佐賀大学海洋エネルギー研究センター

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6.海洋エネルギー研究センター
I 海洋エネルギー研究センターの研究目的と特徴・・・6-2
II 分析項目ごとの水準の判断 ・・・・・・・・・・・6-5
分析項目I 研究活動の状況 ・・・・・・・・・・6-5
分析項目II 研究成果の状況 ・・・・・・・・・・6-10
III 質の向上度の判断 ・・・・・・・・・・・・・・・6-11
佐賀大学海洋エネルギー研究センター
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I 海洋エネルギー研究センターの研究目的と特徴
1.目 的
海洋エネルギー研究センターは,平成 14 年度に学内共同教育研究施設として設置,平
成 17 年度に試行的に全国共同利用施設に改組され,平成 19 年度から正式に全国共同利用
施設として運用を開始している。当センターの目的は,海洋エネルギーに関する研究・教
育と関連する科学技術の開発を戦略的に推進する国際的な先導的中核研究拠点として,海
洋エネルギーに関する研究・教育を総合的かつ学術的に行い,その研究基盤を確立すると
ともにその利用促進に貢献することにより,地球規模でのエネルギー問題と環境問題の解
決に寄与することである。
また,当センターは,全国の研究者や学協会等からの海洋エネルギーに関する要望に対
応して,研究施設及び設備を開放し,国内外の研究者とともに,我が国の海洋エネルギー
の学術研究を推進することを目的とする全国共同利用施設である。
2.特 徴
研究は,
『I 基幹部門』と『II 利用・開発部門』の2部門で遂行し, 基礎から応用ま
での研究を学際的に取り組むことを特徴としている。
各部門は,
次の分野から構成される。
機構図【出典:平成19年度研究活動状況調査(文部科学省提出)】【各部門の主な目的】
基 幹 部 門:海洋エネルギーを創造するための基礎的,応用的研究
利用・開発部門:海洋エネルギーの利用等に関する研究・開発
しろまる 基幹部門
基幹部門の海洋温度差エネルギー分野は,本学において約 30 年間,海洋温度差発電の
基礎と応用に関する研究・教育を行い,我が国唯一の海洋温度差発電に関する中核的な
研究施設として,これまで下記のような特徴を持って,実績を積んでいる。
1 全国で唯一の海洋温度差発電実験研究装置を有し,海洋温度差発電に関する学術
海洋温度差エネルギーシステム分野
海洋エネルギー研究センター
基幹部門
海洋流体エネルギーシステム分野
センター長
海洋エネルギーシステム分野
海洋エネルギー物質創生分野
利用・開発部門
海水淡水化分野
海洋エネルギー環境情報分野
海洋深層水利用科学技術分野
海洋エネルギー利用推進分野
佐賀大学海洋エネルギー研究センター
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研究で多く学術論文を発表している。これまでの研究活動に対して,
「愛・地球賞」
を受賞している。
2 インドやパラオ共和国などと,学術協定などを締結し,海洋温度差発電に関する
研究・教育で国際的な連携を推進している。他に,台湾や韓国,スリランカなどと
学術的な交流を行っている。
3 海洋温度差発電に関する特許を 10 数件有し,平成 11 年度に国立大学で初めて特
許の専用実施権を入札によって民間に設定し,これまでにイニシャルペイメントや
ロイヤリティーで総額約 36,000 千円の収入を得ている。なお,法人化以降4年間
で約 2,214 千円の収入である。
基幹部門に平成 17 年度に新設された海洋流体エネルギー分野では,
波力発電システム
の開発を中心に行っている。浮体式の振動水柱型波力発電装置"後ろ曲げダクトブイ"
の実用化を目指して,造波水槽での模型実験や数値シミュレーションによる高効率浮体
の開発,高い変換効率と低速化を実現する新型の衝動型空気タービンの開発を行ってい
る。洋上設置のために必要な低動揺の浮体構造物の開発も行っている。
しろまる 利用・開発部門
海洋に賦存する有用資源の回収やエネルギー貯蔵または,海水淡水化や深層水の利用
科 学 技 術 な ど 幅 広 い 研 究 ・教 育 に 取 り 組 ん で い る 。 利 用 ・ 開 発 部 門 の 研 究 は , 基 幹 部 門
と連携しながら基礎からその応用までの多岐に亘って行われている。学術論文も基礎か
ら応用分野まで広範囲で,非常に多くの研究発表がなされている。このような中で,3
件の学術賞を受賞している。
上記2部門での主要なテーマは,以下の表に示すとおりである。基幹部門
しろまる 海洋温度差発電システムのトータル性能の高度化
しろまる 海洋温度差発電システムの構成機器の性能向上,特に,蒸発器,凝縮器,
タービンなど
しろまる 高効率波力発電装置の開発
しろまる 海洋エネルギー施設の設置基盤としての低動揺・安定浮体構造物の開発利用・開発部門しろまる 海洋温度差発電の複合利用としての高度化(淡水化,水素製造,リチウム
回収,海洋牧場など)
しろまる 海洋エネルギーの水素を利用したエネルギー貯蔵
しろまる 海洋環境の評価と保全
しろまる 海洋資源の回収
地域との連携
特に,佐賀県や伊万里市との連携の強化を,長年,図っている。平成 14 年には,知的
基盤形成と新産業創出に関する協定を伊万里市と締結した。実績の一例としては,地方財
政再建促進特別措置法に拠り,当センターの用地借料は無償となっている。さらに,平成
15 年 11 月に構造改革特区として『伊万里サステイナブル・フロンティア知的特区』が認
められ,海洋温度差発電等の研究推進のため,電気事業法等に関する規制緩和がなされ,
新産業の創出や知的財産の構築が見込まれている。
国際貢献
海 洋 エ ネ ル ギ ー の 創 造 と そ の 利 用 技 術 に 関 す る 国 際 的 な 先 導 的 学 術 研 究 拠 点 を 目 指 し ,
佐賀大学海洋エネルギー研究センター
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海外の関連機関との連携強化を図っている。特に,東アジア地域の海洋エネルギーに関す
る学術研究の推進を目的として,日中韓(中国:大連理工大学,韓国:釜慶大学)の研究
者による研究者ネットワークを構築し,その中核的役割を担っている。また,海洋エネル
ギーに関する若手研究者の人材育成セミナーは毎年行い,6年間(国際的には3年間)継
続中である。さらに,海洋エネルギーに関する我が国の代表機関として平成 17 年より IEA
(国際エネルギー機関)と連携し,本学術分野の研究推進と世界的諸問題の解決に寄与し
ている。
[想定する関係者とその期待]
全国共同利用のユーザーである国内外の大学・研究所・国・地元自治体等の研究者・技
術者等,研究センターで研究活動を行っている大学院生等が挙げられる。
これらの関係者に対して,海洋エネルギーに関する研究・教育と関連する科学技術の開
発を戦略的に推進するための国際的中核研究拠点を形成すること,全国共同利用施設とし
ての施設・設備やサービスを充実させることが期待されている。また,センターが海洋エ
ネルギーに関する研究・教育を総合的かつ学術的に推進し,その利用促進に貢献するとい
う期待も受けている。
佐賀大学海洋エネルギー研究センター 分析項目I
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II 分析項目ごとの水準の判断
分析項目I 研究活動の状況
(1)観点ごとの分析
観点I-1 研究活動の実施状況
(観点に係る状況) 海洋エネルギー研究センターは,設置目的である海洋エネルギーの
創成とその応用に関する研究・教育を推進している。
分野ごとの研究活動の状況は,以下のように示されるとおりである。
・ 基幹部門
海洋温度差発電分野:原著論文を平均的に約6編/年(2.2 編/(年・人)),また総説
や一般講演も平均的なレベル以上成果を公表している。
環境分野の国際的な賞「愛・地球賞」を受賞している。
海洋流体エネルギー分野:本格的な研究活動は,平成 17 年度から開始されたことを考
慮すると,原著論文を平均的に4編/年(1.4 編/(年・人)),また総説や一般講演も平
均的なレベルで公表している。
・ 利用・開発部門
この分野の研究成果は,著書,原著論文,一般講演のいずれにおいても驚異的で活発に
公表されている。
国際的な論文賞1件を含め3件の学術賞を受賞している。
・ 併任教員の活動
広 範 囲 に 亘 っ て 海 洋 エ ネ ル ギ ー に つ い て の 研 究 が 連 携 し て 進 め ら れ , 著 書 , 原 著 論 文 ,
一般講演のいずれにおいても活発な研究活動を行い,非常に多くの成果を公表している。
専任教員 10 名によって公表された原著論文は,4年間で日本語 53 編,英語 120 編の合
計 173 編となっている。また,特に,優れた原著論文が3編となっている.専任教員一人
当たり 4.33 編/年となっている。
英語の原著論文発表数が,日本語の原著論文よりも 3-4 倍程度となっており,国際的に
広く研究成果を公表している。また,一般講演においても,積極的に英語での論文発表を
行っている。
研究活動の水準は,国際的に広く活躍している状況にある。ただ,海洋温度差分野の研
究内容は多少実用化に向けた応用的な研究に偏っている傾向が見られ,今後は,基礎的な
研究テーマも重点的に進める必要がある。センター全体の活動状況は,概ね妥当な水準に
ある。
4年間での専任教員一人当たりの原著論文の発表数は 4.3 編/年である。
国際的セミナーを平成 16 年から4年間で1回主催,2回共催している。平成 19 年9月
のセミナー"Ocean Energy Symposium 2007 & International Seminar on Ocean Energy"
では,台湾および韓国での海洋温度差発電や海洋流体エネルギー利用に関する現状につい
ての講演を開催した。
平成 19 年8月には,韓国釜慶大学と水産大学校と共同で,海洋エネルギーの有効利用
に関する研究セミナーを行った。このセミナーは,3大学の持ち回りで,夏期休業中に実
施されている。セミナーには,多くの大学院生が参加し,海洋エネルギーに関する研究成
果や活動状況の情報交換が行われている。
佐賀大学海洋エネルギー研究センター 分析項目I
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研究実績集計(専任3名・基幹部門/海洋温度差発電分野)
研究実績集計(専任3名・基幹部門/海洋流体エネルギー分野)
著書 原著論文(査読有) 総説 一般講演
日本語 英 語 日本語 英 語 日本語 英 語 日本語 英語
平成 16 年度 - - - - - - - -
平成 17 年度 1 0 1 0 0 0 0 0
平成 18 年度 0 0 0 1 0 0 2 0
平成 19 年度 1 0 4 6 3 0 4 2
合 計 2 0 5 7 3 0 6 2
* 平成 17 年度から専任を配置
研究実績集計(専任4名・利用・開発部門)
著書 原著論文(査読有) 総説 一般講演
日本語 英語 日本語 英 語 日本語 英 語 日本語 英語
平成 16 年度 1 0 3 23 0 0 53 46
平成 17 年度 1 0 8 26 1 0 47 65
平成 18 年度 2 0 12 36 0 0 53 43
平成 19 年度 0 1 6 21 0 0 38 36
合 計 4 1 29 106 1 0 191 190
* 平成 18 年度から専任4名(理工学部から2名を配置換)
* 平成 16,17 年度は理工学部での実績と一部重複する
研究実績集計(併任9名)
著書 原著論文(査読有) 総説 一般講演
日本語 英語 日本語 英 語 日本語 英 語 日本語 英語
平成 16 年度 3 2 5 43 0 0 56 16
平成 17 年度 5 0 6 30 2 0 62 23
平成 18 年度 8 2 6 48 1 0 32 22
平成 19 年度 2 3 6 37 3 1 44 31
合 計 18 7 23 158 6 1 194 92
* 所属する学部での実績と重複する
外部資金及び研究員等の受け入れ状況
・ 科学研究費補助金:採択率が年々上昇し,受入額も増加している。4年間で 8,900 千
円の研究費を得た。
・ 21 世紀 COE プログラム:平成 14 年度に採択され,16-18 年の3年間で総額 151,841
千円の研究費を得た。
・ 共同研究:国内の民間企業と4年間で 24 件の共同研究を実施し,総額 74,695 千円の
研究費を得た。
・ 受託研究:民間企業を含むいろいろな団体から4年間で 11 件の受託研究を実施し,総
額 37,742 千円の研究費を得た。
著書 原著論文(査読有) 総説 一般講演
日本語 英語 日本語 英 語 日本語 英 語 日本語 英語
平成 16 年度 0 0 3 1 0 0 3 1
平成 17 年度 0 0 10 0 0 0 1 8
平成 18 年度 0 0 2 2 0 0 7 22
平成 19 年度 1 0 4 4 1 0 8 4
合 計 1 0 19 7 1 0 19 35
佐賀大学海洋エネルギー研究センター 分析項目I
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・ 奨学寄付金:4年間で 17 件,総額 13,971 千円の寄附金を受けている。
外部資金の受け入れ状態を分析すると科学研究費補助金の受入れは,海洋流体分野や利
用応用分野となっているが,一方,共同研究は,主に海洋温度差発電分野となっている。
これは,研究内容と関連しているためである。
4年間の外部資金の総受入額は,287,149 千円となっている.21 世紀 COE プログラムで
の額を除いた総額は,135,308 千円(専任教員一人当り,約 340 万円/年)となっている。
特記事項として,21 世紀 COE プログラムや大学運営経費などの支援をうけて,4年間に
延べ 23 名の非常勤研究員を採用している。
産業財産権・特許(データベース調査表6-1)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
産業財産権の保有件数 28 23 27 25
出 願 数 0 3 3 1特許 取 得 数 5 3 1 0
件 数 0 0 2 0
ライセン
ス契約 収入(千円) 0 324 1,350 0
科学研究費補助金(データベース調査表6-2)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
申請件数 3 12 10 6
採択件数 0 0 2 2
金額(千円) 0 0 4,600 4,810新規
採択率(%) 0 0 20 34
件 数 0 0 1 2継続 金額(千円) 0 0 1,300 1,690
件 数 0 0 3 4計金額(千円) 0 0 5,900 6,500
*間接経費含む
競争的外部資金(データベース調査表6-3)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
21世紀COE
プログラム
0 54,000 1 48,000 1 49,841 0 0
*18年度は,間接経費を含む。
(COE経費と学内措置による非常勤研究員)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
人数 10人 9人 11人 2人
*延べ人数
共同研究(データベース調査表6-4)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
国内企業 7 19,830 4 13,860 5 16,860 8 24,145
佐賀大学海洋エネルギー研究センター 分析項目I
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共同研究員(データベース調査表6-4)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
国内企業 5人 4人 4人 3人
受託研究(データベース調査表6-4)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
国内企業 0 0 0 0 1 9,609 1 1,479
独立行政法人 0 0 0 0 0 0 1 3,809
その他公益法人等 0 0 3 4,545 1 800 1 500
地方公共団体 0 0 0 0 0 0 1 5,000
その他 0 0 0 0 1 6,000 1 6,000
合計 0 0 3 4,545 3 16,409 5 16,788
寄附金(データベース調査表6-5)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
計 2 1,100 4 2,981 3 3,250 8 6,640
観点I-2 共同利用・共同研究の実施状況
(観点に係る状況)
(1) 平成 17,18 年度は,全国共同利用の事業を試行的に行い,平成 19 年度から正式に全
国共同利用施設となった。試行期間中,研究体制と支援体制は,より充実が必要である
ことが認識された。その結果,センター専任教員の充実が図られ,平成 17 年の 16 人体
制から,平成 18 年から 19 人体制に充実した。
(専任 10 名,併任9名)
10 名の専任教員により,基幹部門では海洋温度差発電分野3名及び海洋流体分野3名
の計6名,また,利用・開発部門では4名で運営され,概ね順調に運営・機能している。
年 度 教授 准教授 講師 助教 小計 非常勤研究員* 合計
平成 16 年度(1)0 3 1 0(1)4 10(1)14
平成 17 年度(9)1(1)5 0 0(10)6 9(10)15
平成 18 年度(8)3(1)5 0 2(9)10 11(9)21
平成 19 年度(8)3(1)5 0 2(9)10 2(9)12
カッコ書きは併任教員で外数
* 非常勤研究員は延べ人数
(2) 研究募集は,年度ごとに共同研究A及び特定研究(海洋温度差発電,波力発電関連の
研 究 に 特 化 )
, 並 び に 随 時 受 け 入 れ の 共 同 研 究 B の 3 種 類 に 分 け , セ ン タ ー の 方 針 に 沿
った研究と海洋エネルギー関連の全般にわたっての研究とに分類し,研究の方向付けを
明確化した。実施状況は次のとおりである(特定研究:平成 18 年度から実施)。平成 17 年度実績:採択件数 25 件(共同研究A 17 件,共同研究B 8件)
平成 18 年度実績:採択件数 43 件(共同研究A 26 件,共同研究B 8件,特定 9件)
佐賀大学海洋エネルギー研究センター 分析項目I
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平成 19 年度実績:採択件数 34 件(共同研究A 20 件,共同研究B 7件,特定 7件)
共同研究の実施状況は,概ね適正な受入数である。年平均概ね 30 件の共同研究を受
け入れており,専任教員 10 名としては,多い方である。
(3) 研究課題ごとに,研究内容に関連する専任教員を受け入れ担当教員として配備してい
る。また,共同研究の推進にあたっては,非常勤研究員の支援を得て,共同利用サービ
スの向上に務めている。
(4) 協議会(学内8名,学外6名)で採択課題の審議を実施している。技術専門委員会(学
内6名,学外2名)では,申請された共同利用研究の内容や期待される成果などについ
て議論し,申請書の採否や予算額を査定している。
(5) 成果発表会は,センターの研究成果発表会を各年度末に実施している。
また,平成 17,18 年度に実施した共同研究の成果を中心とした成果発表会を平成 19
年9月に開催し,共同研究の中から 12 件の研究成果が報告された。
(2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準) 期待される水準を上回る。
(判断理由)
(a) 研究活動の水準は,国際的に広く活躍している状況にある。ただ,海洋温度差分野の
研究内容は多少実用化に向けた応用的な研究に偏っている傾向が見られ,今後は,基礎
的な研究テーマも重点的に進める必要がある。センター全体の活動状況は,概ね妥当な
水準にある。
4年間での専任教員一人当たりの原著論文の発表数は 4.3 編/年である。
外部資金の受け入れ状態を分析すると科学研究費補助金の受入れは,海洋流体分野や
利用応用分野となっているが,一方,共同研究は,主に海洋温度差発電分野となってい
る。これは,研究内容と関連しているためである。
(b) 外部資金の受入れ状況は,高い水準にある。4年間で専任教員一人当たり,概ね 340
万円/年となっている。
(c) 共同研究の実施状況は,概ね適正な受入数である。年平均概ね 30 件の共同研究を受け
入れており,専任教員 10 名としては,多い方である。
佐賀大学海洋エネルギー研究センター 分析項目II
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分析項目II 研究成果の状況
(1)観点ごとの分析
観点II-1 研究成果の状況
(観点に係る状況) 平成 16 年に,原著論文「Ultra High critical heat flux during
forced flow boiling heat transfer with an impinging jet」が,日本からは9年ぶりに
ASME(米国機械学会)の学術賞「Best Paper Award」を受賞した。また,国内の学会賞と
して,平成 16 年に「日本冷凍空調学会学術賞」
,平成 18 年に「日本伝熱学会学術賞」の2
件を受賞している。また平成 17 年には,約 30 年間の海洋温度差発電の研究教育活動を通
じて,社会的な貢献,学術的な貢献,国際的な貢献など世界的なリーダーの役割を担って
いることが認められ,2005 年日本国際博覧会協会から環境賞「愛・地球賞」を受賞してい
る。
研究成果は,概ね高い水準にある。
観点II-2 共同利用・共同研究の成果の状況
(観点に係る状況) 共同研究終了後,全ての研究者が6ヶ月以内に共同研究の成果報告
書を提出している。また,共同研究成果発表会において,共同研究実施者の半数程度が共
同研究成果を発表している。
共同研究の成果は概ね適性である。
なお,共同研究の採択にあたっては,継続研究の場合,過去に実施された共同研究での
成果を基に審査を行っている。
(2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準) 期待される水準を上回る
(判断理由) 国際的に広く論文を公表している。その中で,国内外から学術賞を受賞し
ている。特に,米国機械学会の同賞は,我が国で9年ぶりの受賞である。
佐賀大学海洋エネルギー研究センター
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III 質の向上度の判断
1事例1
「全国共同利用施設としての受け入れ体制の充実とサービスの向上」
(分析項目I)
(質の向上があったと判断する取組)
平成 15 年に 21 世紀 COE プログラムに採択されて以来,海洋エネルギーに関する全学
的な研究体制と研究教育成果を構築してきた。設置当初は専任教員4名の学内共同教育
研究施設であった「海洋エネルギー研究センター」を,平成 17 年度からの全国共同利
用施設の試行的実施を経て,10 名の専任教員と9名の併任教員による計 19 名の組織に
拡充した。これらのことにより,平成 19 年度から全国共同利用施設として正式認定さ
れ,共同利用件数は,平成 17 年度の 25 件から,平成 19 年度は 34 件に増加した。
2事例2「海洋温度差発電の研究成果」(分析項目I)
(質の向上があったと判断する取組)
約 30 年間の研究活動において,
発電に関する研究成果を目指してきたが,
平成 19 年,
新規発電機を搭載した 30kw 海洋温度差発電装置で初めて正味出力を得るとともに,新
しい蒸発器が従来型に比べ高出力が得られることが示され,海洋温度差発電の実用化に
向けての研究成果を得た。
3事例3「波力発電の研究成果」(分析項目I)
(質の向上があったと判断する取組)
振動水柱型の波力発電装置に搭載する新型の衝動型空気タービンを開発し,実海域実
験を行い,その高効率性能を確認した。また,浮体式の振動水柱型波力発電装置の波浪
中 動 揺 実 験 を 行 い , 装 置 の 最 適 形 状 を 求 め る た め の 各 種 基 礎 デ ー タ を 得 た 。 こ れ ら は ,
最適設計用の数値シミュレーション計算の検証用データとしても有用である。
4事例4「学会賞の受賞」(分析項目II)
ここ3年間で,国際的な賞を含めて4件の学術賞を受賞している。

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