佐賀大学理工学部・工学系研究科

‐4‐1‐
4.理工学部・工学系研究科
I 理工学部・工学系研究科の研究目的と特徴・・4−2
II 分析項目ごとの水準の判断 ・・・・・・・・4−6
分析項目I 研究活動の状況 ・・・・・・・4−6
分析項目II 研究成果の状況 ・・・・・・・4−8
III 質の向上度の判断 ・・・・・・・・・・・・4−10 佐賀大学理工学部・工学系研究科
‐4‐2‐
I 理工学部・工学系研究科の研究目的と特徴 1.基本理念
人類の継続的な繁栄を実現するためには、高度科学技術の発展が不可欠である。大学の
使命は、科学技術の健全な発展をとおして豊かな社会生活の実現と世界平和に寄与するこ
とにある。
佐賀大学理工学部・工学系研究科は、既存の枠組みに捉われない理系と工系の学科・専
攻からなる柔軟な教育研究組織を配置し(理工融合)
、自由な発想に基づく原理的な発見を
基礎として人類に有効な技術を確立し、また社会の要請に基づく諸問題を解決し(社会に
開かれた学部)
、広く地域や国際社会に還元すること(国際性)を基本理念としている。 2.研究目的
(a)基本方針
研究活動の側面から上記の基本理念の達成を目指すには、学部・研究科を構成する各教
員の研究に対する意欲・熱意を維持し、質の高い研究成果を生み出す必要がある。このた
めには、教員個人の自由意志の尊重と研究環境の整備が不可欠である。理工学部・工学系
研究科では、研究に取り組む基本方針を以下のように定める。
1教員の自由な発想に基づく基礎的・基盤的研究の推進
2地域・社会の要請に基づく実用研究の推進
3学部・研究科の資源を活用した独創的プロジェクト研究の推進 (b)達成しようとする基本的な成果
上記に示した基本方針に基づいて研究を実施し、その成果を広く世に問い、また社会に
還元するため、評価の高い国内外の学術雑誌への公表や学会・国際会議などにおいて積極
的な研究発表が行なわれ、必要に応じて知的財産権の取得がなされる。達成しようとする
基本的な成果は、これらの成果発表等をとおして、学問の発展に寄与し、広く地域社会お
よび国際社会の発展に貢献することにある。
上記の基本方針および達成しようとする成果は、佐賀大学の中期目標「目指すべき研究
の水準」および「成果の社会への還元等に関する基本方針」とも合致している。 (c)研究組織
佐賀大学理工学部は、上記の基本理念に基づき、昭和41年に理系学科と工系学科からな
る全国でも数少ない融合型学部として設置された。その後、学科の増設と大学院の設置、
二度の再編を経て、理工学部7学科、工学系研究科博士前期課程8専攻、同博士後期課程
2専攻および5年一貫の独立専攻による教育研究体制となった(資料1)
。このほか、本学
部・研究科と連携して独自の研究活動を展開している研究センター等の研究組織(資料2)
がある。 (d)研究分野
理工学部・工学系研究科が取り組む研究は、大別すると4分野からなる。各研究分野と
研究組織の関係を対応する教育組織(博士前期課程の専攻名)を用いて以下に示す。 I.基礎科学研究
「数理科学専攻」、「物理科学専攻」、「知能情報システム学専攻」が中心となり、基礎科
学の立場から研究に取り組むとともに、その成果の応用を試みている。
II.地域に根ざした研究
「循環物質工学専攻」、「都市工学専攻」が中心となって、佐賀地域の地勢と環境に根ざ
した研究を行なっている。
佐賀大学理工学部・工学系研究科
‐4‐3‐
III.人に優しい情報・生産システムの開発研究
「知能情報システム学専攻」、「機械システム工学専攻」、「電気電子工学専攻」、「生体機
能システム制御工学専攻」が中心となって、理工学的な視点から人間志向と環境福祉に配
慮した研究を行なっている。
IV.資源・エネルギーの効率的利活用技術の開発研究
「機能物質化学専攻」、「循環物質工学専攻」、「機械システム工学専攻」、「電気電子工学
専攻」、「都市工学専攻」が中心となって、地球環境を維持し、エネルギー資源を確保する
ための研究を行なっている。 各研究分野の代表的研究課題を資料3に示す 資料1 理工学部・工学系研究科の教育研究組織(平成 19 年 5 月現在) 学部および
研究科
学科・専攻 教 授
准教授 講 師 助 教 計
入学
定員
数理科学科 6 3 1 0 10 30
物理科学科 7 8 0 0 15 40
知能情報システム学科 6 5 1 4 16 60
機能物質化学科 11 13 0 6 30 90
機械システム工学科 7 6 1 5 19 90
電気電子工学科 5 8 3 2 18 90
都市工学科 11 8 1 3 23 90
(3年次編入) − − − − − 20理 工 学 部
計 53 51 7 20 131 490
数理科学専攻 6 3 1 0 10 11
物理科学専攻 8 8 0 0 16 15
知 能 情 報 シ ス テ ム 学 専攻 7 6 2 0 15 15
機能物質化学専攻 4 8 0 0 12 16
循環物質工学専攻 7 6 0 0 13 17
機械システム工学専攻 6 5 1 0 12 27
電気電子工学専攻 5 8 4 0 17 26
都市工学専攻 13 10 2 0 25 27
生 体 機 能 シ ス テ ム 制 御
工学専攻(独立専攻)
6 7 0 2 15 32博 士 前 期 課 程
計 62 61 10 2 135 186
エ ネ ル ギ ー 物 質 科 学 専攻 26 28 2 0 56 9
システム生産科学専攻 46 28 1 0 75 7
生 体 機 能 シ ス テ ム 制 御
工学専攻(独立専攻)
6 3 0 0 9 14工 学 系 研 究 科 博 士 後 期
計 78 59 3 0 140 30
佐賀大学理工学部・工学系研究科
‐4‐4‐ 資料2 関連研究組織(平成 19 年 5 月現在)
関連研究組織 区分 教 授 准教授 講 師 助
教 計
海 洋 エ ネ ル ギ ー 研 究 セ ン
ター
全 国 共 同
利用施設
3 5 0 2 10
低平地研究センター 全学施設 2 2 5 0 9
シ ン ク ロ ト ロ ン 光 応 用 研
究センター
全学施設 2 0 1 2 5
有 明 海 総 合 研 究 プ ロ ジ ェ
クト
学 内 プ ロ
ジェクト
0 3 5 0 8
廃棄物の無害化・再資源化
の研究
学 内 共 同
研究
0 0 0 0 0
計 7 10 11 4 32
数字は専任教員数 3.研究の特徴
理工学部は、理学と工学からなる融合学部として発足した。発足当初より学科・専攻間
では、学生教育や学部・研究科の運営等をとおして教員同士の活発な交流が行われ、学科
によっては再編や統合に発展した。研究面においても、研究基盤の異なる教員が共同研究
によって新しい領域の研究課題を立ち上げるなど、
「理工融合」を活かした多くのプロジェ
クト研究に基づく研究組織が芽生えている。このように、学科・専攻の枠を越えた「理工
融合」に基づく柔軟な研究組織が構成できるところに理工学部・工学系研究科の特徴があ
る。この結果、基礎的分野から現実的な応用分野までの幅広い研究分野への対応を可能と
している。 4.想定する関係者とその期待
想定する関係者としては、関連学会および国内外の大学における当該分野の研究者、関
連する企業や研究所の技術者・研究者、国や地方自治体等の行政機関・研究所の研究者、
地域住民および本学学生とその保護者である。また、これらの関係者から当該分野におけ
る新しい原理発見や方法の開発・実用化および教育の高度化について期待を受けている。
佐賀大学理工学部・工学系研究科 ‐4‐5‐
資料3 理工学部・工学系研究科の研究分野と代表的研究課題 I.基礎科学研究 ・代数多様体、数論幾何学および低次元トポロジーの研究
・リーマン多様体、偏微分方程式論および確率論の研究
・時空と物質の起源に関する基本法則の研究
・ナノ物性、超伝導および新奇物性の研究
・生命現象と境界を接する生体物質の構造と機能に関する研究
・自然や社会における情報の基礎的性質の研究
・フォト・エレクトロニクス技術とシンクロトロン光応用技術の研究
II.地域に根ざした研究 ・有明海の物理的・生態学的環境に関する研究
・低平地における水環境・軟弱地盤・構造物に関する研究
・地域・都市の生態、計画および空間デザインに関する研究 III.人に優しい情報・生産システムの開発研究 ・情報の効率的な取得・伝送・蓄積・処理に関する研究
・環境負荷を考慮した設計・生産システムの研究
・高齢者用生活支援機器および医療機器の開発研究 IV.資源・エネルギーの効率的利活用技術の開発研究 ・環境と調和したエネルギー変換技術および効率的利活用技術の研究
・資源回収システムおよび有害物質の除去技術の研究
・機能性材料(発光材料、電池材料、イオン認識材料等)の開発研究
佐賀大学理工学部・工学系研究科 分析項目I ‐4‐6‐
II 分析項目ごとの水準の判断 分析項目I:研究活動の状況
( 1 ) 観 点 ご と の 分 析
観点1−1:研究活動の実施状況
(観点に係る状況)
1.目的・特徴を生かした活動
基礎的・基盤的分野の研究として、数学、化学、物理学、情報学等に関する研究が行わ
れ、多くの研究成果が発表されている。また、地域や社会からの要請に応える分野の研究
として、機械工学、電気電子工学、土木工学等に関する研究が行なわれ、民間企業や研究
機関等との共同研究の成果を含む、多くの研究成果が発表されている。 2.研究の実施状況
(a)論文・著書等の研究業績および学会での研究発表の件数は、年度によって多少のば
らつきはあるが、論文・著書は年間 600〜700 件程度、学会での研究発表等は 900〜1000
件程度あり、活発な研究活動が実施されている(資料4〜6)。 資料4 論文・著書等の研究業績
年度(平成) 16 17 18 19
著書 19 16 34 34
学術論文(和文) 57 72 121 68
学術論文(英文) 421 421 435 386
資料・解説・論説・研究報告 103 85 128 122
合計 600 594 718 610 資料5 論文・著書等の研究業績(学科・専攻の内訳)
学科・専攻(平成 16〜19 年
度)
数学 物理 知能 機能 機械 電気 都市
著書 3 0 14 24 21 21 20
学術論文(和文) 0 11 42 26 78 67 94
学術論文(英文) 53 120 77 451 533 272 157
資料・解説・論説・研究報告 14 35 77 48 67 109 88
合計 70 166 210 549 699 469 359 資料6 学会での研究発表の状況
年度(平成) 16 17 18 19
招待講演・特別講演(国内) 72 66 6 6
招待講演・特別講演(国外) 30 25 46 27
一般講演(国内) 742 719 847 791
一般講演(国外) 120 141 120 110
その他 32 57 50 13
合計 996 1008 1069 947 佐賀大学理工学部・工学系研究科 分析項目I
‐4‐7‐ (b)特許出願等の状況は、年度により変動はあるが、継続的に出願、登録、実施契約の
ための努力がなされている(資料7)。
3.研究資金の獲得状況(資料8)
(a)ここ4年間の科学研究費補助金の採択率は約 30%で推移している。
(b)競争的外部資金は、獲得件数、獲得金額とも、年度による変動が大きい。相手先と
しては、地方自治体が主であり、地域や社会からの要請に応える研究が行なわれている。
(c)共同研究費、受託研究費や奨学寄附金は一定の水準を維持している。相手先として
は地域の企業も多く、地域に根差した研究および社会貢献が行なわれている。
(2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準)
理工学部・工学系研究科の研究活動の状況は期待される水準にあると判断される。
(判断理由)
理工学部・工学系研究科の 1 人当りの論文・著書等の研究業績は、年平均 4.07 件とな
っており、十分な水準にあると判断される。また、共同研究・受託研究は、数学や物理学
など、共同研究や受託研究に不向きの分野が含まれているにもかかわらず、1 人当り年平
均 0.36 件が実施されている。理工学部・工学系研究科の一般運営交付金は、年平均 364,
639 千円である。したがって、研究資金(運営交付金+外部資金)に占める外部資金の割
合は約 50%となり、かなりの高水準にある。
理工学部・工学系研究科においては、整備された研究体制・研究環境の下、教員の活発
資料8 研究資金の獲得状況
年度(平成) 16 17 18 19
申請件数 156 172 165 149
採択件数 50 46 45 45
科 研 費 補 助金 金額(千円) 89,160 80,470 63,010 93,480
件数 3 2 7 5
競 争 的 外 部
資金 金額(千円) 75,296 72,138 89,772 31,380
件数 31 39 45 45
共同研究
金額(千円) 46,835 37,585 65,895 34,778
件数 8 18 23 16
受託研究
金額(千円) 63,284 93,473 49,851 27,068
件数 84 69 71 60
奨学寄附金
金額(千円) 103,262 46,344 48,520 41,952
件数 176 174 191 171
受入合計
金額(千円) 377,837 330,010 317,048 228,658 資料7 特許出願等の状況
年度(平成) 16 17 18 19
保有件数 37 35 37 36
出願件数 14 34 23 22
登録件数 7 6 8 10
契約件数 0 0 4 3
契約による収入額(千円) 0 0 8,000 1,000
佐賀大学理工学部・工学系研究科 分析項目I,II
‐4‐8‐
な研究活動によって外部資金が獲得され、質の高い多くの研究成果が生み出されている。
これらの研究成果は、共同研究や受託研究をとおして企業等に対する社会貢献となってい
る。また学部や大学院における教育の質の向上にも反映されており、想定する関係者の期
待に十分応えている。 分析項目II:研究成果の状況
( 1 ) 観 点 ご と の 分 析
観点2−1:研究成果の状況
(観点に係る状況)
1.優れた研究業績の選定
優れた研究業績の選定にあたっては、教員個人、学科長および専攻長から推薦のあった
業績をあらかじめ定められた判断基準に基づき水準審査会において審査し、さらにその審
査結果を学部・研究科長が委員長を務める評価委員会において精査・確定した。「学部・
研究科等を代表する優れた研究業績リスト(I表)」に示すように、SSに該当する業績が
2件、Sに該当する業績が20件あり、これは学部および研究科に所属する研究者総数の1.3%
および12.9%に相当する。
2.優れた研究業績の内容 研究業績リスト(I表)に示す優れた研究業績とI‐2(a)の研究目的の基本方針1〜3
およびI‐2(d)の研究分野は、資料9に示す対応関係にある。
こ れ ら の 研 究 業 績 は 、 国 内 外 の 権 威 あ る 学 術 雑 誌 や Journalに 掲 載 さ れ る と と も に 、 学
会 賞 な ど の 受 賞 や 招 待 講 演 を と お し て 社 会 的 に 高 い 評 価 を 受 け て お り 、 I ‐2(b)に 掲 げ た
「達成しようとする基本的な成果」を満たしている。以下、各業績の内容を資料9の「基
本方針との対応関係」の順に示す。 (a)「教員の自由な発想に基づく基礎的・基盤的研究」に基づく研究業績
No.1004は、プレートのバックリングという工学的な問題を数学的手法によって解明し
た論文である。インパクトファクタの高い学術雑誌に掲載されるとともに、外国の著名な
資料9 基本方針と優れた研究業績の対応関係
研究分野
基本方針 件数
I II III IV
1 教 員 の 自 由 な 発 想 に 基 づ く 基 礎
的・基盤的研究の推進 8 1004
1005
1006
1008
1009
1010
1011
1016
2地域・社会の要請に基づく実用研
究の推進 7 1001
1002
1003
1007
1017
1018
1019
3学部・研究科の資源を活用した独
創的プロジェクト研究の推進 7 1020
1021
1022
1012
1013
1014
1015
佐賀大学理工学部・工学系研究科 分析項目II
‐4‐9‐
研究者から高い評価を受けており、本学部の特徴である理工融合の成果の表れである。
No.1005およびNo.1006の両業績は、基礎物理学の最先端の研究成果がインパクトファクタ
の高い学術雑誌に掲載されたものである。No.1005は、その内容に基づいて国際的な研究会
で招待講演を行った業績であり、No.1006は、注目される研究成果として著名な研究機関の
ホームページに公開された業績である。No.1009の論文は、インパクトファクタの高い学術
雑誌に掲載され、オンラインジャーナルのアクセス数が10位以内になったものであり、当
該論文が国際的に注目されていることを示している。No.1008は、国際的に極めて著名な学
術雑誌に掲載された論文であり、
No.1011はインパクトファクタが高い学術雑誌に掲載され
た論文である。No.1010は、インパクトファクタの高い学術雑誌に掲載されるとともに、同
じ研究テーマに関連して多くの機関から多額の外部資金を得ている業績であり、関係者の
期待の高さを表している。No.1016の論文は、国際的に評価の高い学術雑誌に掲載され、最
も多く引用された論文の一つであると出版社から評価されたものである. (b)
「地域・社会の要請に基づく実用研究」に基づく研究業績
No.1001は、本学で開発されたネットワークシステムが国内外の大学において実用され
ている研究業績である。No.1002の論文は、関連する他の業績とあわせて情報処理学会から
優秀教育賞を得たものである。No.1003は、佐賀大学と地域の工業系高校が協力して行なっ
た研究であり、先導的人材育成教育に関して利用促進賞(地域貢献推進賞)を得ている。
No.1007は、国際的な学術団体に選ばれた招待論文であり、本学部・研究科の研究成果が宇
宙研究の分野において高い評価を得ている例である。No.1018は、その研究成果に対して論
文賞を受賞した業績である。No.1017の業績は特許であり、本学のTLOをとおして特許実施
契約を締結したもので、実用化に結びつく質の高い研究成果が企業から評価され、本学に
多額の特許収入をもたらした。No.1019は、国際会議での発表が評価され、国際的に評価の
高い学術雑誌の編集委員会から投稿依頼があった論文である。 (c)
「学部・研究科の資源を活用した独創的プロジェクト研究」に基づく研究業績
No.1012の論文は、国際的に評価の高い専門誌に掲載されるとともに、世界トップレベ
ルの学術雑誌に紹介されたものである。No.1013〜1015およびNo.1021は、その研究成果に
対して外国の学会または国内の学会から賞を受けた論文であり、研究レベルの高さを表し
ている。No.1020の論文は、その研究成果が評価され、国際シンポジウムで基調講演を行な
ったものである。No.1022は、外国の大学で招待講演を行なうとともに、その研究内容が評
価の高い学術雑誌に掲載された論文である。
(2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準)
理工学部・工学系研究科の研究成果の状況は期待される水準にあると判断される。
(判断理由)
理 工 学部 ・工 学 系研 究科 の 基本 理念 、 研究 目 的 に 即 し た 研 究 が 活 発 に 行 な わ れ て お り 、
国内および国外の学会から論文賞を受賞した卓越した研究業績やインパクトファクタの高
い学術雑誌に掲載された優れた研究業績があること、研究成果や特許などが実用化に至っ
ている研究業績があること、また理学と工学の融合領域において優れた研究業績があるこ
となどから、「達成しようとする基本的な成果」を満たしており、想定される関係者の期
待に十分応えている。 佐賀大学理工学部・工学系研究科
‐4‐10‐
III 質の向上度の判断 1 事例1「国際交流による研究活動の活性化」
(分析項目I)
理工学部・工学系研究科には、常時7〜8名の外国人教員と約 120 名の留学生が在籍
し、
教育研究をとおして日本人教員および学生と活発な交流が行なわれている
(資料 10)。留学生数は、大学院生を中心に年々増加傾向にあり、平成 19 年度は平成 16 年度に比べ
て約 13%増加した。この間、学術交流協定校も約 26%増加し、特に東アジアの大学との
単位互換制度を取り入れた「国際パートナーシッププログラム」は、教育研究の両面で
着実な成果をあげている。これらの国際交流活動は、資料4〜6に示すように本学部・
研究科教員による外国雑誌への多数の論文掲載や国際会議における研究発表に繋がって
いる。 2 事例2「研究センター等を核とした組織的研究の推進」
(分析項目II)
全国共同利用施設の「海洋エネルギー研究センター(前身は昭和 55 年度設置)」、全学
施設の「低平地研究センター(前身は平成3年度設置)
」および「シンクロトロン光応用
研究センター(平成 13 年度設置)
」は、理工学部・工学系研究科を母体として設置が認
められた。このほか、学内プロジェクトの「有明海総合研究プロジェクト(平成 17 年度
設置)
」や学内共同研究の「廃棄物の無害化・再資源化の研究(平成 17 年度設置)
」等、
学科や専攻、学部の枠を越えた本学部・研究科発の研究組織が存在する。これらの研究
組織は、少人数の研究者による萌芽時代から徐々に研究の輪を拡げ、多くの研究成果を
生み出している(資料 11)
。この事実は、理工学部・工学系研究科が「理工融合」に基
づく組織的研究の醸成機関としての役割を果たしていることを示している。 資料 10 留学生数・外国人教員数・学術交流協定数の変化
年度(平成) 16 17 18 19
学士課程 30 35 38 42
修士課程 14 12 14 15
博士課程 68 71 68 70
留学生数
(人)
計 112 118 120 127
学部・研究科 5 6 6 7
他 2 2 1 1
外 国 人 教
員数
(人) 計 7 8 7 8
大学間 36 36 42 46
学部・研究科間 21 23 24 24
他 5 5 6 8
学術交流
協定数
(件)
計 62 64 72 78
資料 11 関連研究センター等の研究業績(著書・学術論文・資料等の数)
年度(平成) 16 17 18 19
海 洋 エ ネ ル ギ ー 研 究 セ ン
ター
257 297 301 271
低平地研究センター 89 109 100 114
シ ン ク ロ ト ロ ン 光 応 用 研
究センター
38 49 52 37
有 明 海 総 合 研 究 プ ロ ジ ェ
クト
− 50 43 94 佐賀大学理工学部・工学系研究科
‐4‐11‐
3 事例3「知的財産の活用体制と社会貢献」
(分析項目II)
佐賀大学は、産学官連携体制を強化し、知的財産の効率的活用体制を整えるため、科
学技術共同開発センター、佐賀大学 TLO および知的財産管理室を統合して産学官連携推
進機構を発足させた(平成 18 年度)
。同年、産学官連携推進機構は理工学部・工学系研
究科の関係分で3件の特許実施契約と1件の特許譲渡契約を民間企業と締結した(資料7)。実施契約のうち1件は、一時金として数百万円を獲得し、売り上げの3%をロイヤ
リティーとする契約であった(研究業績リストI表の No.1017 参照)
。実施契約の概要
は、大学の研究成果の活用例としてマスコミをとおして報道され、規定により実施収入
の一部が報奨金として発明教員に支払われた。この事例は、大学の研究成果が社会貢献
に結びついた具体例となり、大学教員に研究意欲の向上をもたらした。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /