第一七九回
閣第四号
東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの国債整理基金特別会計への繰入れ(第三条)
第三章 日本たばこ産業株式会社及び東京地下鉄株式会社の株式の国債整理基金特別会計への所属替等(第四条・第五条)
第四章 復興特別所得税
第一節 総則(第六条−第十一条)
第二節 個人の納税義務(第十二条−第二十五条)
第三節 法人の納税義務(第二十六条・第二十七条)
第四節 源泉徴収(第二十八条−第三十一条)
第五節 雑則(第三十二条・第三十三条)
第六節 罰則(第三十四条−第三十九条)
第五章 復興特別法人税
第一節 総則(第四十条−第四十六条)
第二節 課税標準(第四十七条)
第三節 税額の計算(第四十八条−第五十二条)
第四節 申告、納付及び還付等(第五十三条−第五十九条)
第五節 雑則(第六十条−第六十三条)
第六節 罰則(第六十四条−第六十八条)
第六章 復興特別たばこ税
第一節 総則(第六十九条−第七十二条)
第二節 課税標準及び税率(第七十三条・第七十四条)
第三節 免税及び税額控除等(第七十五条−第七十七条)
第四節 申告及び納付等(第七十八条−第八十四条)
第五節 雑則(第八十五条・第八十六条)
第六節 罰則(第八十七条−第八十九条)
第七章 復興債の発行等(第九十条−第九十二条)
第八章 復興特別税の収入の使途等(第九十三条−第九十五条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この法律は、東日本大震災(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。以下同じ。)からの復興を図ることを目的として東日本大震災復興基本法(平成二十三年法律第七十六号)第二条に定める基本理念に基づき平成二十三年度から平成二十七年度までの間において実施する施策(以下「復興施策」という。)に必要な財源を確保するための特別措置として、財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの国債整理基金特別会計への繰入れ並びに日本たばこ産業株式会社及び東京地下鉄株式会社の株式の所属替等の措置を講ずるとともに、復興特別所得税、復興特別法人税及び復興特別たばこ税(以下「復興特別税」という。)を創設するほか、当該財源についての公債の発行に関する措置等を定めるものとする。
(基本原則)
第二条 政府は、復興施策に要する費用(平成二十三年度の一般会計補正予算(第1号)及び一般会計補正予算(第2号)に計上された費用を除き、第九十一条に規定する復興債の収入をもって充てられる費用を含む。)の財源については、東日本大震災復興基本法第七条第一号に基づく歳出の削減並びに第九十三条第一項に定める復興特別税の収入、同条第二項に定める財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの国債整理基金特別会計への繰入金、同条第三項に定める株式の処分による収入及び同条第四項に定める国有財産の処分による収入その他の租税収入以外の収入を活用して、確保するものとする。
第二章 財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの国債整理基金特別会計への繰入れ
第三条 政府は、平成二十四年度から平成二十七年度までの間において、特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号。以下「特別会計法」という。)第五十八条第三項の規定にかかわらず、財政投融資特別会計財政融資資金勘定から、予算で定めるところにより、国債整理基金特別会計に繰り入れることができる。
2 前項の規定による繰入金は、財政投融資特別会計財政融資資金勘定の歳出とし、当該繰入金に相当する金額を特別会計法第五十八条第一項の積立金から同勘定の歳入に繰り入れるものとする。
3 前項に規定する繰入金に相当する金額は、特別会計法第五十六条第一項の繰越利益の額から減額して整理するものとする。
第三章 日本たばこ産業株式会社及び東京地下鉄株式会社の株式の国債整理基金特別会計への所属替等
(日本たばこ産業株式会社の株式の国債整理基金特別会計への所属替等)
第四条 特別会計法附則第二百二十五条第四項の規定により財政投融資特別会計の投資勘定に帰属した日本たばこ産業株式会社(以下この項において「会社」という。)の株式のうち、会社が発行している株式(株主総会において決議することができる事項の全部について議決権を行使することができないものと定められた種類の株式を除く。以下この項において同じ。)の総数の三分の一を超えて保有するために必要な数を上回る数に相当する数の株式は、同勘定から無償で国債整理基金特別会計に所属替をするものとする。
2 政府は、前項の規定により国債整理基金特別会計に所属替をした株式については、できる限り早期に処分するものとする。
(東京地下鉄株式会社の株式の国債整理基金特別会計への所属替)
第五条 東京地下鉄株式会社法(平成十四年法律第百八十八号)附則第十一条の規定により政府に無償譲渡された東京地下鉄株式会社の株式(日本国有鉄道改革法等施行法(昭和六十一年法律第九十三号)附則第二十四条第二項の規定により政府が譲り受けた帝都高速度交通営団に対する出資持分に相当するものに限る。)は、一般会計から無償で国債整理基金特別会計に所属替をするものとする。
第四章 復興特別所得税
第一節 総則
(定義)
第六条 この章において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 居住者 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二条第一項第三号に規定する居住者をいう。
二 非永住者 所得税法第二条第一項第四号に規定する非永住者をいう。
三 非居住者 所得税法第二条第一項第五号に規定する非居住者をいう。
四 内国法人 所得税法第二条第一項第六号に規定する内国法人をいう。
五 外国法人 所得税法第二条第一項第七号に規定する外国法人をいう。
六 人格のない社団等 所得税法第二条第一項第八号に規定する人格のない社団等をいう。
七 確定申告書 所得税法第二条第一項第三十七号に規定する確定申告書及び租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第三十七条の十二の二第十一項(同法第三十七条の十三の二第七項において準用する場合を含む。)又は第四十一条の十五第五項において準用する所得税法第百二十三条第一項(同法第百六十六条において準用する場合を含む。)の規定による申告書をいう。
八 復興特別所得税申告書 第十七条第一項の規定による申告書(当該申告書に係る期限後申告書を含む。)又は同条第二項の規定による申告書をいう。
九 期限後申告書 国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第十八条第二項に規定する期限後申告書をいう。
十 修正申告書 国税通則法第十九条第三項に規定する修正申告書をいう。
十一 更正の請求 国税通則法第二十三条第二項に規定する更正の請求をいう。
十二 更正請求書 国税通則法第二十三条第三項に規定する更正請求書をいう。
十三 更正 国税通則法第二十四条又は第二十六条の規定による更正をいう。
十四 決定 第二十三条の場合を除き、国税通則法第二十五条の規定による決定をいう。
十五 源泉徴収 第四節の規定により復興特別所得税を徴収して納付することをいう。
十六 附帯税 国税通則法第二条第四号に規定する附帯税をいう。
十七 充当 第三十条の場合を除き、国税通則法第五十七条第一項の規定による充当をいう。
十八 還付加算金 国税通則法第五十八条第一項に規定する還付加算金をいう。
(法人課税信託の受託者等に対するこの章の適用)
第七条 人格のない社団等は、法人とみなして、この章の規定を適用する。
2 所得税法第二条第一項第八号の三に規定する法人課税信託(以下この項において「法人課税信託」という。)の受託者は、各法人課税信託の同法第六条の二第一項に規定する信託資産等及び固有資産等ごとに、それぞれ別の者とみなして、この章(次条、第十一条及び第六節を除く。)の規定を適用する。
3 所得税法第六条の二第二項及び第六条の三の規定は、前項の規定を適用する場合について準用する。
(納税義務者及び源泉徴収義務者)
第八条 所得税法第五条の規定その他の所得税に関する法令の規定により所得税を納める義務がある居住者、非居住者、内国法人又は外国法人は、基準所得税額につき、この法律により、復興特別所得税を納める義務がある。
2 所得税法第六条の規定その他の所得税に関する法令の規定により所得税を徴収して納付する義務がある者は、その徴収して納付する所得税の額につき、この法律により、源泉徴収をする義務がある。
(課税の対象)
第九条 居住者又は非居住者に対して課される平成二十五年から平成三十四年までの各年分の所得税に係る基準所得税額には、この法律により、復興特別所得税を課する。
2 内国法人又は外国法人に対して課される平成二十五年一月一日から平成三十四年十二月三十一日までの間に生ずる所得に対する所得税に係る基準所得税額には、この法律により、復興特別所得税を課する。
(基準所得税額)
第十条 この章において「基準所得税額」とは、次の各号に掲げる者の区分に応じ当該各号に定める所得税の額(附帯税の額を除く。)をいう。
一 非永住者以外の居住者 所得税法第七条第一項第一号に定める所得につき、同法その他の所得税の税額の計算に関する法令の規定(同法第九十五条の規定を除く。次号において同じ。)により計算した所得税の額
二 非永住者 所得税法第七条第一項第二号に定める所得につき、同法その他の所得税の税額の計算に関する法令の規定により計算した所得税の額
三 非居住者 所得税法第七条第一項第三号に定める所得につき、同法その他の所得税の税額の計算に関する法令の規定により計算した所得税の額
四 内国法人 次に掲げる所得につき、所得税法、租税特別措置法その他の所得税の税額の計算に関する法令の規定により計算した所得税の額
イ 所得税法第七条第一項第四号に定める所得
ロ 租税特別措置法第三条の三第二項に規定する国外公社債等の利子等、同法第六条第一項に規定する民間国外債の利子、同条第十一項に規定する外貨債の利子、同法第八条の三第二項に規定する国外投資信託等の配当等、同法第九条の二第一項に規定する国外株式の配当等、同法第四十一条の九第二項に規定する懸賞金付預貯金等の懸賞金等及び同法第四十一条の十二第二項に規定する償還差益
五 外国法人 次に掲げる所得につき、所得税法、租税特別措置法その他の所得税の税額の計算に関する法令の規定により計算した所得税の額
イ 所得税法第七条第一項第五号に定める所得
ロ 租税特別措置法第九条の六第三項に規定する外国特定目的信託の利益の分配及び外国特定投資信託の収益の分配、同法第四十一条の九第二項に規定する懸賞金付預貯金等の懸賞金等並びに同法第四十一条の十二第二項に規定する償還差益
(納税地)
第十一条 復興特別所得税(源泉徴収に係るものを除く。)の納税地は、復興特別所得税を納める義務がある者の所得税法第十五条又は第十六条の規定による所得税の納税地(同法第十八条第一項の規定による指定があった場合には、その指定をされた納税地)とする。
2 源泉徴収に係る復興特別所得税の納税地は、源泉徴収をする義務がある者の所得税法第十七条の規定による所得税の納税地(同法第十八条第二項の規定による指定があった場合には、その指定をされた納税地)とする。
3 所得税法第十九条の規定は、所得税の納税地の指定の処分の取消しがあった場合における復興特別所得税について準用する。
第二節 個人の納税義務
(個人に係る復興特別所得税の課税標準)
第十二条 個人に対して課する復興特別所得税の課税標準は、その個人のその年分の基準所得税額とする。
(個人に係る復興特別所得税の税率)
第十三条 個人に対して課する復興特別所得税の額は、その個人のその年分の基準所得税額に百分の四の税率を乗じて計算した金額とする。
(外国税額の控除)
第十四条 復興特別所得税申告書を提出する居住者が平成二十五年から平成三十四年までの各年において所得税法第九十五条第一項の規定の適用を受ける場合において、その年の同項に規定する控除対象外国所得税の額が同項に規定する控除限度額を超えるときは、前条の規定を適用して計算したその年分の復興特別所得税の額のうち、その年において生じた所得でその源泉が国外にあるものに対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を限度として、その超える金額をその年分の復興特別所得税の額から控除する。
2 前項の規定は、復興特別所得税申告書、修正申告書又は更正請求書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。
(復興特別所得税申告書の提出がない場合の税額の特例)
第十五条 復興特別所得税申告書を提出する義務がない者に対して課する復興特別所得税の額は、前三条の規定により計算した復興特別所得税の額によらず、その者のその年分の第十七条第四項に規定する予納特別税額及び源泉徴収をされた、又はされるべき復興特別所得税の額の合計額による。
(予定納税)
第十六条 平成二十五年から平成三十四年までの各年分の所得税法第百四条第一項に規定する控除した金額及び当該控除した金額に百分の四を乗じて計算した金額の合計額が十五万円以上である個人は、同項又は同法第百七条第一項(これらの規定を同法第百六十六条において準用する場合を含む。)の規定により納付すべき所得税に係る復興特別所得税を当該所得税に併せて国に納付しなければならない。
2 所得税法第二編第五章第一節(同法第百六十六条において準用する場合を含む。)の規定は、前項の規定により納付すべき復興特別所得税について準用する。この場合において、同法第百四条第一項中「控除した金額」とあるのは「控除した金額及び当該金額に百分の四を乗じて計算した金額の合計額」と、「所得税を」とあるのは「所得税及び復興特別所得税を」と、同法第百七条第一項中「所得税」とあるのは「所得税及び復興特別所得税」と、同法第百十一条第四項中「計算した金額」とあるのは「計算した金額及び当該金額に百分の四を乗じて計算した金額の合計額」と、同法第百十四条第一項から第三項までの規定及び第百十五条中「所得税」とあるのは「所得税及び復興特別所得税」と読み替えるものとする。
3 第一項の規定による復興特別所得税及び所得税の納付があった場合においては、その納付額を同項の規定により併せて納付すべき復興特別所得税の額及び所得税の額に按 理 由 東日本大震災からの復興を図ることを目的として東日本大震災復興基本法第二条に定める基本理念に基づき平成二十三年度から平成二十七年度までの間において実施する施策に必要な財源を確保するための特別措置として、財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの国債整理基金特別会計への繰入れ並びに日本たばこ産業株式会社及び東京地下鉄株式会社の株式の所属替等の措置を講ずるとともに、復興特別所得税、復興特別法人税及び復興特別たばこ税を創設するほか、当該財源についての公債の発行に関する措置等を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。