佐賀大学教育学部・学校教育学研究科
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1.教育学部・学校教育学研究科
(1)教育学部・学校教育学研究科の研究目的と特徴 1-2
(2)「研究の水準」の分析 ・・・・・・・・・1-3
分析項目I 研究活動の状況 ・・・・・・・1-3
分析項目II 研究成果の状況 ・・・・・・・1-10
【参考】データ分析集 指標一覧 ・・・・1-12
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科
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(1)教育学部・学校教育学研究科の研究目的と特徴
本学部・研究科の設置の経緯と特色
本学部の前身である文化教育学部は、学校教育課程、国際文化課程、人間環境課程、美
術工芸課程の4課程から編成されていた。学校教育課程は教員免許取得を卒業要件として
いたが、その他の3課程はいわゆる新課程と称されており、教育と文化の融合による「総
合知」を教育の理念として、それぞれに特色ある専門教育を行い、一定の成果をあげてき
た。特に、教員志望者だけでなく、広く地域の高校生の多様な進学希望に応えているとい
う点において評価されてきた。
しかし、2012 年文部科学省より、教員養成系学部の「ミッションの再定義」が求められ、
「設置目的の明確化と公的教育機関としての存在意義」を「見える化」しなければならな
い中で、佐賀県における教員養成課程を有する学部としての存在意義を明確に示すために
は、佐賀県の教育課題解決に資する教員の養成こそがミッションであり改組の方向性であ
るとの考えから、
教員養成に特化した
「教育学部」
として 2016 年度に再スタートを切った。
また、本研究科の前身である教育学研究科は、多様な教育ニーズへの対応、及び新たな学
校づくりという地域における教育課題に対して、中心的な役割を担う高度な専門性と実践
的指導力を備えた教員を養成することを使命とした学校教育学研究科(教職大学院)とな
った。佐賀大学の教員養成分野は、佐賀県教育委員会等との連携により、地域密接型を目
指す大学として、義務教育諸学校に関する地域の教員養成機能の中心的役割を担うととも
に、佐賀県における教育研究や社会貢献活動等を通じて我が国の教育の発展・向上に寄与
することを基本的な目標とし、実践型教員養成機能への質的転換を図ることを打ち出して
いる。
本学部・研究科の研究の目的と特徴
文化教育学部は、教員の研究活動においても範囲は広く、教員養成系と総合学術系を網
羅した研究が行われてきた。教育学部においても、研究の専門性は当然のことながら尊重
され、その学術研究の水準を向上させ、その成果を学生の教育に活かし、さらにその成果
を外部に発信して地域社会及び国際社会に貢献するという研究の基本方針を設定してい
る。しかし、それだけではなく、学部及び研究科において教員免許の課程認定申請を行っ
ており、全ての教員は免許科目担当者として審査を受けている。そのために、その審査に
適合する研究が求められる。さらに、優秀な教員を地域に送り出すという教育の側面から
の貢献に加えて、研究面においても地域の教育への貢献が求められている。
そこで、本学部及び研究科においては、教員の学術研究の水準を向上させ、その成果を
学生の教育に活かし、さらにその成果を外部に発信して地域社会及び国際社会に貢献する
という研究の基本方針とともに、教員養成学部として教員免許の課程認定を担う教員とし
ての研究を行い、教員養成学部としての水準の向上と佐賀県を始めとする地方の教育界に
寄与することを研究の目的とする。その研究の特色は、教員の専門性を尊重した学術的研
究だけでなく、教育現場の諸課題に対応し課題を解決するための実践的研究、さらに実践
的なカンファレンス・事例研究,さらに、附属学校園、あるいは地域の学校園との共同研
究等、多くの研究が行われていることにある。
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科 研究活動の状況
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(2)「研究の水準」の分析
分析項目I 研究活動の状況
<必須記載項目1 研究の実施体制及び支援・推進体制>
【基本的な記載事項】
・ 本務教員の人数が確認できる資料(別添資料 7501-i1-1)
・ 本務教員の年齢構成が確認できる資料(別添資料 7501-i1-2)
・ 指標番号 11(データ分析集)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
◯ 研究の実施体制及び支援・推進体制
1)研究推進・論文編集委員会
学部室会議(執行部)に研究担当者(教育研究評議員)を置き、研究推進・論文編集
委員会を設置し、学部・研究科教員の研究推進を行っている。
研究推進・論文編集委員会は、科研費申請査読、競争的外部研究費への申請案内、学
部研究論文集の編集を通じて、学部と研究科の研究推進に取り組んでいる。(別添資料
7501-i1-3)[1.1]
2)附属教育実践総合センター
附属学校園等、学内外の関係機関との連携のもとに、教育実践及び教育臨床に関する理
論的・実践的研究及び指導を行い、教育実践の向上に資することを目的としている。
特に、学部・教職大学院・附属学校園の三者の連携や共同研究を推進するために、学部・
研究科の教員と附属学校園の教員との共同研究を推進し、支援する体制を構築している。
センター運営委員会には附属学校園長が委員として出席し、研究推進の趣旨を理解し、管
理職として附属学校園の研究推進を行っている。毎年1回発行している「佐賀大学教育実
践研究」は、研究論文、実践研究、実践報告に分類して、附属学校園の教員と学部・研究
科教員の共同研究及び附属学校園教員の単独での投稿を推進している。附属学校園教員の
投稿数は 2016 年 49 編、2017 年 55 編、2018 年 47 編、2019 年 43 編であり、2014 年 27 編、
2015 年 41 編と比較して増加している。さらに 2019 年度は、センターの体制強化、兼任教
員の増員を図り、学部・教職大学院と附属学校園との連携や共同研究の中心的な役割を果
たす仕組みを構築した。(別添資料 7501-i1-4)[1.1]
3)学校教育学研究科(教職大学院)
学校教育学研究科(教職大学院)においては、学部・教職大学院・附属学校園の3者
が、学部及び教職大学院の実務業績を持つ教員と、教育業績を持つ附属学校園教員が共
同で研究発表会等を開催し、また教育学部附属教育実践センター紀要への共同研究論文
の掲載等連携を推進している。教職大学院の研究的な実習科目の一部(探究実習)を附
属学校園で実施し、実習大学院生と大学院教員及び附属学校園教員の3者が研究的な議
論を行い、その結果を報告書にまとめている。(別添資料 7501-i1-5〜6)[1.1]
<必須記載項目2 研究活動に関する施策/研究活動の質の向上>
【基本的な記載事項】
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科 研究活動の状況
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・ 構成員への法令遵守や研究者倫理等に関する施策の状況が確認できる資料
(別添資料 7501-i2-1)
・ 研究活動を検証する組織,検証の方法が確認できる資料
(別添資料 7501-i2-2〜4)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
◯ 学部・研究科においては、研究活動を推進するために、研究推進方策、特色ある研究
等の推進、学際的研究の促進、社会課題に関する研究を行っている。[2.1]
1) 研究推進・論文編集委員会を設置し、学部・研究科教員の研究推進を行っている。特
に査読制度を設けており、科研費申請の査読については、2018 年度は査読希望者7
名に対し、査読者を各3名配置し丁寧なコメントを行った。2019 年度は科研費採択
状況を分析し、査読実施候補者を「不採択A評価の准教授以下」又は「2019 年度が
科研費最終年度の准教授以下」に絞って6名に査読を行った。また、科研費の申請の
意向を6月に調査するなど、申請率の向上を図った。[2.1]
2) 研究科では、2018 年度から教育・研究活動に関する組織的な取組を発展させるため
に成果報告会に併せて県内教育関係者に向けてシンポジウムを開催した。[2.1]
3) また、独立行政法人教職員支援機構から外部資金を得たことを契機に 2017 年度(教
職員支援機構補助)、2018 年度(単独実施)にわたって、学校トップリーダーの養
成に関する共同研究を行い、6 回シリーズの連続セミナーを開催し、その成果を 2018
年に開催された日本教育大学協会の研究集会において「佐賀県教育委員会との連携・
協働による学び続ける学校トップリーダー研修プログラムの開発」として報告した。
[2.1]
◯ 人事方策、若手研究者の確保・育成、インセンティブについて取組を行っている。
[2.2]
1) 2019 年度にテニュアトラックによる若手研究者1名を採用した。[2.2]
2) 教員間の業務量の偏りによる教員個人への業務過剰負担を防止するために、
各教員の
授業をはじめとした業務内容と業務量の比率を見定めた調整を行っている。[2.2]
3) 研究推進におけるインセンティブの付与として、
上位昇給の推薦において研究分野の
業績を重視し、
グループ代表者会議で審議した後に推薦を行うこととしている。
[2.2]
<必須記載項目3 論文・著書・特許・学会発表など>
【基本的な記載事項】
・ 研究活動状況に関する資料(教育系)
(別添資料 7501-i3-1)
・ 指標番号 41〜42(データ分析集)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
◯ 本学部・研究科の研究の特色は、学術的研究だけでなく、教育現場の諸課題に対応し
課題を解決するための実践的研究,実践的なカンファレンス・事例研究、さらに附属学
校園、あるいは地域の学校園との共同研究等、多くの研究が行われていることにある。
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科 研究活動の状況
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優れた学術研究については研究業績説明書に挙げているので、ここでは、教員養成及び
地域の教育界に資する研究について代表的なものを記述する。
1)教員養成に資する研究
1 アクティブ・ラーニングによる「小学校英語活動」のカリキュラム研究開発-逆向き
設計論に基づいて-
本研究は、2020 年度から正式に教科化される「小学校英語」について英語の音声の仕
組みや正書法、文学素材などについて講義と演習を交えて学びながら、英語に関する背
景的な知識を身に付けさせる目的で、本学部英語分野を担当する教員が共同でまとめた
ものであり、教員養成に資する研究である。日本教育大学協会研究年報、第 36 集、
285-295、2018 年(林裕子 他)
2)地域の教員養成に資する研究
1 継続・育成型高大接続カリキュラム「教師へのとびら」の実証的開発研究
本研究は、学び続ける教師の養成に資する、効果的な高大接続のあり方を解明するこ
とを目的とし、教職に興味をもつ佐賀県内の高校生を対象とする高大連携カリキュラム
を開発・展開した研究である。研究の全体像や波及効果を総合的・体系的に論考した書
籍を 2017 年度に佐賀県内教育機関向けに作成し、さらに、その後の高大接続改革の進捗
を受けて一部改訂し、2018 年度に東京書籍から公刊した。(竜田徹 他)
3)教職大学院の実務家教員としての佐賀県の教育行政に資する研究
1 「佐賀県における教員の人事交流・研修派遣の拡充」教育行政学研究と教育行政改革
の軌跡と展望(学会創立 50 周年記念)、71-77,2016 年(中島秀明)
2 「組織改編に伴う県レベルの教育予算獲得・配分の実際」教育行政学会年報・43,
186-189,2017 年(中島秀明)
<必須記載項目4 研究資金>
【基本的な記載事項】
・ 指標番号 25〜40,43〜46(データ分析集)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
しろまる 教育学部への寄付金としては、教員の個人研究に対する寄付に加えて、教科教育分野
に対する教育研究助成、健康スポーツ科学分野に対する教育研究助成、附属教育実践総
合センターに対する教育研究助成、理数教育分野に対する教育研究助成、実技系グルー
プに対する教育研究助成等、各グループの教育研究助成を受給している。また、附属学
校園の教育研究への寄付が多い。(別添資料 7501-i4-1)
◯研究科においては、2019 年度には、独立行政法人教職員支援機構から「教職大学院と教
育委員会の連携・協働支援事業(NITSカフェ)」として採択(200 千円)された。(別
添資料 7501-i4-2)
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科 研究活動の状況
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<選択記載項目A 地域・附属学校との連携による研究活動>
【基本的な記載事項】
(特になし)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
1)佐賀県教育委員会との連携
1 「佐賀県教育委員会と教育学部・教職大学院との連携・協力協議会」を通じて連携を
進めている。
毎年度 10 以上の共同事業を実施するとともに、
年2回の定例会合を持ち、
事業計画の評価を行って、次年度の取組を改善し、成果が見える連携を充実させてい
る。例えば、2019 年度は、不登校の児童生徒の増加と特別支援学級の増加という教育
課題を抱えている県のニーズに応える形で、
新たに2つの新しい事業
「特別支援教育・
教育相談の教員研修に関連する事業」
「特別支援教育の教員研修に関連する事業12」
を立ち上げた。本事業2は、教育相談に関わる教員を対象としたミニ講義と事例検討
会からなり、年間2回開催し、多様な校種や職階の教員が参加した。(別添資料
7501-iA-1)[A.1]
2 佐賀県教育委員会と連携して、2017 年度(教職員支援機構補助)
、2018 年度(単独実
施)にわたって、学校トップリーダーの養成に関する共同研究を行い、6 回シリーズ
の連続セミナーを開催し、その成果を日本教育大学協会の研究集会において「佐賀県
教育委員会との連携・協働による学び続ける学校トップリーダー研修プログラムの開
発」として報告した。(別添資料 7501-iA-2) [A.1]
3 また、
佐賀県教育センターが行っているプロジェクト研究に助言指導で携わっており、
地域の教育領域の研究推進をサポートしている。2017、2018 年度は、佐賀県教育セン
タープロジェクト研究(小・中・高等学校教育相談)
「児童生徒が互いに自他のよさを
認め合う学級集団づくりを目指して-児童生徒がもつ
「強み」
に着目した交流活動の実
践-」
、2019 年度は、佐賀県教育センタープロジェクト研究(小・中・高等学校教育相談)「不登校支援のためのチェックシートの作成と活用(仮題)
」の実践を行っている。
[A.1]
2)附属学校との連携
1 毎年、幼小連携イベント、授業研究会を実施し、地域のモデル校として、研究の成果
を研修会や研究発表会において公開することにより地域に還元を行っている。また、
小中の接続型教育プログラム 10 科目の開発を進めている。2018 年度に行ったプログ
ラムに対する地域の学校における活用状況のアンケート結果を分析し、実践協議会・
小中職員研究会の中で改善の検討を行い、佐賀県教育委員会が行っている研究発表会
における地域の抱える教育課題も踏まえて、
2019 年度に開催する附属小中教育研究発
表会を企画するなど、フィードバックによる改善を行っている。
具体的な成果は以下の通りである。2019 年度のアンケート結果から、児童・生徒
たちが互いに議論して答えを見出すことにより「主体的・対話的で深い学び」を実現
できていることが示唆されており、そのための手立て(児童・生徒たちが行き詰った
際の発問の仕方、受け答えの仕方、児童・生徒間で議論しやすい雰囲気作り、及び教
材研究・題材の工夫)を自身の授業で取り入れたいとの趣旨のコメントを多く得てい
る。また、2018 年度を踏まえた工夫として、2019 年度では「学びの姿を見るシート」
への調査を取り入れたところ好評であることがアンケートによって示唆されている。
参加者は県内の小中学校教員が大多数であり、
附属小中教育研究発表会を通した現場
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科 研究活動の状況
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への還元が進んでいると見られる。[A.1]
2 附属学校園や地域の学校とも連携し、助言指導等も含めて、各学校の教育研究を支援
し、学校現場の教育・研究力の向上に貢献している。[A.1]
<選択記載項目B 国際的な連携による研究活動>
【基本的な記載事項】
(特になし)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
◯ 2015 年度までは文化教育学部の国際文化、人間環境、美術工芸課程を中心として国際
的な連携による研究活動を数多く行ってきたが、
2016 年度より教員養成課程に特化した
教育学部として再スタートして新課程の教員数が激減したことにより、国際的な連携に
よる研究の数的減少はやむを得ない。しかし、本学部・研究科ともに積極的に国際的な
共同研究の推進を行っており、教員の専門領域による共同研究に加えて、教育に関する
フォーラム等、質的にレベルの高い研究を継続して実施している。主な実績は以下の通
りである。[B.1][B.2]
1)海外研究者との共同研究
1 Kent State University(米国オハイオ州)の Jacob E. Barkley 氏と Andrew Lepp
氏と「日米の大学生の携帯電話利用(不健康な座位行動)の共同研究」を進めており、
2019 年度米国スポーツ医学会に演題が採択され発表を行った。2020 年度の米国スポ
ーツ医学会にも演題を申込中である。(山津幸司)[B.1]
2 二重ベータ崩壊によるニュートリノの研究:フランスを中心グループとするニュート
リノ質量直接探索に関する国際研究グループ(佐賀大学を含むフランス、ロシア、イ
ギリス、アメリカ、チェコ、スロバキア、ウクライナ、フィンランドなどの国の 20
数機関からなる研究グループ)NEMO-3 コラボレーションに 1999 年頃から約 20 年間
連続し継続して参加し連携しながら研究を行っている。
当該研究グループと本学部の
間には当該期間を通じて共同研究の協定が結ばれている。(大隅秀晃)[B.1]
3 科研費を使用して、2018 年7月にニューヨーク大学(以下,NYU)の Gottlieb 准
教授とバルイラン大学(イスラエル)の Feiner 教授を日本に招聘して「ユダヤ啓蒙
思想」に関するシンポジウムを東京と京都で開催した。2019 年には、Gottlieb 准教
授のコーディネートにより、NYUで「日本におけるドイツ・ユダヤ思想の受容」に
関するコロキウムを実施し、英語で口頭発表を行った。今後も研究交流を継続発展さ
せていく予定である。2019 年1月よりニューヨーク州のコミュニティカレッジ・オ
レンジ校の Strmiska 教授との研究交流も開始している。11 月には、教授の招聘によ
り,現地の短大で,日本の宗教文化について英語で口頭発表を行った。Strmiska 教
授はリトアニアの現代宗教の専門家であり,近未来的には,佐賀大学の協定校である
リトアニアのヴィタウタス・マグヌス大学(以下,VDU)の研究者も交えた形で、
日本とリトアニアの比較文化研究へと発展させていく予定である。2019 年5月には、
佐賀大を訪問したVDUの学長と学部長とも面会し、
研究協力体制づくりのための連
携を確認した。(後藤正英)[B.2]
4 2018 年度に新規採択された科研費課題(基盤(C)18K00742)において、英国バー
ミンガム大学専任教員(Dr. Akira Murakami)と共同研究を進めている。本研究はC
BT(Computer-Based Testing)形式の談話完成タスク問題を用いた発話自動採点シ
ステムを構築し、その予測精度(人手評価との一致率)の検証を通して、同システム
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科 研究活動の状況
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による英語発話能力の評価・測定、並びに出題するタスクや評価基準の精査と設定を
行うことを目的としたものであり、外国語教育に加え、言語テスティングや教育工学
に精通した研究者との共同で、妥当性・信頼性の高い自動評価とその継続的な実施体
制の構築に取り組んでいる。(林裕子)[B.1]
5 九州大学マス・フォア・インダストリー研究所の小磯深幸氏とサンパウロ大学(ブラ
ジル)の Paolo Piccione 氏との共同研究を行っている。研究内容は、界面活性剤の
膜の数学的モデルである三重周期極小曲面の変形族の存在を証明したものである。小磯・Piccione 両氏は大域解析学における分岐理論の世界的権威であり、分岐理論を
駆使して様々なシチュエーションで変形族を構成してきた。
三重周期極小曲面に対し
ても分岐理論が適用できるとの両氏の大局観があり、共同研究に発展した。代表的な
研究成果は次の論文であり、
フランスの有名国際誌に掲載された。
(庄田敏宏) [B.1]
2)フォーラムの共同開催
1 東アジア地域における生涯学習研究フォーラムの開催に参画しており、2017 年度は
本研究科教員が主催して佐賀で開催した。
2016 年東アジア生涯学習研究フォーラム 於中国上海 国際コンベンションセンター
2017 年東アジア生涯学習研究フォーラム 於日本佐賀 佐賀市青少年センター
2018 年東アジア生涯学習研究フォーラム 於韓国世宗 平生教育センター
2019 年東アジア生涯学習研究フォーラム 於中国北京 石景山社区学院
(上野景三)[B.2]
<選択記載項目C 研究成果の発信/研究資料等の共同利用>
【基本的な記載事項】
(特になし)
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
◯ 本学部・研究科の研究では、教育現場の諸課題に対応し課題を解決するための実践的
研究を実施し、特に、その成果を地域の教育の向上のために発信している。[C.1]
1) いじめ防止プログラムの開発研究と発信
大学の研究者と学校教員の連携で、いじめ防止・解決に関して、初のプログラム開発で
ある。特別の教科としての「考え、議論する道徳」に対応している。読み物教材だと、考
え議論する時間は限られるが、その点、デジタル教材は、授業に対話する時間を生み出す
ことに効果的である。本プログラムについては,2017 年8月 21 日佐賀新聞の一面にトッ
プ記事となり、高く評価されている。これ以降、2018 年 11 月 26 日子ども・若者育成支援
県民大会の記念講演をはじめ、他 10 件の講演会や研修会の講師を務めている。また、佐賀
県の小中学校の約 50 校で本プログラムを使用して実践されており、
校内研修で実践方法の
研修を行っている。(別添資料 7501-iC-1)[C.1]
2) 中学生の学業成績に関連する要因の縦断的研究
研究のテーマは公立中学生の学業成績に影響を及ぼす要因の解明である。研究成果とし
て、体力が世帯年収などの社会経済的要因を考慮しても学業成績と有意に関連すること、
携帯電話利用などのスクリーンタイムも学業成績に影響することを明らかにした。また、
北海道教育大学との共同研究として、成果を海外学術雑誌に報告した(1Morita et al.,
Physiology & Behavior, 2016; 2 Ishihara et al., European Journal of Sport Science, 2018; 3
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科 研究活動の状況
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Ishihara et al., Physiology & Behavior, 2018; 4Ishihara et al., npj Science of Learning, 2020 年3
月 12 日アクセプト印刷中)。さらに本研究は、中学1年生時から同じ対象を3年生時まで
縦断調査したことから、因果関係に迫ることのできる研究成果を得られており、今後、本
学部附属学校園や佐賀県の小中高等学校でも実施する方向である。[C.0]
3)教員の資質向上のための研修プログラム開発と発信
独立行政法人教職員支援機構からの委嘱事業「教員の資質向上のための研修プログラム
開発・支援事業」を受託し、研修プログラム開発を行った。その研究成果及び実施報告と
CD版の報告書を作成し、教職大学院協会に加盟している国内の教職大学院、佐賀県教育
委員会、教育事務所、県教育センター、市町教育委員会、連携協力校などの関係機関約 150
箇所に配布した。(別添資料 7501-iC-2)[C.1]
4)学校教育学研究科研究活動の県内教育界への発信
佐賀県教育委員会と佐賀大学教育学部・学校教育学研究科との連携・協力協議会におい
て、
本教職大学院の研究活動の取組について,
全県下の学校に周知されるようにしている。
毎年2月に開催している佐賀大学大学院学校教育学研究科研究成果発表会にあわせて、研
究科の研究成果報告を含めたシンポジウムを開催している。また佐賀大学大学院学校教育
学研究科研究成果発表会の発表要旨集と佐賀大学大学院学校教育学研究科紀要(CD)を、
教職大学院協会に加盟している国内の教職大学院、佐賀県教育委員会、教育事務所、県教
育センター、市町教育委員会、連携協力校などの関係機関約 150 箇所に配布した。(別添
資料 7501-iC-3)[C.1]
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科 研究成果の状況
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分析項目II 研究成果の状況
<必須記載項目1 研究業績>
【基本的な記載事項】
・ 研究業績説明書
(当該学部・研究科等の目的に沿った研究業績の選定の判断基準)
教育学部・学校教育学研究科では、学術研究の水準を向上させ、その成果を学生の教育
に活かし、さらにその成果を外部に発信して地域社会及び国際社会に貢献するという研究
の基本方針を設定している。
その中で、
研究の質的レベルの高い業績であることに加えて、
地域社会・国際社会への貢献度の高い業績であることを選定の判断基準とした。「学術的
意義」の評価については、著書は公刊された専門分野の学会誌や新聞等に書評が掲載され
ていることを判断基準とし、文系の論文については専門の最も権威ある学会において公表
されたものであること、理系の論文については海外の評価の高いジャーナルに掲載されて
いること等を判断基準とした。また、「社会、経済、文化的意義」としては、特に教員養
成学部・研究科として教育界への貢献度の高い研究を選出した。その判断基準は、教育専
門誌や新聞等において教育への貢献度を高く評価されたものとした。
【第3期中期目標期間に係る特記事項】
◯ 本学部・研究科の研究の特色は、教員の専門性を尊重した学術的研究だけでなく、教
育現場の諸課題に対応し課題を解決するための実践的研究、実践的なカンファレンス・事
例研究、さらに附属学校園、あるいは地域の学校園との共同研究等、多くの研究が行われ
ていることにある。優れた研究については研究業績説明書の通りである。ここでは教員養
成学部・大学院として教育界への貢献を主とした研究について記述する。
1)地域の教員養成に資する継続・育成型高大接続カリキュラム「教師へのとびら」の実
証的開発研究
学び続ける教師の養成に資する、効果的な高大接続のあり方を解明することを目的と
し、教職に興味をもつ佐賀県内の高校生を対象とする高大連携カリキュラムを開発・展開
した研究である。
研究の全体像や波及効果を総合的・体系的に論考した書籍を 2017 年度に
佐賀県内教育機関向けに作成した。さらに、その後の高大接続改革の進捗を受けて一部改
訂し、2018 年度に東京書籍から公刊した。その研究成果は以下の通りである。
1 従来型の高大連携活動の諸課題(単発性,非専門性)を克服する、教員養成に特化し
た高大接続カリキュラムモデルを構築するとともに、当該カリキュラム受講と教員養
成系学部進学との関係性を明らかにした点(当該カリキュラム修了者の約半数が教員
養成系学部に進学)。
2 単発的な高大連携活動よりも継続的で専門的な高大連携活動の方が当該受講者の進学
動機の明確化及び目的意識の向上に寄与することを、質問紙調査やインタビューから
明らかにした点。
3 従来の高大接続研究は主に大学入学前の高校生の育成にのみ焦点が当てられていると
いう点で課題があった。
本研究では高大連携活動が高校生のみならず大学生の育成(学部段階の教育の質向上)においても効果的であることを、高校生と大学生が合同で受
講するアクティブ・ラーニング型講義の分析から明らかにした点。
以上のことにより、国立大学法人評価委員会による「平成 29 年度に係る業務の実績に
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科 研究活動の状況
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関する評価結果」において、「高大接続改革を推進する「継続・育成型高大連携カリキュ
ラム」の全学的展開」が注目される事項として取り上げられており、本研究が我が国の教
員養成に資するものと評価できる。
2)アクティブ・ラーニングによる「小学校英語活動」のカリキュラム研究開発−逆向き
設計論に基づいて−(カリキュラム開発研究)
本研究は、2020 年度から正式に教科化される「小学校英語」について英語の音声の仕組
みや正書法、文学素材などについて講義と演習を交えて学びながら、英語に関する背景的
な知識を身に付けさせる目的で、本学部英語分野を担当する教員が共同でまとめたもので
あり、教員養成のためのカリキュラム開発研究である。日本教育大学協会研究年報、第 36
集、 285-295 2018 年 著者; 林裕子、小野浩司、田中彰一、木原誠,早瀬博範,名本達也3) 教職大学院の実務家教員としての研究
教職大学院実務家教員は、以下のような佐賀県の教育行政に資する研究を行っている。
1 「佐賀県における教員の人事交流・研修派遣の拡充」教育行政学研究と教育行政改革
の軌跡と展望(学会創立 50 周年記念)、71-77、2016 年
2 「組織改編に伴う県レベルの教育予算獲得・配分の実際」教育行政学会年報・43、
186-189、2017 年。
佐賀大学教育学部・学校教育学研究科
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【参考】データ分析集 指標一覧
区分
指標
番号
データ・指標 指標の計算式
2.教職員データ 11 本務教員あたりの研究員数 研究員数/本務教員数25本務教員あたりの科研費申請件数
(新規)
申請件数(新規)/本務教員数
26 本務教員あたりの科研費採択内定件数
内定件数(新規)/本務教員数
内定件数(新規・継続)/本務教員数
27 科研費採択内定率(新規) 内定件数(新規)/申請件数(新規)
28 本務教員あたりの科研費内定金額
内定金額/本務教員数
内定金額(間接経費含む)/本務教員数
29 本務教員あたりの競争的資金採択件数 競争的資金採択件数/本務教員数
30 本務教員あたりの競争的資金受入金額 競争的資金受入金額/本務教員数
31 本務教員あたりの共同研究受入件数 共同研究受入件数/本務教員数32本務教員あたりの共同研究受入件数
(国内・外国企業からのみ)
共同研究受入件数(国内・外国企業からのみ)/
本務教員数
33 本務教員あたりの共同研究受入金額 共同研究受入金額/本務教員数34本務教員あたりの共同研究受入金額
(国内・外国企業からのみ)
共同研究受入金額(国内・外国企業からのみ)/
本務教員数
35 本務教員あたりの受託研究受入件数 受託研究受入件数/本務教員数36本務教員あたりの受託研究受入件数
(国内・外国企業からのみ)
受託研究受入件数(国内・外国企業からのみ)/
本務教員数
37 本務教員あたりの受託研究受入金額 受託研究受入金額/本務教員数38本務教員あたりの受託研究受入金額
(国内・外国企業からのみ)
受託研究受入金額(国内・外国企業からのみ)/
本務教員数
39 本務教員あたりの寄附金受入件数 寄附金受入件数/本務教員数
40 本務教員あたりの寄附金受入金額 寄附金受入金額/本務教員数
41 本務教員あたりの特許出願数 特許出願数/本務教員数
42 本務教員あたりの特許取得数 特許取得数/本務教員数
43 本務教員あたりのライセンス契約数 ライセンス契約数/本務教員数
44 本務教員あたりのライセンス収入額 ライセンス収入額/本務教員数
45 本務教員あたりの外部研究資金の金額
(科研費の内定金額(間接経費含む)+共同研
究受入金額+受託研究受入金額+寄附金受入
金額)の合計/本務教員数
46 本務教員あたりの民間研究資金の金額
(共同研究受入金額(国内・外国企業からのみ)
+受託研究受入金額(国内・外国企業からのみ)
+寄附金受入金額)の合計/本務教員数
6.その他外部
資金・特許
データ
5.競争的外部
資金データ

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