第一八三回
閣第六〇号
消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 被害回復裁判手続
第一節 共通義務確認訴訟に係る民事訴訟手続の特例(第三条−第十一条)
第二節 対象債権の確定手続
第一款 簡易確定手続
第一目 通則(第十二条・第十三条)
第二目 簡易確定手続の開始(第十四条−第二十四条)
第三目 簡易確定手続申立団体による通知及び公告等(第二十五条−第二十九条)
第四目 対象債権の確定(第三十条−第四十七条)
第五目 費用の負担(第四十八条・第四十九条)
第六目 補則(第五十条・第五十一条)
第二款 異議後の訴訟に係る民事訴訟手続の特例(第五十二条−第五十五条)
第三節 特定適格消費者団体のする仮差押え(第五十六条−第五十九条)
第四節 補則(第六十条−第六十四条)
第三章 特定適格消費者団体
第一節 特定適格消費者団体の認定等(第六十五条−第七十四条)
第二節 被害回復関係業務等(第七十五条−第八十四条)
第三節 監督(第八十五条−第八十七条)
第四節 補則(第八十八条−第九十二条)
第四章 罰則(第九十三条−第九十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害について、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差により消費者が自らその回復を図ることには困難を伴う場合があることに鑑み、その財産的被害を集団的に回復するため、特定適格消費者団体が被害回復裁判手続を追行することができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 消費者 個人(事業を行う場合におけるものを除く。)をいう。
二 事業者 法人その他の社団又は財団及び事業を行う場合における個人をいう。
三 消費者契約 消費者と事業者との間で締結される契約(労働契約を除く。)をいう。
四 共通義務確認の訴え 消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害について、事業者が、これらの消費者に対し、これらの消費者に共通する事実上及び法律上の原因に基づき、個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて、金銭を支払う義務を負うべきことの確認を求める訴えをいう。
五 対象債権 共通義務確認の訴えの被告とされた事業者に対する金銭の支払請求権であって、前号に規定する義務に係るものをいう。
六 対象消費者 対象債権を有する消費者をいう。
七 簡易確定手続 共通義務確認の訴えに係る訴訟(以下「共通義務確認訴訟」という。)の結果を前提として、この法律の規定による裁判所に対する債権届出に基づき、相手方が認否をし、その認否を争う旨の申出がない場合はその認否により、その認否を争う旨の申出がある場合は裁判所の決定により、対象債権の存否及び内容を確定する裁判手続をいう。
八 異議後の訴訟 簡易確定手続における対象債権の存否及び内容を確定する決定(以下「簡易確定決定」という。)に対して適法な異議の申立てがあった後の当該請求に係る訴訟をいう。
九 被害回復裁判手続 次に掲げる手続をいう。
イ 共通義務確認訴訟の手続、簡易確定手続及び異議後の訴訟の手続
ロ 特定適格消費者団体が対象債権に関して取得した債務名義による民事執行の手続(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第三十三条第一項、第三十四条第一項、第三十五条第一項、第三十八条第一項、第九十条第一項及び第百五十七条第一項の訴えに係る訴訟手続(第六十一条第一項第三号において「民事執行に係る訴訟手続」という。)を含む。)及び特定適格消費者団体が取得する可能性のある債務名義に係る対象債権の実現を保全するための仮差押えの手続(民事保全法(平成元年法律第九十一号)第四十六条において準用する民事執行法第三十三条第一項、第三十四条第一項及び第三十八条第一項の訴えに係る訴訟手続(第六十一条第一項第一号において「仮差押えの執行に係る訴訟手続」という。)を含む。)
十 特定適格消費者団体 被害回復裁判手続を追行するのに必要な適格性を有する法人である適格消費者団体(消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項に規定する適格消費者団体をいう。以下同じ。)として第六十五条の定めるところにより内閣総理大臣の認定を受けた者をいう。
第二章 被害回復裁判手続
第一節 共通義務確認訴訟に係る民事訴訟手続の特例
(共通義務確認の訴え)
第三条 特定適格消費者団体は、事業者が消費者に対して負う金銭の支払義務であって、消費者契約に関する次に掲げる請求(これらに附帯する利息、損害賠償、違約金又は費用の請求を含む。)に係るものについて、共通義務確認の訴えを提起することができる。
一 契約上の債務の履行の請求
二 不当利得に係る請求
三 契約上の債務の不履行による損害賠償の請求
四 瑕疵」を「禁錮」に改め、「この法律」の下に「、消費者裁判手続特例法」を加え、同号ロ中「第三十四条第一項各号」の下に「若しくは消費者裁判手続特例法第八十六条第二項各号」を加え、「同条第三項」を「第三十四条第三項」に改める。
第三十四条第三項中「除く。)」の下に「若しくは消費者裁判手続特例法第八十六条第二項各号に掲げる事由」を加え、「関し同項第四号」を「関し第一項第四号」に改める。
第三十五条第一項及び第四項第一号中「前条第一項各号」の下に「若しくは消費者裁判手続特例法第八十六条第二項各号」を加える。
理 由
消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害について、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差により消費者が自らその回復を図ることには困難を伴う場合があることに鑑み、その財産的被害を集団的に回復するため、特定適格消費者団体が被害回復裁判手続を追行することができることとする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。