佐賀大学農学部・農学研究科
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6.農学部・農学研究科
(1)農学部・農学研究科の研究目的と特徴 ・・・・・・ 6-2
(2)「研究の水準」の分析 ・・・・・・・・・・・ 6-3
分析項目I 研究活動の状況 ・・・・・・・・・ 6-3
分析項目II 研究成果の状況 ・・・・・・・・・ 6-12
【参考】データ分析集 指標一覧 ・・・・・・・ 6-14
佐賀大学農学部・農学研究科
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(1)農学部・農学研究科の研究目的と特徴
1.農学部及び農学研究科の基本理念
佐賀大学が立地する佐賀県は、農業、有明海水産業、製造業、製薬業、窯業などが
地場産業として長い歴史を持つ。また、社会情勢の変化により、農業分野においても、
他分野との境界域を超えて、医食同源、機能性食品開発、スマート農業などに代表され
るように分野間の融合が進んでいる。佐賀大学には、このような地域産業を振興し、新
たな地域創生を担う研究成果を創出する使命があり、農学部・農学研究科は、普遍的
な真理を追究する科学の進歩と地域農業の発展に大きく貢献してきた。しかし、今、社
会は様々な面で多様化が進み、科学及び技術の画面において、その広がりと深さを増
しており、このような社会的要請に応えるために、私たちの生活にとって有益な生物の
生産・利用と環境保全に問わる総合科学である農学の発展にさらに貢献するとともに、
人類の繁栄に貢献することを目指している。
2.各コースの研究目的と特徴
生物科学コース
本コースは、広範な生物資源の探索と機能解析、有用生物の育種開発、生態系
における生物制御機構の解析、バイオテクノロジーによる新素材の開発等、バイ
オサイエンスに関する総合的かつ実践的な研究を行う。本コースでは、遺伝子・
細胞・代謝レベルから、生態系における個体レベルまで広範な領域における研究
を実践し、生物科学を基盤とした様々な分野に関する包括的な教育研究を行うこ
とにより、グローバル化時代に対応できる幅広い視野を持って、世界の食糧・健
康・環境・生物多様性などの諸問題の解決、生物関連産業の振興及び生物科学の
発展に貢献できる研究を実践する。
食資源環境科学コース
本コースは、農林水産業の生産基盤整備と環境保全、食資源に関する農水産業
や環境に関連する研究を行う。農学分野の中でも、特に、農業工学領域における
水資源及び地盤環境等の生産基盤領域、バイオマス利活用、環境修復、IT 活用に
対応し、食資源環境科学の先端領域と農業生産や環境に関する諸問題の解決に貢
献するための研究を実践する。
生命機能科学コース
本コースは、生命化学や食料科学を基礎として食品や医薬品の関連産業に関連
する研究を行う。農学分野の中でも、特に農芸化学の領域において、食品の安全
や栄養化学、食品加工技術や微生物の応用等、食品の栄養健康機能のみならず、
生物資源の化学的利用に関する研究に取り組み、生命機能科学の先端領域と、食
料や健康に関する諸問題の解決に貢献する研究を実践する。
国際・地域マネジメントコース
本コースは、国際的な農業・農村振興の視点から、農業や地域産業の育成に関
わる文化及び社会システム、地域社会の基盤となるマネジメントに関する研究を
行う。国際・地域マネジメントの領域において、農学を基盤とした地域振興と国
際協力に貢献する研究を実践する。
佐賀大学農学部・農学研究科 研究活動の状況
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(2)「研究の水準」の分析
分析項目I 研究活動の状況
<必須記載項目1 研究の実施体制及び支援・推進体制>
【基本的な記載事項】
・ 教員・研究員等の人数が確認できる資料(別添資料 7506-i1-1)
・ 本務教員の年齢構成が確認できる資料(別添資料 7506-i1-2)
・ 指標番号 11(データ分析集)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる 2015〜2019 年度に実施した文部科学省 地(知)の拠点大学による地方創生推
進事業(COC+)において、化粧品開発拠点、IT農業拠点、プロジェクト
研究拠点の構築に取り組み、佐賀県及び地元自治体、各産業クラスター、海外
大学との連携関係を構築している。(別添資料 7506-i1-3)[1.1][2.1]
しろまる 本学の研究推進戦略に基づいた機能強化として 2018 年から「農水圏プロジェ
クト」
を立ち上げ、
佐賀県の地域特性を活用した研究推進体制を構築している。
また、農水圏プロジェクトの教員1名について、鹿島市とクロスアポイント契
約を行い、研究課題の迅速な立ち上げと自治体と一体化した推進体制を構築し
ている。(別添資料 7506-i1-4〜11)[1.1][2.1]
しろまる URAによる地元企業の需要の掘り起こしと、学部教員の研究内容のマッチン
グにより、積極的な共同研究体制の構築や外部資金への応募を促進しており、
2018 年度及び 2019 年度ともに国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、
内閣府、地元企業などから合計6件(2018:6,078 万円、2019:6,231 万円)を
導入し、
先導的な研究の活性化に貢献している。
(別添資料 7506-i1-12)
[1.1]
[2.1]
しろまる 2018 年に採択されたJSTの先端研究基盤共用促進事業
「新たな共用システム
導入支援プログラム」において、技術補佐員1名と技能補佐員2名を雇用し、
学内及び学外からの共同機器の利用に対応できる体制を整備した。(別添資料
7506-i1-13)[1.1][2.2]
しろまる 若手・外国人・女性研究者の割合を増加させる取組として、「農水圏プロジェ
クト」を担当する若手教員1名を新たに雇用したほか、食品機能化学分野につ
いて女性限定の教員公募を行い候補者を選考した。(別添資料 7506-i1-14)
[1.1][2.2]
佐賀大学農学部・農学研究科 研究活動の状況
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<必須記載項目2 研究活動に関する施策/研究活動の質の向上>
【基本的な記載事項】
・ 構成員への法令遵守や研究者倫理等に関する施策の状況が確認できる資料
(別添資料 7506-i2-1)
・ 研究活動を検証する組織、検証の方法が確認できる資料
(別添資料 7506-i2-2)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる 研究推進戦略として、科研費の採択率向上を目指して、専門分野が近い教員同
士で第三者からの視点による相互査読制度を導入した(別添資料 7506-i2-3)。
査読者にインセンティブを付与した。農学部の科研採択数は 2018 年度まで 33〜
35 件(新規及び継続、代表のみ)を推移していたが、2019 年度は 42 件(10,250
万円)へ増加した。(別添資料 7506-i2-4)[2.1]
しろまる 農学部で取り組んできた有明海の海苔機能性研究や干潟環境への研究に加え
て、本学低平地沿岸海域研究センターの有明海研究プロジェクトを統合し、2017
年から農学部の特色を生かした「農水圏プロジェクト」を立ち上げ、新たに、海
苔のゲノム研究や二枚貝の生態についての研究課題に取り組んだほか、
2019 年に
は本庄キャンパス内に植物工場を新設し、環境制御型農業の研究にも着手した。
また、本学の強みである多様な遺伝資源研究を発展させ、ダイズやイネなどで特
色のある新品種の育成についての研究も推進している。なお、農水圏プロジェク
トの教員1名について、
2019 年から鹿島市とクロスアポイント契約を行った。(別添資料 7506-i2-5)[2.1][2.2]
しろまる 佐賀市と連携して藻類バイオマス研究を推進している。
2016 年8月に、
佐賀市・筑波大学・佐賀大学による「藻類バイオマスの活用に関する研究開発協定」を締
結し、2017 年7月から関連事業者、佐賀県、佐賀市、筑波大学、佐賀大学からな
る「さが藻類バイオマス協議会」を発足させ、2018 年3月から佐賀大学農学部に
「さが藻類産業研究開発センター」を設置し、次世代バイオマス産業の研究開発
を推進している。
2019 年からは内閣府SIP戦略的イノベーション創造プログラ
ム(スマートバイオ産業・農業基盤技術)の採択(5カ年事業)を受けている。
(別添資料 7506-i2-6〜8)[2.1]
しろまる 博士課程として鹿児島大学連合農学研究科を構成し、学位取得者を育成してい
る(佐賀大学の累積 195 名、2019 年度8名)。博士課程の指導教員は、5年おき
に資格審査を受けることによって研究指導の質を維持する体制となっている。
(別添資料 7506-i2-9)[2.2]
佐賀大学農学部・農学研究科 研究活動の状況
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<必須記載項目3 論文・著書・特許・学会発表など>
【基本的な記載事項】
・ 研究活動状況に関する資料(農学系)(別添資料 7506-i3-1)
・ 指標番号 41〜42(データ分析集)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる 農学部及び農学研究科では、
査読付き論文の定義として、
Pubmed へ登録されて
いる学術雑誌、Clarivate Analytics の InCites Journal Citation Reports に
掲載されているインパクトファクター付き学術雑誌、日本学術会議協力学術研究
団体又は第 19 期日本学術会議学術登録研究団体の学術雑誌に掲載された Full
paper の原著論文としており、第3期中期目標期間に合計 321 報の査読付き論文
を発表した。(別添資料 7506-i3-1)(再掲)
<必須記載項目4 研究資金>
【基本的な記載事項】
・ 指標番号 25〜40,43〜46(データ分析集)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる URAと積極的に連携し、
COC及びCOC+事業を推進しながら共同研究及
び受託研究を進めており、これらの件数及び研究資金額は増加傾向にある。
共同研究は企業との案件が多く、受託研究は農林水産省や環境省が管轄する公
的な研究資金、又は地方公共団体からの委託が主となっている。2016 年の 24 件
(総額 1,246 万円)から、2019 年は 48 件(2,980 万円)へ増加した。受託研究で
は地域課題及び地域資源の活用を目指した研究課題が数多く採択されており、地
方創生の中心を担う地
(知)
の拠点大学として機能を反映した状況となっている。
2016 年の 20 件(6,933 万円)から、2019 年は 24 件(5,993 万円)へ増加した。
(別添資料 7506-i4-1)[4.0]
佐賀大学農学部・農学研究科 研究活動の状況
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<選択記載項目A 地域連携による研究活動>
【基本的な記載事項】
(特になし)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
農学部・農学研究科は、COC及びCOC+大学として、農業、
有明海水産業、
製造業、製薬業、窯業といった地場産業や自治体等と積極的に連携した研究活動
に取り組み、成果を査読付き論文として多数発表している。その中で、学術団体
や外部団体(都道府県、事業者、マスコミ等)から貢献を高く評価された取組を
取り上げた。
しろまる 佐賀県酒造組合の協力のもと、佐賀県内の酒蔵において、農学部応用微生物学
の研究成果として分離、育種された酵母や乳酸菌とアグリ創生教育研究センター
で栽培されたお米を利用し、教員及び学生が県内の酒蔵へ出向いて酒作りに取り
組み、最新の醸造技術の伝承を行うことで地域の醸造技術の底上げを実践してい
る。製造した日本酒は佐賀大学オリジナル清酒「悠々知酔」と銘打ち一般販売さ
れ高い評価を得ている。(別添資料 7506-iA-1〜3)[A.1]
しろまる 2016 年に発生し西日本のタマネギ生産に壊滅的打撃をもたらしたべと病対策
として農林水産省 革新的技術開発・緊急展開事業の採択を受け、
佐賀県が研究総
括として、佐賀大学、農研機構九州沖縄農業研究センター及び兵庫県との間でコ
ンソーシアムを組織し、佐賀大学では土壌中のべと病菌の発生生態を解明し、防
除技術の構築に貢献した。これらの成果はタマネギべと病防除対策マニュアルと
して佐賀県のホームページで公開されており、国内におけるタマネギの安定生産
に貢献している。(別添資料 7506-iA-4〜8)[A.1]
しろまる 佐賀大学農学部と佐賀県が協力し、
「麦わら」の圃場還元による農地肥沃度の
維持効果と植物成長抑制物質に着目した新たな雑草防除効果を証明した。これら
の成果は、九州北部の水田農業における有機物処理の基盤技術構築の指針として
利用され佐賀県の農業技術マニュアル及び農家指導パンフに反映されている。こ
れらの成果は、
西南暖地に拡がる米麦二毛作地域の農業振興に利活用可能であり、
成果論文は 2018 年度 第 15 回・日本作物学会論文賞を受賞して高い評価を得た。
(別添資料 7506-iA-9)[A.1]
しろまる 佐賀大学に蓄積するダイズ遺伝資源を活用して地域性にあった特色ある2つ
の新品種の育成に成功した。このうち高品質・大粒の黒ダイズ品種である「佐賀
黒7号」は、佐賀県農業試験研究センターと連携して開発したもので、2017 年に
佐賀県から品種登録され、県内への普及に向けた取組を進めている。また、「佐
佐賀大学農学部・農学研究科 研究活動の状況
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大 HO1 号」は 2010 年度に日本育種学会論文賞を受賞した新規突然変異遺伝子を
活用して開発した、世界初の non-GM 高オレイン酸ダイズ品種であり、2018 年に
品種登録を出願しており、
JAさが、
佐賀県と連携して 2020 年からの商業生産に
向けた取組を進めている。(別添資料 7506-iA-10〜14)[A.1]
しろまる キクイモに含まれるイヌリンは、
血糖値の上昇抑制と腸内環境を整える機能性
を保持し、キクイモを食べることでインシュリンに類似する効果を持つ。佐賀大
学農学部ではキクイモ 26 系統から栽培に向き機能性成分が安定した系統を選抜
し新系統「サンフラワーポテト」を商標登録し、農林水産省の支援をうけて「佐
賀・福岡地域機能性農産物推進協議会」を組織し、農業生産者、行政機関、食品
加工・製造業者、
流通小売事業者 35 団体と協力してブランド化と普及活動を実施
している。(別添資料 7506-iA-15〜17)[A.1]
しろまる 佐賀市の有明海沿岸に位置する東よか干潟のマクロベントス群集とその生息
環境である底質環境の調査活動を通して、マクロベントス群集の空間的分布特性
や底質環境の経年変化を明らかにし、ラムサール条約湿地「東よか干潟」の環境
保全及びそのワイズユースのためにこれらの知見を提供し、
2018 年3月に佐賀市
が策定した
「東よか干潟環境保全及びワイズユース計画」
の指針として反映され、
現在は、それらの知見に基づくモニタリング調査を継続して実施している。(別
添資料 7506-iA-18〜19)[A.1]
しろまる 佐賀県内に生息する希少生物の生態解明を行うために、
佐賀自然史研究会と連
携し、佐賀県に生息する哺乳類では唯一の天然記念物であるヤマネをはじめ、オ
ヒキコウモリ、カササギ、アリアケスジシマドジョウ、トンボ類、クモ類、シチ
メンソウなどを調査し、生態の解明に貢献した。一連の成果は、佐賀自然史研究
などに6編の論文として発表し、日本河川協会から雑誌「河川」への寄稿依頼を
受けて発表された。また、佐賀県内や九州北部地域の生物多様性や希少生物の保
全に関して、
国内で8件の講演依頼に対応した。
(別添資料 7506-iA-20〜28)
[A.1]
<選択記載項目B 国際的な連携による研究活動>
【基本的な記載事項】
(特になし)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる 世界規模で農作物に甚大な被害を与える代表的なウイルスである、
一本鎖RN
Aウイルスであるポティウイルス属のカブモザイクウイルスやジャガイモウイル
ス、分節ゲノムRNAであるキュウリモザイクウイルス、そして2本鎖DNAで
佐賀大学農学部・農学研究科 研究活動の状況
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あるカリフラワーモザイクウイルスの分子進化について、先端バイオインフォマ
ティクスを用いて適応進化、病原性進化、拡散とその年代を世界に先駆けて数報
の論文として公表した。これら一連の研究は、農学部教員が代表者である科学研
究費基盤(B)海外学術調査研究などの成果でもあり、オーストラリア、イギリ
ス、トルコ、ギリシャ、イラン、ペルーの海外共同研究者と連携した。またこれ
らの成果の多くは同農学部教員が責任著者として、著名な国際誌へ掲載されてい
る。
さらに、
同農学部教員は上記の研究テーマにおける世界的な活躍が認められ、
国際ウイルス分類委員会のポティウイルススタディグループの一員に選抜され
た。メンバーとしては、オーストラリア、スペイン、ドイツ、カナダ、ブラジル、
アメリカ、ペルー、インド他の一線級の研究者がおり、そのメンバーと連携して
ウイルス分類を提案し論文として公表した。その結果、その論文は、FWCI が 7.5
となり、国際的に高い評価を得ている。(研究業績番号 1)[B.1][B.2]
しろまる 熱帯地域におけるイネの生産性と安定性の向上に向けた研究として、
国際稲研
究所(IRRI、フィリピン)と日本との共同研究プロジェクトとして、熱帯地
域で栽培されるインド型イネ IR64 の籾数増加を司る遺伝子座を特定し、IR64 の
収量を増加させることを示した。また、IRRIの Entomology 研究室と協力し、
熱帯アジアで多発するツングロ病ウイルスを媒介しイネの生産性を減少させる要
因であるタイワンツマグロヨコバイに対して抵抗性を示す遺伝子を特定し、これ
らの遺伝子を複数保有する系統を用いて持続的な抵抗性の効果などを検証してい
る。(研究業績番号 7)[B.1]
しろまる 米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校との共同研究として、
光質が根粒共生
及び菌根共生に与える影響を解明した。つまり、菌根菌は高等植物と共生すると
宿主植物の成長を促進することが知られているが、地上部へ照射される光の質が
その成立に影響を与え、また根粒菌とマメ科植物の共生では根に青色光が当たる
と根粒形成が抑制されることを明らかにした。(別添資料 7506-iB-1)[B.1]
しろまる 台湾(国立中興大学)、中国(中国科学院)、韓国(高麗大学校)、マレーシ
ア(サラワク州森林局)、米国(アメリカ農務省)、英国(元・国際昆虫学研究
所)の研究者と連携して東アジア及び東南アジア地域における虫えい形成昆虫類
の多様性解明に取り組み、ハエ目タマバエ科の新属をマレーシアから発見し、新
種を台湾、韓国、中国から発見して報告した。また、それぞれの種の生活史や生
態、遺伝的多様性などの解析を実施した。一連の成果は、インパクトファクター
付きの国際学術雑誌に計6編の論文として掲載され、生物多様性の解明に貢献し
た。(別添資料 7506-iB-2)[B.1][B.2]
しろまる 生物は様々なストレスに晒されているが、
ある個体にとって致死的となるスト
佐賀大学農学部・農学研究科 研究活動の状況
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レスレベルは必ずしも固定的なものではなく、多様な内的・外的要因によってそ
のレベルは変動する。中でも、"ストレス順応性"あるいは同義の"ホルミシス"
はその最たるものであるが、その詳しい誘導メカニズムは未解明な生理現象と言
える。そこで、アメリカ国立衛生研究所/国立環境衛生科学研究所と共に、サイ
トカインに焦点を当てて昆虫とストレスとの関係について共同研究を実施し、ス
トレス順応性誘導のメカニズムに関する生命科学分野における重要な研究成果を
産み、
3.22〜8.58 の極めて高いサイトスコアを持つ国際誌に原著論文や総説を発
表した。(別添資料 7506-iB-3)[B.1]
<選択記載項目C 研究成果の発信/研究資料等の共同利用>
【基本的な記載事項】
(特になし)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる 東日本大震災によって環境中に放出された放射性セシウムによる汚染地域の
復興支援と農業復旧を目的として、汚染地域居住者主体の官民学の連携ネットワ
ークを構築し、科学的知見に基づく放射性セシウム汚染との向き合い方、地域農
業の復興を支える人材の育成、現地観測データのアウトリーチ活動を展開し、各
地での招待講演、学習教材出版を行った。(別添資料 7506-iC-1)[C.1]
<選択記載項目D 国際的な連携による社会貢献>
【基本的な記載事項】
(特になし)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる アフリカでは、
「アフリカ稲作振興のための共同体("Coalition for African
Rice Development"、以下CARD)」が成立し、国家稲作振興戦略を進めてい
る。佐賀大学農学部は、これらの政策に基づくプロジェクト支援活動として独立
行政法人国際協力機構(JICA)からの委託を受け、複数のプロジェクトを実
施している。(別添資料 7506-iD-1〜4)[D.1]
1)灌漑稲作に関する人的・技術的支援として、2017 年度はカメルーンの準高級
官僚級4名を佐賀大学に招へいし、灌漑稲作技術に関する講義及び農業関連施設
の視察研修を行った。2019 年度はカメルーン、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国
佐賀大学農学部・農学研究科 研究活動の状況
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の稲作関係者を佐賀大学に招へいし、同様の研修事業を実施した。(別添資料
7506-iD-1)(再掲)[D.1]
2)中部アフリカに適した品種の改良と有用形質に関する遺伝子の特定を目的と
して、農学部教員及び学生が、2016 年から計3回JICAの短期専門家として現
地に滞在し、稲作振興プロジェクトに参画した。研究成果として、陸稲 NERICA 品
種の改良を行うための解析集団を栽培し、生産性に関する有用形質の遺伝子座を
特定し、これらの知見に基づいて、混入した稲種子の純化とカメルーンに適した
品種の導入を実施している。2015 年以降、カメルーン稲作振興プロジェクトに関
係して、在カメルーン日本国大使館の岡村大使やJICAカメルーン所長が佐賀
大学を訪問している。2016 年と 2017 年には、在カメルーン日本大使公邸におい
て業務進捗を説明した。現在では、稲作振興プロジェクトを通じて、1 万戸以上
の農家に種子配布や技術指導を行っている。(別添資料 7506-iD-2〜3)(再掲)
[D.1]
しろまる 南ベトナムは水田多毛作による水資源及び土壌資源の枯渇の問題に直面して
おり、
これらの対応策として佐賀大学農学部は、
JICA草の根技術協力事業
「ア
ンザン省における農地の土壌改良と農民所得向上支援パイロットプロジェクト」
を実施している。具体的には農林水産省 農研機構 農業生物資源ジーンバンクよ
り配布された日本のダイズ品種コアコレクションの中から現地に適合する品質を
選抜し栽培の定着を図ることを目指している。(別添資料 7506-iD-4)(再掲)
[D.1]
<選択記載項目E 附属施設の活用>
【基本的な記載事項】
(特になし)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる 農学部附属アグリ創生教育研究センター(久保泉キャンパス)では、学際的・
国際的な教育研究を推進することとし、本学の研究推進戦略に基づいた機能強
化プロジェクトとして取り組む「農水圏プロジェクト」に参画し、農学部が保有
する品種育成中のダイズ新系統の栽培及び評価、柑橘類及びビワの品種改良に
取り組んでいる。また、
「さが藻類産業研究開発センター」及び佐賀市と協力し
ながら、
藻類を活用した循環型農業の研究を推進している。
(別添資料 7506-iE-
1)[E.1]
佐賀大学農学部・農学研究科 研究活動の状況
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しろまる 同センターの唐津キャンパスでは、
一般社団法人ジャパンコスメティックセン
ター(JCC)、佐賀県、唐津市などと連携して、地域資源のコスメティック産
業の活用について研究に取り組んでいる。具体的な成果を以下に挙げる。
唐津地産素材を用いた化粧品開発として、
唐津地域で生産されるタマネギとツバ
キ抽出物から新たな機能性乳化剤を開発し特許出願した。(別添資料 7506-iE-
1)(再掲)[E.1]
しろまる 佐賀・福岡地域機能性農産物推進協議会を運営し、キクイモを活用した農業振
興や健康・食品産業への活用に関する研究開発に取り組んでいる。(別添資料
7506-iE-1)(再掲)[E.1]
しろまる 佐賀大発のIT(情報技術)企業オプティムや佐賀県唐津市などと連携し、栽
培が難しく絶滅危惧種に指定されている日本古来の植物
「ムラサキ」
の収穫に成
功し、センサーなどのICT技術を活用した安定栽培技術の改良を進めている。
同時に、化粧品や染料、 薬の原料のほか、化粧品や織物として商品化のための
研究開発に取り組んでいる。(別添資料 7506-iE-1)(再掲)[E.1]
しろまる 佐賀大学が開発した国産グレープフルーツ「さがんルビー」を原料としたスキ
ンケア製品 3 品を、
連携協定を締結している株式会社アルビオンとの共同研究に
よって発売した。(別添資料 7506-iE-1)(再掲)[E.1]
<選択記載項目F 学術コミュニティへの貢献>
【基本的な記載事項】
(特になし)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる 「九州昆虫セミナー(KEyS)開催による学術コミュニティーへの貢献」
2016 年4月以降、佐賀大学において国内及び海外(米国、中国、台湾、フラン
ス)から研究者を招いた 31 回のオープンセミナー(九州昆虫セミナー、Kyushu
Entomology Seminar [KEyS])を企画した。このセミナーには、のべ 800 名以上
が参加し、学術コミュニティーの形成に貢献した。一連の取組により、学術コ
ミュニティーの形成と共同研究の企画立案が促進され、2016 年度以降に科研
費、農食事業、環境研究総合推進費の他、地方自治体からの助成金や受託研究
等、直接経費で 4,000 万円以上の外部資金を獲得した。また、九州昆虫セミナ
ーから派生した一連の研究により、
英文学術雑誌に5編の論文を発表した。(別添資料 7506-iF-1〜2)[F.1]
佐賀大学農学部・農学研究科 研究成果の状況
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分析項目II 研究成果の状況
<必須記載項目1 研究業績>
【基本的な記載事項】
・ 研究業績説明書
(当該学部・研究科等の目的に沿った研究業績の選定の判断基準)
本学部・研究科は、地域社会及び国際社会の発展に必要とされる農学上の諸課題を
解決し、高い倫理意識及び国際的視野に基づいて、先端的・応用的・実用的な研究成
果を生み出し、農林水産業を基盤とした地域産業の振興や、地域創生を担う研究成果の
社会実装を進め、農学の発展に貢献するとともに、人類の繁栄に貢献することを目指して
いる。したがって、研究成果を評価の高い学術雑誌に投稿することで学問の発展に寄与
し、地域社会及び国際社会の発展に貢献するという点が最も重要であると考えている。そ
こで、農学部及び農学研究科では、Pubmed へ登録されている学術雑誌、Clarivate
Analytics の InCites Journal Citation Reports に掲載されているインパクトファクター付き
学術雑誌に掲載された論文の中から、学術論文の貢献度を表す指標として Scopus が発
表する「FWCI」を定量的基準として用いた。しかし、以上の指標は、農学・生物系のように
論文発表から引用されるまでに時間を要する分野の、新しく発表された成果に対する評
価には馴染まないことから、掲載された国際誌の CiteScore も定量的基準として用いた。
社会・経済・文化的意義の観点からは、日本学術会議登録団体が研究成果に基づいて
その社会的貢献を高く評価した成果(学術賞、学会賞など)や、農林水産業及び関連産
業へ顕著な貢献のあったものを選定した。
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる 農水圏プロジェクトの中では、
遺伝子情報全体をカバーする高密度マッピング
を新たに開発しており、様々な作物の育種や遺伝子情報の解析に活用しており、
国内外の学術団体からの表彰や、新品種育成に大きく貢献してきた。
しろまる 佐賀大学が保有する 300 種類以上のミカン亜科植物コレクションを活用し、生理活性物質の探索やその生合成について研究を行い、抗記憶障害活性が報告され
ているフラボノイド(ポリメトキシフラボン)のカンキツ類における分布解明及
びその生合成に関わる候補遺伝子の単離に成功し、国内外セミナーへ招聘され5
件の招待講演を行った。
しろまる 木本植物である果樹類は、種をまいてから花が咲くまでの期間(幼若期間)が
10 年以上の種もあり、効率的な育種が困難な作物である。本研究では、果樹類の
花芽誘導や幼若性と関連のある遺伝子の機能及び植物ホルモンの1種であるジベ
佐賀大学農学部・農学研究科 研究成果の状況
- 1-13 -
レリン合成遺伝子の機能について明らかにし、幼若性や花芽形成に関わる分子メ
カニズムの解明に貢献した。これを受け、国際園芸学会の植物成長調節剤に関す
る国際シンポジウムにおいて基調講演(招待講演)を行った。農林水産省 農研機
構主催のセミナーで講演を行い、産業界へのニーズに対応した。
しろまる 光環境が根粒共生及び菌根共生に与える影響に関する研究に取り組み、
菌根菌
が宿主植物の成長を促進する際のメカニズムとして、地上部へ照射される光の質
がその成立に影響を与えており、これには光受容体のフィトクロームから始まる
シグナル伝達系が関与すること。根粒菌とマメ科植物の共生では根に青色光が当
たると根粒形成が抑制され、これには光受容体のクリプトクロムから始まるシグ
ナル伝達が関与していることを明らかにした。これらの成果に関して、2回の国
際学会及び5回の国内学会・シンポジウムにおいて招待講演を行った。
しろまる 気候変動や外来種の移入など、
人間活動に伴う環境問題が生物多様性に及ぼす
影響に関して研究を実施し、地球温暖化が昆虫類の生活史や生態に及ぼす影響、
外来種の分布拡大や外来生物に対する在来種の反応など様々な観点から懸念され
る影響を解明し、一連の研究成果を国際学術誌論文3編と総説1編、国内学術誌
の論文2編として報告した。
また、
第7回虫えい形成昆虫国際シンポジウム
(2018
年3月、台湾)の外来生物に関するワークショップで招待講演に対応した。
しろまる ラン科植物は国内に野生種 300 種類あまり自生しているが、
7割の種で絶滅が
危惧されている。本研究ではラン科植物を食害する重要害虫としてランミモグリ
バエであることを DNA 分析で特定し、これが原因でランの種子生産が妨げられ世
代更新ができなくなり、絶滅の危険性が高くなることを明らかにした。さらに、
これらの被害は全国に拡大しており、
特定の種では被害率が 100%近い危機的な状
況にある現状を明らかにした。これらの成果は生物多様性の観点から注目され、
全国版の新聞掲載(朝日新聞 2017 年 11 月 19 日、朝日新聞 2018 年 11 月 8 日)
に至った。
しろまる 本研究は世界最大の菌従属栄養植物タカツルランが様々なキノコの仲間に栄
養を依存していることを DNA 分析や安定同位体比の解析から明らかにし、このよ
うな共生様式は他の陸上植物には見られず、特殊な菌共生が特異な進化を引き起
こしたことが判明した。つまり、タカツルランは様々なキノコを"食べる"こと
で、世界最大の巨体を維持していたことが明らかとなった。キノコを食べて巨大
化した植物の不思議な進化が注目を集め、全国版の新聞掲載(朝日新聞 2018 年 5
月 8 日)に至った。
佐賀大学農学部・農学研究科
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【参考】データ分析集 指標一覧
区分
指標
番号
データ・指標 指標の計算式
2.教職員データ 11 本務教員あたりの研究員数 研究員数/本務教員数25本務教員あたりの科研費申請件数
(新規)
申請件数(新規)/本務教員数
26 本務教員あたりの科研費採択内定件数
内定件数(新規)/本務教員数
内定件数(新規・継続)/本務教員数
27 科研費採択内定率(新規) 内定件数(新規)/申請件数(新規)
28 本務教員あたりの科研費内定金額
内定金額/本務教員数
内定金額(間接経費含む)/本務教員数
29 本務教員あたりの競争的資金採択件数 競争的資金採択件数/本務教員数
30 本務教員あたりの競争的資金受入金額 競争的資金受入金額/本務教員数
31 本務教員あたりの共同研究受入件数 共同研究受入件数/本務教員数32本務教員あたりの共同研究受入件数
(国内・外国企業からのみ)
共同研究受入件数(国内・外国企業からのみ)/
本務教員数
33 本務教員あたりの共同研究受入金額 共同研究受入金額/本務教員数34本務教員あたりの共同研究受入金額
(国内・外国企業からのみ)
共同研究受入金額(国内・外国企業からのみ)/
本務教員数
35 本務教員あたりの受託研究受入件数 受託研究受入件数/本務教員数36本務教員あたりの受託研究受入件数
(国内・外国企業からのみ)
受託研究受入件数(国内・外国企業からのみ)/
本務教員数
37 本務教員あたりの受託研究受入金額 受託研究受入金額/本務教員数38本務教員あたりの受託研究受入金額
(国内・外国企業からのみ)
受託研究受入金額(国内・外国企業からのみ)/
本務教員数
39 本務教員あたりの寄附金受入件数 寄附金受入件数/本務教員数
40 本務教員あたりの寄附金受入金額 寄附金受入金額/本務教員数
41 本務教員あたりの特許出願数 特許出願数/本務教員数
42 本務教員あたりの特許取得数 特許取得数/本務教員数
43 本務教員あたりのライセンス契約数 ライセンス契約数/本務教員数
44 本務教員あたりのライセンス収入額 ライセンス収入額/本務教員数
45 本務教員あたりの外部研究資金の金額
(科研費の内定金額(間接経費含む)+共同研
究受入金額+受託研究受入金額+寄附金受入
金額)の合計/本務教員数
46 本務教員あたりの民間研究資金の金額
(共同研究受入金額(国内・外国企業からのみ)
+受託研究受入金額(国内・外国企業からのみ)
+寄附金受入金額)の合計/本務教員数
6.その他外部
資金・特許
データ
5.競争的外部
資金データ

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