佐賀大学経済学研究科

‐4‐1‐ 4.経済学研究科

I 経済学研究科の教育目的と特徴・・・・・・・・・・4−2 II 分析項目ごとの水準の判断・・・・・・・・・・・・4−4 分析項目I 教育の実施体制・・・・・・・・・・・4−4 分析項目II 教育内容・・・・・・・・・・・・・・4−6 分析項目III 教育方法・・・・・・・・・・・・・・4−9 分析項目IV 学業の成果・・・・・・・・・・・・・4−13 分析項目V 進路・就職の状況・・・・・・・・・・4−14 III 質の向上度の判断 ・・・・・・・・・・・・・・・4−16
佐賀大学経済学研究科
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I 経済学研究科の教育目的と特徴
1 経済学研究科の基本理念
経済学研究科は、経済学及び経営学・法律学の教育・研究によって幅広い視野と豊かな応
用力を培い、知識基盤社会を多様に支える高度な素養のある人材を養成するための教育を
施すことを基本理念とする。
(経済学研究科各専攻の目的)
(1)金融・経済政策専攻
国 際 経 済 、 国 民 経 済 、 地 域 経 済 等 の 諸 問 題 を 経 済 学 ・ 法 律 学 の 方 法 に よ り 解 明 し 、
実践的課題に対応しうる人材を養成すること。
(2)企業経営専攻
企 業 経 営 等 の 諸 問 題 を 経 営 学 ・ 法 律 学 の 方 法 に よ り 解 明 し 、 実 践 的 課 題 に 対 応 し う
る人材を養成すること。 2 教育目標
( 1 ) 従 来 か ら あ る 経 済 学 ・ 経 営 学 ・ 法 律 学 と い う 学 問 の 枠 組 み を こ え て 、 経 済 全 般
の 動 き を 体 系 的 ・ 理 論 的 ・ 実 践 的 に 広 い 範 囲 の 分 野 に わ た っ て 教 育 ・ 研 究 で き る 専 攻
と 専 攻 を よ り 細 分 化 し た 教 育 研 究 分 野 の 構 成 を 整 備 す る 。 教 員 組 織 は 、 社 会 に お け る
実務経験のある教員及び外国人教員をも含むバランスのとれたものとする。
( 2 ) 高 度 な 専 門 知 識 ・ 能 力 を 修 得 さ せ る た め の 教 育 カ リ キ ュ ラ ム を 編 成 し 、 専 攻 ご
と の 独 自 の 教 育 目 的 を も 実 現 で き る も の と す る 。 ま た 、 国 際 化 ・ 情 報 化 に 対 応 す る 独
自 の 授 業 科 目 を 設 け る 。 複 数 指 導 教 員 制 を と る こ と で 教 育 ・ 研 究 指 導 の 充 実 を 図 り 、
社 会 人 に 対 す る 授 業 時 間 の 弾 力 化 、 基 礎 的 素 養 の 涵 養 、 英 語 履 修 コ ー ス の 開 設 な ど 多
様 な 学 生 に 対 応 し た 教 育 課 程 の 工 夫 を 図 る 。 博 士 課 程 に 進 学 し て 高 度 の 研 究 を 継 続 す
るための高度な専門知識・能力の習得も可能なものとする。
( 3 ) 授 業 形 態 の 組 み 合 わ せ 、 研 究 指 導 に つ い て の 改 善 を す す め 、 学 生 の 主 体 的 学 習
を促す取り組みを進める。
( 4 ) 学 生 の 円 滑 な 学 位 取 得 、 資 格 取 得 を 図 り 、 専 門 能 力 を 生 か せ る 職 業 へ の 就 職 、
博士課程への進学を図る。
( 5 ) 経 済 学 研 究 科 に お け る 教 育 を 点 検 し 、 質 の 向 上 ・ 改 善 を 図 る 。 学 生 、 卒 業 生 、
その他の関係者からの意見をとりいれる。 3 組織の特徴
本研究科の組織の特徴は、従来の学問分野にとらわれることなく、多様な学問分野を統
合した2専攻体制をとっていることである。金融・経済政策専攻は経済学のみならず行政
法、政治学、歴史学などを含み、実践課題に対応した政策立案能力をもつ人材の養成を目
的としている。企業経営専攻は経営学のみならず企業に関係する法などを含み、実践的意
思決定を行いうる人材の養成を目的としている。 4 教育の特徴
教 育 の 第 1 の 特 徴 は 、 職 業 を も つ 人 々 が 勤 務 し な が ら 通 学 で き る よ う に 昼 夜 開 講 制 (14
条 特 例 に 対 応 す る 授 業 )を 実 施 し て い る こ と で あ る 。 こ の こ と は 大 き な 目 的 と し て 掲 げ て
いる。これにより夜間に講義や演習を受けて2年間とも夜間の受講で修士課程を修了する
ことができるようにしている。
第 2 の 特 徴 は 、 国 際 化 ・ 情 報 化 に 対 応 し う る 実 践 能 力 の 養 成 の た め 、 共 通 教 育 科 目
(選択必修科目)として情報基礎、実用外国語を開講していることである。
第 3 の 特 徴 は 、 国 際 化 す る 社 会 ・ 経 済 の 変 化 に 対 応 し て 、 世 界 各 国 の 大 学 ・ 研 究 機 関
(中国社会科学院、韓国全南大学校、北京工業大学他)との学術交流、学生交流を進めて
いることである。
佐賀大学経済学研究科
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第4の特徴は、地域社会の実践的課題に対応しうる人材の育成のため、経済学部地域経済
研究センターと連携して地域の経済人・自治体職員などと研究交流の場を設定しているこ
とである。 5 入学者の受入状況
本 研 究 科 で は 、 国 内 外 か ら 多 様 な 学 生 を 受 け 入 れ る た め に 、 一 般 選 抜 、 社 会 人 特 別
選抜、外国人留学生特別選抜からなる多様な入試制度を実施している。社会人選抜では、
実 務 経 験 に 基 づ い て 作 成 し た 論 文 、 業 績 報 告 書 で 筆 記 試 験 に 代 え て い る ( 中 期 計 画
No.196)。
各選抜では次のような学生を求めている。
1 一 般 選 抜 ‐情 報 化 ・ 国 際 化 の 流 れ に し っ か り 知 的 に 対 応 で き る 高 度 な 研 究 に 専 念す る
意欲に満ちた学生
2社会人特別選抜‐社会人になっても、生涯学習に意欲を燃やす人材
3 外 国 人 留 学 生 特 別 選 抜 ‐日 本 経 済 , 世 界 経 済 の 諸 問 題 の 研 究 に 専 念 し よ う と す る外 国
人 留 学 生 で 、 日 本 語 に よ る 高 い コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 学 生 は も ち ろ ん の こ と 、 英
語を高度に理解する能力を持った学生 6 想定する関係者とその期待
受験生、学生、実業界、地域社会の期待に応えることが、本研究科には求められている。
これに対して本研究科はいくつかのタイプの入学試験を実施することで受験生のニーズに
応えている。また体系的なカリキュラムを組み十分な開講科目を実施することで学生のニ
ーズに応えると同時に、実践的な能力を養成することで実業界のニーズに応えた人材を輩
出している。さらに地域社会の課題に対応する人材を育成して地域社会に貢献している。
経 済 学 研 究 科 と し て 、 想 定 す る 関 係 者 と そ の 期 待 へ の 対 応 に 関 し て は 以 下 の よ う に な
る。 想定する関係者 関係者の期待
入学志願者 入学者のタイプに応じた入試のあり方を工夫する
在学生 学 部の目的・ 目標に沿っ たカリキュ ラムの編成 。
円滑な学位の取得。
卒業生の受入企業・
地方自治体・国
専門知識に富む企業人、行政マン等の育成。
地域社会 地 域社会の政 策立案を担 う人材の育 成を通して の
地域貢献
佐賀大学経済学研究科 分析項目I
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II 分析項目ごとの水準の判断
分析項目I:教育の実施体制
( 1 ) 観 点 ご と の 分 析
観点1‐1:基本的組織の編成
(観点に係る状況)
1 専攻の構成
本研究科は高度の経済学及び経営学、法律学を修得し実践的な政策決定を行う能力を持
つ人材の養成を基本理念としており、平成4年度の開設以来、金融・経済政策専攻と企業
経営専攻の2専攻体制をとっている。金融・経済政策専攻は数量経済分析、金融・政策分
析、比較経済、地域・福祉政策の4教育分野からなり、企業経営専攻は統計情報、経営管
理、会計、企業関係法の4教育分野からなる。 2 学生定員、在籍学生数
2専攻とも学生定員は充足されており、社会人、留学生の入学も続いている。専攻ごと
の入学定員、収容定員はそれぞれ4名、8名であり、在籍学生数(5月1日)は金融・経
済政策専攻が16年度9名、17年度11名、18年度10名、19年度9名、企業経営専攻はそれぞ
れ15名、15名、18名、20名である。平成4年度開設以来、社会人・留学生が多かったが、
16年度以降は留学生のウエイトが高まっている。なお志願者数は16年度21名、17年度16名、
18年度18名、19年度23名である。競争倍率は入学定員の2〜3倍を維持しており、合格
者数はそれぞれ14名、11名、16名、14名である。

資料1 学生定員・在籍学生数(各年度5月1日現在)
在籍学生数 入学定員 収容定員 区分 16年度 17年度 18年度 19年度
一般 3 2 1 1
留学生 2 5 6 6
社会人 4 4 3 2
金融・
経済政
策専攻 4 8
小計 9 11 10 9
一般 1 0 0 0
留学生 12 14 17 19
社会人 2 1 1 1
企業経
営専攻 4 8
小計 15 15 18 20

3 教員組織の構成
2専攻・8教育分野に属する授業科目と主要授業科目への専任教員の配置は研究科履修
案内に掲載されている。授業科目は経済全般の動きを体系的・理論的・実践的に教育でき
る編成となっている。また教員組織は平成19年5月1日現在、社会人教員1名(応用計量
経済分析研究)、外国人教員2名(発展途上国経済論研究、実用外国語)を含み、出身分
野では経済・商学系出身者以外に、法学系出身者8名(企業関係法分野5名、地域・福祉
政策分野3名)、理学系・工学系出身者4名(統計情報分野)、文学系出身者2名(比較
経済分野)、社会学系出身者1名(数量経済分析分野)となっており、バランスがとれた
佐賀大学経済学研究科 分析項目I
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多様な教員構成となっている。なお研究科講義担当資格の認定には、一定の研究実績及び
准教授歴1年を要するものとしており、教育上の能力・実績も配慮している。
平成19年5月1日現在の専任教員数は金融・経済政策専攻20名、企業経営専攻20名、
共通科目1名、計41名である。分野ごとの専任教員数は金融・経済政策専攻が、数量経済
分析3名、金融・政策分析6名、比較経済5名、地域・福祉政策6名、企業経営専攻が、
統計情報5名、経営管理7名、会計3名、企業法5名である。教員構成は資料2に示すと
おり、大学院設置基準第9条に定められた専任教員数を充足し、大学院の目的に沿った質
の高い教育が可能な専任教員が確保されている。
平成19年度の開講授業科目数(演習、基礎研究、フィールドワーク、共通科目除く)
は、前期が金融・経済政策専攻10科目、企業経営専攻10科目、計20科目、後期が金融・経
済政策専攻9科目、企業経営専攻9科目で計18科目、前期・後期計で38科目である。学外
非常勤講師が担当した授業科目は1科目であった。 資料2 教員の配置(平成19年5月1日)
配 置
研究指導教員 研究指導補助教員
設置基準
金融・経済専攻 13 8 5
企業経営専攻 10 10 5
計 23 18 10
観点1‐2:教育内容、教育方法の改善に向けて取り組む体制
(観点に係る状況)
1 FD担当組織
本研究科では研究科教務委員会がFDを担当し、FD研究会の開催やアンケート調査の実
施などの活動を行っている。 2 FD研究会の開催
平成19年10月24日に経済学部FD委員会と研究科教務委員会の共催で大学院FDに関する
研究会を教員20名ほどの参加で実施した。社会人院生に対する研究指導方法と、理工系院
生の履修を受け入れているVBL関連科目の授業方法について報告、質疑がなされた。社会
人院生に対する研究指導については、職務経験に基づく専門知識を研究成果へと結びつけ
る方法、職場の勤務と学業・研究を両立させるための方法等の論議があった。VBL関連科
目(観点2‐2参照)については経済系院生と工学系院生が半々で両者の接点をなす産業
政策論の分野で、双方が知識を吸収しうる場となっている。 3 アンケート調査の実施
平成20年2月初旬に、修士論文指導上の問題、論文審査のやり方、院生の学力などに
ついて、研究科教務委員会が担当教員対象のアンケート調査を実施した。論文提出までの
スケジュールの明確化、論文提出前の中間報告の必要性、論文の字数制限、大学の文献・
図書の不足、留学生の日本語文章能力向上のためのシステムが必要、講義の受講状況は良
好などの意見が提出された。なお、実質的に修士論文の中間報告にあたる「総合セミナ
ー」〈2年次、夏期集中〉を実施することは、平成19年1‐2月の研究科委員会で審議さ
れ決定されている。 (2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準)期待される水準にある。
佐賀大学経済学研究科 分析項目I,II
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(判断理由)
観点1‐1:従来からある経済学、経営学、法律学という学問の枠組みをこえて、広範囲
の分野にわたって教育・研究できる専攻とバランスのとれた教員組織の構成となっている。
学生定員も充足されている。教員組織の構成は従来の枠組みをこえて広範囲にわたってい
る。このように学生のニーズに十分応える体制となっている。
観点1‐2:FDを担当する組織があり、教育内容、教育方法の改善への取組も実施してい
る。
このように学生の多様なニーズに十分応える体制となっており、社会の求める実践能力
を備えた人材を養成することが可能となっている。 分析項目II:教育内容
( 1 ) 観 点 ご と の 分 析
観点2‐1:教育課程の編成
(観点に係る状況)
1 カリキュラム編成
自専攻を中心として、他専攻、他研究科の授業科目を履修することで体系的な履修が
可能となっている。学生は各専攻ごとに自専攻の授業科目から22単位以上(基礎研究I.
2単位、基礎研究II.2単位、演習I.4単位、演習II.4単位、及び総合セミナー2単位
を含む)、自専攻または他専攻の授業科目から6単位以上、共通科目(情報基礎2単位、
実用外国語2単位)の中から2単位以上の計30単位を取得しなければならない。(佐賀大
学大学院経済学研究科履修細則2条2)。演習については、演習I、演習IIを2年間にわ
たり履修するものとしている(同2条3)。また、他研究科の授業科目を6単位まで修了
に必要な単位に含めることができる(同3条)としている。 2 開講科目
十 分 な 数 の 科 目 が 開 講 さ れ て い る 。 平 成 19年 度 に 開 講 し た 授 業 科 目 ( 各 々 2 単 位 ) は 、
金融・経済政策専攻21科目、企業経営専攻20科目、共通科目2科目であった。他研究科の
単位を認定された者は平成17年度に2名(教育学研究科2単位、農学研究科2単位)いた。
同一教員が隔年で複数の授業科目を担当する体制としている。金融・経済政策専攻で
は、マクロ経済データ分析と応用計量経済学研究、社会選択理論研究と数理経済分析研究、
現代貨幣論研究と金融経済論研究、経済動態分析研究と景気変動論研究、公共財政論研究
IとII、発展途上国経済論と開発経済学研究、比較労働経済研究IとII、地域経済社会論
研究と地域農業政策研究、行政基礎法研究IとII、政策評価研究と地方財政研究である。
企 業 経 営 専 攻 で は 、 時 系 列 デ ー タ 解 析 研 究 と 応 用 統 計 研 究 、 現 代 労 使 関 係 研 究 I と II 、
経営史研究と経営管理史研究、組織論研究IとII、企業論研究と法と経済研究、マーケテ
ィング論研究と流通システム論研究、商業経済論研究と流通経済論研究、管理会計論研究
IとII、経営分析論研究と国際会計研究、経済法研究IとII、環境法研究IとII、福利厚
生法研究と企業福祉法研究である。 佐賀大学経済学研究科 分析項目II
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資料3 時間割例
観点2‐2:学生や社会からの要請への対応
(観点に係る状況)
1 昼夜開講制
本研究科は、社会人の再教育を大きな目的としているので、職業を持つ人々が勤務を
続けながら通学できるように昼夜開講制(14条特例)を実施している。すなわち、各教員
佐賀大学経済学研究科 分析項目II
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は担当の講義科目を隔年で昼夜開講しており、社会人院生は夜間に講義や演習を受け2年
間とも夜間の受講で修士課程を修了することができる。この昼夜隔年開講制によって社会
人の入学・就学・修了が可能となった。各学期の開講科目は各専攻ごとに昼夜開講科目数
と夜間開講科目数のバランスを考慮して配置されており、共通科目(情報基礎、実用外国
語)については毎年度昼間・夜間とも開講している。 2 履修モデル
修了後の進路に対応して商業科・社会科教員コース、金融機関コース、自治体職員コ
ース、企業財務会計担当者コースなどの履修モデルを設定している。金融機関勤務者、自
治体勤務者、国際機関勤務者、企業法務担当者、経理専門職は、それぞれ金融・政策分析
分野、地域福祉政策分野、比較経済分野、企業関係法分野、会計分野の科目を中心に関連
分野の科目も選ぶ。公民科教員は数量経済分析分野、金融・政策分析分野、地域福祉政策
分野の科目を中心に選ぶ。商業科教員は経営管理分野、会計分野、統計情報分野の科目を
中心に選ぶという履修モデルである。 3 英語コースの開設
優れた能力と意欲を持ちながら日本語能力の取得が困難な留学生のため、平成17年度
より大学院に英語コースを開設し、英語で講義・演習を受講できるようにした。このコー
スでは、教育学部や農学部の教員の協力を受けている。現在、インドネシア、スリランカ、
タイ、ベトナム、中国からの留学生が英語での講義・演習に参加し、勉学している。英語
での大学院修士課程の存在は、海外の留学生にとって大いに歓迎されている。 4 他研究科生への開放
経済学研究科では本学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)でのベンチャー教
育を担うものとして、平成12年度より、産業政策論研究、マーケティング論研究、経営分
析論研究など6授業科目をVBL関係授業科目として、工学系研究科院生の受講を受け入れ
ている。毎年度10名近くの受講がある。他にも農学研究科院生の受講も毎年みられる。 (2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準)期待される水準を上回る (判断理由)
観点2‐1:高度な専門知識・能力を修得させ、専攻ごとの教育目的を実現しうるカリキ
ュラムが編成され、幅広い視野、国際化・情報化への対応、基礎的素養の涵養、実践的能
力の養成が配慮されている。
観点2‐2:1夜間開講(6校時・7校時、18時00分〜21時10分)によって社会人学生
教育の便宜を図り、地域社会の要請に応えている。2英語での履修コースを設け、留学生
のニーズに対応している。3起業化社会実現への地域からの要請に応えてVBLのベンチャ
ー教育も担っている。 佐賀大学経済学研究科 分析項目III
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分析項目III:教育方法 ( 1 ) 観 点 ご と の 分 析
観点3‐1:授業形態の組合せと学習指導法の工夫
(観点に係る状況)
1 指導教員制
学生ごとに指導教員1名と副指導教員1名を選び、複数で指導にあたることとしてい
る。指導・副指導教員は教員と学生の相談により、入学後4月下旬までに選定され、5月
の研究科委員会で各学生の指導教員・研究題目が審議・決定される。指導教員は、演習I、
演習IIをとおして学生の指導を行う。指導教員を複数とすることにより、指導教員の転出
や学生の研究テーマの変更の場合、指導を円滑に続けることができる。 2 授業形態の組み合わせ
少人数授業の特性を活かし、教員と学生との討論形式による授業が行われている。また、
平成19年度から、研究の質の向上を図るための「フィールドワーク」、研究論文の作成能
力を高めるための「総合セミナー」があらたに加えられ、授業形態の拡充が図られている。
・講義:履修モデルをなす各授業科目について、教員の講義と学生による討論。学生は
シラバスを見て講義を選択する。シラバスは講義内容が理解できるように工
夫されている。
・演習I、II:学生自らの研究分野を中心とする発表と討論
・共通科目:コンピュータの利用法、統計・情報の分析方法など、コンピュータに関す
る情報基礎並びにネイティブスピーカーによる経営・経済の実務に必須
の実用外国語の学習
・基礎研究I、II:1年生を対象に専攻分野に関連する基礎的素養を涵養する。個々の
学生の入学までの学修状況を踏まえて、指導教員が関連教員の協力を得
ながら、専攻分野の基礎的素養の涵養を目的として実施する。
・フィールドワークI、II:学外での調査研究とレポート作成で実践能力を養う。
・総合セミナー:2年生を対象に、論文作成能力を養うため、学生自身が本人の研究テ
ーマを中心として、専攻分野の複数の教員と学生から構成されるグルー
プで発表、討議を行う。
・TAは年間2名を採用(平成19年度)。中期計画No.049
3 シラバス
シラバスは冊子となったものとオンラインシラバスの2つがあり、学生が利用しやすい
方を利用できる。シラバスは講義内容、評価方法などが学生に理解できるように工夫し
て作成されている。(資料4)
佐賀大学経済学研究科 分析項目III
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資料4 シラバス例 佐賀大学経済学研究科 分析項目III
‐4‐11‐ 資料5 開設科目別履修登録者数(平成 19 年度) 単位:人
基礎研究I(金融・経済政策) 前期 1 比較経済思想研究 前期 2
基礎研究I(金融・経済政策) 前期 1 発展途上国経済論研究 後期 1
基礎研究I(金融・経済政策) 前期 1 地方自治法制研究 前期 1
基礎研究II(金融・経済政策) 後期 1 地域政治研究 前期 2
基礎研究II(金融・経済政策) 後期 1 応用通信システム研究 前期 5
基礎研究II(金融・経済政策) 後期 1 統計情報研究 前期 5
基礎研究I(企業経営) 前期 2 時系列デ‐タ解析研究 後期 1
基礎研究I(企業経営) 前期 3 経営財務論研究 後期 1
基礎研究I(企業経営) 前期 5 経営史研究 後期 1
基礎研究II(企業経営) 後期 2 組織論研究I 前期 6
基礎研究II(企業経営) 後期 3 企業論研究 前期 6
基礎研究II(企業経営) 後期 5 マ‐ケティング論研究 前期 10
フィールドワークI(企業経営) 前期 4 商業経済論研究 前期 15
応用計量経済分析研究 後期 1 簿記論研究 前期 5
社会選択理論研究 前期 4 管理会計論研究I 後期 10
国際通貨システム研究 前期 4 経営分析論研究 後期 5
経済動態分析研究 後期 1 福利厚生関係法研究 前期 3
経済地理学研究 前期 1 経済法研究I 後期 1
現代貨幣論研究 前期 6 情報基礎 前期 9
国際経済政策研究 前期 15 情報基礎 前期 1
産業政策論研究 後期 13 実用外国語 後期 2
公共財政論研究I 前期 3
4 教室の使用状況
大学院の講義のために大学院講義室を設置している。大学院講義室(1スパン)の使用
状況は平成19年度前期14コマ、後期14コマであった(資料3)。情報基礎の講義には経済
学部情報演習室が使用され、実用英語の講義では視聴覚機器が設置されている第7演習室
が使用されている。これ以外の講義では経済学部多目的室が使用されている。講義の内容
に応じて適切な教室が使用されている。 5 研究指導計画
基礎研究により基礎的素養を養い、履修モデルをなす授業科目により高度の知的な学
力を涵養し、フィールドワーク、共通教育科目(情報基礎、実用外国語)によって実践
的能力を養う(資料5)。
また、入学時に指導教員と相談のうえ研究題目を提出する。2年次に受講する「総合
セミナー」の前までに修士論文の題目を絞り込み提出期限2年次1月10日までに修士論
文を完成させる。論文作成に必要な資料収集・分析、文献解読・考証などの能力は「演
習」によって養い、「総合セミナー」ではグループ討議・報告により、幅広い視野から
の論文作成能力を養う(資料6)。
以上のように修士論文作成に向けてきめ細かいスケジュールが組まれており、学生の
論文作成に役立っている。
佐賀大学経済学研究科 分析項目III
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資料6 研究指導計画スケジュール
4月;指導教員選定、研究題目提出 1年次
基礎研究I(前期)
基礎研究II(後期)
演習I(通年)
2年次 ・研究テーマを絞り込み、総合セミナー(夏
期集中)での発表、討議
・12月20日までに論文題目提出
・1月10日までに修士論文提出、2月修士
論文審査、最終試験
演習II(通年) 講義 共通科目 フィールド
ワーク 6 本研究科の少人数教育の状況
履修者数(平成19年度)は、共通科目の情報基礎10名、講義では10名以上が6科目、
5‐9名が16科目、1‐4名が15科目、演習は5名以上が1科目、2‐4名が5科目、1名
が 8 科 目 で あ っ た 。 基 礎 研 究 は 5 名 が 2 科 目 、 2 ‐4 名 が 4 科 目 、 1 名 が 6 科 目 で あ っ た 。
フィールドワークは4名が履修した(資料5)。
観点3‐2:主体的な学習を促す取組
(観点に係る状況)
1 報告とレポート
講義、演習等では各々の学生に複数回の報告が課せられ、単位の認定も一定の質と量
のレポートが要求されており、学生の主体的な学習が促され、重視されている。 2 国際学術交流への参加
国際的視野をもつ高度知的人材育成のため、院生の国際学術交流への参加を奨励して
いる。具体的には、通訳、翻訳、資料作成などの業務への参加である。平成16〜18年に学
長経費で実施した「佐賀大学国際協働プロジェクト」の成果である山下寿文編『中国にお
ける国際化への課題』(中央経済社、2007年)と「佐賀大学経済論集」第37巻第5号
(2005年)での翻訳担当、平成19年9月に実施したシンポジウム「アジア諸国の経済社会
発展に対する労働力輸出入政策の影響」での通訳、資料作成担当などである。 3 地域社会との交流
地域社会の実践的課題に対応できる高度知的人材養成のため、経済学部の地域経済研
究センターを中心に、地域の経済人、自治体職員などの研究交流の場を設定している。具
体的には「佐賀地域経済研究会」、地域に関する共同研究への院生の参加、地域経済研究
センターによる共同研究「佐賀小売業の構造分析」(2004年)、「景品・懸賞付き販売の
実態と独禁法」(2004年)、「佐賀県7市における中心市街地再生方策の比較研究」
(2005年)などである。 4 大学院生研究室
経済学部の部屋(87m2)を大学院学生用研究室にあて、コンピュータ25台を設置して
いる。使用時間は8時30分から21時30分とし、社会人院生の便宜を図っている。また経済
学部研究図書室に所蔵している書籍やコピー機などが利用できるようにし、自発的な学習
を援助している。さらに佐賀大学経済学会が発行する『学生論集』への投稿を認めている。
佐賀大学経済学研究科 分析項目III,IV
‐4‐13‐
(2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準)期待されている水準にある。 (判断理由)
観点3‐1:少人数教育の特性を活かした授業形態が採用されており、また個々の学生の
論文作成能力を高めるための指導についても積極的な工夫が取り入れられている
観点3‐2:主体的な学習を行う機会や学習を促す環境が確保されており、学生の学習意
欲に十分に応える内容となっている。 分析項目IV:学業の成果
( 1 ) 観 点 ご と の 分 析
観点4‐1:学生が身に付けた学力や資質・能力
(観点に係る状況)
1 学位取得
平成15年度から17年度までの3年間をみると、留学生は厳しい生活条件の中で全員が
学位を取得し、社会人学生は昼間職場で勤務しながら9割近くが学位を取得している。一
般学生については、全員が学位を取得している。実数を見ると、修士学位を取得したもの
は、15年度入学8名のうち7名(88%)、16年度入学13名のうち13名(100%)、17年度
入学11名のうち11名(100%)である。平成15年度から18年度までの4年間の入学者計48
名のうち45名(94%)が学位を取得している。この45名は全員が2年間で学位を取得して
いる。なおこの4年間の学位取得率を区分別に見ると、一般学生5名のうち5名
( 100% ) 、 社 会 人 学 生 6 名 の う ち 5 名 ( 83% ) 、 留 学 生 34名 の う ち 33名 ( 97% ) で あ る 。
16‐17年度入学者のなかには中退・退学者はいない。15年度入学の社会人1名が退学と
なっているが、これは業務多忙のためとなっている(〔資料7〕参照)。 資料7 経済学研究科・入学年度別に見た学生の経緯
入 学 年 度 15 16 17 18
入 学 者 計 8 13 11 16
‐修了者 7 13 11 14
‐退学・除籍 1 ‐ ‐ 1
‐休学 ‐ ‐ ‐ ‐
(18年度入学者のうち1名は平成20年度前期時点で在学中) 2 資格取得
既に中学校教諭一種免許(社会)または高等学校教諭一種免許(公民、商業)を取得して
いる者は、本研究科において所定の単位を修得した場合には、当該教科の専修免許(中学
校、高等学校)を取得することができる。本研究科修了生のうち、商業高校教員の社会人
学生は修了時に専修免許を取得している(取得者数については〔資料8〕参照)。 佐賀大学経済学研究科 分析項目IV,V
‐4‐14‐
資料8 経済学研究科・修了生進路内訳
16年度修了
8 名
会計士試験準備1、 民間研究所1
商業高校教員1、 民間企業2、 帰国3
17年度修了
14 名
博士課程進学2、 金融機関2
商業高校教員1、 民間企業7、 帰国2
18年度修了
11 名
博士課程進学3、 証券会社1
商業高校教員1、 民間企業5、 帰国1
19年度修了
14 名
博士課程進学4、 民間企業5、 帰国4
留学1
〔平成19年4月11日 研究科委員会資料〕 観点4‐2:学業の成果に関する学生の評価
(観点に係る状況)
経済学研究科では「学生による授業評価アンケート」は講義・演習を含むすべての科目
を対象として実施されている。18 年度後学期に実施したアンケートの主要6項目の研究
科としての平均値は、5段階評価で概ね4を上回っている。とりわけ「授業内容の理解」
は4.61、「興味がもてた」が4.77とかなり高くなっている(資料9)。授業評価アンケー
トの結果は、ほぼ満足できる水準にあるといえる。 資料9 「学生による授業評価アンケート」回答結果
質問項目
(質問番号)
目標把握
できたか
(A4)
授業内容
の理解
(B1)
興味がも
てたか
(B2)
工夫が感
じられた
か(C1)
質問への
対応
(C2)
授業への
満足度
(D1)
研究科
平均値
3.85 4.61 4.77 4.66 4.67 4.73
注:平成19年度後期授業評価結果より集計 (2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準)期待される水準を上回る (判断理由)
観点4‐1:学位取得の状況および資格取得の状況は順調である。
観点4‐2:学生による授業評価から、授業理解度、授業への関心度、教員の工夫・対応
のすべての面において、高い評価結果が得られている。
学生の要望に十分に対応しているといえる。 分析項目V:進路・就職の状況
( 1 ) 観 点 ご と の 分 析
観点5‐1:卒業(修了)後の進路の状況
(観点に係る状況)
本研究科の修了生は、銀行等の金融機関、証券会社、民間研究所等に就職しているほか、
学修の成果をさらに発展させる意欲の下、後期博士課程への進学者、国家資格の取得を目
指す者が見られる。
平成15年度〜18年度まで4カ年間の研究科修了生46名の進路状況は次のとおりである。
博士課程進学者は17年度2名、18年度3名、19年度4名であり、9名とも工学系研究科
博士課程へ進学した。経済学研究科担当教員のうち8名は工学系研究科博士後期課程の担
佐賀大学経済学研究科 分析項目V
‐4‐15‐
当教員となっており、これら9名の博士課程院生を指導している。終了後に海外に留学し
たものが1名いる。商業高校教員3名は修士学位取得によって専修免許を取得しており、
いずれも入学以前から高校教員であったものである。経理分野では公認会計士試験準備1
名である。金融証券分野では金融機関2名、証券会社1名である。他に、民間研究所1名、
留学1名、民間企業19名であり、留学生のうち終了後帰国したものが10名となっている。
なお民間企業就職者19名の職務内容は、国際営業、マーケティング、貿易など専門知識の
活用を要するものが主である(資料8参照)。
なお、就職先地域は関東・九州地域が多い。 観点5‐2:関係者からの評価
(観点に係る状況)
1 進学者に対する評価
修了後、博士課程に進学した修了生の学力についての博士課程指導教員の評価は良好
である。 2 勤務先での評価
高校教員、経理専門職、国際営業などで活躍している修了生に対する勤務先での評価
は良好である。商業高校教員の修了生は簿記会計教育で指導的役割を果たしており、その
うち2名は経済学部地域経済研究センター報告書「佐賀県内の商業高校における簿記会計
教育の現状と課題」(2005年3月)を執筆している。
修了生の勤務先企業等へのアンケート調査を行った(2008年3月実施)。その集計結果
は、企業等の修了生の仕事面での満足度は「満足」が多い。修了生の勤務先での評価は十
分に高いといえる(資料10)。 資料10 修了生の勤務先での評価
大いに満足 満足 やや不満 不満
16.7% 83.3% 0.0% 0.0% (2)分析項目の水準及びその判断理由
(水準)期待される水準にある。 (判断理由)
観点5‐1:1高校教員、経理専門職、国際営業など高い専門知識を要する職業について
いる。2博士課程進学者も増加している。
観点5‐2:1博士課程進学者の学力についての評価は良好である。2修了後社会人とな
った者に対する勤務先の評価も良好である。
終了後の進路状況は学生の要望に十分に応えているということができる。また進学、就
職先での修了生の評価も高いことから社会の要請に対しても対応しているということがで
きる。 佐賀大学経済学研究科
‐4‐16‐
III 質の向上度の判断 1 事例1「円滑な学位取得」(分析項目IV)
(質の向上があったと判断する取組)
少 人 数 教 育 に よ る 研 究 指 導 方 法 に よ り 、 修 業 年 限 内 の 学 位 取 得 者 を 輩 出 し た 。 14 年 度
入学生のうち、2年間で修了(学位取得)したのは 12 名で、1名は 17 年3月に3年間で
修 了 、 残 り 1 名 は 退 学 し た 。 15 年 度 入 学 生 8 名 の う ち 、 7 名 は 2 年 間 で 修 了 し 、 1 名 は
退学である。16 年度入学生 13 名、17 年度入学生 11 名は、いずれも全員が2年間で修了
(学位取得)した。法人化以後、円滑な学位取得を完璧に実現した。
中 期 計 画 ( 011) に 掲 げ る 少 人 数 ク ラ ス の 専 門 教 育 の 充 実 、 中 期 計 画 ( 022) の 修 学 年
限度内の学位取得をめざすという目的を達成している。 2 事例2「博士課程進学者の増加」(分析項目V)
(質の向上があったと判断する取組)
研究科修了後、博士課程への進学者を輩出し、社会人学生やアジア各国からの留学生の
より高度な研究をめざす期待に応えた。16 年3月、17 年3月修了生ではいずれもゼロで
あ っ た が 、 18 年 3 月 修 了 生 で は 2 名 、 19 年 3 月 修 了 生 で は 3 名 、 20 年 3 月 修 了 生 で は
5名が博士課程に進学した。
3 事例3「英語コースの開設」(分析項目II)
(質の向上があったと判断する取組)
17 年 度 よ り 英 語 コ ー ス を 開 設 し 、 日 本 語 能 力 取 得 困 難 な 留 学 生 も 入 学 し 、 履 修 で き る
ように入試、授業内容を改正することにより、アジア諸国からの留学生を受け入れている。
同コースの学生は、17 年度入学2名、18 年度入学1名、19 年度入学2名である。
中 期 計 画 ( 030) の 目 指 し た 、 専 攻 内 容 に 見 合 っ た 学 力 試 験 を 実 施 す る こ と を 達 成 す る
ものである。 4 事例4「体系的なカリキュラムの編成」(分析項目II)
(質の向上があったと判断する取組)
大学院設置基準の改訂をふまえ、体系的な教育課程の編成、基礎的素養の涵養、研究指
導 計 画 の 策 定 な ど の た め に 、 授 業 科 目 等 を 整 備 し た ( 分 析 項 目 III 、 観 点 3 ‐1 ) 。 シ ラ バ
スの内容も学生に理解しやすいように工夫されている(資料4)。修士課程学生に期待さ
れる学力を身につけた学生を育成するための、より良いカリキュラム編成となっている。

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