【医師水町 視線の先に】睡眠薬の罪と罰 名医の助言「起きているより早く寝たほうが勝ち」(1/2ページ)

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水町クリニックの水町重範総院長 (本人提供)

今宵は満月のはずだ。それも地球と月の距離が今年最も近くなり、いつもより大きな、そして明るく見える満月になるという。これをスーパームーンと呼ぶそうだ。その満月が我々の頭上を越して夜景を背に君臨するとき、闇夜に浮かぶはち切れんばかりの風船と化すのは、寝静まった漆黒の夜空にひっそりとたたずむホテルの夜影。ポツンポツンとなんの連携もなく脈絡もなく点在する明かりのともった部屋たち。あの部屋、この部屋、何の関係もない部屋の明かりが闇夜に灯る。それはまるで夢の中の生きざまと同じだ。

夢の中では知らない人同士が知り合ったり、訪れたこともない場所に居たり、亡くなった友人と語り合ったり、父や母と再会したり、そして夢の中で涙する。闇夜に浮かぶホテルの明かりは、まさに矛盾そのものである。おのおのの部屋でおのおのの人がその人生の夜を過ごしているのだろうか。おのおのの部屋の明かりは何の関係もなく輝いている。月は勝手に部屋を照らしている。昨日も今夜も明日の夜も。

私も年を取るにつれ簡単に眠れない夜もあり、また2〜3時間もすると目覚めてしまうことも稀ではなくなってきた。ある時は思いがけなく夜中に覚醒して誰かに電話することもあった。夢の中で歩いていたりすることもある。陋巷(ろうこう)にうそぶく孤高な男となり、一人さまよえる老医師となり、灰色の街を残照に照らされ歩く。時折甦る記憶、黄昏の街の扉を開けんとすると誰かが「そこは違うでしょ」と教えられる。真っすぐ歩けば自宅なのに、なぜか友人を今一度探したりする。約束していたはずだからと。いや違う、それは明日のことだと、まさにこれが「せん妄」なのであろう。普段慣れない眠剤を使うと思わぬ夢の中のドラマのような混沌がやってくることがある。

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