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国立大学法人佐賀大学の平成22年度に係る業務の実績に関する評価結果
1 全体評価
佐賀大学は、地域における高等教育の機会を保障することを使命とし、教養教育を人
間形成の中心的な役割を担う教育の根幹と位置づけ、学士課程から大学院博士課程まで
教養を体系的に身に付ける高等教育を目指している。第2期中期目標期間においては、
独自の教養教育システムを創出し、際立つ個性と豊かな知性・感性を身に付け、現代社
会の動向を的確に捉えてリーダーシップを発揮するプロフェッショナルの育成等を目標
としている。
この目標達成に向けて、学長のリーダーシップの下、
「佐賀大学学士力」に基づく3つ
の方針(学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受け入れの方針)を策定
するとともに、大学独自の教養教育システムの創出に向けた「全学教育機構」の設置を
決定するなど、
「法人の基本的な目標」に沿って計画的に取り組んでいることが認められ
る。
業務運営については、
「有明海をめぐる環境問題」について新たな研究を展開するため
に、既存センター等を統合し、低平地沿岸海域研究センターを設置して、専任教員8名
を含む 26 名を配置して研究推進体制を整備・強化している。
財務内容については、科学研究費補助金に採択された申請書の例示、申請書を査読す
る研究コーディネーターの委嘱等を実施した結果、科学研究費補助金の採択件数は 226
件(対前年度比 35 件増)
、採択金額は3億 8,279 万円(対前年度比 4,534 万円増)となっ
ている。
その他業務運営については、学長を本部長とする「情報戦略本部」を設置し、情報セ
キュリティ対策を含む情報化推進体制の強化を図っている。
教育研究等の質の向上については、大学独自に授業料免除特別枠を設け、後期授業料
の全額免除者、半額免除者を追加している。また、学長が理事等とともに佐賀県内 58 企
業、5つの商工会議所、1つの業界団体を訪問して各機関の代表者とトップ会談を行い、
地域ニーズとのマッチングのための取組課題を抽出するなど、産学連携の実質化の推進
に向けて取り組んでいる。
2 項目別評価
I.業務運営・財務内容等の状況
(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標
1組織運営の改善、2事務等の効率化・合理化
平成 22 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
しろまる 監事監査及び内部監査の指摘事項の改善を図る仕組みとして役員会指針「監査業務
の推進方針」、「監査業務及び指摘事項に関する法人の検討サイクル」を策定し、執行
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部(学長、企画担当理事、学長補佐)と監事との協議会の設置、拡大役員懇談会での
指摘事項についての問題認識の共有化、各理事室における検討と施策の実行を行って
いる。
しろまる 学長経費として、競争的資金に応募して不採択になったものの教育改革に必要不可
欠と判断した4事業に対して教育プロジェクト経費を配分するとともに、教育研究活
動等の評価結果に応じて各部局に対して「評価反映特別経費」を戦略的・効果的に配
分している。
しろまる 「有明海をめぐる環境問題」について新たな研究を展開するために、既存センター
等を統合し、低平地沿岸海域研究センターを設置して、専任教員8名を含む 26 名を配
置して研究推進体制を整備・強化しており、今後の研究成果が期待される。
【評定】 中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由) 年度計画の記載 15 事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認め
られ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。
(2)財務内容の改善に関する目標
1外部研究資金、寄附金その他の自己収入の増加、2経費の抑制、
3資産の運用管理の改善
平成 22 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
しろまる 科学研究費補助金に採択された申請書の例示、申請書を査読する研究コーディネー
ターの委嘱等を実施した結果、科学研究費補助金の採択件数は 226 件(対前年度比 35
件増)
、採択金額は3億 8,279 万円(対前年度比 4,534 万円増)となっている。
しろまる 保有資産を有効かつ効率的に活用するため、その必要性及び活用方法について見直
しを行い、課外活動施設(ボート艇庫)として使用していた土地については今後使用
見込がないことから処分(売却)することを決定している。
しろまる 財務諸表を中心に第1期中期目標期間における財務状況や年度推移の分析や同じグ
ループとの比較分析を行い、平成 23 年度予算編成における経営戦略において、安定し
た自己収入の確保、外部資金の獲得強化、研究経費比率の向上を掲げている。
しろまる 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に
人件費の削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研
究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由) 年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認め
られ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。
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(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標
1評価の充実、2情報公開や情報発信等の推進
平成 22 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
しろまる 「中期目標・中期計画進捗管理システム」を稼働させ、中期計画及び年度計画の進
捗状況管理と実績に関する根拠資料・データ等の収集の効率化を図っている。
しろまる 平成 22 年度末で時限を迎える地域学歴史文化研究センターの評価・検証を外部評価
員3名を含む5名で構成する評価部会で実施し、重点的研究領域としている「佐賀学」
の研究推進組織として、平成 27 年度まで地域学歴史文化研究センターを継続支援する
ことを決定している。
【評定】 中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認め
られ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。
(4)その他業務運営に関する重要目標
1施設設備の整備・活用等、2安全管理と環境、3情報基盤の強化、
4男女共同参画の推進、5法令遵守
平成 22 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
しろまる 校舎改修に伴い、自学自習室やコミュニケーションルーム等の共通スペースを創出
している。
しろまる ユニバーサルトイレや車いす用スロープの整備、身体障がい者に対応したエレベー
ター設置等、ユニバーサルデザインに基づいた整備を行っている。
しろまる 法令遵守の基本方針及び実施要領を策定するとともに、法令遵守実施計画を策定し
て大学内に周知している。
しろまる 学長を本部長とする「情報戦略本部」を設置し、情報セキュリティ対策を含む情報
化推進体制の強化を図っている。
しろまる 新入生に対しオリエンテーションや教養教育の大学入門科目において環境教育を実
施するとともに、教職員に対しては研修医オリエンテーションや新任職員研修等でエ
コアクション 21 に関する説明等を行い、環境に関する意識向上を図っている。
しろまる 東日本大震災における被災地支援については、災害派遣医療チーム(DMAT)を派
遣して医薬品・医療材料の提供や医療活動支援を実施するとともに、緊急支援物資の
提供を行っている。また、義援金の募集活動を開始するとともに、被災地域の学生に
対し、科目等履修生として無償で e-Learning 等による講義を提供する仕組みの整備や
附属図書館の利用を可能とすること等を実施している。
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【評定】 中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由) 年度計画の記載 10 事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は
「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘
案したことによる。
II.教育研究等の質の向上の状況
平成 22 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
しろまる 「佐賀大学学士力」に基づく3つの方針(学位授与の方針、教育課程編成・実施の
方針、入学者受け入れの方針)を策定している。
しろまる 「佐賀大学中長期ビジョン」及び「佐賀大学学士力」に沿った新たな全学教育シス
テムの構築に向けて全学教育機構設置準備室を設置している。
しろまる ラーニング・ポートフォリオ及びティーチング・ポートフォリオを用いた学習・教
育改善支援を推進する、ポートフォリオ学習支援統合システムを導入し、平成 23 年4
月からの稼働に向けて取り組んでいる。
しろまる 大学独自に授業料免除特別枠を設け、後期授業料の全額免除者、半額免除者を追加
している。
しろまる 保健管理センターが実施するメンタルスクリーニング調査によるハイリスク者の早
期発見と同時に、精神科医または臨床心理士による面接を行い、面接の結果を各学部
のチューター(担任)等にフィードバックするメンタルケアシステムの強化を図って
いる。
しろまる 「有明海をめぐる環境問題」の新たな研究を展開するため、低平地沿岸海域研究セ
ンターを設置し、地域・社会のニーズに応える研究推進体制を整備している。
しろまる 地域学歴史文化研究センターにおいては、佐賀県立図書館において幕末時の佐賀を
生きた人物の日記をテーマにした古文書講座を開講するなど、佐賀の歴史文化に根ざ
した研究活動・社会貢献活動を実施している。
しろまる 学長が理事等とともに佐賀県内 58 企業、5つの商工会議所、1つの業界団体を訪問
して各機関の代表者とトップ会談を行い、地域ニーズとのマッチングのための取組課
題を抽出するなど、産学連携の実質化の推進に向けて取り組んでいる。
しろまる 国際化の基本的な目標と戦略を構想するために、
「国際戦略構想検討委員会」を設置
し、全学的な取組の枠組みとなる方針、アクション等について検討を重ね、
「佐賀大学
国際戦略構想」として、6つの基本構想、7つの国際戦略を取りまとめており、今後、
基本構想、国際戦略に基づく取組が実施されることが期待される。
しろまる 国際パートナーシップや環黄海教育プログラムにより海外協定校から受け入れた学
生数は 34 名(対前年度比 21 名増)と大幅に増加しており、国際交流の推進を図って
いる。
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しろまる 文化教育学部と工学系研究科知能情報システム学専攻が共同して書字困難児対象の
漢字学習支援システムを開発し、漢字学習支援システムを活用できる体制を整えるな
ど、附属学校園を実験的・先導的に活用している。
共同利用・共同研究拠点関係
しろまる 海洋エネルギー研究センターは、
「共同利用・共同研究拠点」に認定され、当該研究
分野の中核拠点として、共同利用・共同研究の取組を設置大学の重点的な支援を受け
て推進している。また、重点的な人員配置の取組として、学長裁量経費による新たな
教員配置や、非常勤研究員5名及び研究支援推進員1名を配置するなど、運営・支援
体制の強化を図っている。
附属病院関係
(教育・研究面)
しろまる 佐賀県地域医療再生計画により、地域医療支援学講座を開設し、医師不足分野の医
師の採用・派遣や臨床研究の推進を実施している。
(診療面)
しろまる 感染制御部に専任医師3名を配置するとともに、
感染制御チームによる病棟等の ICT
ラウンドを開始するなど、医療安全の向上に努めている。
(運営面)
しろまる 独自に開発した「佐賀大学方式管理会計システム(Sagacious)
」の導入により、病
院経営指標の多くが改善され、平成 21 年度と比較して大幅な増収及び医療費率の削減
を達成している。
しろまる 医師のみならず、看護師、医療技術職員、事務職員に対するインセンティブを導入
し、職員のモチベーションを高めている。

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