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国立大学法人佐賀大学の平成26年度に係る業務の実績に関する評価結果
1 全体評価
佐賀大学は、地域における高等教育の機会を保障することを使命とし、教養教育を人
間形成の中心的な役割を担う教育の根幹と位置づけ、学士課程から大学院博士課程まで
教養を体系的に身に付ける高等教育を目指している。第2期中期目標期間においては、
独自の教養教育システムを創出し、際立つ個性と豊かな知性・感性を身に付け、現代社
会の動向を的確に捉えてリーダーシップを発揮するプロフェッショナルを育成すること
等を目標としている。
この目標達成に向けて学長のリーダーシップの下、ラーニング・ポートフォリオを大
学院教育に拡大して大学院生の学習・研究実施状況の把握及び指導教員の研究指導報告
書作成を支援するとともに、全学教育機構が開講するインターフェースプログラムにお
いて地域課題解決型のアクティブ・ラーニングを実施するなど、
「法人の基本的な目標」
に沿って計画的に取り組んでいることが認められる。
(機能強化に向けた取組状況)
優秀な若手研究者等の活躍の場の拡充を図るため、教育研究評議会の下に設置した年
俸制導入検討部会において検討を進め、関係規程等を整備し、16 名の教員を年俸制で採
用している。また、組織再編構想の実現に向けて設置した「芸術学部(仮称)設置準備
委員会」の委員を中心として、芸術・デザインに関連する国内外の大学等の実地調査を
行い、カリキュラム編成内容、入試や就職支援における工夫及び施設設備の整備状況等
について、検討を進めている。
2 項目別評価
I.業務運営・財務内容等の状況
(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標
1組織運営の改善、2事務等の効率化・合理化
平成 26 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
○しろまる 戦略的・重点的事項の推進に向けた評価手法の改善による予算配分
評価反映特別経費(学長経費)を 7,000 万円に増額(対前年度比 2,000 万円増)する
とともに、評価対象の拡大や評価項目の追加、重要課題に関する重点評価項目及び KPI
(指標)の設定等を行い、各部局等の取組とその成果に対する事業評価及び IR
(Institutional Research)機能による教学・学術・社会貢献・経営基盤の4視点に関す
るデータの分析による業務評価に基づき、予算配分を行っている。
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【評定】 中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由) 年度計画の記載 14 事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認め
られ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。
(2)財務内容の改善に関する目標
1外部研究資金、寄附金その他の自己収入の増加、2経費の抑制、
3資産の運用管理の改善
【評定】 中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由) 年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認め
られることによる。
(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標
1評価の充実、2情報公開や情報発信等の推進
【評定】 中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は
「年度計画を十分に実施している」と認められることによる。
(4)その他業務運営に関する重要目標
1施設設備の整備・活用等、2安全管理と環境、3情報基盤の強化、
4男女共同参画の推進、5法令遵守
平成 26 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
○しろまる 環境への負荷低減に向けた取組と実績
節電パトロール等の節電対策を実施するとともに、新入学生への環境教育やエコア
クション 21 専門委員会委員による内部監査を実施することで、平成 22 年度と比較し
て、夏期は 1,350MWh(18.1 %減)
、冬期は 1,136MWh(13.5 %減)の使用電力量を削
減し、約 1,520 tの CO2 を削減している。
平成 26 年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。
○しろまる 国立大学病院管理会計システムの利用における課題
会計検査院から指摘を受けた、国立大学病院管理会計システム(HOMAS)の継続
的な利用に至らなかったなどの問題点について十分検討し、導入が予定されている次
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期システムを効果的かつ継続的に利用するために、次期システムの利用方針等を明確
にするなどして、その利用に必要な体制の整備を図ることが望まれる。
【評定】 中期計画の達成に向けて順調に進んでいる
(理由) 年度計画の記載 10 事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認め
られるほか、平成 25 年度評価において評価委員会が指摘した課題について改
善に向けた取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。
II.教育研究等の質の向上の状況
平成 26 年度の実績のうち、下記の事項が注目される。
○しろまる 全学での新しい教養教育の実施
フィールドワークやグループワークを通じて学生の自主性の向上を図ることを目的
とした新教養教育システム(大学入門科目、共通基礎科目、基本教養科目、インター
フェース科目、外国人留学生プログラムのための授業科目及び学部間共通教育科目)
での授業を全学部において、新たに開講している。
○しろまる 大学院教育における学習支援の充実
ラーニング・ポートフォリオを大学院教育に拡大して大学院生の学習・研究実施状
況の把握や指導教員の研究指導報告書作成を支援するとともに、
「研究指導実施報告書」
の確認を学位審査の要件とすることで、平成 26 年度修了予定者の研究指導報告書の作
成率が 100%を達成するなど学習支援を強化している。
○しろまる 学際的・複合的領域研究の活性化に向けた取組
学問分野を越えた複数の教員や国内外の研究機関の研究者で構成するバーチャル型
研究所「プロジェクト研究所」として、分子薬理化学研究所等7研究所を新たに採択
し、継続している 17 研究所と併せて計 24 研究所を設置しており、教員相互の有機的
なネットワークの構築により組織的な研究活動の活性化につながっている。
○しろまる アクティブ・ラーニングを通じた地域を志向する教育に関する全学的取組の推進
全学教育機構が開講するインターフェースプログラム「地域創成学」、「有明海学」、「地域環境の保全と市民社会」において、地域資源マップ作成やイベント支援等の地
域課題解決型のアクティブ・ラーニングを実施するなど、地域を志向する教育研究に
全学的に取り組んでいる。
○しろまる 国際的研究交流の推進
国際研究集会開催支援事業として、大学又は部局等が主催する6件の国際研究集会
(国際会議、国際シンポジウム、セミナー等)を対象に、海外研究者招へい旅費や会
場借上等に対して1件当たり 100 万円を上限とする支援を行うことで、
平成 25 年度(総参加者 599 名(うち外国人 135 名)
)を超える総参加者 793 名(うち外国人 200 名)規
模の国際交流に結び付き、研究者間の活発な研究情報交換が行われ、研究ネットワー
ク形成を促進している。
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附属病院関係
(教育・研究面)
○しろまる 不足分野における医師の養成及び派遣
「佐賀県地域医療再生計画」に基づき、不足分野医師を養成するための寄附講座「地
域医療支援学講座(寄附者:佐賀県)
」を設置し、教授や助教を配置することにより、
地域における守備範囲の広い総合内科医の養成・派遣を行っている。
(診療面)
○しろまる 佐賀県初の「高度救命救急センター」の整備
佐賀県では広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病患者に対応する高度救命
救急センターが未整備となっていたことから、これらに対応する医療施設として附属
病院が佐賀県内で初めて、かつ、九州では3施設目となる「高度救命救急センター」
の指定を受けている。
○しろまる 診療の標準化、効率化に向けた取組
入院診療計画書併用クリティカル・パスを、診療記録委員会において、これまで 48
例の承認を行っており、
平成 26 年度は 2,238 件に適用し、
診療の標準化を図っている。
また、電子カルテ上のクリティカル・パスを 2,175 名(延べ 2,505 名)の患者に適用す
るとともに、適用したクリティカル・パス 132 パスのうち、10 例以上に 51 パスを適
用、50 例以上に 14 パスを適用し、診療の標準化、効率化を進めている。