1 全体評価
佐賀大学は、これまでに培った文、教、経、理、医、工、農等の諸分野にわたる教育
研究を礎にし、豊かな自然溢れる風土や諸国との交流を通して育んできた独自の文化や
伝統を背景に、地域と共に未来に向けて発展し続ける大学を目指し教育研究を行ってい
る。
特に、平成 19 年度は、大学憲章に沿った将来の目指すべき大学像「佐賀大学中長期ビ
ジョン」を策定するとともに、各学部において、
「佐賀大学中長期ビジョン」の策定に並
行して、佐賀大学の目指すべき教育研究体制の構想に沿って検討を進め、10 年後の各学
部の将来構想をまとめている。また、平成 18 年度の評価委員会の評価結果を踏まえ、部
局評価及び個人評価の結果を活用するために、
「評価結果の活用に関する指針」及び「評
価結果の活用に関する要項」を定め、役員会の検証結果を基に改善の勧告やインセンテ
ィブの付与を行える仕組みを構築するなど、課題に取り組んでいる。今後、部局評価及
び個人評価の結果を大学全体の改善に反映するシステムを実際に機能させることや、文
系の組織改革を実際に進めていくことが期待される。
一方、科学研究費補助金の応募申請を行い不採択となった者に学内経費を効果的に配
分し、申請件数の増加を図る取組を行っているものの、申請件数が大幅に減少している
ことから、取組に遅れが見られ、今後、早急な対応が求められる。
この他、財務内容については、環境に配慮した取組として、光熱水料等の削減目標を
設定し、達成に向けて取り組んだ結果、平成 18 年度と比較して1%以上の経費削減を達
成しているとともに、環境省策定の環境マネジメントシステム「エコアクション 21」の
全学的な認証を取得している。
教育研究の質の向上については、
「オフィスアワー開設要項」に基づき、ほぼ全教員の
オフィスアワー設定情報をシラバス及びウェブサイトに公表している。また、キャリア
センターを設置し、各学部から併任教員を配置することにより各学部との連携を密にし
て就職支援体制を強化しており、今後の成果が期待される。
2 項目別評価
I.業務運営・財務内容等の状況
(1)業務運営の改善及び効率化
1 運営体制の改善
2 教育研究組織の見直し
3 教職員の人事の適正化
4 事務等の効率化・合理化
平成 19 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
○しろまる 教職員の人事評価システムについては、すべての教職員を対象に人事評価の試行を
行い、検討課題を確認するとともに、各部局の意見を聴取し、必要に応じてシステム
の見直しを行っており、
平成 20 年度の本格実施に向けて準備が進められている。
今後、
本格実施と処遇への反映につなげていくことが期待される。
○しろまる 大学憲章に沿った将来の目指すべき大学像「佐賀大学中長期ビジョン」を策定し、
各学部において、
「佐賀大学中長期ビジョン」の策定に並行して、佐賀大学の目指すべ
き教育研究体制の構想に沿って検討を進め、10 年後の各学部の将来構想をまとめてい
る。
○しろまる 学長管理定数の4名分を活用し、学長のリーダーシップの下に任期を定めて雇用す
る教員を配置する制度、及び特定の研究プロジェクト等に任期付きの特別研究員を配
置する制度を定め、平成 20 年度採用分について募集が行われている。
○しろまる 事務業務及び事務組織の改善を図るため、新たに業務改善等検討会議を立ち上げ、
現行の縦割りの「係体制」の廃止による業務組織のフラット化等、事務組織の整備計
画をまとめている。
○しろまる 事務部の各課等が自ら業務の改善に組織的に取り組み、事務等の効率化・合理化・
省力化を図ることを目的として「1課1改善」の取組を行った結果、取組期間内にコ
ピー用紙約4万枚、複写機使用料金約 143 万円等の節減効果が得られている。
○しろまる ペーパーレス会議システムとテレビ会議システムとの連動により、本庄キャンパス
と鍋島キャンパス間のペーパーレス電子会議システムを構築し、キャンパス間の移動
等の会議に係る負担の軽減が図られている。
○しろまる 地元報道機関との懇談会で、定期的に意見を聞く機会を設け、出された意見は、役
員会が中心となって迅速に対応し、大学経営に反映する体制を構築している。
○しろまる 平成 18 年度評価結果で評価委員会が課題として指摘した事項については、
・ 部局評価及び個人評価の結果を活用するために、
「評価結果の活用に関する指針」
及び「評価結果の活用に関する要項」を定め、部局及び個人の活動状況を役員会が
検証し、検証結果を基に改善の勧告やインセンティブの付与を行える仕組みが構築
されている
・ 大学運営連絡会及び部局長懇談会・研究科長懇談会において改革の方向性につい
て総合的に検討し、将来構想「佐賀大学中長期ビジョン」の中で、文系の組織改革
の方向性が定められている
・ 柔軟な組織編制が可能となるシステムの確立に向けて、8つのセンター等につい
て時限の設定や再編・統合に関する基本案が策定されている
など指摘に対する取組が行われている。今後、部局評価及び個人評価の結果を大学全
体の改善に反映するシステムを実際に機能させることや、文系の組織改革を実際に進
めていくことが期待される。
【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由)年度計画の記載 44 事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、
上記の状況等を総合的に勘案したことによる。
(2)財務内容の改善
1 外部研究資金その他の自己収入の増加
2 経費の抑制
3 資産の運用管理の改善
平成 19 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
○しろまる 環境に配慮した取組として、光熱水料等、経費削減が可能な経費について削減目標
を設定し、達成に向けて取り組んだ結果、光熱水料について平成 18 年度と比較して1
%以上の経費削減を達成しており、環境省策定の環境マネジメントシステム「エコア
クション 21」を受審し、全学的な認証を取得している。
○しろまる 教育プログラムや研究プロジェクトの創成と競争的資金への申請を促進するため、
競争的資金対策室において、全学的な資金獲得体制を整備するとともに、様々な競争
的資金の公募内容やリンク先等の概要を「競争的資金対策室公募情報」として学内の
研究者にメールを配信している。
○しろまる 将来性のある研究チームの重点育成を図るためのインセンティブ付与措置として、
「優秀科学技術研究賞」及び「優秀芸術文化賞、社会文化賞、学術賞」を創設し、各
賞1名に研究費を授与している。
○しろまる 体育施設や講義室等の施設の使用者に対し、利用促進のための案内文書を発送する
とともに、アンケート調査により利用促進のための改善策を策定した。また、ウェブ
サイトの「施設利用のご案内」を充実し、利用促進を促している。
○しろまる 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に
人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究
の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
平成 19 年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。
【法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項】
○しろまる 年度計画【221-01】
「科学研究費補助金の申請件数の増加を促進させる具体的方策を
実行する」
(実績報告書 39 頁)については、科学研究費補助金の応募申請を行い不採
択となった者に学内経費を効果的に配分し、申請件数の増加を図る取組を行っている
ものの、申請件数が大幅に減少していることから、年度計画を十分には実施していな
いものと認められる。
【評定】中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている
(理由)年度計画の記載7事項中6事項が「年度計画を十分に実施している」と認め
られるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、
上記の状況等を総合的に勘案したことによる。
(3)自己点検・評価及び情報提供
1 評価の充実
2 情報公開等の推進
平成 19 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
○しろまる 佐賀大学の持つ研究成果を広く世間に知ってもらう目的で、「佐賀大学研究シーズ
100」と題して、東京と佐賀で市民向けの公開発表会を実施している。
○しろまる すべての教員に関する教育研究業績、社会国際貢献活動等の情報を掲載した「教員
基礎情報データベース」を構築し、ウェブサイト上で公開している。
○しろまる 外部資金獲得状況、財務情報、自己点検・評価等の情報や入学・就職等の基本情報
について、ウェブサイト等を通して迅速に発信し、情報公開の促進を図っている。
【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由)年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認めら
れ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。
(4)その他業務運営に関する重要事項
1 施設設備の整備・活用等
2 安全管理
平成 19 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
○しろまる 施設等の維持管理体制を確立するため、設備機器等の更新年次計画を策定するとと
もに建物の中期的修繕計画を策定し、計画に基づき工事を実施している。
○しろまる 若手教員等が安全で効果的に教育研究に専念できるスペースを確保するため、
「佐賀
大学における施設等の有効活用に関する指針」を改訂している。
○しろまる 医学部鍋島地区施設整備計画ワーキンググループにおいて、鍋島キャンパスにおけ
る施設整備マスタープランを策定している。
○しろまる 医学部附属病院再開発計画委員会において附属病院再開発基本方針を策定している。
○しろまる 安全教育を推進するために、4 S(整理、整頓、清潔、清掃)運動を実施している。
○しろまる 「佐賀大学情報セキュリティ対策及び不正アクセス防止に関する規程」及び「佐賀
大学キャンパス情報ネットワークへの端末設置規程」を策定している。
○しろまる 研究費の不正使用防止のため、平成 18 年度に制定した研究費不正使用防止規則の運
用をさらに徹底し、
「研究費不正防止計画」並びに「研究費不正防止計画運用ガイドラ
イン」を策定、
「研究費不正防止計画推進委員会」の設置、
「研究費不正使用防止責任
体系図」の作成等、体制、ルールの整備を行っている。
【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由)年度計画の記載 14 事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年
度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したこ
とによる。
II.教育研究等の質の向上の状況
評価委員会が平成 19 年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事
項が注目される。
○しろまる 産学官連携推進機構を中心に教育研究により創出された知的財産の権利化及び技術
移転を推進するとともに、外国出願及び企業等との共同出願の取り扱いに関するルー
ルを策定し、より戦略的な知的財産の管理を行っている。また、策定したルールにつ
いては、産学官連携推進機構ウェブサイトに掲載することで学内外への周知を行って
いる。
○しろまる e-ラーニング科目の増設を行うとともに、本庄・鍋島2キャンパスを結んだインタ
ーネット遠隔授業の実施体制を整備している。
○しろまる 「佐賀大学における成績評定平均値に関する規程」に基づき、
「GPA を用いた学習
指導計画」を定め、グレード・ポイント・アベレージ(GPA)の活用体制を整備して
いる。
○しろまる 研究科横断的な地球環境科学特別コース及び戦略的国際人材育成プログラムを創設
し、留学生を含めた国際的大学院教育の充実を図っている。
○しろまる 平成 18 年度に策定した「チューター(担任)制度に関する実施要項」に基づき、チ
ューター制度の導入を全学部に拡充し、新入生に実施している。
○しろまる 「オフィスアワー開設要項」に基づき、ほぼ全教員のオフィスアワー設定情報をシ
ラバス及びウェブサイトに公表している。
○しろまる 保健管理センターとチューター(担任)との連絡を密にとる体制を整え、メンタル
な問題を抱えた学生に対する学生支援を強化している。
○しろまる 障害のある学生の意見を基に、聴覚障害学生のノートテイク支援の整備、障害のあ
る学生に対するカリキュラムの一部個別対応等を行っている。
○しろまる キャリアセンターを設置し、各学部から併任教員を配置することにより各学部との
連携を密にして就職支援体制を強化している。
○しろまる 学長経費「運用定員経費」により、重点研究プロジェクトや研究センターに、任期
制の教員、
「ポストドクター雇用経費」により非常勤博士研究員、非常勤研究員等を配
置し先端研究を支援している。
○しろまる 「地域創成型学生参画教育プログラム」による地域連携・貢献型教育の推進と成果
を取りまとめ、テキストを刊行している。
○しろまる 地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム「県民医療アカデミ
ーオブ e-JAPAN」により、地域医療教育推進の基盤整備、認知症高齢者支援、在宅医
療・緩和ケア、へき地医療ネットワークの構築等が図られている。
○しろまる 国際貢献推進室が中心となって、タイのモンクット王ラカバン工科大学との大学間
学術交流協定の締結、ハノイ国家大学とのツイニング・プログラム、タイのアジア工科
大学とのデュアル・ディグリー・プログラム及び台湾の輔仁カトリック大学とのデュ
アル・ディグリー・プログラムの実施に向けての協議を行い、中国華東師範大学外国
語学院日本語学科との教員・学生の相互派遣と相互単位認定の実施等、大学間の国際学
術交流を推進する取組が行われている。
(全国共同利用関係)
○しろまる 海洋エネルギー研究センターは、新たに全国共同利用の研究施設となり、研究者コ
ミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施して
いる。また、大学として全国共同利用を推進するため、学長裁量経費から設備費 1,113
万円を措置し、海洋温度差発電装置への発電機の搭載が行われている。
(附属病院関係)
○しろまる 地方大学病院で卒後臨床研修医が激減している中で、きめ細かい臨床研修プログラ
ム等の改善・充実に努め、研修医の確保を図っている。また、県、地域の医療施設と
の連携を強め、救急医療、感染症等、社会的・地域的ニーズに迅速に対応している。
今後、診療部門における経営の効率化の進捗状況を的確に把握し、収支の改善に向
けた更なる取組が期待される。
○しろまる 教育・研究面
・ 学生、研修医、指導医の意見を聞きながら臨床研修プログラムを改善し、説明会
を開催したことにより、平成 20 年度採用予定者が 51 名と平成 19 年度より 14 名増
加している。
・ 文部科学省事業
「地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム」
に採択された「県民医療アカデミーオブ e-JAPAN」により、県・保健医療関連諸団
体と共に、糖尿病、高度運動機能障害、認知症、離島医療、原発災害の被爆医療等
について、地域連携活動を活性化し、地域医療従事者も含めた質の高い医療人育成
に努めている。
・ 和式生活に対応する人工関節、難治性の完全脱臼股関節の新たな手術法、MRI(3
T)による心血管病診断法の開発等、先進医療に繋がる多くの臨床研究の成果を挙げ
ている。
○しろまる 診療面
・ 救命救急センターの運営・診療に、救急医学講座とともに危機管理医学講座が参
加し、診療機能とともに、臨床教育を充実させている。
・ 感染症治療専門チームの活動に続いて、感染制御部を設立し、感染症に関する教
育と診療を充実させている。
・ 検査部に遺伝子診断を専門とする検査部門を設け、さらに遺伝子診断を含む遺伝
相談を支援するため、遺伝カウンセリング室を設置し遺伝子診断体制の充実を図っ
ている。
・ 患者の利便性の向上を図るため、メディカルソーシャルワーカーを増員し、相談
件数の増加と相談内容の多様化に対応している。
○しろまる 運営面
・ 診療科毎の病床稼働率、平均在院日数、診療単価、収益率等を算出し、それを基
に診療科の病床数を調整するなど、病院運営の改善に努めている。
・ 電子クリティカルパス、
病院管理会計システム等の経営効率化システムを導入し、
経営分析に基づく収支改善に努めている。
・ 病院スタッフによる教育講演会や地域の高齢者医療ネットワーク会議、医療保険
や在宅・緩和医療に関する会議等を通じて、地域医療機関や介護施設関係者との連
携を深めている。