佐賀大学農学部・農学研究科

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5.農学部・農学研究科
I 農学部・農学研究科の研究目的と特徴・・・5-2
II 分析項目ごとの水準の判断 ・・・・・・・5-5
分析項目I 研究活動の状況 ・・・・・・5-5
分析項目II 研究成果の状況 ・・・・・・5-8
III 質の向上度の判断 ・・・・・・・・・・・5-10
佐賀大学農学部・農学研究科
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I 農学部・農学研究科の研究目的と特徴
1.特徴と基本理念
本学部は,広大・肥沃な佐賀平野の中心である佐賀市に位置する。地域の基幹産業であ
る農業に寄与するため,佐賀県議会・県民の強い要望・支援の下に,昭和 24 年に文理学部
農学専攻として出発し,昭和 26 年に文理学部農学科となった。さらには昭和 30 年に一学
科であったにもかかわらず,農学部に昇格し,二度の改組を経て,平成 18 年に現在の3学
科,研究科2専攻となった。本学部は学部学生定員 145 名(このほかに3年次編入学定員
10 名)
,修士学生定員 50 名,教員 55 名の国内で一番小さな農学部である。
本学部・研究科では,佐賀大学憲章,本学「学則第2条」,「規則 13 条」及び下記の農
学憲章に則って,研究を行うことを基本理念とする。
【農学系研究の理念】農学は,太陽エネルギーを化学エネルギーに変換できる植物を機軸
として達成される生物生産に基づく食糧の生産と利用という人間の生存に直接関わる科学
であるという認識に立って,人間の生活にとって有益な生物の生産・利用と環境保全に関
わる総合科学として,継承すべき基礎的研究および未来を拓く先端的・独創的研究を遂行
する(農学憲章より抜粋)。2.研究目的
(1)基本方針
1上記の基本理念に則って,農学の分野における基礎的研究および応用研究を推進す
るとともに,本学の中期計画である「大学として重点的に取り組む研究領域(生命・
バ イオ, 環境 ,生活 習慣 病,海 浜台 地,有 明海 ,地域 経済 等)
」につ いて, 農学 的
観点から研究する。
2本学の中期目標「成果の社会への還元等に関する基本方針」に基づいて,本学部が
カバーする中・北部九州を中心とする地域・社会の要請に基づく研究を民間企業や
地方研究機関等と連携して推進し,研究成果を社会に還元する。
3本学の中期目標「目指すべき研究の水準」に則って,研究成果を積極的に国内外へ
公表し,研究水準の向上を図る。
4生物生産の基盤となる農地および土・水環境の整備や有明海干潟域の有効利用を図
るとともに,佐賀大学憲章にもあるようにアジア地域を中心として広く世界に目を
向けて,自然的・社会的に豊かな農村環境の整備・保全を目指した研究を行う。
(2)研究組織
本学部は上記の基本理念に基づき,教育・研究目的を達成するために,平成 18 年4月に
学科改組を行い,応用生物科学科,生物環境科学科および生命機能科学科の3学科に改組
した。現在の組織は,農学部3学科および農学研究科2専攻である(表1,2)
。なお,農
学研究科の改組については現在検討中である。
佐賀大学農学部・農学研究科
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表 1 農学部の教育研究組織(平成 19 年 4 月現在)
学 科 講 座 教 育 研 究 分 野 教 員数学 生
定 員
生 物 資 源 開 発 学 熱 帯 作 物 改 良 学 ,動 物 資 源 開 発 学 ,植
物 工 学 ,植 物 代 謝 解 析 学 ,蔬 菜 花 卉 園
芸 学 , 果 樹 園 芸 学 , 植 物 遺 伝 育 種 学9応 用 生 物 科 学 科
生 物 資 源 制 御 学 植 物 病 制 御 学 , 植 物 ウ イ ル ス 病 制 御
学 ,線 虫 学 ,昆 虫 学 ,シ ス テ ム 生 態 学 ,
動 物 行 動 生 態 学74 5
生 物 環 境 保 全 学 地 圏 環 境 学 ,水 環 境 工 学 ,浅 海 干 潟 環
境 学 , 環 境 地 盤 学 , 生 物 環 境 学1 0資 源 循 環 生 産 学 農 業 生 産 機 械 学 , 生 産 シ ス テ ム 情 報
学 ,施 設 農 業 生 産 学 ,作 物 生 態 生 理 学 ,
資 源 循 環 フ ィ ー ル ド 科 学1 0生 物 環 境 科 学 科
地 域 社 会 開 発 学 地 域 ビ ジ ネ ス 開 発 学 ,地 域 資 源 学 ,人
類 生 態 学66 0
生 命 化 学 生 化 学 ,機 能 高 分 子 化 学 ,応 用 微 生 物学6
生 命 機 能 科 学 科
食 糧 科 学 生 物 資 源 利 用 学 ,食 品 化 学 ,食 糧 安 全
学 , 食 品 栄 養 化 学74 0
この他に,本学部における基礎的研究成果の生物生産現場での実用化研究を行うために
附属資源循環フィールド科学教育研究センターを設置している。また,全学施設である海
浜台地生物環境研究センターの教員4名および総合分析実験センター教員1名が本研究科
の教育研究スタッフとして参加しており,共同研究を行っている。特に,平成 16 年度から
は 学 長 研 究 経 費 を 用 い て 農 学 部 教 員 が 一 丸 と な っ て ,
「 循 環 型 社 会 へ 向 け た 食 料 生 産 ・ 加
工・消費システムの研究・開発」を統一テーマとして共同研究を行っている。
表2 農学研究科の教育研究組織(平成 19 年 4 月現在)
専 攻 講 座 教 育 研 究 分 野 教 員数学 生
定 員
資 源 社 会 管 理 学 地 域 資 源 学 , 環 境 社 会 学 , 農 業 経 済 学 ,
海 浜 台 地 政 策 学 1 )5生 産 生 物 学 作 物 生 態 生 理 学 ,熱 帯 作 物 改 良 学 ,施 設
農 業 生 産 学 ,動 物 生 産 学 ,資 源 循 環 フ ィ
ー ル ド 科 学 , 海 浜 台 地 生 産 生 態 学 1 )1 1生 産 情 報 科 学 生 産 シ ス テ ム 情 報 学 ,利 水 情 報 工 学 ,生
産 基 盤 情 報 工 学3生 物 生 産 学
生 産 環 境 工 学 地 圏 環 境 学 ,浅 海 干 潟 環 境 学 ,農 業 生 産
機 械 学 , 海 浜 台 地 生 産 機 能 学 1 )62 0
生 物 工 学 遺 伝 子 工 学 ,細 胞 工 学 ,種 苗 生 産 学 ,遺
伝 資 源 学 , 育 種 学5生 物 調 節 学 土 壌 環 境 学 ,植 物 病 制 御 学 ,植 物 ウ イ ル
ス 病 制 御 学5 佐賀大学農学部・農学研究科
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動 物 資 源 学 線 虫 学 , 害 虫 制 御 学 , シ ス テ ム 生 態 学 ,
動 物 行 動 生 態 学5生 物 機 能 化 学 生 化 学 ,
機 能 高 分 子 化 学 ,
応 用 微 生 物 学 ,
分 子 細 胞 生 物 学 2 )6応 用 生 物 科 学
生 物 資 源 利 用 化 学 生 物 資 源 化 学 ,生 物 資 源 利 用 学 ,食 糧 化
学 ,食 糧 安 全 学 ,食 品 栄 養 化 学 ,マ リ ン
バ イ オ 1 )73 01 )海浜台地生物環境研究センター,2 )
総合分析実験センター
(3)達成しようとする基本的な成果等
1 ウ イ ル ス, 昆 虫 , 植物 , 動 物 そし て ヒ ト に及 ぶ 広 範 な生 物 に つ いて 生 命 現 象を 探 究
す る とと もに , それ らの 研 究成 果に 基 づき 有用 生 物の 開発 と 生物 資源 の 有効 利用等
に関する成果を得ること。
2 農 業 に バイ オ テ ク ノロ ジ ー 等 の先 端 的 技 術を 導 入 し て生 物 生 産 を行 う と と もに , 流
通・経営体系の高度化に関する成果を得ること。
3 佐 賀 平 野と 環 有 明 海を 基 盤 と して , 佐 賀 地域 を 中 心 とす る 民 間 企業 や 地 方 自治 体 の
研究機関と連携して研究を行い,成果を社会や地域に還元すること。
3.想定する関係者とその期待
農学部・農学研究科が社会から要請されている研究領域は生物生産の基盤である生命・
バイオ,環境,生活習慣病,地域経済等広範囲におよぶ。したがって,想定される関係者
は,主に学術面においては当該分野の学会とそれに所属する研究者,関連する食品・製薬
等の企業や国公立の研究機関等の研究者・技術者が想定され,特にこれらの関係者には生
命現象に関する基礎的知見が期待されている。また,それらを活用した新品種の開発,病
害虫防除方法の開発が農業の生産現場等から期待されている。環境や生活習慣病に関する
研究成果は分析センターや製薬会社等の研究者や一般市民からも期待されている。
佐賀大学農学部・農学研究科 分析項目I
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II 分析項目ごとの水準の判断
分析項目I 研究活動の状況
(1)観点ごとの分析
観点 1-1 研究活動の実施状況
(観点に係る状況)
(1)研究活動の実施状況
本学部教員(55 名)は研究目的にしたがって,基礎から応用まで幅広い研究を行ってお
り,これらの成果を年間平均,国際学会に 23 件,国内学会に 157 件,発表している。さら
に,国際学会において年間平均 10 件,国内学会において 22 件の招待講演を行っている。
年間の教員一人あたりの発表件数は 2.31〜3.67 である。また,当該年度に年間平均 162
件の論文を発表しており,その内訳は国際学会誌(英文の国内学会誌を含む)63 件,レフ
リー制のある国内誌が 19 件である。原著論文の教員一人あたりの発表数は 1.24〜1.63 で
ある。一方,16-19 年度の特許出願件数は 15 件である(表3〜5)。さらに,農学部の小ささを生かして,平成 16 年度からは学長経費(中期計画実行経費)
を用いて学部独自の取組として「循環型社会へ向けた食料生産・加工・消費システムの研
究・開発」を統一テーマとして共同研究を行っており,成果を年次報告書としてまとめる
とともに,成果発表のシンポジウムを開催している(表6)。表3 論文・著書等の研究業績
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
著書(英文) 4 0 4 6
著書(和文) 10 10 11 6
原著論文(英文) 72 70 63 63
原著論文(和文) 23 15 18 19
総説 2 8 6 9
資料・解説・研究報告等 51 60 60 59
合計 162 163 162 162
表4 学会での研究発表の状況
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
招待講演・特別講演(国外) 6 9 10 13
招待講演・特別講演(国内) 14 23 27 22
一般講演(国外) 12 13 13 14
一般講演(国内) 98 127 172 146
その他 4 7 6 18
合計 134 179 228 213
表5 知的財産権出願等の状況
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
特許出願件数 3 0 6 6
商標登録件数 0 0 0 4
品種登録件数 0 0 0 1
佐賀大学農学部・農学研究科 分析項目I
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表6 佐賀大学学長経費(中期計画実行経費)による共同研究
公開シンポジウムの開催
平成 18 年 7 月 「循環型社会へ向けた食料生産・加工・消費システムの研究・開発」
平成 19 年 10 月 「循環型社会へ向けた食料生産・加工・消費システムの研究・開発」
研究成果報告書の刊行
平成 17 年 3 月 平成 16 年度学長経費事業成果報告書
平成 18 年 3 月 平成 17 年度学長経費事業成果報告書
平成 19 年 3 月 平成 18 年度学長経費事業成果報告書
(2)研究資金の獲得状況
外部資金の獲得状況についてみると,科学研究費補助金は年平均 22 件受け入れ,4,153
万円(間接経費含む)を獲得している。また,科研費の採択率は,年平均で 20.8%(新規採
択率)である(表7)
。受託研究は 16 年度 14 件,3,256 万円であったが,19 年度には 22
件,8,729 万円(間接経費含む)と増加し,受入れ金額は2倍以上となっており,活発な研
究を行っている。また,競争的外部資金として4年間に農林水産省から5件,6,964 万円,
文部科学省から3件,
809 万円獲得した
(表8)。共同研究費については年平均 11 件,
1,699
万円を獲得(表 10)
,さらに,奨学寄附金については,該当年度平均 22 件,2,373 万円を
獲得している(表 11)。表7 科学研究費補助金
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
申請件数 42 44 40 33
採択件数 8 10 10 5
金額(千円) 17,500 25,100 27,400 10,300新規
採択率(%) 19.0 22.7 25.0 15.2
件 数 14 12 13 14継続 金額(千円) 14,500 14,600 22,300 22,800
件 数 22 22 23 19計金額(千円)032,000039,700
3,240
49,700
8,370
33,100
*上段:間接経費で外数
表8 受託研究(競争的外部資金)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
件 数 1 2 1 4
金額(千円)06,5043607,500
1,060
18,578
2,380
41,352
*上段:間接経費で内数
表9 受託研究(競争的外部資金を除く)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
件 数 13 16 14 18
金額(千円) 26,060 54,928 43,943 43,553
佐賀大学農学部・農学研究科 分析項目I
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表 10 共同研究(データベース調査表6-4)
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
国内企業 7 12,165 4 6,400 6 7,880 8 11,250
独立行政法人 1 0 0 0 0 0 0 0
その他公益法人等 2 2,090 1 1,050 3 11,092 1 1,050
地方公共団体 1 700 2 610 1 480 1 380
その他 2 6,447 3 6,393 0 0 1 0
合 計 13 21,402 10 14,453 10 19,452 11 12,680
*資金の受入がない場合も,契約を結んだ共同研究については件数に含める。
表 11 奨学寄附金
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
件 数 20 21 26 22
金額(千円) 18,936 33,523 21,384 21,097
(2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準)
期待される水準にある。
(判断理由)
研究目的に沿って活発な研究を行っており,数多くの論文等を質の高い学会誌等に発表
している。地方公共団体や企業等との受託研究,共同研究を活発に行っており,それらの
成果も一部は実用化されている。
佐賀大学農学部・農学研究科 分析項目II
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分析項目II 研究成果の状況
(1)観点ごとの分析
観点 2-1 研究成果の状況
(観点に係る状況)
農学部・農学研究科の研究領域は生命・バイオ,環境,生活習慣病,地域経済等広範囲
におよんでおり,基礎から応用まで多様な研究がなされている。研究目的に沿って行われ
た研究の中から関係者の期待に応え,評価の高い業績を「学部・研究科等を代表する優れ
た研究業績リスト(I表)
」に示した。
1.生物学の分野における基礎的研究
I表の No.1001 はアケビの雌雄異花には,近交弱勢回避より雌機能に適応度コストをも
たらす性的干渉を避ける機能があることを示唆したもので,国際的に評価の高い雑誌に掲
載されている。No.1002〜1004 の業績は昆虫の初期形態形成に関与するサイトカイン GBP
の研究を初めとする昆虫のサイトカインに関する一連の研究成果で,国内外で高い評価を
得ており,
これらの研究成果により,
日本応用動物昆虫学会学会賞を受賞している。
No.1005
の論文は,高等動物の唾液中にプロテオグリカンが含まれていることを明らかにしたもの
で,糖鎖生物学の分野で国際的に高い評価を得ている。No.1006 の論文はマメ科の木本の
共生系に関して詳細に解析した数少ない報告例であり,その研究成果は国際的評価の高い
雑誌に報告された。
2.農学分野における基礎的研究
No.1008 はヴィエトナムのシャロットを遺伝資源として評価し,タマネギおよびワケギ
の育種に利用できることを示したもので,
平成 19 年度園芸学会賞年間優秀論文賞を受賞し
た評価のきわめて高い論文である。No.1010 の研究では,農業上極めて重要なイネいもち
病菌について,その全テロメア領域の塩基配列の解読に成功しており, 本菌の変異性の遺
伝 的 メ カ ニ ズ ム に 関 し て 新 規 知 見 を 提 供 し , 国 際 的 に 評 価 の 高 い 雑 誌 に 掲 載 さ れ た 。
No.1011〜1015 の一連の研究は,農 作 物 に 甚 大 な 被 害 を 与 え る 野 菜 類 の 重 要 病 害 ウ イ ル ス
で あ る カ ブ モ ザ イ ク ウ イ ル ス (TuMV)の 分子進化に関するものであり,分 離 株 の ゲ ノ ム RNA
の 塩 基 配 列 を 網 羅 的 に 決 定 後 , 先 端 的 な バ イ オ イ ン フ ォ マ テ ィ ク ス を 用 い て , ゲ ノ ム 配
列 に 隠 さ れ た 分 子 進 化 学 的 ・ 生 態 学 的 ・ 病 理 学 的 な 情 報 に つ い て 解 明 し て き た も の で あ
り , それらの研究成果は国際的に高く評価されている。
3.食品科学・栄養学分野における基礎的研究および応用的研究
No.1009 の研究は酵素的褐変の原因となる青果物のポリフェノール酸化酵素に関する一
連の基礎的研究をまとめたものであり,本研究は食品の加工および保蔵に関する問題解決
に有用な知見を与え,学会および食品産業界から高い評価を受けている。本業績により平
成 16 年度日本食品保蔵科学会・学会賞を受賞した。No.1016 の論文は新規なキトサン分解
酵素の構造と機能を明らかにし,本酵素の機能性糖質製造への応用の可能性を示したもの
で,糖鎖工学分野において評価の高い雑誌に掲載されている。No.1017 の研究論文は共役
リノール酸の新規生理作用として,高血圧抑制作用を世界で初めて明らかにしたもので国
際的に高い評価を得ており,AOCS Outstanding Paper Award を受賞した。No.1018 の論文
は共役リノール酸の非アルコール性脂肪性肝臓障害改善の作用機序を明らかにしたもので,
日本油化学会年会ヤングフェロー賞および日本農芸化学会西日本支部奨励賞を受賞した。
これら共役リノール酸に関する研究は栄養生理学分野で高い評価を受け,日本栄養・食糧
学会学会賞の受賞対象となり,多くの招待講演が行われている。
4.地域・社会の要請に基づく研究
No.1007 はアイスプラントを,農薬を使わない塩味のする清浄野菜としての栽培・利用
佐賀大学農学部・農学研究科 分析項目II
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法を開発したもので,農林水産省・先端技術を活用した農林水産高度化事業,佐賀県産業
支援センター・際立つ佐賀ベンチャー創出支援事業の支援を受けて行われており,地域に
貢献する研究である。
(2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準)
期待される水準にある。
(判断理由)
農学部・農学研究科の研究目的に沿って活発に研究が行われており,研究成果の多くが
国内外の評価の高い学術雑誌に発表されている。これらの研究成果により,16 年度,日本
園芸学会奨励賞,日本食品保蔵科学会学会賞,日本ペプチド学会奨励賞,九州農業経済学
会賞,日本農芸化学会西日本支部奨励賞を,17 年度には,日本栄養・食糧学会学会賞,日
本応用動物昆虫学会学会賞を受賞している。
若手教員を中心に質の高い論文を執筆しており,また,国内外で学会発表を行い,論文
賞やポスター等を受賞しており,その研究内容は高く評価されている。また,研究成果の
実用化に向けた特許出願,商標登録も行われ,中でもアイスプラントの栽培・利用法の開
発は佐賀大学発ブランド野菜の販売へとつながり,技術開発に関わった学生が大学発ベン
チャー「農研堂」を設立したことは,関係者から高い評価を得ており,地域の要望に応え
ている。
佐賀大学農学部・農学研究科
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III 質の向上度の判断
1事例1「地域に密着した研究」(分析項目I)
(質の向上があったと判断する取組)
農学部・農学研究科は佐賀県の基幹産業である農業に貢献すべく,県の試験研究機関や
地元企業等との共同研究を推進し,農作物の品種改良,植物病防除技術や植物ウイルス検
出法の開発などを進めてきた。また,佐賀県の特産品であるお茶の生理機能等の共同研究
を行い,機能性食品素材の開発などの研究成果を得ている(表 12)。家庭からの生ゴミ,農畜産廃棄物等の処理や微生物を用いた環境浄化など地域と連携し
て取り組んでいる。本学部教員が伊万里市や NPO 法人と協力して活動している"はちがめ
エココミねっと"は地域連携の新しいシステムとして大きく評価されている(佐賀大学地
域貢献推進室ホームページ参照)
。さらに,この取組は国際的にも高く評価されており,タ
イ国で開催されたワークショップでもその活動状況が招待講演されるとともに,生ゴミの
堆肥化技術などの同国への技術移転がなされている(表 13)。福岡県椎田町や築上町と共同して行っている未利用有機廃棄物等のエネルギー化研究に
おいては廃棄物等からのバイオガス,バイオディーゼルエネルギー,液肥等の生産が実用
化され,地球温暖化対策の面からも注目されている(表 13)。表 12 知的財産出願等の例
特許公開 2004-248537 温州萎縮病(SDV)様症状を示すカンキツ樹のウイルスの塩基
配列及び
その決定方法
特許公開 2006-94825 カテキンタイプのカテキン類高含有茶葉
特許公開 2006-304792 内臓脂肪蓄積抑制食品
特許公開 2006-306866 アディポネクチン上昇剤
品種登録番号第 6459 号 大豆 オレリッチ 50
商標第 5058041 号 バラフ
商標第 5058042 号 Barafu
表 13 地域に密着した研究(報告書リスト)
1 はちがめエココミねっと
JBIC Workshop: Environmental education for sustainable development(2004 年
8 月)
平成 16 年度佐賀大学地域貢献推進室報告書 Vol. 3, p.63-71 (2005 年 5 月)
タイ地域環境活動調査報告(NPO 法人持続可能な社会をつくる元気ネット,2006 年 8月)2 未利用有機廃棄物等のエネルギー化研究
椎田町地域新エネルギービジョン策定等事業報告書(2005 年 2 月)
築上町未利用有機系廃棄物エネルギー化調査報告書(2007 年 3 月)
築上町エタノール化地域モデル報告書(2007 年 3 月)
2事例2「共同研究の推進」(分析項目I)
(質の向上があったと判断する取組)
国内外の研究機関および企業との共同研究を積極的に推進し,生活習慣病予防への応用
等の研究成果を得た(表 12)。さらに,農学部の小ささを生かして,平成 16 年度からは学長研究経費を用いて学部独自
の取組として「循環型社会へ向けた食料生産・加工・消費システムの研究・開発」を統一
佐賀大学農学部・農学研究科
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テーマとして全教員が共同研究を行っており,成果報告書を刊行するとともに,成果発表
の公開シンポジウムを農学部同窓会と共催し,
研究成果を広く社会に発信している
(表6)。3事例3「若手研究者を中心とする研究の活性化」(分析項目II)
(質の向上があったと判断する取組)
学術研究の推進を図るために国際会議での発表,
海外研究者との交流を進めるとともに,
科学研究費補助金申請,外部資金獲得努力を奨励している。これらの取組により該当年度
内に若手教員は日本園芸学会奨励賞,日本ペプチド学会奨励賞,日本農芸化学会西日本支
部奨励賞等を受賞している。また,国際学会におけるポスター賞や学会論文賞等を受賞し
ている。さらに,当該年度内に 14 名の若手教員が科学研究費若手(B)を延べ 16 件獲得して
いる。本学部においては 55 名の在籍教員のうち,該当年度内において,前記若手教員の他
に日本食品保蔵科学会学会賞,
日本栄養・食糧学会学会賞,
日本応用動物昆虫学会学会賞,
九州農業経済学会学術賞等を受賞しており,これまでと併せて,27%に当たる 15 名が学会
賞を受賞していることとなり,その研究水準は高く評価される。
4事例4「佐賀大学ブランドの発信」(分析項目II)
(質の向上があったと判断する取組)
附属資源循環フィールド科学教育研究センター(フィールドセンター)では国立大学法
人として初めて認定された有機農産物生産工程管理者の再認定を受け,実践研究として学
生,地域住民とともに唐津市相知町の棚田の再開発を行い,有機棚田米を生産している。
また,新野菜「バラフ」
(表 12 および業績リストI表の No.1007 参照)およびフィールド
センターの米と本学部で育種した酵母を用いて県内の企業に委託生産した純米酒「悠々知
酔」を開発した。これらの佐賀大学ブランド生産物は高い評価を受け,マスコミをとおし
て報道された。また,新宿高島屋などで行われたイベント等でも好評のうちに完売するな
ど,本学のイメージアップに大きく貢献している。

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