第一六六回
衆第一七号
地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 教育機関
第一節 教育機関の設置等(第三条−第七条)
第二節 学校理事会(第八条)
第三章 教育監査委員会(第九条−第二十七条)
第四章 雑則(第二十八条−第三十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、地方公共団体による教育、学術及び文化(以下単に「教育」という。)に関する機関(以下「教育機関」という。)の設置並びに学校理事会、教育監査委員会等に関し必要な事項を定め、もって地方公共団体における教育行政の適正な運営の確保を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校をいう。
2 この法律において「教員」とは、教育公務員特例法(昭和二十四年法律第一号)第二条第二項に規定する教員をいう。
第二章 教育機関
第一節 教育機関の設置等
(教育機関の設置)
第三条 地方公共団体は、法律で定めるところにより、学校、図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置するほか、条例で、教育に関する専門的、技術的事項の研究又は教育関係職員の研修、保健若しくは福利厚生に関する施設その他の必要な教育機関を設置することができる。
(教育機関の職員)
第四条 前条に規定する学校に、法律で定めるところにより、学長、校長、園長、教員、事務職員、技術職員その他の所要の職員を置く。
2 前条に規定する学校以外の教育機関に、法律又は条例で定めるところにより、事務職員、技術職員その他の所要の職員を置く。
3 前二項に規定する職員の定数は、当該地方公共団体の条例で定めなければならない。ただし、臨時又は非常勤の職員については、この限りでない。
4 地方公共団体は、その設置する学校の職員の任用に当たっては、相互に連携協力するよう努めるものとする。
(教諭等が行う児童等に対する指導が不適切である場合の措置)
第五条 地方公共団体の長は、その設置する学校の教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭又は講師(以下この条において「教諭等」という。)が行う児童、生徒又は幼児に対する指導が不適切であると認められる場合には、当該教諭等について、研修の実施、教諭等以外の職への異動その他その者が引き続き当該児童、生徒又は幼児に対する不適切な指導を行うことがないようにするために必要な措置を講ずるものとする。
2 地方公共団体の長は、前項の措置のうち当該教諭等の教諭等以外の職への異動を行うに当たっては、公務の能率的な運営を確保する見地から、当該教諭等の適性、知識等について十分に考慮するものとする。
(所属職員の人事又は研修に関する意見の申出)
第六条 第三条に規定する学校その他の教育機関の長は、教育公務員特例法に特別の定めがある場合を除き、その所属の職員の任免その他の人事又は研修に関する意見を任命権者に対して申し出ることができる。この場合において、大学附置の学校の校長にあっては、学長を経由するものとする。
(学校等の管理)
第七条 地方公共団体の長は、法令又は条例に違反しない限度において、その設置する第三条に規定する学校その他の教育機関(大学を除く。以下この項において同じ。)の施設、設備、組織編制、教育課程、教材の取扱いその他同条に規定する学校その他の教育機関の管理運営の基本的事項について、必要な規則を定めるものとする。
2 前項の場合において、地方公共団体の長は、学校(大学を除く。第二十八条第三項及び第四項において同じ。)における教科書以外の教材の使用について、あらかじめ、地方公共団体の長に届け出させ、又は地方公共団体の長の承認を受けさせることとする定めを設けるものとする。
第二節 学校理事会
第八条 地方公共団体が設置する学校(大学及び高等専門学校を除く。以下この条において同じ。)には、当該学校の運営に関する重要事項を協議する機関として、学校理事会を置かなければならない。
2 学校理事会の構成員は、次に掲げる者(政令で定める規模以下の学校で地方公共団体の長が指定するものに置かれる学校理事会にあっては、第五号に掲げる者を除く。)について、地方公共団体の長が任命する。ただし、その過半数は、第一号及び第二号に掲げる者について任命しなければならない。
一 当該学校に在籍する児童、生徒又は幼児の保護者(親権を行う者及び未成年後見人をいう。第十三条第五項及び第六項において同じ。)
二 当該学校の所在する地域の住民
三 当該学校の校長
四 当該学校の教員
五 教育に関し専門的な知識又は経験を有する者
六 その他地方公共団体の長が必要と認める者
3 地方公共団体の長は、前項第一号、第二号及び第四号に掲げる者について、学校理事会の構成員を任命するに当たっては、これらの号に掲げる者に係る団体その他の関係者の意向を考慮するものとする。
4 校長は、当該学校の運営に関し当該地方公共団体の規則で定める事項について基本的な方針を作成し、学校理事会の承認を得なければならない。
5 前項に定めるもののほか、校長は、次に掲げる事項について、学校理事会の承認を得なければならない。
一 当該学校の教育課程
二 当該学校の職員に関し第六条の規定により校長が申し出る意見
三 その他当該地方公共団体の規則で定める事項
6 学校理事会は、当該学校の運営に関する事項について、校長に対して、報告を求めることができる。
7 学校理事会は、当該学校の運営に関する事項について、地方公共団体の長又は校長に対して、意見を述べることができる。
8 地方公共団体の長又は校長は、前項の規定により述べられた意見を尊重するものとする。
9 学校理事会の構成員の任免の手続及び任期、学校理事会の議事の手続その他学校理事会の運営に関し必要な事項については、当該地方公共団体の規則で定める。
第三章 教育監査委員会
(設置)
第九条 都道府県、市(特別区を含む。以下同じ。)町村及び教育に関する事務(大学及び私立学校に関する事務並びに宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)第八十七条の二に規定する第一号法定受託事務を除く。以下同じ。)の全部又は一部を処理する地方公共団体の組合に教育監査委員会(以下この章において「委員会」という。)を置く。
(権限)
第十条 委員会は、次に掲げる事務を処理する。
一 当該地方公共団体の長が処理する教育に関する事務の実施状況に関し必要な評価及び監視を行うこと。
二 前号の規定による評価又は監視(次条において「評価又は監視」という。)の結果に基づき、当該地方公共団体の長に対し、教育に関する事務の改善のために必要な勧告をすること。
三 当該地方公共団体の長が処理する教育に関する事務に係る苦情の申出について必要なあっせんを行うこと。
四 前三号に掲げるもののほか、法令に基づき委員会に属させられた事務
2 委員会は、前項第二号の規定による勧告をしたときは、遅滞なく、その勧告の内容を公表しなければならない。
3 当該地方公共団体の長は、第一項第二号の規定による勧告に基づいてとった措置について委員会に報告しなければならない。この場合においては、委員会は、当該報告に係る事項を公表しなければならない。
4 委員会は、毎年、その事務の処理状況を公表しなければならない。
(資料の提出の要求等)
第十一条 委員会は、評価又は監視を行うため必要な範囲において、当該地方公共団体の長に対し資料の提出及び説明を求め、又はその業務について実地に調査することができる。
2 委員会は、評価又は監視の実施上の必要により、公私の団体その他の関係者に対し、必要な資料の提出に関し、協力を求めることができる。
(組織)
第十二条 委員会は、五人以上(町村又は地方公共団体の組合のうち町村のみが加入するものの委員会にあっては、三人以上)で条例で定める人数の委員をもって組織する。
(委員及び補充員の選挙等)
第十三条 委員は、当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で、人格が高潔で、教育に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の議会においてこれを選挙する。
2 議会は、前項の規定による選挙を行う場合においては、同時に、同項に規定する者のうちから委員と同数の補充員を選挙しなければならない。補充員がすべてなくなったときも、同様とする。
3 委員中に欠員があるときは、委員長は、補充員のうちからこれを補欠する。その順序は、選挙の時が異なるときは選挙の前後により、選挙の時が同時であるときは得票数により、得票数が同じであるときはくじにより、これを定める。
4 次のいずれかに該当する者は、委員又は補充員となることができない。
一 破産者で復権を得ない者
二 禁錮 理 由 地方公共団体における教育行政の適正な運営の確保を図るため、地方公共団体による教育機関の設置及び学校理事会、教育監査委員会等に関し必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。