行政不服審査制度検討会中間とりまとめ


行政不服審査制度検討会 最終報告
-行政不服審査法及び行政手続法改正要綱案の骨子-
平成 19 年 7 月
行政不服審査制度検討会
目 次
はじめに ································································ 1
第1章 総則 ···························································· 3
第1 行政不服審査法の目的及び趣旨 ···································· 3
第2 不服申立ての基本構造 ············································ 4
1 不服申立ての種類の一元化 ········································ 5
2 審理の一段階化 ·················································· 7
3 不服申立ての基本構造の例外 ······································ 8
第3 不服申立人適格及び処分についての不服申立てに関する一般概括主義 · 11
1 不服申立人適格 ················································· 11
2 一般概括主義 ··················································· 11
第2章 審査請求期間及び標準審理期間等 ································· 13
第1 審査請求期間 ··················································· 13
1 主観的審査請求期間 ············································· 13
2 客観的審査請求期間 ············································· 14
第2 標準審理期間及び審理状況に関する説明 ··························· 15
1 標準審理期間 ··················································· 15
2 審理状況に関する説明 ··········································· 16
第3章 審査請求の審理手続 ············································· 17
第1 審理員 ························································· 17
1 審理員の意義 ··················································· 17
2 審理員の指名条件 ··············································· 17
3 審理員及び審査庁の責務 ········································· 20
第2 審理手続の内容 ················································· 22
1 書面主義及び口頭意見陳述 ....................................... 23
2 審理手続の内容 ................................................. 24
3 処分庁の資料・書面の提出義務 ................................... 24
4 審理の計画的進行 ............................................... 24
第3 争点及び証拠の整理 ············································· 26
第4 証拠書類等の閲覧 ··············································· 28
第4章 執行停止 ······················································· 29
1 手続 ··························································· 29
2 要件 ··························································· 29
3 仮の義務付け ··················································· 30
第5章 審理員による審理手続の終結 ····································· 32
第6章 意見送付・調査審議 ············································· 34
1 第三者機関が審理に関与する必要性 ······························· 35
2 意見送付・調査審議の手続 ······································· 35
3 審査会等からの通知と裁決との関係 ······························· 37
第7章 裁決(認容裁決の態様) ········································· 38
第8章 再調査請求の手続 ··············································· 41
1 再調査請求期間 ················································· 41
2 標準審理期間及び審理状況に関する説明 ··························· 41
3 審理手続 ······················································· 41
第9章 審査会等 ······················································· 42
1 審査会等の設置 ················································· 42
2 国における行政不服審査会 ······································· 42
3 地方公共団体における審議会その他の合議制の機関 ················· 43
4 専門委員 ······················································· 44
第 10 章 行政手続法の改正 ··············································· 45
第1 一定の処分を求める申出 ········································· 45
第2 行政指導に対する是正の申出 ····································· 47
1 救済を必要とする類型 ··········································· 47
2 要件 ··························································· 49
3 申出に対する調査手続 ··········································· 50
4 申出に対する是正及び通知 ······································· 51
5 地方公共団体との関係 ··········································· 52
第 11 章 その他 ························································· 53
1 施行期日 ······················································· 53
2 関係法令の扱い ················································· 53
3 行政指導以外の事実行為及び行政上の契約等 ······················· 53
(資料)
行政不服審査制度検討会 名簿 ········································ 57
行政不服審査制度検討会 開催要領 ···································· 58
行政不服審査制度検討会 運営要領 ···································· 59
行政不服審査制度検討会 開催実績 ···································· 60 1はじめに
行政不服審査法(昭和 37 年法律第 160 号。以下「行審法」という。
)は,瑕疵あ
る行政処分によって権利利益を侵害された者の救済方法として,
行政庁に不服を申
し立て,
瑕疵ある行政処分の取消し又は変更を求める行政不服審査制度について定
めるものであり,昭和 37 年 10 月 1 日に施行された。
それ以前は,
訴願法
(明治 23 年法律第 105 号)
が行政争訟手続を定めていたが,
訴願が認められる事項として,
課税処分等 6 項目が概括的に列挙されているだけで,
その内容が不明確であること,執行停止,審理等の手続規定が不十分であること等
の問題点があり,
国民の権利利益の救済のため十分であるとはいい難いとされてい
た。
このため,訴願法に代え,行政庁の公権力の行使に当たる行為に関して原則とし
て広く不服申立てを認め,あわせて,行政庁が法令に基づく申請に対して何らの行
為もしないことによって国民の受ける不利益を救済するみちを開き,また,処分に
際しては不服申立ての機会があることについて教示することとし,
極端に短い不服
申立期間の定めを整理し,口頭で意見を述べる手続を規定すること等により,訴願
制度の持つ問題点を是正し,
簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図ると
ともに,行政の適正な運営を確保することを目的として,行審法が制定されたので
ある。
行審法は,これまで国民の権利利益の救済に役立ってきたが,その施行以来 40
年以上が経過したものの,実質的な改正はなされてこなかったところである。
他方,行政の事前手続を定めた行政手続法(平成 5 年法律第 88 号)が平成 6 年
10 月 1 日に施行され,行審法と同日に施行された行政事件訴訟法(昭和 37 年法律
第 139 号。以下「行訴法」という。
)も,国民の権利利益のより実効的な救済手続
の整備を図るための抜本的な改正が平成 16 年に行われた。このため,行審法と密
接に関連する行政手続法の事前手続や改正された行政事件訴訟制度との整合性を
改めて整理する必要が生じている。
また,行政による民間の活動等に対する規制の緩和等,行政の用いる手法が変容
し,事後監視の重要性が増すようになっており,さらに,国民の権利利益に関する
意識が変容するとともに,利害関係も多様化・複雑化し,その調整が高度かつ困難
になってきている。
こうした観点からは,
不服申立てに対する判断がより有効かつ適切になされるこ
とが求められるといえるが,実際の運用状況をみると,行政不服審査制度が本来目 2的としている「簡易迅速」な「権利利益の救済」が実現しているとはいい難い例も
生じている。
さらに,第 1 次地方分権改革により機関委任事務制度が廃止され,平成 18 年に
地方分権改革推進法が成立するなど,一層の地方分権が求められている。
以上を踏まえ,行政不服審査制度の本来の目的を最大限達成すべく,簡易迅速な
審理を可能とする手続を整備するとともに,
客観的かつ公正な審理手続を充実させ,
不服申立人の手続保障を手厚くし,行政手続法及び行訴法との整合性を図ること,
また,地方分権の推進を踏まえた見直し等が必要である。そうすることで,行政不
服審査制度は,これまで以上に,公正でしかも利用しやすい簡易迅速な手続により
国民の権利利益の救済を図り,あわせて行政の適正な運営を確保し,国民の行政へ
の信頼を維持していくための,非常に重要かつ有効な制度となると考えられる。
本検討会では,以上のような観点から,行政不服審査制度の抜本的な改正を図る
べく,平成 18 年 10 月 30 日以来,17 回にわたり鋭意検討を重ねてきた。
本最終報告は,行政不服審査制度の抜本的な改正を提言するとともに,行審法及
び行政手続法に盛り込まれるべき内容の骨子及びその趣旨をまとめたものである。
今後,本報告を踏まえて,政府において,行審法及び行政手続法の改正作業が進
められ,
国民の権利利益の救済ないし保護に資する制度が整備されることを期待す
る。
第1章 総則
第1 行政不服審査法の目的及び趣旨
1 この法律は,
行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行
為に関し,国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開き,簡易
迅速で公正な手続を定めることによって,国民の権利利益の救済を図り,あ
わせて行政の適正な運営を確保することを目的とする。
2 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服申立てにつ
いては,他の法律に特別の定めがある場合を除くほか,この法律の定めると
ころによる。
行政不服審査制度は,
違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関
し,行政庁に対する不服申立てを契機とし,柔軟かつ簡易迅速な手続により,行政
庁が自ら処分の違法性のみならず不当性をも見直し,処分の取消しなどにより,国
民の権利利益の救済を図るとともに,行政の自己統制の一環として,行政の適正な
運営を確保することを目的とするものである。行審法は,こうした目的を達成する
ために,一般法として,行政不服審査制度の手続を定めるものである。
この行政不服審査制度においては,
訴願制度におけるよりも国民の権利利益の救
済に重点を置くものであることを明らかにするために,現行行審法の目的を「国民
の権利利益の救済を図るとともに,行政の適正な運営を確保すること」と規定して
いる
(第 1 条第 1 項,
田中真次・加藤泰守
「行政不服審査法解説」
〔改訂版〕
28 頁)。今回の行政不服審査制度の抜本的な改正を図る趣旨は,前記「はじめに」で述べ
たとおり,行政手続法の制定及び行訴法の改正(平成 16 年)により行政活動に対す
る国民の手続保障の水準が向上したことを踏まえて,
行政不服審査手続の簡易迅速
性をいかすとともに,
より客観的かつ公正な審理手続を定めるなど不服申立人の手
続保障を強化し,行政不服審査制度を国民にとってより分かりやすく,利用しやす
いものとすることにある。このように,今後の行政不服審査制度は,現行制度に改
革を加え,従前以上に国民の権利利益により重点を置いたものとなることから,こ
の点をより明らかにするため,
「国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみ
ちを開き,簡易迅速で公正な手続を定めることによって,国民の権利利益の救済を
図り,あわせて行政の適正な運営を確保すること」を目的規定に明記することとす
る。3 4
第2 不服申立ての基本構造
1 不服申立ての種類の一元化
(1) この法律による不服申立ては,審査請求(仮称。以下同じ。
)とする。
(2) 審査請求は,法律(条例に基づく処分については,条例を含む。)に特
別の定めがある場合を除くほか,
次の各号に掲げる場合に応じてそれぞれ
当該各号に定める行政庁に対してするものとする。
ア 処分庁に上級行政庁がある場合
1 処分庁が国の行政機関であるとき
当該処分庁の上級行政庁である主任の大臣又は宮内庁長官若しく
は外局若しくはこれに置かれる庁の長
2 処分庁が地方公共団体又はその機関であるとき
当該処分庁の上級行政庁である地方公共団体の長又は委員会若し
くは委員
イ 処分庁に上級行政庁がない場合又は処分庁が主任の大臣若しくは宮
内庁長官若しくは外局若しくはこれに置かれる庁の長である場合
当該処分庁
(3) 行政庁の不作為については,当該不作為に係る処分を申請した者は,一
定の処分をすることを求める審査請求をすることができる。この場合,上
記(2)中「処分庁」とあるのは,
「不作為庁」と読み替えるものとする。
2 審理の一段階化
審査請求の裁決を経た後,更に行う現行の再審査請求は廃止する。
3 不服申立ての基本構造の例外
(1) 行政庁の処分について,法律に再調査請求(仮称。以下同じ。
)をする
ことができる旨の定めがあるときに限り,処分庁に対し,再調査請求をす
ることができる。
(2) 当該処分につき再調査請求をすることができるときは,審査請求は,再
調査請求についての決定を経た後でなければ,することができない。ただ
し,次の各号のいずれかに該当するときは,この限りでない。
1 処分庁が,
当該処分につき再調査請求をすることができる旨を教示し
なかったとき。
2 当該処分につき再調査請求があった日から 2 箇月を経過しても,
処分
庁が当該再調査請求につき決定をしないとき。
3 その他再調査請求についての決定を経ないことにつき正当な理由が
あるとき。
(3) 上記(2)2の規定により審査請求がされたときは,当該再調査請求は,
取り下げられたものとみなす。
1 不服申立ての種類の一元化
(1) 現行行審法は,
「この法律による不服申立ては,行政庁の処分又は不作為に
ついて行なうものにあつては審査請求又は異議申立てとし,
審査請求の裁決を
経た後さらに行なうものにあつては再審査請求とする。」(第 3 条第 1 項)と定
めている。
現行行審法においては,審査請求は,原則として,処分をした行政庁(以下
「処分庁」という。
)に上級行政庁があるときにすることができる。この審査
請求の場合,審理の客観性・公正さを担保するため,処分庁ではなく,原則と
して直近上級行政庁が審理を行う審査庁となり(第 5 条第 2 項)
,弁明書・反
論書の提出(第 22 条,第 23 条)や処分庁からの物件の提出・閲覧(第 33 条)
といった審理手続が規定されている。
これに対し,上級行政庁がないときや主任の大臣等が処分庁のときは,法律
に一定の機関に対する審査請求ができる旨の定めがない限り,
審査請求はでき
ず,異議申立てしかできないこととされている(第 5 条第 1 項,第 6 条第 1
号,第 2 号)
。この異議申立ての場合は,不服審査手続の一方当事者である処
分庁が審理を行うものとされ(第 3 条第 2 項)
,弁明書・反論書の提出や処分
庁からの物件の提出・閲覧が規定されていない。
このように,異議申立手続は,審査請求手続に比し,客観的かつ公正な審理
手続の保障が不十分になっている面がある。さらに,上級行政庁があるか否か
という不服申立人からすると偶然の差異により不服申立手続の権利保護のレ
ベルが異なるのは不合理である。
処分庁に上級行政庁がないときなどについて
も,十分に客観的かつ公正な審理手続を保障することが適切と考えられる。
そこで,不服申立ての種類を審査請求に一元化し,かつ,後述するようにそ
の審査請求の審理手続において審理員制度を導入するなどにより,
不服申立人
の手続保障のレベルを上げることが適切と考えられる。
また,審査請求や異議申立てといった複数の申立ての種類があることは,現
行の行政不服審査制度に精通していない者にとって分かりづらいが,
不服申立5 6
ての種類の一元化により,
行政不服審査制度をより分かりやすく利用しやすい
ものとすることができると考えられる。
なお,一元化される不服申立ての名称は,
「審査請求」
(仮称)とする。
(2) 新しく設けられる審査請求の審査庁については,
処分庁に上級行政庁がある
場合
(処分庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局若しくはこれに置かれ
る庁の長である場合を除く。
)で,処分庁が国の行政機関であるときは,上級
行政庁が複数存在するときも含めて,審理の客観性・公正さを確保するととも
に,審査請求人に本省庁による審理を受ける機会を確保し,かつ,統一的な処
理を図る観点から,個別法で特に定める場合を除き,当該処分庁の上級行政庁
である
「主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局若しくはこれに置かれる庁の
長」が審査庁となるものとする。同様に,処分庁が地方公共団体又はその機関
であるときは,当該処分庁の上級行政庁である「地方公共団体の長又は委員会
若しくは委員」が審査庁となるものとする。
一方,
処分庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局若しくはこれに置か
れる庁の長である場合その他処分庁に上級行政庁がない場合は,
現行行審法と
同じく処分庁を審査庁としつつ,後記第 3 章第 1(17 頁以下)の審理員制度の
導入等により審査請求人の手続保障のレベルを上げることとする。
なお,処分庁でも処分庁の上級行政庁でもない行政庁が審査庁となるのは,
法律(条例に基づく処分については,条例を含む。
)の特別の定めによるもの
とする。
以上のとおり,審査庁は,処分庁の上級行政庁である場合,処分庁である場
合,処分庁でも処分庁の上級行政庁でもない場合の 3 種類に分けられる(後記
第 7 章「裁決」
・38 頁以下参照)。(3) 法令に基づく申請に対し相当の期間内に何らかの処分をすべきにかかわら
ずこれがされないという不作為の場合,現行行審法は,
「当該不作為に係る処
分その他の行為を申請した者は,
異議申立て又は当該不作為庁の直近上級行政
庁に対する審査請求のいずれかをすることができる。」(第 7 条本文)と定めて
いる。この場合の審査請求が理由があるときは,
「審査庁は,当該不作為庁に
対しすみやかに申請に対するなんらかの行為をすべきことを命ずるとともに,
裁決で,その旨を宣言する。」(第 51 条第 3 項)とされている。
これについては,
行政庁の不作為についても国民の権利利益の救済を図るた
め,現行行審法と同じく審査請求の制度を置くこととする。この場合,現行行
審法の不作為についての審査請求は,
裁決の後に更に不作為庁が申請に対する 7審査を行うという迂遠な手続をとることとなっており,
行政庁の判断確定を遅
らせる面がある。そこで,争訟の一回的解決の観点から,行政手続法第 2 条第
3 号所定の法令に基づく申請に対する不作為(及び申請拒否処分)について,
一定の処分をすることを求める審査請求を認めることとする(後記第 7 章・38
頁以下参照)。この場合,申請に対する不作為について,当該申請をした者は,この審査請
求に代えて,処分庁に対し,現行行審法所定の異議申立てをすることを引き続
き認めることも考えられる。
しかしながら,
申請に対する不作為の場合に審査請求を受けた上級行政庁は,
一定の処分をすべき旨を命ずることもできるが,
審理の状況その他の事情を考
慮して,より迅速な争訟の解決に資すると認めるときは,何らかの処分をすべ
きことを命ずることもできる
(後記第 7 章 1(4)・38 頁参照)
ことに照らせば,
この審査請求以外に異議申立手続を設ける必要はないと考えられる。
また,後記 3 のとおり,処分についての現行の異議申立手続(新しい制度で
は「再調査請求」という。
)については,審査請求に前置される特に簡略な手
続として,例外的に特別な類型として認めることとするのであるが,その趣旨
からみても,不作為についてそれを認めるまでの必要はない。
そもそも,
現行行審法の申請に対する不作為についての異議申立ての機能は,
かなりの程度行政手続法第 2 章の申請に対する処分に関する規定により実現
されているともいえる。
2 審理の一段階化
(1) 現行行審法上,処分についての(旧)審査請求の裁決に不服がある者は,以
下のアないしウのいずれかの場合に,
再審査請求をすることができるとされて
いる。
ア 法律(条例に基づく処分については,条例を含む。
)に再審査請求をする
ことができる旨の定めがあるとき(第 8 条第 1 項第 1 号)
イ 審査請求をすることができる処分につき,
その処分をする権限を有する行
政庁(以下「原権限庁」という。
)がその権限を他に委任した場合(同項第
2 号)
ウ 再審査請求をすることができる処分につき,
その原権限庁がその権限を他
に委任した場合(同条第 3 項)
しかしながら,今回新しく設けられる審査請求は,審理員制度の導入等によ 8り審査請求人の手続保障を手厚くして客観的かつ公正な審理を実現し,
一段階
で適切な権利利益の救済を図ろうとするものである。したがって,国民の手続
保障を手厚くするとの審査請求に対する「再審査請求」の機能は,この一元化
する審査請求により代替できると考えられる。
また,二段階の再審査請求の手続は,終局判断に至るまでに 1 年を超える事
例が多く(国についての平成 17 年度の施行状況調査で 62.5 パーセント),段階を経ることが煩瑣なだけであって,
簡易迅速な手続による国民の権利利益の
救済に結びついているとはいえない面もある(なお,実際の認容率は,同調査
で 5.6 パーセント)。
したがって,再審査請求を廃止して審理を一段階とすることにより(後記 3
(8 ないし 10 頁)の再調査請求をすることができる場合を除く。),簡易迅速
な国民の権利利益の救済を図ることとする。
(2) 地方公共団体の機関がした処分については,
地方自治法等個別法の規定に基
づき,国等が審査請求・再審査請求の手続を通じて関与するといった裁定的関
与の制度がある。こうした裁定的関与としての審査請求・再審査請求の仕組みも,審査請求人の手続保障のレベルを上げることで審理の一段階化を図る観点
からは,廃止の方向で検討するべきものと考えられる。
また,現行行審法上は,異議申立手続は審査請求手続に比べて不服申立人の
ための手続保障が不十分であるが,今回の行政不服審査制度の見直しにより,
新しい審査請求手続における対審的構造の導入や合議制の第三者機関の関与
等により審査請求人の手続保障のレベルを上げることとすることを踏まえる
と,国民の権利利益の救済の観点からは,裁定的関与としての審査請求・再審
査請求を廃止しても特段の支障はない。このことは,地方分権の観点にもかな
うものと考えられる。
しかしながら,裁定的関与については,国等と地方の関係の在り方の問題と
して総合的に議論されることも必要である。
このため,国等と地方の関係を含む不服申立手続については,その在り方に
ついての地方分権改革推進委員会等における結論を待つこととする。
3 不服申立ての基本構造の例外
前記 1 及び 2 のとおり,原則として,不服申立ての種類の一元化及び審理の一
段階化を図るのが適切と考えられる。
これに対し,不服申立先を処分庁とし,請求人の申立てにより審査請求の審理 9前に処分庁が処分を見直す「再考」を義務付けるべきとの意見がある。確かに,
このように不服申立てを契機として,
処分庁が処分を見直すことは重要であるが,
このような再考の手続を特別に設けることは,
不服申立ての種類の二元化及び審
理の二段階化を意味するものであるため,
今回の改正の趣旨とは必ずしも一致す
るものではないと考えられる。
ただし,
処分に関する不服が要件事実の認定の当否に係るものであって,
かつ,
その処分が大量に行われるもののように,
処分担当者等が相手方等の申立てを契
機として要件事実の認定に関して再調査する必要が特に大きい特別な類型につ
いては,
審査請求手続をとる前に,
処分の事案・内容等を把握している
(できる)
処分担当者等が,
審査請求より簡略な手続により改めて処分を見直すことに意味
があると考えられる。また,このような簡略な手続により迅速に判断を示すこと
は,国民の権利利益の迅速な救済に資するものでもある。
したがって,
このような場合に限っては,
不服申立ての基本構造の例外として,
審査請求の前段階で,
現行の異議申立制度のように処分担当者等が改めて処分を
見直し,処分庁が決定する手続を特別な類型として認め,かつ,処分についての
審査請求も認めることとする。この特別な類型を,以下「再調査請求」
(仮称)
という。
この再調査請求の審理手続は,上記のとおり,審査請求が認められるにもかか
わらず,
審査請求に前置される特に簡略な手続として限定的に認められるもので
あることから,後記第 8 章(41 頁)のとおり,迅速な判断が示されるよう,現
行の異議申立てよりも簡略なものとするとともに,
再調査請求をすることができ
る場合においてする審査請求は,一定の場合を除き,処分庁が再調査請求につい
ての決定をした後でなければ,することができないこととする。
上記の再調査請求の意義に照らせば,再調査請求についての決定は,迅速にな
されることが望ましく,
再調査請求がされていることをもって不相当に長い期間,
審査請求をすることができないとすることは,
国民の権利利益の救済の観点から
問題である。他方で,再調査には一定の期間を要するものでもある。そこで,再
調査請求があった日から 2 か月を経過しても再調査請求についての決定がされ
ないときは,請求人の申立てにより審査請求に移行する手続を保障するべく,審
査請求をすることができる旨を規定し,審査請求がされた場合は,再調査請求が
取り下げられたものとみなすこととする。
なお,個別法において再調査請求を設ける場合には,処分がされた後の二段階
目の審理となる審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴え 10を提起することができないとされることもあるので
(行訴法第 8 条第 1 項ただし書),個別法で不服申立前置を規定するに当たっては,全体として不服申立人の
負担が重くならないように考慮する必要があると考える。
第3 不服申立人適格及び処分についての不服申立てに関する一般概括主義
行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は,この
法律の定めるところにより,審査請求をすることができる。ただし,法律に
審査請求をすることができない旨の定めがある処分については,
この限りで
ない。
1 不服申立人適格
不服申立人適格に関して,現行行審法では,第 4 条第 1 項に「不服がある者」
との規定があるのみで,範囲を具体的に定めた規定はない。
しかしながら,判例は,この「不服がある者」とは,当該処分について審査請
求をする法律上の利益がある者,
すなわち行訴法第 9 条の定める原告適格を有す
る者の具体的範囲と同一であると解釈している
(最高裁昭和 53 年 3 月 14 日第三
小法廷判決・民集 32 巻 2 号 211 頁[主婦連ジュース不当表示事件])。
この行訴法上の原告適格に関しては,
取消訴訟の原告適格について適切な判断
が担保されるようにするため,
当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言
のみによることなく,
当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮され
るべき利益の内容及び性質を考慮するものとするなどの事項を定めた解釈規定
(行訴法第 9 条第 2 項)が平成 16 年の改正で新設され,国民の権利利益の救済
範囲の拡大が図られたところである
(小林久起
「行政事件訴訟法」
19 頁)。また,
小田急鉄道事件(最高裁平成 17 年 12 月 7 日大法廷判決・民集 59 巻 10 号 2645
頁)にみられるように,この解釈規定を適用して原告適格を広げたとみられる判
例も認められる。
そこで,不服申立人適格に関しては,不服申立制度の趣旨のほか,上記行訴法
第 9 条の改正の趣旨にも配慮し,
現行行審法の規定を維持するのが適切と考えら
れる。
なお,団体の不服申立人適格を含め,この不服申立人適格については,今後の
行政不服審査制度の運用状況等を踏まえ,政府において,一定期間経過後に検討
することが望ましい。
2 一般概括主義
現行行審法は,行政庁の処分については,特に除外されない限り,審査請求又
は異議申立てをすることができるとの一般概括主義を採っており,第 4 条第 111 12
項各号に行審法の適用除外となる処分について規定している。これは,1慎重な
手続によって行われた処分であるので,
不服申立てを認めても結局は同じ結果に
なるものと予想されるもの(第 1 号ないし第 4 号)
,2行審法よりも慎重な手続
によってその不服を処理することとされているもの(第 5 号ないし第 7 号),3処分の性格から行審法の手続による不服申立てを認めるのが適当でないもの(第
8 号ないし第 11 号)の 3 つに分類できる(前掲田中・加藤 54 ないし 55 頁)。この分類の理由とするところは,
現在においても一定の合理性が認められるこ
とから,現行行審法第 4 条第 1 項の規定を維持するのが適切と考えられる。
ただし,
行政手続法及び行審法のいずれも適用除外とされているものについて
は,当該個別の分野において,少なくとも処分の事前又は事後のいずれかで手続
保障を図るよう,今後,それぞれの個別法について検討されることが望ましいと
考える。
第2章 審査請求期間及び標準審理期間等
第1 審査請求期間
1 審査請求は,処分があったことを知った日から 3 箇月を経過したときは,
することができない。ただし,正当な理由があるときは,この限りでない。
2 審査請求は,処分の日から 1 年を経過したときは,することができない。
ただし,正当な理由があるときは,この限りでない。
1 主観的審査請求期間
(1) 審査請求期間については,
国民が審査請求期間の経過により権利利益の救済
を受ける機会を失わないように,現行の 60 日という主観的審査請求期間を延
長するのが適切である。
一方,審査請求は,訴訟より簡易に行うことができ,申立費用を納付するも
のでもなく,
その準備に要する期間が訴訟のように相当の期間を要するもので
はない。また,審査請求期間を長期化することは,処分の効果の早期安定を損
なうおそれがあるほか,処分から審査請求までの期間が長期化することは,事
情の変更等により正確な事実認定が困難になるなど審査請求の審理も遅延し,
かえって審査請求人の利益を損なうおそれもある。
したがって,審査請求期間については,行訴法第 14 条第 1 項本文所定の取
消訴訟の出訴期間 6 か月と同一にする必要はなく,
審査請求人の不服申立ての
機会を保障することと審査請求に対応する行政運営上の合理的負担等とを勘
案し,現行の 60 日を 3 か月に延長するのが適切と考えられる。
(2) これに対し,取消訴訟の提起について審査請求が前置されていなければ,処
分から取消訴訟の提起まで 6 か月の出訴期間があるのに,
審査請求が前置され
ているものは,
処分から 3 か月の審査請求期間内に,
不服を申し立てるか否か,
ひいては取消訴訟を提起するか否かを判断しなければならなくなり,
行訴法第
14 条第 1 項本文が出訴期間を 6 か月に延長した趣旨が没却されることから,
同項の規定と平仄を合わせて 6 か月にするべきであるとの意見もある。
しかしながら,行訴法第 14 条第 1 項本文所定の取消訴訟の出訴期間を 6 か
月に延長した趣旨は,
いったん出訴期間を経過してしまうとその処分の取消し
を求めて訴訟で争うことができなくなるという重大な効果を生じる一方,
国民
が取消訴訟を提起しようとする場合には,
その訴訟準備に相当の期間を要する
ことが少なくないことから,
出訴期間の定めによる法律関係の安定を考慮しつ13 14つ,国民が取消訴訟による権利利益の救済を受ける機会を適切に確保すること
にある(前掲小林 252 ないし 253 頁)。それに対し,行政上の審査請求にあっては,一般にさほどの準備期間を要す
るものではなく,また,教示制度も整備されている上,審査請求は,上記のと
おり,訴えの提起と異なり,簡易な手続で不服を申し立てることができるもの
であり,仮に審査請求書に不備があっても補正によりその不備は解消できる。
このような審査請求手続に照らせば,審査請求期間は 3 か月が相当であり,審
査請求前置である場合にも出訴の機会を不当に制約することになるものでは
ない。
しかも,審査請求期間内に審査請求をしなかったとしても,正当な理由があ
るときは,審査請求が認められる。
したがって,
取消訴訟の提起について審査請求が前置されている場合も含め
て,審査請求期間を 3 か月にするのが適切と考えられる。
(3) 以上のとおり,審査請求期間については 3 か月にすることとするが,審査請
求期間を短縮する特例を定める個別法の定めについては,
行審法の審査請求期
間が出訴期間よりも短い 3 か月となることにかんがみ,
それよりも更に短い期
間を設けることを正当化する特段の理由が真に認められる場合に限定される
のが適切と考えられる。
(4) なお,
審査請求期間について教示がされなかった場合の救済が認められるよ
うにするため,主観的審査請求期間の例外を認めるための要件を,
「やむをえ
ない理由」から「正当な理由」に改正することとする。
2 客観的審査請求期間
行政上の法律関係の安定性の見地から,処分の日から 1 年を経過したときは,
審査請求をすることができないものとする客観的審査請求期間は,
引き続き存置
することとする。
第2 標準審理期間及び審理状況に関する説明
1 標準審理期間
審査庁は,
審査請求がされてから裁決をするまでに通常要すべき標準的な
期間を定めるよう努めるとともに,これを定めたときは,審査庁における備
付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。
2 審理状況に関する説明
審理員は,審査請求人の求めに応じ,当該審査請求に係る審理の進行状況
及び当該審査請求に対する裁決の時期の見通しを示すよう努めなければな
らない。
1 標準審理期間
(1) 審理の遅延を防ぎ,審査請求人の権利利益の救済を図る観点から,行政手続
法第 6 条所定の標準処理期間と同様,審査庁は,審査請求手続に係る標準審理
期間を設定するよう努めるとともに,これを定めたときは,審査庁における備
付けその他の適当な方法により公にしておかなければならないこととするの
が適切である。
(2) もっとも,行政不服審査制度における審理は,申請に対する処分だけではな
く,申請に基づかない処分をも対象とし,様々な理由で不服が申し立てられ,
審理の内容も単純なものから複雑なものまで多種多様である。
そこで,標準審理期間の設定については,審査庁に努力義務を課すが,不服
申立ての類型をどの程度細分化し,
どの程度の期間の幅をもって定めるかなど
については,以下のような基準に基づき,それぞれの審査庁において設定する
こととする。
ア 標準審理期間を設定する場合においては,
審査請求から裁決までの全体と
しての審理に要する期間を定めること。
イ 標準審理期間を算定するに当たっては,
(ア) 適法な審査請求を前提に定めるものであることから,
審査請求書の形式
上の不備の是正等を求める補正に要する期間は含まれないものとするこ
と。
(イ) 審査会等に意見送付する場合(後記第 6 章・34 頁以下参照)にあっては,意見送付から審査会等による通知を受けるまでの期間は含まれないも
のとすること。15 16
(ウ) 標準審理期間の定め方に関しては,
月をもって具体的な期間として定め
ることが望ましいが,そのような設定が困難な場合には,一定の幅をもっ
た期間として定められないかどうか,また,審査請求の対象とする処分を
類型化して区分することによって,
その区分ごとに定められないかどうか
など,当該審査請求の性質に応じた工夫をすることによって,審理に要す
る目安としての何らかの期間をできる限り明確に示すよう努めること。
(エ) 法定受託事務等同一の種類の処分について多数の審査庁が存在する場
合において,
その審査がいずれの審査庁においても同一の期間に終了する
と見込まれるものであるときは,法令所管省庁においても,あらかじめ一
応の目安を示すなど,
標準審理期間の設定が円滑に行われるよう努めるも
のとすること。
(3) なお,標準審理期間は,審査請求の審理期間の目安として定められるもので
あり,
その期間の経過をもって直ちに不作為の違法ないし裁決固有の瑕疵に当
たることにはならないが,審査請求人からの照会に対しては,迅速な審理に努
めていることが理解されるよう,審査庁(審理員)において,後記 2 の審理状
況に関する説明についての規定の趣旨に沿って適切に対応する必要がある。
2 審理状況に関する説明
現行行審法は,
審査請求人が審理の状況について審査庁に問い合わせることに
ついて何ら規定していないが,審査請求人の手続保障を強化するために,審査請
求人が審理の進行状況や裁決の時期の見通しなどを把握できるようにするのが
望ましい。
そこで,審理員(後記第 3 章第 1・17 頁以下参照)は,審査請求人から審理の
進行状況等について問い合わせがあれば,
可能な限り情報提供に努めるものとす
ることとし,これにより,間接的に審理の遅延防止を図ることとする。
第3章 審査請求の審理手続
第1 審理員
1 本章に規定する審査請求の審理は,審理員が行う。
2 審理員の指名
(1) 審理員は,審査庁が,公正かつ適正に当該事件の審理を行うことのでき
る者の中から指名する。
(2) 審査庁は,審理員の指名の基準を定め,これを審査庁における備付けそ
の他の適当な方法により公にしておかなければならない。
(3) 上記(2)の指名の基準においては,処分に関する手続に関与した者以外
の者の中から審理員を指名することその他必要な事項が定められていな
ければならない。ただし,やむを得ない理由があるときは,審査庁は,そ
の理由及び処分に関する手続に関与した者の中から審理員を指名するこ
とその他必要な事項を定めることができる。
3 審理員は,
審査請求が国民の権利利益の救済を図る制度であることを踏ま
え,処分の違法及び不当について,必要な審理を尽くすものとする。
4 審査庁は,
不当な影響により審理員による公正かつ適正な審理が妨げられ
ることがないよう配慮しなければならない。
1 審理員の意義
現行行審法上,処分庁に上級行政庁があるときの(旧)審査請求は,原則とし
て直近上級行政庁が審理を行うが,実際に審理を行う者に関する規定はない。ま
た,不服申立ての審理手続において,処分庁の処分担当者が不服申立人と対峙す
る構造にはなっていない(第 25 条ないし第 33 条参照)。そこで,審理を客観的かつ公正なものとし,審査請求人の手続的権利を保障す
ることにより,従前以上に行政の自己反省機能を高め,簡易迅速で公正な手続に
より,
国民の権利利益の救済を図り,
あわせて行政の適正な運営を確保するため,
本章に規定する審理は,公正かつ適正を旨とし,審査庁が指名する「審理員」が
行うことにより,審査請求人と処分庁との対審的構造を導入することとする。
2 審理員の指名条件
(1) 審理は公正かつ適正を旨として行われるとの上記1の理念を具体化するた
めには,審理に関する権限について,作用法上の権限とは別の手続法上の権限17 18
として審査庁の裁決権限と区別し,
行政組織の中における当該処分に関する決
裁ラインから独立した審理員が審理を行う職能分離を理念とすべきである。
一方,審理員は,審査請求の審理を行う資質・経験等を有する適任者でなけ
ればならないが,行政の組織体制いかんによって,処分の担当部署に所属した
者等が除外されてしまうと,かかる適任者を確保できない場合も想定される。
また,
行政庁の属する組織規模は多様であり,
極めて小規模な組織においては,
審査請求の審理を行う資質・経験等を有する適任者が処分に関する手続に関与
しており,適格な審理員を指名することができない場合も想定し得る。
したがって,審理員の指名の在り方については,こうした組織体制の実情や
審査庁の補助機関を確保する必要性も考慮し,また,客観的な判断を可能とす
る見地から,審理員は,処分の内容及び理由の起案者や,決裁書に押印した者
など,処分に関する手続に関与した者以外の者であることを原則とし,組織体
制上,
処分に関する手続に関与していない者を審理員として指名することがで
きないやむを得ない理由があるときに限り,その例外を認めることにより,上
記職能分離の理念を確保する必要がある。
一方,どの組織に所属する者を指名し,どのレベルの者を指名するかについ
て,抽象的な規範を定立するのは困難であり,各組織の実情を把握している審
査庁が,その実情に照らして判断するのが適切と考えられる。この場合,客観
的かつ公正な審理を実現するための審理員の指名手続を定める必要がある。
そこで,審理員は,審査庁が,公正かつ適正に当該事件の審理を行うことの
できる者の中から指名することとし,かつ,審査庁は,審理員の指名の基準を
定め,この指名の基準を公にしておかなければならないとすることにより,審
理員の指名が適正になされることを確保することとする。
この指名基準においては,
処分に関する手続に関与した者以外の者の中から
審理員を指名することその他どの組織に所属する者を指名するかなど必要な
事項が定められていなければならないこととする。ただし,処分に関する手続
に関与した者以外の者の中から審理員を指名することができないやむを得な
い理由があるときは,審査庁は,その理由及び処分に関する手続に関与した者
の中から審理員を指名することその他必要な事項を定めることができること
とする。
また,
審理員の交代等が審理に不当な影響を及ぼすことがあってはならない
が(後記 3・21 頁参照)
,人事異動や心身の故障等の事由により審理員の交代
が必要となる場合についても,
上記の指名手続に従って後任の審理員が指名さ 19れることになるから,後任の審理員には,当然のことながら,指名基準に合致
する者が指名されなければならない。
(2) 上記の指名基準について,審査庁は,処分に関する手続に関与した者以外の
者の中から指名する原則の場合の指名基準と,
やむを得ない理由があるときに,
処分に関する手続に関与した者から指名する例外の場合の指名基準とを定め
ることになるが,その例としては,以下のようなものが考えられる。
ア 主任の大臣が審査庁の場合で,
処分に関する手続に関与した者以外の者の
中から審理員を指名する場合については,審査庁の判断により,例えば,次
のような基準が想定される。
審理員は,本省所管部署総務課長とする。ただし,この者が処分に関する
手続に関与した者であるときは,
以下に掲げる順位で審理員を指名すること
とする。
1 本省大臣官房総務課長
2 本省大臣官房企画課長
3 ......
イ 極めて小規模な地方公共団体の長が審査庁の場合などにおいては,
処分に
関する手続に関与した者以外の者の中から指名することができないやむを
得ない理由があるときに,
処分に関する手続に関与した者から審理員を指名
する基準として,上記1の理念にのっとると,処分を所管する部署の長より
も,相対的に関与が希薄と考えられる「総務部署の長(例えば,総務課長)
を審理員に指名する。
」との基準を定めることが考えられる。
ウ なお,審理員については,行政手続法第 19 条第 2 項所定の聴聞主宰者の
ように除斥事由を定めることとする。
(3) 実際の審理員の指名の在り方については,
例えば,
あらかじめ特定の職員(例えば,大臣官房職員)を審理員に指名しておき,その者は処分に関する手続に
関与しないようにしておくことが考えられる。あるいは,処分に関する手続に
関与した者以外の者の中から指名することができない事態を避ける観点からは,弁護士やその他の適当な人材を非常勤職員として任用することが考えられ
る。
また,審理員の重大な責務にかんがみ,充実した研修を実施することが必要
である。さらには,アメリカ合衆国におけるALJ(行政法審判官)制度を参
照した審理員の資格制度を創設することも将来的な検討課題として挙げられ
る。 20(4) 後記第 9 章(42 頁)のとおり,客観性・公正さを確保する観点から審査会
等を設置すべきであると考えるとしているが,この審査会等は,個別法におい
て設けられている既存の第三者機関のように,専門性が高いものではない。こ
うしたこともあり,審理の迅速化の要請や審査会等の負担を考慮し,審査会等
が審理に関与する場合でも,審理手続については審理員が行うこととし,審査
庁は,審理員が提出したなされるべき裁決に関する意見書(審理員意見書)及
び審査庁の意見書を審査会等へ提出することとしている。
これに対し,現行制度上,第三者裁決機関や第三者諮問機関が審理に実質的
に関与し,対審的構造が導入されているものなどについては,審理員を指名す
るまでもなく,審理の客観性及び公正さが確保されているといえる。
したがって,このような場合には,個別法において審理員に関する規定の
適用を除外する旨の規定を設けることとする。
第三者裁決機関が審理に実質的に関与し,裁決している場合とは,例えば,
ア 地方更生保護委員会がする処分に対し,中央更生保護審査会が審理・裁決
する場合
イ 公害健康被害の補償等に関する法律に基づく不服申立てのように,
地方公
共団体の長又は独立行政法人がする処分に対し,
公害健康被害補償不服審査
会が審理・裁決する場合
が挙げられる。
第三者諮問機関が審理に実質的に関与している場合とは,例えば,情報公
開・個人情報保護審査会による調査審議・答申の場合が挙げられる。
(5) なお,
審査庁の裁決書の作成に関しては,
審理を客観的かつ公正なものとし,
審査請求人の手続的権利を保障する観点から,
審理員制度を導入するものであ
ること,また,後記のとおり,審理員が審理を行い,審査庁は,審理員意見書
及び事件記録に基づき裁決をすることに照らせば,
審理員制度を導入する趣旨
が没却されることのないよう,
処分に関する手続に関与した者でも審理員でも
ない者が審査庁を補助するものとすることが求められる。
3 審理員及び審査庁の責務
行政不服審査制度は,行政による自己統制の機会であり,審理員は,審査庁に
所属する者であって,審査庁の指揮・監督を受ける立場にある。しかし,上記 1
のとおり,客観的かつ公正な審理を実現し,適切に国民の権利利益の救済を図る
ために,審理員は,公正かつ適正に審理を行うことが求められる。また,行政不 21服審査制度の特徴の一つは,行政訴訟とは異なり,違法性のみならず,不当性の
審査も行うことにある。この不当性の審査は,現行行審法では,第 1 条第 1 項の
目的規定に「行政庁の違法又は不当な処分・・・に関し」と定められているのみ
である。
そこで,原処分維持の姿勢を前提とするのではなく,前記の職能分離を理念と
して掲げ,実際の運用においてその徹底を図るよう努めるとともに,不当性の審
査を活性化するため,
審査請求が国民の権利利益の救済を図る制度であることを
踏まえ,処分の違法及び不当について,必要な審理を尽くすものとする。
また,審理員による公正かつ適正な審理を確保するため,審査庁は,審理員の
交代等によって不当な影響を及ぼしてはならず,
審理員が他からの不当な影響に
よって予断を持つことにならないようにするなどの配慮をすることが必要と考
えられる。したがって,審査庁は,不当な影響により審理員による公正かつ適正
な審理が妨げられることがないよう配慮しなければならないとの責務を課すこ
ととする。 22第2 審理手続の内容
1 口頭意見陳述
(1) 審査請求の審理は,原則として書面によるが,審査請求人又は参加人の
申立てがあったときは,審理員は,審査請求の趣旨及び理由(審査請求の
適法要件を含む。
)に関し,申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなけ
ればならない。ただし,申立人の出頭が困難であるなど口頭意見陳述を実
施しないことについて相当な理由があるときは,この限りでない。
(2) 審理員は,
審査請求人,
参加人及び処分庁
(以下
「審理関係者」
という。)の意見を聴いて,口頭意見陳述の日時及び場所を指定することができる。
(3) 審査請求人は,口頭意見陳述において,審理員の許可を得て,処分の内
容及び理由に関し,処分庁に対し質問を発することができる。
審理員は,審理関係者に対し,釈明を求めることができる。
審理員は,口頭意見陳述を公正かつ適切に行うために,必要な措置を採
ることができる。
2 上記のほか,
審査請求人のための手続保障等に配慮し,
現行行審法と同様,
以下の審理手続についての申出を審査請求人及び参加人に認める。
1 証拠書類又は証拠物の提出
2 参考人の陳述の要求
3 鑑定の要求
4 物件の提出要求
5 検証
6 審査請求人又は参加人の審尋
3 審理員は,処分庁に対し,処分の内容,処分の根拠となる法令の条項,処
分の原因となる事実その他処分の理由を明らかにする資料であって処分庁
が保有するものの全部又は一部の提出を求めることができる。
また,処分庁は,次に掲げる書面を所持するときは,これを審理員に提出
しなければならない。
1 行政手続法第 24 条所定の聴聞調書及び報告書
2 同法第 29 条第 1 項所定の弁明書
4 審理員は,審理関係者に対し,相当の期間を定めて,主張書面及び証拠書
類等の提出を求めることができる。この場合,審理関係者は,その期間内に
これを提出しなければならない。
5 審理関係者は,審理を計画的かつ迅速に行うことができるよう,審理にお
いて,相互に協力するとともに,その実施に関し,審理員に進んで協力しな
ければならない。
1 書面主義及び口頭意見陳述
(1) 書面審理は,明瞭かつ確実であり,審理を簡易迅速に行い得るという利点が
あり,現行行審法でも原則とされているものであって(第 25 条第 1 項本文),本改正後も,引き続き書面審理を原則とする。
(2) 一方,審査請求人の立場からすると,自己の主張を直接的に訴えたい場合や
疑問点について質問することを望む場合があり,口頭意見陳述の機会は,本改
正後も引き続き保障することが必要である。そこで,審査請求人又は参加人の
申立てがあったときは,審理員は,審査請求の趣旨及び理由に関し,申立人に
口頭で意見を述べる機会を与えなければならないこととする。
また,現行行審法では,審査請求の適法要件について口頭意見陳述が認めら
れるか否かについて必ずしも明確ではなかったが,
不服申立人適格のように本
案審理にも関わり得る論点について口頭意見陳述を望む審査請求人もあるこ
とから,
形式的な審査請求の適法要件を欠き補正にも応じないなど不適法な申
立てであることが明白な場合は別として,
審査請求の適法要件についても口頭
意見陳述の機会を保障するのが適切と考えられる。
ただし,
申立人が矯正施設に収容されているため出頭が困難であるなど口頭
意見陳述を実施しないことについて相当な理由があるときは,その例外を認
めることとする。
(3) 口頭意見陳述は,
審理が停滞ないし遅延することのないような適切な方法で
実施されるべきであることから,
審理員は,
審査請求人,
参加人及び処分庁(以下「審理関係者」という。
)の意見を聴いて,口頭意見陳述の日時及び場所を
指定することができることとする。
(4) 口頭意見陳述は,
簡易迅速な手続により審査請求人の権利利益を救済するた
めに適切な方法で実施することが求められる。
そこで,口頭意見陳述において,申立人は,審理員の許可を得て,処分の内
容及び理由に関し,処分庁(処分庁の職員)に対し質問を発することができる
こととする。この運用に当たっては,処分庁は,回答に調査を要するなどの事
情がある場合を除き,
口頭意見陳述において回答することを原則とすることが23 24
適当である。
また,
審理員は,
審理関係者に対し,
釈明を求めることができることとする。
さらに,審理員は,口頭意見陳述を公正かつ適切に行うために,必要な措置
を採ることができることとする。
2 審理手続の内容
審査請求人のための手続保障等に配慮し,
現行行審法第 26 条ないし第 30 条と
同様,
1 証拠書類又は証拠物の提出
2 参考人の陳述の要求
3 鑑定の要求
4 物件の提出要求
5 検証
6 審査請求人又は参加人の審尋
についての申出を審査請求人及び参加人に認めることとする。
3 処分庁の資料・書面の提出義務
審理の充実及び促進を図るため,行訴法第 23 条の 2 の釈明処分に関する規定
と同じく,
審理員は,
処分庁に対し,
処分の内容,
処分の根拠となる法令の条項,
処分の原因となる事実その他処分の理由を明らかにする資料であって処分庁が
保有するものの全部又は一部の提出を求めることができることとする。
また,処分に至る過程で処分庁が収集した行政手続法第 24 条所定の聴聞調書
及び報告書や同法第 29 条第 1 項所定の弁明書について,処分庁は,審理員へ提
出しなければならないこととする。
4 審理の計画的進行
審査請求人の手続保障を確保しながら迅速な審理を実現するためには,
審理を
計画的に進めることが必要である。
そこで,現行行審法第 26 条ただし書等と同様に,審理員は,審理関係者に対
し,相当の期間を定めて,主張書面及び証拠書類等の提出を求めることができ,
この場合,審理関係者は,その期間内にこれを提出しなければならないこととす
る。
また,計画的かつ迅速な審理は,書類等の提出期限を遵守する等審理に携わる 25者の相互の協力なくして実現できるものではない。このため,審理関係者は,審
理において,相互に協力するとともに,その実施に関し,審理員に進んで協力し
なければならないことを責務とすることとする。
第 1 行政不服審査法の目的及び趣旨
1 この法律は,
行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行
為に関し,国民に対し,広く行政庁に対する公正かつ簡易迅速な手続による
不服申立てのみちを開くことによって,
行政の適正な運営を確保するととも
に国民の権利利益の救済を図ることを目的とする。
行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服申立てにつ
いては,他の法律に特別の定めがある場合を除くほか,この法律の定めると
ころによる。2第3 争点及び証拠の整理
1 審理員は,
審理すべき事項が多数であり又は錯そうしているなど事件が複
雑であることその他の事情によりその適正かつ迅速な審理を行うため必要
があると認めるときは,争点及び証拠の整理を行うものとする。
2 審理員は,審査請求人及び処分庁の意見を聴いて,争点及び証拠の整理を
行う日時を指定し,審理関係者に,審理員の指定する場所に出頭して若しく
は音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって陳述さ
せ,又は書面を提出させる(行政手続等における情報通信の技術の利用に関
する法律(平成 14 年法律第 151 号)第 3 条第 1 項の規定により同項に規定す
る電子情報処理組織を使用して行う場合も含む。
)などの方法により,争点
及び証拠の整理を行うものとする。
審査請求人は,審理員の許可を得て,処分の内容及び理由に関し,処分庁
に対し質問を発することができる。
3 審理員は,争点及び証拠の整理を行ったときは,次に掲げる事項を審理関
係者に明示し,審理の計画的な進行を図るものとする。
1 口頭意見陳述,参考人の陳述,鑑定,検証,審査請求人又は参加人の審
尋等の審理を行う日時
2 主張書面,証拠書類,証拠物その他物件の提出期限
3 審理手続の終結予定時期
1 審理すべき事項が多数であり又は錯そうしているなど事件が複雑である場合
には,
審査請求の趣旨や審査請求人と処分庁の主張の対立点等を正確に把握しな
いままいたずらに審理を進めるのは合理的ではない。そこで,簡易迅速に国民の
権利利益の救済を図るため,審理員は,このような場合をはじめその他の事情に
より適正かつ迅速な審理を行うため必要があると認めるときは,
争点及び証拠の
整理を行うものとする。なお,争点及び証拠の整理は,審理の冒頭に行うのが通
常と考えられるが,
審理の途中で必要があると認めるときに行うことも妨げない
ものとする。
2 上記の趣旨に沿い,審理員は,審査請求人に審査請求の趣旨及び理由を明確に
させ,処分庁に処分の理由を説明させるなどの方法により,事件の争点及び証拠
を整理するものとする。26 27
また,
審査請求人は,
争点及び証拠の整理を行う場合,
口頭意見陳述と同様に,
審理員の許可を得て,処分の内容及び理由に関し,処分庁に対し質問を発するこ
とができることとする。
3 行政不服審査制度における争点及び証拠の整理は,
訴訟における争点及び証拠
整理手続のように厳格なものではなく,飽くまで簡易迅速な手続であるので,審
理員は,審査請求人及び処分庁の意見を聴いて,争点及び証拠の整理を行う日時
を指定し,
審理関係者がその指定された日時に審理員の指定する場所に出頭して
若しくは音声の送受信により同時に通話をすることができる方法(電話)によっ
て陳述させ,又は書面を提出させ若しくは電子メールを利用するなど,事案に応
じ柔軟な方法により,審査請求人に審査請求の趣旨及び理由を明確にさせ,処分
庁に処分の理由を改めて説明させるなどの方法で行うものとする。
4 適正かつ迅速な審理の実現のため,審理員は,争点及び証拠の整理を行ったと
きは,次に掲げる事項を審理関係者に明示し,審理の計画的な進行を図るものと
する。
1 口頭意見陳述,参考人の陳述,鑑定,検証,審査請求人又は参加人の審尋等
の審理の内容及びそれらを行う期日
2 主張書面,証拠書類,証拠物その他物件の提出期限
3 審理手続の終結予定時期
第4 証拠書類等の閲覧
審査請求人又は参加人は,審理員に対し,処分の違法又は不当の判断に必
要な審理員が所持する証拠書類等の閲覧を求めることができる。
この場合に
おいて,審理員は,第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき,その
他正当な理由があるときは,閲覧を拒むことができる。
審査請求人に対して,処分がいかなる根拠に基づくものであるかを知り,これに
対する反論をすることを認める必要がある。現行行審法第 33 条第 2 項では,審査
庁に対して処分庁から提出された書類その他の物件の閲覧を求めることができる
と規定されているが,審査請求人等の手続保障の充実を図るとの見地から,審査請
求人又は参加人が,審理員に対し,処分庁から提出されたものに限らず,審理員が
所持する,
審査請求の対象である処分の違法又は不当の判断に必要な証拠書類等の
閲覧を求めることもできるようにするべきである。
ただし,対象証拠書類等の中に,第三者の個人識別情報が含まれている場合や,
閲覧により,行政機関が行う事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼす
おそれがある情報が含まれている場合などは,
「第三者の利益を害するおそれがあ
ると認めるとき,その他正当な理由があるとき」に該当することから,審理員は,
閲覧請求に対し閲覧を拒むことができることとする。なお,これらの情報は,行政
機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 58 号)第 14 条各
号所定の不開示事由に該当するものでもある。
なお,
証拠書類等の謄写も認めるべきであるとの強い意見もあったところであり,
立法時までに検討の上,可能であれば必要な措置が講じられることが望まれる。28 第4章 執行停止
1 審査請求は,処分の効力,処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 審理員は,処分,処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避
けるため緊急の必要があると認めるときは,審査請求人の申立てにより,審
査庁に対し,処分の効力,処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止
その他の措置(以下「執行停止」という。
)をすべき旨の意見をすみやかに
提出しなければならない。ただし,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ
があるとき又は本案について理由がないとみえるときは,この限りでない。
3 審理員は,
上記 2 に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当た
っては,損害の回復の困難の程度を考慮するものとし,損害の性質及び程度
並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
4 審理員は,
本法の目的が簡易迅速な手続により国民の権利利益の救済を図
るものであることを踏まえ,
審査請求人の救済を必要とする事情等を考慮し
て必要があると認めるときは,審査請求人の申立てにより又は職権で,審査
庁に対し,執行停止をすべき旨の意見を提出することができる。
5 上記 2 又は 4 の場合において,審査庁は,審理員の意見を相当と認めると
きは,すみやかに,決定をもって,執行停止をしなければならない。ただし,
処分庁又は処分庁の上級行政庁以外の審査庁は,処分の効力,処分の執行又
は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をすることはできない。
6 上記 5 の場合において,処分の効力の停止は,処分の効力の停止以外の措
置によって目的を達することができるときは,することができない。
1 手続
執行停止の権限は,現行行審法どおり審査庁に帰属させるが,審理員制度の導
入に伴い,申立てにより,又は職権で,審理員が執行停止について審理し,執行
停止に関する意見を審査庁へ提出することについての規定を設け,審査庁は,審
理員の意見を相当と認めるときは,すみやかに,決定をもって,執行停止をしな
ければならないこととする。
2 要件
現行行審法第 34 条は,審査請求によって直ちに処分の執行を停止させること
は,行政の円滑な運営が阻害され,また,審査請求が濫用的にされるおそれがあ29 30
ることから,執行不停止を原則とする一方で,処分,処分の執行又は手続の続行
により生ずる国民の不利益を救済するため,
審査請求人の申立てがあった場合に
おいて,処分,処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため
緊急の必要があると認めるとき(ただし,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそ
れがあるとき,
処分の執行若しくは手続の続行ができなくなるおそれがあるとき,
又は本案について理由がないとみえるときは,この限りでない。
)は,執行停止
(同条第 2 項にいう「その他の措置」を含む。以下同じ。
)をしなければならな
いとしている。
この枠組みは今後とも維持し,審理員は,上記に該当する場合には,執行停止
をすべき旨の意見をすみやかに審査庁に提出しなければならないこととする。ただし,同条第 4 項ただし書の「処分の執行若しくは手続の続行ができなくなるお
それがあるとき」については,行訴法第 25 条第 4 項で規定されていないもので
あり,存置する必要性も認められないので,削除することとする。
また,
行政不服審査制度が処分権限の帰属する行政庁が判断する救済制度であ
ることから,
執行停止の判断は訴訟におけるそれよりも柔軟に行い得るものであ
り,上記に該当しない場合であっても,審査請求人の救済の必要性,本案におけ
る請求認容の可能性を総合的に考慮する等,
執行停止における考慮要素を明確に
することにより,審理員が判断を下しやすい仕組みとするのが適切である。そこ
で,上記の義務的な執行停止の要件を充足しない場合であっても,審理員は,審
査請求人の申立てにより又は職権で,
行審法の目的が簡易迅速な手続により国民
の権利利益の救済を図るものであることを踏まえ,
審査請求人の救済を必要とす
る事情等を考慮して必要があると認めるときは,
執行停止をすべき旨の意見を審
査庁に提出することができることとする。
3 仮の義務付け
法令に基づく申請に係る一定の処分をすることを求める審査請求があった場
合(後記第 7 章・38 頁以下参照)において,行訴法第 37 条の 5 所定の仮の義務
付けの申立てと同じように,
仮に審査庁がその処分をすべき旨を命ずるとの仮の
義務付けの制度を設けるべきとの意見がある。
しかしながら,行政不服審査制度は,最終的な判決の確定までに長期間を要す
ることの少なくない訴訟とは違って,
簡易迅速な手続により国民の権利利益の救
済を図ることを目的とするものであり,
標準審理期間や争点及び証拠の整理など
に関する規定を設け,審理の迅速化を図るなど,この制度自体が,行訴法所定の 31仮の義務付け制度の機能を担うものといえる。また,仮の義務付けを制度化する
と,審理員は,審査請求に対する本審理とは別に,仮の義務付けの要件に関する
審理を行い,その審理の結果をまとめて審査庁に提出し,審査庁が仮の義務付け
の判断をしなければならないこととなり,その結果,審査請求に対する本審理の
遅延を招くおそれが生じることとなる。したがって,仮の義務付けの制度は設け
ないこととする。
第5章 審理員による審理手続の終結
1 審理員は,審理手続を終結したときは,なされるべき裁決に関する意見書
(以下「審理員意見書」という。
)を事件記録とともに審査庁に提出しなけ
ればならない。
2 審理員は,審理を終結した後,すみやかに,審理関係者に対し,審理員意
見書及び事件記録を審査庁に提出する予定時期を通知しなければならない。
上記の予定時期を変更するときは,審理員は,新たな提出予定時期を審理
関係者に通知しなければならない。
3 審査庁は,審理員意見書及び事件記録に基づき,裁決をするものとする。
4 審査庁は,
審理員意見書に記載された意見と異なる裁決をするために必要
と認めるときは,補充の調査をすることができる。
5 裁決書においては,理由を付すとともに,審理員意見書を添付するものとす
る。
1 審理員は,審理手続を終結したときは,遅滞なく事実認定を行った上で,なさ
れるべき裁決に関する意見書(以下「審理員意見書」という。
)を審理関係者が
提出した主張書面及び証拠書類等からなる事件記録とともに審査庁に提出しな
ければならないものとする。
2 審理員は,審査請求人の手続保障及び審理遅滞防止の観点から,審理手続を終
結した後,すみやかに,審理関係者に対し,審理員意見書及び事件記録を審査庁
に提出する予定時期を通知しなければならないものとする。しかしながら,実際
の提出時期を事前に確定することは困難であるので,
予定時期内に審査庁に提出
しなければならないとすることは適切ではない。そこで,審査請求人の手続保障
も考慮し,審理員は,この予定時期を変更することができ,この場合,新たな提
出予定時期を審理関係者に通知するものとする。
3 審理員は,一定の条件の下で審査庁により指名され,審理に関する権限を行使
して,公正かつ適正に審理を行い,審理員意見書を審査庁に提出する職責を担う
ものである。このように,国民の手続保障を手厚くし,公正かつ適正な審理手続
を設ける趣旨にかんがみれば,審査庁は,審理員意見書並びに審理関係者が提出
した主張書面及び証拠書類等からなる事件記録に基づき,
裁決をするものとする32 33
のが適切である。
4 審査庁が,審理員意見書に記載された意見(以下「審理員意見」という。)と異なる判断をする場合もあり得るところであり,その判断のために,審査庁が審
理員に対し更に審理すべき点を指示して審理の再開を命じることができるとす
ることも考えられる。しかしながら,審理員は,職能分離原則の理念にのっとっ
て客観的かつ公正な審理手続を行うことに努めており,審査庁もそれを配慮しな
ければならないとしているところである(第 3 章第 1・17 頁以下参照)
。ところ
が,審査庁が審理の再開を命ずることは,その職能分離原則と抵触する懸念を生
じさせるものといわざるを得ない。
したがって,審査庁は,審理員意見と異なる裁決をするために必要と認めると
きは,自ら補充の調査をすることができることとし,審理員への審理の再開を命
じることは認めないこととする。
5 審査請求人の手続保障及び公正かつ適正な審理の実現の観点から,審査庁が,
どのような理由で裁決をしたかが,審査請求人も知ることができるよう,裁決書
においては,理由を付すとともに,審理員意見書を添付するものとする。なお,
審査庁が審理員意見と同じ判断の場合,裁決書に付す理由は,
「審理員意見と同
じ。
」といった記載で足りるものと考えられる。
第6章 意見送付・調査審議
1 意見送付手続
審査庁(国の行政機関又は地方公共団体若しくはその機関に限る。
)は,
審査請求人の申出があるときには,次に掲げる場合を除き,審理員意見書及
び審査庁の意見書を,後記第 9 章(42 頁)の審査会等に提出しなければな
らない。
1 審査請求が不適法であり,却下するとき。
2 裁決で,審査請求の全部を認容するとき。
3 法律(条例に基づく処分については,条例を含む。
)に特別の定めがあ
るとき。
2 審査会等の調査審議手続
(1) 審査会等は,上記1の各意見書の提出を受けた場合において,審査請求
に係る事件が次の各号のいずれかに該当するものであるときは,後記(2)
及び(3)に定める調査審議を行い,審査庁に対し,なされるべき裁決に関
する意見(以下「審査会等の意見」という。
)を述べるものとする。ただ
し,当該事件が1又は2に該当する場合において,国民の権利利益の救済
及び行政の適正な運営の確保の観点から,
審査会等が調査審議を必要とし
ないと認めるときは,この限りでない。
1 行政手続法第 13 条第 1 項第 1 号イないしハに掲げる処分に対する審
査請求に係る事件
2 同法第 2 条第 3 号所定の申請に対する拒否処分のうち,
名あて人の資
格又は地位の付与に関する事件
3 同条第 8 号ロ所定の審査基準又は同号ハ所定の処分基準の法令適合
性に関わる事件その他行政運営上の重要な事項を含むものと認められ
る事件
(2) 審査会等は,審査請求に係る事件に関し,審理関係者に意見書又は資料
の提出を求めること,
適当と認める者にその知っている事実を陳述させ又
は鑑定を求めることその他必要な調査をすることができる。
審査会等は,必要があると認めるときは,審査庁に対し更に審理すべき
点を指示して審理手続の再開を求めることができる。
(3) 審査会等は,審理関係者から申立てがあったときは,当該審理関係者に34 口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。ただし,審査会等が,
その必要がないと認めるときは,この限りでない。
(4) 審査会等は,審査会等の意見を述べないときは,その旨,審査庁に通知
する。
3 審査会等からの通知と裁決との関係
審査庁は,審査会等から,審査会等の意見又はその意見を述べない旨の通
知を受けた後に,すみやかに,裁決をするものとする。
この場合,裁決書においては,理由を付すとともに,審理員意見書及び審査
会等の意見書を添付するものとする。
1 第三者機関が審理に関与する必要性
行政不服審査制度は,客観的かつ公正な審理手続により,国民の権利利益の救
済を図ることを目的とするものである。
この点,
審査請求の審理は,
原則として,
処分に関する手続に関与した者以外の者である審理員が行うとすることにより,
その客観性・公正さを確保することを企図している。
また,現行制度上,個別法において,第三者機関が審理に関与している場合が
あり,その中には,裁決機関又は諮問機関として処分を客観的に検証し,適正に
国民の権利利益の救済を図っているものも認められるが,
すべての類型について
設けられているわけではない。
そこで,現行制度上,法律(条例に基づく処分については,条例を含む。)の定めにより第三者機関が審理に関与している場合を除き,
行政の自己反省機能を
高め,より客観的かつ公正な判断が得られるよう,国民の権利利益に重大な影響
を与えるような一定の案件について,優れた識見を有する委員で構成され,法令
解釈に関する行政庁の通達に拘束されずに,
違法又は不当について調査審議を行
う処分庁又はその上級行政庁以外の第三者機関が,
審理に関与することを制度化
することとする。
この第三者機関は,後記第9章(42頁)の審査会等とする。
2 意見送付・調査審議の手続
(1) 聴聞手続相当処分及び地位・資格に関わる申請拒否処分のように,処分の名
あて人に対する不利益の程度が大きい類型や,
通達の法令適合性その他の行政
運営上重要な事項を含むものと認められる事件については,
審査請求人の権利35 36
利益の救済を図る観点から,審査会等が審理に関与することが望ましい。
しかしながら,
審査会等が審理に関与する場合は,
そうでない場合に比べて,
審理が長期化することは避け難く,
審査請求人のすべてが審査会等の審理への
関与を望むとも限らないため,
一律に審査会等の審理への関与を義務付けるこ
とは,審査請求人の簡易迅速な権利利益の救済を損なうことにもなり得る。
さらに,審査会等の処理能力には,限界があり,審査会等が対応できる合理
的な件数でなければ,実際に機能しない。
(2) 以上を考慮すると,
審査請求人から当該審査請求に係る事件について審査会
等への送付の申出がある場合は,審査庁は,原則として,審理員意見書及び審
査庁の意見書を審査会等へ提出するものとし,その提出を受けた審査会等は,
審査請求に係る事件が次の1ないし3のいずれかに該当するものであるとき
は,調査審議を行った上,審査庁に対し,なされるべき裁決に関する意見(以
下「審査会等の意見」という。
)を述べるものとすることが考えられる。
1 行政手続法第 13 条第 1 項第 1 号イないしハに掲げる処分に対する審査請
求に係る事件
2 同法第 2 条第 3 号所定の申請に対する拒否処分のうち,
名あて人の資格又
は地位の付与に関する事件
3 同条第 8 号ロ所定の審査基準又は同号ハ所定の処分基準の法令適合性に
関わる事件その他行政運営上の重要な事項を含むものと認められる事件
ただし,審査会等において,調査審議を重ねる中で,過去に類似の事件があ
って,先例となる答申が存在し,調査審議しても明らかに同じ結果になるもの
など,処分の類型や審査請求の趣旨及び理由等に照らし,審査会等の関与を要
しないと認めるものが出てくることが考えられる。
また,上記1又は2の審査庁の意見書提出相当事件であっても,個別の事件
を想定すると,
形式的かつ単純な事実認定に係るものや現行の制度についての
不満を述べるにすぎない審査請求も含まれると考えられるが,
これらについて
は,審査会等が調査審議を行う必要性が高いものではない。
このように,上記1又は2のいずれかの類型に該当する事件であっても,個
別の事件の内容に照らすと,
そのすべてについて審査会等による調査審議が必
要になるものではないと考えられる。
したがって,
当該事件が国民の権利利益の救済及び行政の適正な運営の確保
の観点から,審査会等が調査審議を必要としないと認めるときは,上記1又は
2のいずれかに該当する事件であっても,審査会等は,調査審議をせず,審査 37会等の意見を述べないことができることとすることが適当である。
なお,審査請求が不適法であって却下するとき,裁決で審査請求を全部認容
するとき,第三者機関への諮問手続などについて法律(条例に基づく処分につ
いては,条例を含む。
)に特別の定めがあるときは,審査会等の意見を聴取す
る必要はないといえる。
(3) 審査会等は,
審理員が事実認定を行った後に審理員意見書等の提出を受ける
ことになるが,
このことは審査会等が自ら事実認定を行うことを妨げるもので
はなく,審理関係者に意見書又は資料の提出を求めること,必要があると認め
るときは,審査庁(審理員)に対し,更に審理すべき点を指示して審理手続の
再開を求めることなど,職権で必要な調査をすることができるものとする。
また,審査請求人の手続的権利を保障するなどのため,審理関係者は,審査
会等に対し口頭意見陳述の申出をして審査会等がその実施を必要と認めると
きは,口頭意見陳述をすることができるものとする。
(4) 以上の意見送付・調査審議手続については,諮問手続か,又は諮問手続と異
なる特別な手続として整理するかといった点について,
更に法制的な検討を要
する。また,審査会等の体制・人員等も踏まえ,調査審議の対象とする事件を
合理的に選別するなど,
審査会等が適切にその機能を発揮できる制度設計が必
要である。
そこで,本章における意見送付・調査審議手続については,今後,審査会等
の設置態様及びその組織体制等も併せ考えながら,
政府における具体的な検討
にゆだねることとする。
3 審査会等からの通知と裁決との関係
審査庁は,審査会等の意見を踏まえて裁決することになるので,審査会等は,
審査会等の意見を述べないときは,
審査庁に対し,
その旨の通知をすることとし,
審査庁は,審査会等から,審査会等の意見又はその意見を述べない旨の通知を受
けた後に,審理の迅速化の観点から,すみやかに,裁決をするものとする。
審査会等が審査会等の意見を述べたときは,
審査請求人の手続保障及び公正か
つ適正な審理の実現の観点から,裁決書において,理由を付すとともに,審理員
意見書及び審査会等の意見書を添付するものとする。
第7章 裁決(認容裁決の態様)
1 処分庁の上級行政庁が審査庁である場合
(1) 処分(事実行為を除く。
)についての審査請求が理由があるときは,審
査庁は,裁決で,当該処分の全部又は一部を取り消す。
(2) 事実行為についての審査請求が理由があるときは,審査庁は,処分庁に
対し当該事実行為の全部又は一部を撤廃すべきことを命ずるとともに,裁決で,その旨を宣言する。
(3) 上記(1)又は(2)の場合において,審査庁は,裁決で当該処分を変更し,
又は処分庁に対し当該事実行為を変更すべきことを命ずるとともに裁決
でその旨を宣言することもできる。ただし,審査請求人の不利益に当該処
分を変更し,又は当該事実行為を変更すべきことを命ずることはできな
い。
(4) 法令に基づく申請に係る一定の処分をすることを求める審査請求に対
し,当該申請に係る処分をしないことが違法又は不当と認められるときは,審査庁は,
処分庁に一定の処分をすべき旨を命ずるとともに,
裁決で,
その旨を宣言することができる。ただし,審査庁は,審理の状況その他の
事情を考慮して,
当該申請に対する何らかの処分をすべきことを命ずる裁
決をすることがより迅速な争訟の解決に資すると認めるときは,
その旨の
裁決をすることができる。
(5) 法令に基づく申請により求められた許認可等を拒否する処分がされて
いる場合,審査庁は,上記(4)本文の裁決をするに当たり,この処分を取
り消さなければならない。
2 処分庁が審査庁である場合
(1) 処分(事実行為を除く。
)についての審査請求が理由があるときは,審
査庁は,裁決で,当該処分の全部若しくは一部を取り消し,又は当該処分
を変更する。
(2) 事実行為についての審査請求が理由があるときは,審査庁は,当該事実
行為の全部若しくは一部を撤廃し,
又はこれを変更するとともに,
裁決で,
その旨を宣言する。
(3) 審査庁は,上記(1)又は(2)の場合において,審査請求人の不利益に当該
処分を変更し,又は当該事実行為を変更することはできない。38 (4) 法令に基づく申請に係る一定の処分をすることを求める審査請求に対
し,当該申請に係る処分をしないことが違法又は不当と認められるとき
は,審査庁は,一定の処分をするとともに,裁決で,その旨を宣言するこ
とができる。
法令に基づく申請により求められた許認可等を拒否する処分
がされている場合,審査庁は,この裁決をするに当たり,この処分を取り
消さなければならない。
3 上記1及び2以外の審査庁である場合
(1) 処分(事実行為を除く。
)についての審査請求が理由があるときは,審
査庁は,裁決で,当該処分の全部又は一部を取り消す。
(2) 事実行為についての審査請求が理由があるときは,審査庁は,処分庁に
対し当該事実行為の全部又は一部を撤廃すべきことを命ずるとともに,裁決で,その旨を宣言する。
現行行審法上,申請拒否処分に対する不服申立てにおいて,審査庁が,処分を取
り消すのみならず,申請認容処分をすることができるか否かについては,これまで
議論があったところである。
この点に関しては,争訟の一回的解決の観点から,申請拒否処分がされた場合又
は法令に基づく申請に対し相当の期間内に何らかの処分をすべきであるにかかわ
らずこれがされないという不作為の場合には,
行政手続法第 2 条第 3 号所定の法令
に基づく申請に係る一定の処分を求める審査請求を認めることとし,処分庁の一般
監督権を有する上級行政庁が審査庁である場合で,
「申請に係る処分をしないこと
が違法又は不当と認められるとき」は,上記 1(4)のとおり,処分庁に一定の処分
をすべき旨を命ずるとともに裁決でその旨を宣言することができることとする。処分庁が審査庁である場合には,上記 2(4)のとおり,一定の処分をするとともに裁
決でその旨を宣言することができることとする。この場合, 上記 1(5)及び 2(4)
のとおり,審査庁は,申請拒否処分がされている場合,この申請拒否処分を取り消
さなければならないことを規定することとする。
また,
処分庁が処分内容を決定した方がより迅速な争訟の解決に資すると認める
ときは,上記 1(4)ただし書のとおり,処分庁の上級行政庁である審査庁は,申請
に対する何らかの処分をすべきことを命ずる裁決を終局判断としてすることがで
きるものとする。処分庁が審査庁である場合は,自ら処分内容を決定するほかない
から,上記のとおり,一定の処分をするとともに裁決でその旨を宣言することとす39 40
る。
なお,却下及び棄却裁決については,現行行審法第 40 条第 1 項及び第 2 項の規
定のとおりとする。
第8章 再調査請求の手続
1 再調査請求は,処分があったことを知った日から 3 箇月を経過したとき
は,することができない。
2 標準審理期間及び審理状況に関する説明に関する審査請求の規定は,
再調
査請求に準用する。
3 再調査請求の審理手続は,主張書面又は証拠書類等の提出,口頭意見陳述
及び執行停止に関する審査請求の規定を準用する。
1 再調査請求期間
再調査請求の期間も,審査請求期間(第 2 章第 1・13 頁)と同じく,現行行審
法第 45 条の異議申立手続についての 60 日を,3 か月に延長することとする。
2 標準審理期間及び審理状況に関する説明
標準審理期間及び審理状況に関する説明は,
再調査請求についても請求人の権
利利益の救済を図る観点から必要と考えられるので,審査請求における規定(第
2 章第 2・15 頁)を準用することとする。
3 審理手続
再調査請求は,前記第 1 章第 2 の 3(4 頁以下)のとおり,不服申立ての基本
構造の例外として,正式な不服申立てである審査請求の前段階で,現行の異議申
立制度のように処分担当者等が改めて処分を見直す手続を特別の類型として認
めるものである。
したがって,再調査請求の手続のうち,申立手続については,審査請求と同じ
く,原則として書面を提出してすることとするが,審理の内容については,審査
請求の手続よりも簡略化する必要があるので,審査請求の手続のうち,主張書面
又は証拠書類等の提出,
口頭意見陳述及び執行停止に関する審査請求の規定のみ
を準用することとする。ただし,再調査請求は,審理員が審理を行う対審的構造
を採るものではないので,
対審的構造を前提とする口頭意見陳述における質問権
に関する規定等は準用しないこととする。41 第9章 審査会等
1 国における行政不服審査会
この法律の規定によりその権限に属せしめられた事項を調査審議するた
め,各府省の分野を横断して審理する統一的な合議制の機関として,優れた
識見を有する委員で構成される行政不服審査会を置く。
2 地方公共団体における審議会その他の合議制の機関
この法律の規定によりその権限に属せしめられた事項を調査審議するた
め,地方公共団体は,条例で定めるところにより,優れた識見を有する委員
で構成される審議会その他の合議制の機関
(本法で行政不服審査会と合わせ
て「審査会等」という。
)を置く。
3 専門委員
審査会等は,必要があると認めるときは,専門的な知見に基づく説明を聴
くために専門委員を手続に関与させることができる。
1 審査会等の設置
前記第 6 章(34 頁以下)のとおり,審査会等が審理に関与する手続を設ける
ことから,この法律の規定によりその権限に属せしめられた事項を調査審議する
ため,審査会等を新たに設置する必要がある。ただし,国及び地方を通じて行政
改革が進展する中,審査会等が調査審議する事件を,審査請求人の権利利益の救
済の観点から,真に必要なものに限定することにより,必要最小限のコンパクト
な組織とするべきである。また,国における行政不服審査会の事務局の定員は極
力抑制することとするべきである。
なお,個別法に基づき設置されている既存の第三者機関については,その専門
性を重視し,引き続き活用することとするが,将来,単独で設置する意義が低下
した場合は,審査会等への統合を検討するべきである。
2 国における行政不服審査会
(1) 国については,
合議制の機関としての行政不服審査会を設置することが適当
であるが,その具体的な設置態様について検討すると,以下のようなものが考
えられる。
ア 客観性・公正さを確保する観点から,
各府省の分野を横断して審理する統
一的な機関を設置する。42 43
イ 客観性・公正さと専門性の両立を図る観点から,
新たに又は既存の機関を
改組して,各府省内の分野を横断して審理する機関を各府省に設置する。
ウ 行政の簡素化という観点から,
各府省の既存の審議会等を機関として活用
する。
(2) 上記(1)イの各府省に行政不服審査会を設置する考え方は,行政の肥大化に
つながるものであり,
実際の審査請求件数が少ない府省にまで設置するのは非
効率であるなどの問題がある。
また,上記(1)ウの各府省の既存の審議会等を活用する考え方は,既存の審
議会等で適切なものが設置されているか否かという審査請求人にとって偶然
の差異で,権利保障のレベルに差が生じるなどの問題がある。
そこで,
審査請求人の手続保障を確保するとともに行政の肥大化を最小限に
抑えられる上記(1)アの各府省の分野を横断して審理する統一的な機関を設置
するべきであると考える。
3 地方公共団体における審議会その他の合議制の機関
客観的かつ公正な判断を得るため,
審議会その他の合議制の機関が審理に関わ
ることは,地方公共団体についても極めて重要である。このことは,処分の決定
に関与していない者を審理員として指名するのが困難な規模の地方公共団体に
あっては,一層強く妥当する。したがって,地方公共団体についても,
「行政庁
の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為」に関し,住民の手続保
障の低下を招くことなく,
地域の実情に最もふさわしい体制で国と同等の手続保
障を確保し,住民の権利利益の救済を図ることができるようにするため,一定の
事件について審議会その他の合議制の機関が審理に関与する手続を国と同様に
制度化する。
他方,地方公共団体の組織規模や審査請求の件数は様々であり,人材の確保と
いう観点からも,
すべての地方公共団体が個別に審議会その他の合議制の機関を
設置することは非現実的である。また,地方自治法上の附属機関として審議会そ
の他の合議制の機関の設置を法律上義務付けることについては,
地方公共団体の
自主性を尊重することも必要である。
そこで,地方公共団体における審議会その他の合議制の機関については,ここ
では,名称も含めて各地方公共団体の条例で定めることとするが,地方自治法上
の附属機関としての設置を法律上義務付ける必要があるか否かといった点につ
いては,
審議会その他の合議制の機関が審理に関与する手続を設ける趣旨を没却 44することのないように留意しつつ,
政府における具体的な検討にゆだねることと
する。
なお,
条例における具体的な審議会その他の合議制の機関の設置の仕方につい
ては,
都道府県等の地方公共団体において単独で自らの審議会その他の合議制の
機関を設置する方法のほか,例えば,複数の地方公共団体が共同で合議制の機関
を設置することを定めたり,
監査委員を活用することを定めることなどが一応考
えられるが,上記のとおり,更なる検討が必要である。
4 専門委員
審査会等は,
様々な分野における多種多様な処分について審議しなければなら
ないこととなり,
その各分野の専門性が必ずしも高いとはいえない場合もあり得
る。そこで,審査会等の審理能力を補完し,適正な意見を述べられるようにする
ために,
その各分野に精通した学識経験者や専門家等が公正な立場で専門委員と
して関与し,
審査会等の判断に必要な範囲で意見を述べる仕組みを設けることと
する。
第 10 章 行政手続法の改正
行政手続法の一部を改正して以下の制度を設ける。
第1 一定の処分を求める申出
1 書面で具体的な事実を摘示して一定の処分を求める申出(行政手続法第 2
条第 3 号に規定する「申請」を除く。
)があったときは,当該処分に係る行
政庁は,当該処分の根拠となる法令に照らし必要と認めるときは,当該処分
をするなど適当な措置を採らなければならない。
2 上記 1 の適当な措置を採ったときは,行政庁は,すみやかに,その旨を当
該申出をした者に通知しなければならない。
行政手続法第 2 章は,同法第 2 条第 3 号所定の申請(法令に基づき,行政庁の許
可,認可,免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であ
って,当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをい
う。
)に対する処分に関する手続について規定している。
一方,行訴法の改正により,上記の申請権を有しない者が行政庁に一定の処分を
すべき旨を命ずるよう求めるいわゆる非申請型の義務付けの訴えが一定の場合可
能と定められたことから,行審法上も,これに対応する非申請型義務付けの審査請
求を認めるべきではないかとの考えもある。
しかしながら,非申請型義務付けの審査請求は,処分に至る前の行政過程に位置
づけられるため,法律の体系上,行政庁の特定の行為に対する争訟手続の問題,つ
まり行審法に関わる問題というよりは,
行政手続法の対象とする事前手続に関わる
問題と考えられる。
そこで,行政手続法において,同法第 2 条第 3 号所定の申請とは別に,書面で具
体的な事実を摘示して一定の処分を求める申出があったときは,
当該処分に係る行
政庁は,当該処分の根拠となる法令に照らし必要と認めるときは,その内容につい
て検討し,その結果を踏まえて,当該処分をし,あるいは必要な行政指導をするな
ど適当な措置を採らなければならないこととし,
その旨を当該申出人に通知すべき
旨を定めて制度化し,国民の権利利益の保護をより手厚いものとすることとする。
また,行政庁が適当な措置を採る必要がないと判断したときも,申出人に対し,そ
の旨通知する取扱いとする。
なお,この制度に基づく申出は,行政の職権発動を促すものであり,一定の処分
を求める申請の制度を定めるものではなく,
この申出に対する通知は処分性を有す45 46
るものではないと整理する。
第2 行政指導に対する是正の申出
1 要件
(1) 行政指導の相手方は,当該行政指導が,その根拠が法令に定められてお
り,当該法令に違反する行為の是正を求める内容であって,かつ,当該法
令の要件に適合しないと思料するときは,
当該行政指導に携わる者の属す
る行政機関の長に対し,当該行政指導の是正を申し出ることができる。
(2) 行政指導の相手方は,
許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分を
する権限を有する行政機関が,
当該権限を行使することができない場合に
おいて,
当該行政指導に携わる者から,
当該権限を行使し得る旨を示され,
行政指導に従うことを余儀なくされようとしているとき又は余儀なくさ
れたときは,当該行政機関の長に対し,当該行政指導の是正を申し出るこ
とができる。
(3) 上記(1)又は(2)に基づく是正の申出は,行政手続法第 35 条第 1 項に規
定する事項を記載した書面を添付して,
書面
(以下
「是正申出書」
という。)を提出してしなければならない。ただし,同条第 2 項に基づき書面の交付
を求めたにもかかわらず,その交付を受けられなかったときは,その旨を
是正申出書に記載すれば足りる。
2 申出に対する調査,是正及び通知
(1) 上記1に基づく適法な是正の申出があったときは,行政機関の長は,当
該行政指導について必要と認める調査をしなければならない。
(2) 是正の申出が理由があるときは,
行政機関の長は,
当該行政指導の撤廃,
変更その他適当な措置を採るとともに,是正申出人に対し,その旨を通知
する。
1 救済を必要とする類型
(1) 行政指導は,行政手続法において,
「行政機関がその任務又は所掌事務の範
囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作
為を求める指導,勧告,助言その他の行為であって処分に該当しないものをい
う。
」と定義されている(第 2 条第 6 号)
。また,行政指導の内容は,
「あくま
でも相手方の任意の協力によってのみ実現されるもの」である(第 32 条第 1項)。したがって,行政指導自体は,本来,処分のように国民の権利義務に変
動を及ぼすことはないこととされている。47 48
(2) しかしながら,行政指導は,上記の定義からも明らかなようにその内容は多
様であり,以下のように処分に近いものもあると考えられる。
ア 法令に是正を求める勧告等の行政指導が規定されている場合がある。
これ
らの法令に根拠を有する行政指導は,
慎重な判断を経て発動されるものと受
け取られるのが一般であり,それが発動されることの社会的影響は大きく,
その発動自体に報道が伴うことも多い。
このため,
当該行政指導の相手方は,
当該行政指導の発動により事実上の不利益を受けるおそれがある。特に,法
令に是正を求める勧告等の行政指導が規定され,かつ,その行政指導に従わ
ない場合にはその事実を公表することが規定されている場合は,
行政指導の
前提とする事実認定に誤りがあっても,行政指導の相手方は,行政指導に従
わない事実を公表されることにより不利益を被ることを恐れて,
当該行政指
導に従うことが考え得る。
したがって,このような法令に根拠が規定されている行政指導は,当該法
令の根拠規定に照らし違法な場合,
当該行政指導によって相手方に対し事実
上の不利益を及ぼすおそれのある類型といえ,
処分に近い行政指導と考える
ことができる。以下,この類型を「法令違反型」という。
イ 行政機関が有する許認可等に関する一定の権限を行使することができな
い場合において,当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより,相手方
に行政指導の内容を実行させ,又は有する権利を制限することは,本来任意
である行政指導により,
相手方に行政指導の内容を実行することを余儀なく
させ,又は有する権利を制限し,若しくはその権利の行使を妨げる結果を招
来するおそれがあり,
行政手続法第 34 条に違反する違法な行政指導である。
例えば,
当該行政指導に従わなくとも申請に係る許認可等が認められるのに,当該行政指導に従わなければその許認可等が認められないと相手方に示
すことや,
当該行政指導に従わなくとも既に有する許認可等が取り消される
ことはない(取消要件を充足しない)のに,当該行政指導に従わなければそ
の許認可等を取り消すと相手方に示すことなどは,
違法な行政指導に該当す
る。
このような行為は,
許認可等に関する一定の権限を有する行政機関がその
地位を利用(濫用)して行政指導の相手方に一定の行動を余儀なくさせ,又
は許認可等に関する一定の権限を行使できないのにその権限を行使したの
と同じ結果を導く(又はそのおそれがある)類型といえ,処分に近い効果を
もたらすものと考えることができる。以下,この類型を「権限濫用型」とい 49う。
(3) 以上の行政指導については,必ずしも処分性があるということはできず,そ
れ自体で権利義務に変動を及ぼすものではないから,
行政不服審査の対象には
ならないが,
当該行政指導によってその相手方に生じ得る事実上の不利益ない
しそのおそれをも考慮すれば,何らかの救済手続が必要と考えられる。
こうした行政指導は,行政手続法に基本原則及び方式等が規定されている。
第 35 条では,口頭でされた行政指導の相手方から,当該行政指導の趣旨及び
内容並びに責任者を記載した書面の交付を求められたときは,
当該行政指導に
携わる者は,行政上特別の支障がない限り,これを交付しなければならないと
定め,当該相手方が行政指導を受けたことを明確に認識するとともに,求めら
れた作為又は不作為を行うべきか否かの判断が適切に行えるようにしている。
しかし,当該行政指導の相手方が,当該行政指導が違法であると考えても,そ
の是正を求める手続は規定されていない。そこで,上記の書面交付制度との連
携を図り,かつ,対象とする行政指導の内容を明確にする観点から,当該書面
が交付された行政指導であって,
上記法令違反型又は権限濫用型に該当するも
のについて,
その相手方に生じ得る事実上の不利益ないしそのおそれを考慮し,
その権利利益の保護を図るために,
行政手続法に当該行政指導の是正の申出の
手続を規定することとする。
また,行政指導の相手方が行政手続法第 35 条第 2 項に基づき上記事項を記
載した書面の交付を求めたにもかかわらずその交付を受けられなかったときも,その相手方の権利利益の保護を図る必要性があるのは同じと考えられるの
で,この場合も是正の申出をすることができることとする。
2 要件
(1) 法令違反型
ア 法令違反型に該当する行政指導に対する是正の申出は,行政手続法第 2
条第 6 号にいう行政指導のうち,その根拠が法令に定められており,かつ,
当該法令に違反する行為の是正を求める内容の行政指導を対象とするもの
であり,行政手続法第 35 条第 1 項に規定する事項(行政指導の趣旨及び内
容並びに責任者)が記載された書面を添付して,書面(以下「是正申出書」
という。)で,是正の申出をしなければならないこととする。ただし,同条第
2 項に基づき上記書面の交付を求めたにもかかわらず,その交付を受けられ
なかったときは,その旨を是正申出書に記載すれば足りることとする。 50イ 法定された行政指導は,
その根拠を定めた法令にその発動要件が定められ
ているのが通常であり,
その要件に適合していないにもかかわらずされた行
政指導は違法ということができる。特に,当該行政指導が事実誤認や著しい
評価の誤りに基づく場合が考えられる。
(2) 権限濫用型
ア 権限濫用型は,
行政指導そのもののみではなく行政指導に随伴する事実行
為をも包括してとらえる類型であり,様々な態様が想定し得る。このため,
一定の基準で明確な対象範囲を画することは容易ではない。
そこで,この類型の是正の申出は,行政手続法第 2 条第 6 号にいう行政指
導を対象とし,
法令違反型と同じく,
同法第 35 条第 1 項に規定する事項(行政指導の趣旨及び内容並びに責任者)が記載された書面を添付して,是正申
出書でしなければならないこととする。
同条第 2 項に基づき上記書面の交付
を求めたにもかかわらず,その交付を受けられなかったときは,法令違反型
と同じく,その旨を是正申出書に記載すれば足りることとする。
イ 権限濫用型は,任意の協力を求める行政指導を行うに際し,行政機関が有
する許認可等に関する一定の権限を濫用することに問題があると考える類
型である。したがって,権限濫用型の類型で違法とされる本案要件は,許認
可等に関する一定の権限を有する行政機関が,
当該権限を行使することがで
きない場合においてする行政指導にあって,
行政機関が有する許認可等に関
する一定の権限を濫用し,
行政指導の内容を相手方に実行するよう余儀なく
させることと考えられる。
許認可等に関する一定の権限を濫用し,
行政指導の内容を相手方に実行す
るよう余儀なくさせることとは,例えば,当該行政指導に従わなくとも申請
に係る許認可等が認められるのに,
当該行政指導に従わなければその許認可
等が認められないと相手方に示すことや,
当該行政指導に従わなくとも既に
有する許認可等が取り消されることはない(取消要件を充足しない)のに,
当該行政指導に従わなければその許認可等を取り消すと相手方に示すこと
などが該当すると考えられる(上記 1(2)イ・48 頁参照)。(3) 是正の申出の適格を有する者
いずれの類型も,
行政指導の相手方の権利利益の保護を目的とするものであ
るから,当該相手方に是正の申出の適格を認めることとする。
3 申出に対する調査手続 51法令違反型及び権限濫用型の行政指導に対する是正の申出は,これらの行政
指導の相手方に生じ得る事実上の不利益ないしそのおそれを問題とするもので
あり,処分を対象とする審査請求とは異なる性質のものであるから,是正の申
出に対する調査手続も,審査請求の審理手続と同一である必然性はないこと,
現に継続中の行政指導の撤廃又は変更が求められている場合には,その処理の
迅速性が要請されることから,審査請求の審理手続のような対審的構造とはせ
ず,より柔軟な態様とするのが適切と考えられる。
また,行政手続法上,
「行政指導に携わる者」が行政指導の主体とされている
が,その行政指導の適法性を判断する主体については,迅速かつ柔軟な処理を
可能なものにするとともに,審理の客観性・公正さを確保するため,当該「行
政指導に携わる者」本人ではなく,当該「行政指導に携わる者」の属する行政
機関の長とするのが適切と考えられる。
そこで,是正の申出に対する調査手続については,是正の申出があったときは,当該行政指導について必要な調査を行うものとするが,
その内容や手法は,
当該
「行政指導に携わる者」
の属する行政機関の長の裁量にゆだねることとし,
当該行政機関の長が,調査の結果を是正申出人に通知することとする。
なお,行政機関の長が「行政指導に携わる者」である場合もあり得るが,迅
速かつ柔軟な処理を重視するとともに,申出の名あて人の明確性の観点から,
上級行政庁がある場合も含めて,当該「行政指導に携わる者」の属する行政機
関の長が判断主体となることとする。
4 申出に対する是正及び通知
(1) 処分に近い行政指導といっても一般に処分性のある行為ではないので,
その
救済方法も,処分に対する審査請求のように,処分を取り消して公定力を排除
するといったようなものとは異なる。また,違法な行政指導に対してどのよう
な是正措置が適切かは,
当該行政指導の内容等によって様々な態様が想定し得
る。
例えば,違法な当該行政指導が継続中であれば,その撤廃又は変更が実効性
のある救済方法といえる。一方,相手方が当該行政指導に従ったときについて
は,違法な行政指導に従ったことにより,義務なき支出を余儀なくされていれ
ば,原状回復措置を講じることが実効性のある救済方法といえる。あるいは,
法定された行政指導がされたことが公表されたが,
当該行政指導が事実誤認を
前提とするものであり,相手方が名誉毀損の損害を受けた場合,当該行政指導 52が事実誤認を前提とするものであり違法であった旨を公表し,
相手方の名誉を
回復することが適切と考えられる。
このように,救済方法については,当該行政指導の内容等に対応して,違法
な当該行政指導の撤廃若しくは変更又は原状回復などの事実行為を講じるの
が適切と考えられ,あらかじめ一律に規定することは困難である。
したがって,救済方法については,法文上は,当該行政指導が違法と認めら
れるときは,適当な措置を採るとともに,その旨を相手方に通知することとす
る。なお,当該行政指導が違法と認められなかったときも,申出人に対し,そ
の旨通知する取扱いとする。
(2) 行政指導は,一般に処分性のない行為であり,抗告訴訟の対象とはならない
ものである。また,法令違反型・権限濫用型の行政指導に対する是正の申出の
手続も,
処分による権利義務の変動がない段階における当該行政指導の相手方
に生じ得る事実上の不利益ないしそのおそれを考慮し,
その権利利益を保護す
るための是正の申出手続の類型であり,その救済方法も,違法性の確認と,違
法な当該行政指導の内容等に応じた必要な是正措置という事実行為を講じる
ことである。
したがって,是正の申出に対する応答は,処分性を有する行為ではなく,抗
告訴訟の対象にならないものと整理する。
5 地方公共団体との関係
なお,地方公共団体は,行政手続法の規定を適用しないこととされた処分及び
行政指導等に関する手続について,
「この法律の規定の趣旨にのっとり,行政運
営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努め
なければならない」
(第 46 条)とされている。行政手続法の改正に係る以上の事
項に関しても, 同条の規定に従うこととなる。 53第 11 章 その他
1 施行期日
本最終報告における行審法の改正案は,
行政不服審査制度を抜本的に改める
ものであり,不服申立ての審理構造や審理手続の改正のみならず,審理員制度
の導入や審査会等の新設といった組織体制に関わる事項も含まれている。
また,改正行審法の施行時において,現になされている不服申立てについて
必要な経過措置を規定する必要がある。さらに,審理員に対する研修,行政庁
の職員や国民に対する周知広報を十分に行う必要がある。
現行行審法の制定時には,昭和 34 年 6 月の訴願制度改正に関する内閣総理
大臣による諮問から施行までに 3 年以上を要しており,平成 16 年の行訴法の
一部改正時においても,
施行までに 1 年の準備期間を設けていたことも踏まえ
ると,改正行審法の公布から施行まで,少なくとも 2 年以上の十分な準備期間
が必要である。
2 関係法令の扱い
現行行審法は,審理手続について,審理員や争点及び証拠整理等の審理の迅
速化に関する規定も存在していない。
このため,
現行行審法が定める手続に対して個別法で認めていた特例につい
ては,一般法である改正行審法で定める手続の水準が上がることにより,一般
法の見直しの趣旨を踏まえ,改正行審法の規定を適用することとするか,ある
いは個別法において改正行審法と同等又はそれ以上の水準の内容とする旨の
改正作業が必要になる。
今後,上記の考え方に基づき,個別法についてそれぞれ見直しを政府におい
て検討し,具体的な整理を行うこととする。
3 行政指導以外の事実行為及び行政上の契約等
行政指導以外の事実行為,
行政上の契約,
行政立法及び行政計画についても,
国民の権利利益の保護の観点から不服を申し立てる手続を設けることが適当
ではないかとの意見もある。しかしながら,これらについては,以下のとおり
その概念の範囲及び類型を整理するのが先決問題であるといえ,その上で,そ
れぞれについて,
統一的な規範を定立できるのか,
あるいは個別の分野ごとに,
個別法で対応するのが適切であるのかなどについて検討する必要がある。
この
ため,これらについては将来的な検討課題とし,ここではそうした問題点を指 54摘するにとどめることとする。
(1) 行政指導以外の事実行為
ア 行政指導以外の事実行為としては,公共工事,行政上の強制執行,行政
調査,即時執行(即時強制)
,情報による行政作用等が観念できる。
しかしながら,これらの行政指導以外の事実行為は,そもそも,その概
念の範囲が必ずしも明確でなく,
上記で列挙したとおり様々な類型のもの
が考えられる。また,いずれも,行政指導のように,法令で定義された概
念ではなく,統一的な規範も存在しない。
そもそも,上記の各類型自体の概念も一義的ではない。例えば,行政上
の強制執行は,義務の内容が他人に代わってなし得べき行為(金銭の支払
を除く。)である場合,
行政機関が義務者に代わって自らその行為を行い,
又は第三者に行わせる行政代執行や,
行政機関が義務者の身体又は財産に
実力を加えることにより,
義務が履行されたのと同様の状態を直接に実現
する直接強制(これを規定している法律は極めて少ない。
)などに分類さ
れる。また,行政調査は,強制調査と任意調査に分けられるが,強制調査は,法律上の根拠によりその範囲を確定することが比較的容易であるのに
対し,任意調査は,必ずしも法律等に根拠を有するものではなく,対象を
限定することが困難である。さらに,情報による行政作用としては,情報
提供や公表等が考えられるが,
それらの範囲を網羅的に確定することは困
難である。
イ また,公共工事等の各類型について,以下のような個別の問題がある。
(ア) 公共工事については,広域かつ多数の利害関係人が存在するため,多
面的な利害調整手続が必要となるが,行政不服審査制度は,個々の国民
と行政庁との間の争訟についての審理手続を定めるものであり,
広域に
関わる多種多様な関係者の利害を調整して処理することには性質上限
界がある。このため,事前手続の整備等も含め,行政不服審査制度とは
別途検討されるべきものと考えられる。
(イ) 行政上の強制執行は,相手方の義務があらかじめ定められ,命じられ
ていることを前提とするものであり,事実行為がなされるに先立って
「処分」が行われることが通例である。行政調査についても,その調査
に基づいて処分が行われる場合には,
当該処分に対する不服申立手続に
おいて行政調査の瑕疵も考慮される。したがって,これらの処分に対す
る不服申立てにより,権利利益の救済を図ることができることから,事 55実行為のみをあえて切り出して別途不服申立ての対象とする必要性に
乏しい。
(ウ) 即時執行は,継続的なものは不服申立ての対象となり,処分に対する
審査請求手続で救済可能である。非継続的なものは,即時執行の目的が
即時に完成してしまうものであるため,その撤廃等は観念し得ず,国家
賠償以外に名あて人を適切に権利救済する方法は見出し難い。
(2) 行政上の契約
行政上の契約には,
給付行政における契約,
財務会計や調達に関する契約,
行政機関と事業者との間の合意による協定など,様々なものがあり,
「行政
上の契約」としての類型化が確立されているわけではない。
また,行政上の契約には,その性質上,民事法規範も含めて多様な法規範
が適用される可能性があり,
行政機関も私人と対等の関係にある場合がある。
一方,給付行政の分野では,行政上の契約といえるものでも,給付の判断に
処分性が認められているものもある(国家公務員共済組合法第 41 条第 1 項等)。このように,行政上の契約の根拠法令も様々であり,行政上の契約を
包括して,適法性を判断する一定の基準を定立することは困難である。
さらに,優越的地位にある行政庁が公権力の行使として行い,公定力を有
する処分と異なり,相手方との合意に基づき効力を生じる契約の場合,行政
機関の一方的な意思表示により契約の効力を失わせることは,
相手方及び当
該契約の利害関係者等の第三者に不当な損害を与えるおそれもあるため,救済手段も,
処分に対する不服申立てと同列に考えることはできない面がある。
(3) 行政立法
行政立法は,処分性を有するとされるもの以外は,いわば一般的な定めで
あって,国民の個々の権利利益に直接影響を与えるとはいい難い。
このため,
行政立法については,
意見公募手続の法制化に見られるように,
事前手続の充実により対応していくことが基本と考えられる。
(4) 行政計画
法律に根拠を有する行政上の計画は,300 を超える法律に約 600 種類存在
するといわれ,複雑広範な対象事項に関する総合的な計画から,個別の工事
の計画等の特定事項についての具体的な計画まで,
様々な段階のものが含ま
れ,そもそも統一的な概念自体明確ではない。
その性質も,私人に対する法的拘束力のないもの,私人に対する法的拘束
力を有し,処分性があるもの,一定の法効果を持つが処分性が否定されてい 56るものなど様々であり,
一般法である行政不服審査法に一律に規定すること
は困難といわざるを得ず,むしろ個々の制度に則した争訟手続について,個
別法において検討することが必要と考えられる。
また,行政計画は,国民の多様な利害調整を図りながら,行政過程の比較
的初期の段階で行われる行政活動であり,かつ,一般的抽象的な形で極めて
多数の関係者に関わるものであり,
一種の立法作用的な性質を有するもので
あるが,
個別の申立てに対する不服審査手続によってその効力を決することは,同手続に関与していない他の利害関係者に多大な影響を及ぼすおそれが
ある。ところが,個別の申立てに対する不服審査手続によって,他の多数の
利害関係人との調整を図ることや,
不服申立人適格の範囲を明確に画するこ
とは,困難である。
このため,行政計画については,争訟手続よりも,策定の段階における利
害関係人の意見聴取など,事前手続が重要な意味を持つといえる。
行政不服審査制度検討会 名簿
(敬称略,五十音順)
座 長 小早川
こばやかわ
光郎
みつお
(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
座長代理 稲葉
いなば馨かおる
(東北大学大学院法学研究科教授)
今川
いまがわ晃あきら
(同志社大学政策学部教授)
小幡
おばた
純子
じゅんこ
(上智大学大学院法学研究科教授)
高橋
たかはし滋しげる
(一橋大学大学院法学研究科教授)
中川
なかがわ
正晴
まさはる
(兵庫県立大学大学院会計研究科教授)
雛形
ひながた
要松
ようまつ
(公証人)
藤村
ふじむら誠まこと
(財団法人労災保険情報センター理事長)
前田
まえだ
雅子
まさこ
(関西学院大学法学部教授)
水野
みずの
武夫
たけお
(弁護士・立命館大学大学院法学研究科教授)
山本
やまもと
隆司
りゅうじ
(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
和久井
わ く い
孝太郎
こ う た ろ う
(東京都総務局参事(訟務担当))57
行政不服審査制度検討会 開催要領
1 目 的
行政不服審査制度検討会は,行政不服審査制度の見直しについて,法制的
な観点から有識者による専門的な検討を行うことを目的とする。
2 会 議
総務副大臣が主宰する検討会とし,行政不服審査法等諸制度に関し,専門
的かつ優れた見識を有する者に参集を求めるものとする。
3 運 営
(1) 会議は座長が招集するものとする。
(2) 座長に事故があるときは,あらかじめその指名する者がその職務を代行
するものとする。
(3) そのほか,会議の運営に必要な事項については,座長が定めるものとす
る。
4 庶 務
検討会の庶務は,総務省行政管理局企画調整課行政手続・制度調査室にお
いて処理するものとする。58 行政不服審査制度検討会 運営要領
1 議事運営の方法について
座長が必要と認める場合,別途有識者等から意見を求めることができる。
2 会議の公開について
会議は原則として非公開とするが,座長の了承を得た者について傍聴を認
める。
3 会議の議事要旨等の公開について
毎回,議事要旨を作成し,会議終了後速やかに総務省ホームページに掲載
する。議事録についても,毎回,会議の終了後に作成し,出席者による内容
確認を経た上で総務省ホームページに掲載する。59 行政不服審査制度検討会 開催実績
にじゅうまる 第1回
平成 18 年 10 月 30 日
(月)
17:00〜18:30
しろまる 総務副大臣あいさつ
しろまる 総務大臣政務官あいさつ
しろまる 座長あいさつ
しろまる 出席者の紹介
しろまる 検討会の開催・運営・スケジュールについて
の協議
しろまる これまでの取組について事務局から説明
にじゅうまる 第2回
平成 18 年 11 月 28 日
(火)
9:00〜11:00
しろまる 今後検討を要する論点についての整理
しろまる 主な論点に関する検討
・ 申立ての種類及び審理の基本構造
にじゅうまる 第3回
平成 18 年 12 月 25 日
(月)
16:00〜18:00
しろまる 主な論点に関する検討
・ 申立ての種類及び審理の基本構造(第三者
性の確保)
・ 審理手続
にじゅうまる 第4回
平成 19 年 1 月 16 日
(火)
9:30〜11:30
しろまる 主な論点に関する検討
・ 不服申立人適格
・ 申立期間及び審理期間
・ その他
にじゅうまる 第5回
平成 19 年 1 月 30 日
(火)
10:00〜12:00
しろまる 主な論点に関する検討
・ 申立ての種類及び審理の基本構造(不作為
に対する不服申立ての取扱い)
・ 処分に関する新たな救済態様60 にじゅうまる 第6回
平成 19 年 2 月 13 日
(火)
10:00〜12:00
しろまる 前回の議論における指摘事項についての整理
しろまる 主な論点に関する検討
・ 処分以外のものに対する不服申立てについてにじゅうまる 第7回
平成 18 年 2 月 27 日
(火)
10:00〜12:00
しろまる 「処分以外のものに対する不服申立て」に関
する議論の整理及び検討
にじゅうまる 第8回
平成 19 年 3 月 13 日
(火)
10:00〜12:00
しろまる 行政不服審査制度検討会中間取りまとめ(案)
についての検討
しろまる 「処分以外のものに対する不服申立て」に関
する議論の整理,行政指導に対する不服申立て
についての検討
にじゅうまる 第9回
平成 19 年 3 月 29 日
(木)
14:00〜17:00
しろまる 行政不服審査制度検討会中間取りまとめ(案)
(処分以外のものに対する不服の申出)につい
ての検討
しろまる 「行政不服審査検討会中間取りまとめ(案)」に関する意見の整理
にじゅうまる 第 10 回
平成 19 年 4 月 24 日
(火)
16:15〜19:00
しろまる 関係府省等からのヒアリング
・ 財務省
・ 厚生労働省
にじゅうまる 第 11 回
平成 19 年 4 月 25 日
(水)
9:30〜12:00
しろまる 関係府省等からのヒアリング
・ 国土交通省
・ 総務省
・ 法務省
・ 環境省61 にじゅうまる 第 12 回
平成 19 年 5 月 9 日
(水)
16:00〜19:00
しろまる 関係府省等からのヒアリング
・ 農林水産省
・ 経済産業省
・ 会計検査院
・ 日本弁護士連合会
にじゅうまる 第 13 回
平成 19 年 5 月 10 日
(木)
10:00〜12:00
しろまる 関係府省等からのヒアリング
・ 警察庁
・ 内閣府
・ 外務省
・ 文部科学省
・ 防衛省
にじゅうまる 第 14 回
平成 19 年 5 月 29 日
(火)
9:00〜12:00
しろまる 地方三団体(全国知事会・全国市長会・全国
町村会)からのヒアリング
しろまる 主な論点に関する検討
・ 審理担当官
・ 不服申立期間
・ 第三者機関
にじゅうまる 第 15 回
平成 19 年 6 月 7 日
(木)
14:00〜17:00
しろまる 主な論点に関する検討
・ 審理担当官(地方について)
・ 第三者機関(地方について)
・ 裁定的関与
しろまる 最終報告案に関する検討
にじゅうまる 第 16 回
平成 19 年 6 月 27 日
(水)
9:00〜12:00
しろまる 主な論点に関する検討
・ 行審法の目的
・ 審理担当官
・ 第三者機関
しろまる 最終報告案に関する検討
にじゅうまる 第 17 回
平成 19 年 7 月 9 日
(月)
10:00〜12:00
しろまる 最終報告案に関する検討
しろまる 総務副大臣あいさつ62

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