規制の事前評価の実施に関するガイドライン(素案)


総務省 規制の事前評価書
(技術基準に適合しない無線設備の製造業者等に対する制度の整備)
所管部局課室名:総合通信基盤局 電波部 電波政策課
電話番号:03-5253-5909
e-mail:core.denpa.seisaku@ml.soumu.go.jp
評価年月日:平成 27 年3月
1.規制の目的、内容及び必要性
(1)現状及び問題点
電波法(昭和 25 年法律第 131 号。以下「法」という。
)は無線局の開設・
運用の規律を一義的には開設者にかけており、
総務省において個別の不法無
線局に対し告発・指導を行う等の対処を講じている。
しかし、一部の事業者により大量に製造・販売され市場に流通する技術基
準に適合しない無線設備が、
他の無線局へ混信その他の妨害を与える事例が
多発していた
(このように技術基準を満たさず他の無線局へ妨害等を与える
無線設備を、以下「基準不適合設備」という。)。そのため、個々の不法無線
局への対処に加えて、
基準不適合設備の製造業者又は販売業者に対して一定
の規律をかけることで、
根本的に事態の解決を図る必要があるとの観点から、
昭和 62 年に勧告・公表制度が導入された(法第 102 条の 11)
。なお、勧告・
公表制度においては、当該制度の施行に必要な限度において、当該基準不適
合設備の製造業者又は販売業者から報告徴収を行うことができる(法第 102
条の 12)。しかし、近年においては、1少しずつ異なる設計に基づく少量多品種の無
線設備が製造されるようになったこと、
2インターネット販売の増加に伴い
製造業者や販売業者による社名や販売サイトの変更等が容易となっている
こと、3外国規格の無線設備等が多く輸入されていること (注記)1
等、製造及び
流通の実態に変化が生じている。
そのため、現行の勧告・公表制度の下で基準不適合設備の製造業者等に関
して適切な対応を講ずることは困難となってきており、昭和 62 年の勧告・
公表制度導入時と比べて、妨害事例全般、社会的に影響が大きい重要無線通
(注記)2
に対する妨害事例とも増加している (注記)3。特に重要無線通信に対する妨害は、国民の人命・財産に重大な影響を及ぼ
すおそれがあることから、これらの発生を防止するため、基準不適合設備の
製造業者等に対して有効な措置を講じることが求められている。
(注記)1 平成 25 年度に出現が確認された不法無線局のうち、
外国規格無線設備を用い
た不法無線局が全体の 14%(996 件)を占める。
(注記)2 電気通信業務用、放送業務用、防災対策、警察事務、消防事務、航空機の運
用・船舶の航行、鉄道業務用等に用いられる無線通信。
(注記)3 平成 25 年度の混信等の申告件数と、
そのうちに占める重要無線通信に対する
混信等の申告件数は共に増加している(昭和 60 年度:1,796 件うち重要無線通
信妨害 208 件(11.6%)
、平成 25 年度:2,345 件うち重要無線通信妨害 605 件
(25.8%))。
(2)規制の新設又は改廃の目的、内容及び必要性
1新設又は改廃の目的
無線設備の製造及び流通の実態の変化に適切に対応し、
他の無線局へ混信
その他の妨害を与える基準不適合設備の製造業者等に対して実効的な措置
を講じることにより、
我が国の無線通信の秩序の維持を図ることを目的とす
るものである。
2新設又は改廃の内容
(i)基準不適合設備と「同一の設計」の無線設備が販売されている場合だ
けではなく、
「類似の設計」の無線設備が販売されるおそれがある場合にお
いても勧告を行うことを可能とするとともに、
その施行に必要な限度におい
て報告徴収を行うことを可能とする。
(ii)勧告の対象に基準不適合設備の輸入業者を加えるとともに、報告徴収
の対象においても輸入業者を追加する。
(iii)妨害を与えられた無線局が重要無線通信を行うものであった場合に、
勧告・公表の後、なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置を講じなか
ったときは、
当該基準不適合設備の製造業者等にその勧告に係る措置を講ず
べきことを命ずることを可能とする。
3新設又は改廃の必要性
我が国の社会経済活動の重要な基盤として電波利用の高度化が進む現在
において、無線通信の秩序の維持を図ることは非常に重要である。
しかし、
昨年度においては、
無線局の免許人からの混信その他の妨害の申
告が 2,345 件、そのうち重要無線通信に対する混信その他の妨害の申告が
605 件報告されるなど無線局への混信その他の妨害が多発しており、無線通
信の秩序の維持に向けた有効な対策を講じることが急務となっている。
総務省においては、24 時間の電波監視体制を実施する等個別の不法無線
局への対応を行っているが、これらに加えて、基準不適合設備の製造業者等
にも一定の実効的な規律をかけることで、
根本的に事態の解決を図る必要が
ある。そのため、勧告の発動要件等を見直すことにより、基準不適合設備の
製造業者等に対し実効的な措置を講じることを可能とする必要がある。
しろまる関連する主要な政策
情報通信
(ICT政策) 政策 13
「電波利用料財源による電波監視等の実施」
しろまる法令の名称・関連条項とその内容 (注記)改正案の条文
しろまる電波法(昭和 25 年法律第 131 号)
・第 102 条の 11(基準不適合設備に関する勧告等)
・第 102 条の 12(報告の徴収)
・第 113 条第 25 号(罰則)
2.規制の新設又は改廃案の規制の費用及び便益
(1)規制の費用
1遵守費用
(i)について、
「類似の設計」の無線設備を販売しようとする製造業者等
が、総務大臣から報告を求められた場合には、報告に応じる負担が生じる。
これらの報告に応じなかった場合や、虚偽の報告をした場合は、罰金に処さ
れることとなるが、報告の求めは勧告、公表及び命令の施行に必要な限度に
おいて行われるものであり、当該費用は限定的である。
(ii)について、総務大臣から報告を求められた輸入業者は、報告に応じる
負担が生じ、また、これらの報告に応じなかった場合や、虚偽の報告をした
場合は、罰金に処されることとなるが、報告の求めは勧告、公表及び命令の
施行に必要な限度において行われるものであり、当該費用は限定的である。
(iii)について、総務大臣が、製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、重
要無線通信に妨害を与えた基準不適合設備の製造・販売について必要な措置
を講ずべきことを命じた場合には、製造業者、輸入業者又は販売業者におい
て当該措置を講ずるための費用が発生する。
2行政費用
(i)について、勧告の対象が広がることで勧告及び報告徴収の件数が増加
し、行政費用が増加する可能性があるが、当該費用は多大なものとはならな
い見込みである。
(ii)について、輸入業者を新たに勧告及び報告徴収の対象とすることで勧
告及び報告徴収の件数が増加し、行政費用が増加する可能性があるが、当該
費用は多大なものとはならない見込みである。
(iii)について、総務大臣が、製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、重
要無線通信に妨害を与えた基準不適合設備の製造・販売について必要な措置
を講ずべきことを命ずる際の事務費用が発生するが、
当該費用は多大なもの
とはならない見込みである。
3その他の社会的費用
特にない。
(2)規制の便益
1遵守便益
特にない。
2行政便益
本改正により勧告の対象を見直し、
一定の場合に基準不適合設備の製造業
者等に罰則を伴う命令を行うことを可能とすることにより、
混信件数の減少
が見込まれることから、
混信等の申告に対処するための費用の低減が期待さ
れる。
3その他の社会的便益
本改正において勧告の対象を見直すことにより、
近年の無線設備の製造及
び販売の実態の変化に応じて適切に基準不適合設備の製造業者等に対処す
ることが可能となり、無線通信の秩序の維持を図ることができる。また、一
定の場合に基準不適合設備の製造業者等に罰則を伴う命令を行うことを可
能とすることにより、
重要無線通信に妨害を与えた基準不適合設備の製造業
者等が、
その事態の除去に必要な措置を確実に講ずることを担保することが
可能となり、無線通信の秩序の維持に資することとなる。
3.政策評価の結果(費用と便益の関係の分析等)
法律の施行後3年を経過した場合において、改正後の規定の施行状況につい
て検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を
講ずるものとしていることから、分析対象期間を3年間とする。
本改正により新たな費用が発生するが、遵守費用(i)
(ii)は前述のとおり
限定的であり、
(iii)についても、製造業者、販売業者又は輸入業者は、無線通
信の秩序の維持を図るため、第三章に定める技術基準に適合しない無線設備を
製造し、輸入し又は販売することのないように努めなければならないとされて
いることから、当該無線設備に対して措置を講ずるためにかかる費用は、受忍
すべき最小限のものと考えられる。また、行政費用(i)〜(iii)についても
多大なものとはならない見込みである。
その一方で、本改正により、他の無線局への混信その他の妨害を与える基準
不適合設備の流通を抑制することが可能となり、無線通信の秩序の維持が図ら
れるようになる。その結果、国民の人命・財産を守ることができる等、多大な
便益を期待することができる。
以上により、本改正に伴う便益は費用を上回ると考えられるため、今回の制
度改正は適切かつ合理的なものであると考えられる。
4.規制の新設又は改廃案と代替案との比較
(1)代替案
代替案としては、無線設備の製造業者等で構成される民間団体等によるガイ
ドラインの作成等の自主的な取組を促進することが考えられる。
(2)代替案の規制の費用
1遵守費用
無線設備の製造業者等で構成される民間団体等において、
ガイドラインを作
成する等の取組を行うための費用が発生し、
また、
それを遵守して事業を行う
ための費用が発生する。
2行政費用
無線設備の製造業者等で構成される民間団体等による自主的な取組を支援
するための費用が発生する。
3その他の社会的費用
特にない。
(3) 代替案の規制の便益
1遵守便益
無線設備の製造業者等で構成される民間団体等において作成したガイドラ
インを遵守して事業をすることにより、勧告又は報告徴収を受けにくくなる。
2行政便益
無線設備の製造業者等で構成される民間団体等の自主的な取組により混信
件数の減少が見込まれることから、
混信等の申告に対処するための費用の低減
が期待される。
3その他の社会的便益
無線設備の製造業者等で構成される民間団体等が自主的に基準不適合設備
に対処することで、
無線通信の秩序の維持が図られることが期待される。
一方
で、
無線設備は、
近年、
インターネット等の多様な流通経路で販売され、
また、
海外からの輸入も増加しているが、
これらの販売業者や輸入業者の中には民間
団体等に属しない者が少なからず見込まれることから、
国内の民間団体等によ
る自主的取組のみでの対処では、便益も限定的となる。
(4)代替案との比較結果
代替案においても、改正案と同種の便益が発生するものの、無線設備の製造・
流通の現状(ガイドラインを策定する民間団体等に属しない者が少なからず見
込まれる)を踏まえれば、得られる便益は限定的なものにとどまり、無線通信
の秩序の維持を図るという規制の目的を達成することは困難である。よって、
現時点において講ずべき措置としては、改正案が適当と考える。
5.有識者の見解、評価に用いた資料その他関連事項
(1)有識者の見解
総務副大臣/大臣政務官主催の「電波政策ビジョン懇談会」
(平成 26 年1月
〜12 月)において、無線機器市場の監視について検討が行われ、同懇談会「最
終報告書」
(平成 26 年 12 月)において以下の提言がなされており、本改正は、
この提言を踏まえたものである。
しろまる重要無線通信への混信・妨害は、国民の人命・財産に重大な影響を及ぼすお
それがあるため、その原因を引き起こした無線機器を一般消費者が引き続き
購入することがないよう、製造・販売の段階で抑止できる方策を検討してい
くことが適当
しろまる今後も国民生活や社会経済活動において多様な無線機器が利用される場面が
増大することが想定される中、基準不適合設備から他の無線局に混信・妨害
を与える違法な電波が不用意に発射されることがないよう、そうした違法機
器が実際に使用される前段階である製造・流通の過程において基準不適合設
備を一層効果的に排除する方策について、諸外国の制度も参考にしつつ、引
き続き検討を進めていくことが必要
(2)評価に用いた資料その他関連事項
しろまる電波政策ビジョン懇談会 会議資料等
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/denpa_vision/index.html
6.レビューを行う時期又は条件
法律の施行後3年を経過した場合において、改正後の規定の施行の状況につ
いて検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置
を講ずる。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /