策はあるのか。また、P8の4については、
利用者にとってより分かりやすくなるように、絵やグラフを活用するとともに、
ホームページだけでなくツイッター等他の方法を用いるなど、情報提供の方法を
見直してはどうか。
→ 標準誤差の縮小に向けた推定方法についても検討しているが、効果的な手法
が見出せない状況である。サンプルサイズの拡大は有効であるが、負担の増大
を考慮すると現状では困難と考えている。また、情報提供の充実については、
直ちに対応することは難しいものの、見直しを検討したい。
・ このような情報は、統計局のHPの利用に慣れていない利用者にも分かりやす
くまとめて掲載されているのか。
→ 利用者によって知りたい情報は異なるため、全ての要望に対応することは困
難であるが、関係する情報はまとめて見られるよう配慮している。 5・ サンプル数を増やすことが困難な状況にあって、標準誤差を改善する方策とし
て、具体的にどのような方法が考えられるのかについては、次回改めて説明して
いただきたい。
(2)家計消費全般に係る事項
ア 家計消費状況調査及び家計消費指数の公表早期化
・ 特に意見なし
イ 家計統計の長期的な在り方検討(ビッグデータを含めた新指標の開発を含む。)・ 今回の家計調査の変更については、ミクロの家計消費の構造を適切に把握する
ものと期待している。一方、昨年度の統計委員会で指摘されたように、家計統計
は、回収標本の分布の歪みや消費主体が世帯に限定される等の制約に加えて、標
本誤差の大きさが景気判断の実務に耐え得るかとの問題もあるため、QEをはじ
めとした景気指標としての利用には限界がある。今回の改善によっても、QEへ
の利用やマクロの景気把握は引き続き困難なことから、家計の消費構造を的確に
把握することに力点を置き、持続可能な調査の在り方を検討すべきである。
→ 今回の審議は、あくまで家計調査の改善が中心ではあるものの、家計調査に
ついて様々な論議が行われている中、御指摘のような点も視野に入れて議論し
たい。その中で、家計調査は、何を目的に行われている調査であるかも明確に
なると考えている。
→ いわゆるミクロ統計として、家計における消費の詳細な状況をみることが、
家計調査の目的であり、その精度向上に向けて不断に取り組むことが我々の責
務と考えている。一方、統計委員会において「景気指標としてはビッグデータ
等を含む新たな指標開発が必要」ともされており、別途開催している総務大臣
主宰の研究会において検討しているところ。
・ 家計消費の把握においては、
「個人」単位での把握の必要性が求められるが、家
計は世帯構成による違いが大きく、
「世帯」単位での把握が必要でないか。また、
家計と景気の関係については、世帯構成により家計にはどうしても減らせない支
出等もあり、実際、景気に連動しない部分もあるのではないか。
→ 景気判断の観点から重要なのは個人消費全体の動きであり、GDP年次推計
(確報)では、それをコモディティ・フロー法で推計している。日本銀行が今
年度公表を開始した消費活動指数では、家計統計を利用せずに供給側の販売統
計等に一本化して推計した方が、GDP確報をより正確に当てられるとの結果
が得られている。すなわち、標本数が 8,000 強の家計統計では、どのような補
正等を行っても、景気判断に有用なレベルまで誤差が小さくならず、景気指標
として限界があると考える。
→ 家計調査の精度向上は今後も課題と考えている。結果をどう利用するかは利 6用者の判断であり、例えばGDP推計では家計調査を使うべきと我々が判断す
るものではない。利用においては家計調査のいわば癖も理解しつつ使ってもら
いたい。なお、家計調査の精度向上に取り組んだ成果が、家計調査を利用して
いる他の統計の精度向上にも広がることは望ましいものと考えている。また、
ビッグデータの利用については、家計調査とは別の次元における新たな検討の
視点と考えている。
・ 回答した世帯と非回答の世帯の属性、介護の要否、所得の違い等は把握してい
るのか。
→ 最初に抽出されたものの、協力が得られなかった世帯については、準調査世
帯票により属性を把握し、実際に調査対象となった世帯との属性分布の比較や、
ベンチマークとなる他の調査の世帯分布との比較等を行っている。しかし、協
力が得られなかった世帯において、家計の状況を把握することは困難なため、
他のデータで補足する方法を研究したい。
→ 家計調査では、どのような属性の世帯が把握できているのか、どのような属
性の世帯が把握できていないのかという分析は必要である。
→ 実際に報告者になった世帯が、どういった経緯で報告者になったのか、当初
の候補世帯だったのか、代替で選ばれた世帯なのかについての情報を、実査の
現場では持っているはずである。その情報を活用することはできないのか。
→ 協力を得られない場合、どのように代替標本を抽出しているかについて、次
回説明してほしい。
6 その他
本日の部会の審議結果については、
10 月 17 日に行われた部会の審議結果と合わせて、
平成 28 年 11 月 18 日(金)開催予定の統計委員会において報告されることとされた。
また、家計調査に関する次回の部会は、平成 28 年 11 月 22 日(火)16 時から総務省
第2庁舎6階特別会議室において開催することとされた。
(以 上)

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