6月グランドオープンの神戸須磨シーワールド 地域とつながり、観光の新たな核に 神戸市西エリア、魅力拡大 内外からの集客期待
西日本で唯一、シャチと会える「神戸須磨シーワールド」(神戸市須磨区)。一帯の須磨海浜公園は6月1日のグランドオープンから連日、ファミリーやカップルでにぎわっています。神戸市の公募に応じたサンケイビルなど共同事業体が、市民の憩いの場と都市型リゾートを兼ね備えたエリアとして再整備したもので、神戸市西エリアの魅力度アップと観光集客の核として注目されています。神戸市経済観光局観光企画課の北川哲也課長に、今後の期待を聞きました。
にぎわい創出 市民、観光客が豊かな時間
―グランドオープンした須磨海浜公園の印象はいかがですか
神戸市立須磨海浜水族園の老朽化をきっかけに、須磨海浜公園エリア全体の魅力を向上させようと、2019年3月に市が事業者を公募しましたが、約5年間でグランドオープンを迎えることができ、うれしく思っています。白砂青松の雰囲気を残しつつ、新たな装いに生まれ変わり、市民、観光客が豊かな時間を過ごしているという印象です。
―神戸須磨シーワールドは連日、大変なにぎわいです
シャチのパフォーマンスはものすごい迫力ですね。西日本で唯一、シャチを見られる非常に貴重なスポットだと思います。西日本各地からシャチに会いに神戸にお越しいただけるとうれしいです。
一方、神戸市立須磨海浜水族園の生きものを引き継ぎ、市民が気楽に来ることができる「スマコレクション」という無料エリアも設けていただきました。大人も子供もワクワクできる場所になってよかったです。
年間パスポートの売れ行きがよい(約1万4000人分枚。一時販売中止)ということも、来館者の高評価の現れのひとつでしょう。神戸観光の大きな核になっていくと期待しています。
―まちづくりの面でも変化が感じられますか
昨年9月、にぎわい施設「松の杜ヴィレッジ」ができて、ガラッと変わりましたね。グランドオープン後はJR須磨海浜公園駅から神戸須磨シーワールドに向かうお客さんが絶えません。駅からのルート上にいくつかお店もできて、こちらもにぎわいにつながっています。
消費拡大へ、アイデアで滞在型観光を増やす
―神戸観光の現状と課題を教えてください
神戸市には、ウオーターフロント、北野異人館街、南京町、旧居留地といったエキゾチックなスポット、六甲山や有馬温泉、さらにスイーツ、神戸ビーフ、日本酒など、魅力的なコンテンツがたくさんあります。お客さまは近畿圏や中四国からの主に若い方々の日帰りが中心です。もちろん、日帰りでもお楽しみいただけますが、ご宿泊いただき、ゆっくりと満喫していただきたいとも思っています。
観光は食材、物流をはじめ、幅広い産業への経済波及効果が期待できることもあり、滞在型観光のお客さまが増えることも期待しています。
訪日外国人の神戸市への訪問率は3.98%で、台湾、中国、韓国の順に多いです。※(注記)1
2025年には観光消費額を3700億円(2019年 3272億円)、宿泊者数を日本人で590万人(2023年570万人)、外国人も100万人にする目標です。※(注記)2
滞在型観光を進めるために、夜に過ごしていただける場所を作ろうと、繁華街・三宮のバー、ライブハウスの経営者の方々と話し合ったりしています。神戸は昨年、初めてジャズが演奏されてから100年を迎えました。ジャズバーも神戸の夜の魅力ですね。
―神戸須磨シーワールドホテルのグランドオープンで、ゆっくり滞在できる魅力的なコンテンツが増えました
価値体験型ホテルならではと言えますがホテル内のドルフィンラグーンでイルカとふれあえるというのはすごいことです。水槽が置かれた客室はインパクトがあります。全室オーシャンビューの眺望も素晴らしく、滞在型観光を進めるうえで、非常にありがたい施設だと思います。
―観光で力を入れているエリアはありますか
六甲山です。新幹線の新神戸駅の裏側に山並みが連なっています。都会からこんなに近くに山があることは強みです。神戸は「近代登山発祥の地」ですし、PRに力をいれています。昨年7月には新神戸駅構内に市が民間に委託し、靴・グッズを販売、レンタルする登山サポート店「トレイルステーション神戸」をオープン。7000人以上に利用されています。企業から寄付や人的なサポートをいただき、登山道の整備も進めています。
須磨や垂水など西エリアも重要です。6月の神戸須磨シーワールドのグランドオープンに続き、11月には台風被害で休業していた「神戸市立須磨海づり公園」が再開され、垂水の「三井アウトレットパーク マリンピア神戸」がリニューアルオープンの予定です。
主な観光地が集まる三宮、元町などの東エリアにとどまっていた観光客が、西エリアにも流れていくと期待しています。
︎「西のゴールデンルート」の起点に
―神戸須磨シーワールドへの要望を聞かせてください
見込まれている年200万人の入場者を、いかに神戸のほかのスポットにつなげていくかが重要です。特に西エリアは、市も魅力をプロモーションしていきます。近隣施設と連携し、周遊を作っていく取り組みに期待したいですね。
水族館には教育施設の役割もあります。市内の小中学生は、年1回、一人500円で、市内の幼児(4〜6歳)は年一回無料で入場できるように、市は補助をさせていただいています。
神戸市立須磨海浜水族園の時代は館外学習もやっていました。オープン直後でスタッフも忙しいと思いますが、落ち着いたら館外の教育的活動にも力を入れてほしいと思っています。
―神戸須磨シーワールドのグランドオープンをきっかけに、たくさんの訪日客が神戸を訪れることが期待されますね
私たちもタイ、マレーシア、ベトナム、韓国、台湾など海外の旅行博に参加する際には、神戸須磨シーワールドや近隣のPRをしっかりやっています。
訪日客が東京から箱根、富士山、京都、大阪など周遊する「ゴールデンルート」は有名です。そこで、来年の大阪・関西万博で入場が見込まれている350万人の訪日客の流れを西にも向けようと、西日本の自治体などが「西のゴールデンルートアライアンス」をつくり戦略を練っています。
神戸はそのゲートウエイになります。シャチに会いに来られる訪日客が、神戸を楽しみ、中四国や九州へと足を伸ばし、西日本を満喫してほしいですね。
※(注記)2 数値目標は「神戸2025ビジョン」から
「スマスイ」の精神を継承 学びある「海への玄関口」に 生きものへの敬意と信頼を重視、イルカとふれあえるホテルも
中野良昭館長は、スマスイについて「『水族館へ行こう』とかしこまって訪れる場所でなく、近所の子供たちが気軽に歩いて来る。地域に愛された水族館だと感じた」と振り返る。一昨年2月に鴨川シーワールド(千葉県)からスマスイに園長として着任し、地域住民に愛されるアットホームさにほれこんだ。
西日本で唯一展示している大迫力のシャチ、華麗なイルカのパフォーマンスが満喫できることで知られるスマシー。「まだまだ未知の部分も多いシャチのすべてを知ってほしい。学びのうえでパフォーマンスを見れば、きっとまた違って見えてくるはず」と中野館長は訴える。
生きものに対する配慮も忘れていない。シャチやイルカが水中にいながら治療を受けられるよう、昇降床付きのメディカルプールも完備した。シャチなどの世界的な研究機関「神戸保全繁殖センター」も創設し、種の保存に取り組む。「動物に敬意を表し、健全な環境での飼育は不可欠」と中野館長。飼育の上でなにより大切にするのは、生きものとの信頼関係だ。
スマシーに併設されるオフィシャルホテル「神戸須磨シーワールドホテル」は全80室がオーシャンビュー。宿泊客がイルカとふれあえるプールも備え、観光で訪れるだけでなく、滞在しながら水生生物の生態を学べる「価値体験型ホテル」となっている。
提供:フジ・メディア・ホールディングス/サンケイビル