佐賀県原子爆弾被爆者がん検診実施要領
第1 趣旨
被爆者の高齢化に伴い健康に対する不安が増大している状況等に鑑み、被爆者健康診断の一
環としてがん検診を行うことにより、もって被爆者の健康に対する不安の解消と健康管理の充
実を図ることを目的とする。
第2 実施主体
事業の実施主体は佐賀県とする。
第3 対象者
県内に居住地を有する被爆者健康手帳所持者及び第1種健康診断受診者証所持者(以下
「被爆
者等」という。)とする。
第4 検診項目
検診項目は次の6項目とする。
(1) 胃がん検診 (2) 肺がん検診 (3) 乳がん検診
(4) 子宮がん検診 (5) 大腸がん検診 (6) 多発性骨髄腫検診
第5 検診実施機関
(1) 一般社団法人佐賀県医師会(以下「医師会」という。)の会員の属する医療機関のう
ちがん検診が実施可能な医療機関(以下「検診実施機関」という。)とする。
(2)(1)以外の医療機関のうちがん検診が実施可能な医療機関(以下「検診実施機関」と
いう。)とする。
第6 検診回数
被爆者等からの申請により実施する健康診断のうち1回を被爆者等の希望によるがん検診と
し、第4に定める各検診項目を年1回を限度として実施する。
第7 検査内容
1 一般検査
(1) 胃がん検診
検査内容は問診に加え、胃部エックス線検査又は胃内視鏡検査のいずれかとする。
ア 問 診
問診票により行う。
イ 胃部エックス線検査
(ア) ×ばつ7cm以上のフィルムを用い
ることとし、撮影装置は被爆線量の低減を図るため、I・I方式が望ましい。
(イ) 撮影枚数
最低7枚とする。
(ウ) 体位等
日本消化器がん検診学会による「新・胃X線撮影法ガイドライン改訂版(2011 年)」を参考にすること。
なお、造影剤の使用に当たってはその濃度を適切に保つとともに、副作用等の事故に
注意すること。
(エ) 読 影
胃部エックス線写真の読影は原則として十分な経験を有する2名以上の医師により行
うこと。
(オ) 写真の保存
エックス線写真は少なくとも5年以上検診実施機関で保存しなければならない。
ウ 胃内視鏡検査
胃内視鏡検査の実施に当たっては、日本消化器がん検診学会による「対策型検診のため
の胃内視鏡検診マニュアル 2015 年度版」を参考にすること。
(2) 肺がん検診
検診内容は問診、胸部エックス線検査及び喀痰細胞診とする。ただし、喀痰細胞診は問診
の結果医師が必要と認める者に対し行う。
ア 問 診
問診票により行う。
イ 胸部エックス線検査
(ア) 撮影方式
直接撮影による。
(イ) 読 影
胸部エックス線写真については、2名以上の医師(このうち1名は十分な経験を有す
ること。
)が読影する。またその結果によっては、過去に撮影した胸部エックス線写真と
比較読影することが望ましい。
(ウ) 写真の保存
エックス線写真は少なくとも5年間検診実施機関で保存しなければならない。
ウ 喀痰細胞診
(ア) 問診の結果喀痰細胞診が必要と認められた者に喀痰採取容器を配布し、喀痰を採取す
る。喀痰は起床時の早朝痰を原則とし、最低3日の蓄痰又は3日の連続採痰とする。ま
た、採取した喀痰(細胞)は固定した後、パパニコロウ染色を行い顕微鏡下で観察する。
(イ) 検体の顕微鏡検査は十分な経験を有する医師及び臨床検査技師が行う。この場合にお
いて、医師及び臨床検査技師は日本臨床細胞学会認定の細胞診専門医及び細胞検査士で
あることが望ましい。
また、同一検体から作成された2枚以上のスライドは、2名以上の技師がスクリーニ
ングする。
(ウ) 判定後の検体及び検診結果は、少なくとも5年は検診実施機関で保存しなければなら
ない。
(3) 乳がん検診
検診内容は問診、視診、触診及び乳房エックス線検査とする。なお、視診及び触診は推奨
しないが、仮に実施する場合は、乳房エックス線検査と併せて実施すること。
ア 問 診
問診票により行う。
イ 視 診
乳房、乳房皮膚、乳頭及び腋窩の状況を観察する。
ウ 触 診
乳房、乳頭及びリンパ節の触診を行う。
エ 乳房エックス線検査
(ア) 実施機関
乳房エックス線撮影の実施機関は、当該検査を実施するに適格な撮影装置(原則とし
て日本医学放射線学会の定める仕様基準を満たし、少なくとも適切な線量及び画質基準
を満たす必要があること。
)を備えるものとする。
(イ) 撮影方法
両側乳房について、内外斜位方向撮影を行う。ただし、内外斜位方向撮影を補完する
方法として、頭尾方向撮影を追加することは差し支えない。この場合において、撮影者
は日本乳がん検診精度管理中央機構(日本乳癌検診学会、日本乳癌学会、日本医学放射
線学会、日本産科婦人科学会、日本放射線技術学会、日本医学物理学会、日本乳腺甲状
腺超音波医学会、日本超音波医学会及び日本超音波検査学会により構成される委員会を
いう。
以下同じ。)が開催する乳房エックス線検査に関する講習会又はこれに準ずる講習
会を修了した診療放射線技師が乳房撮影を行うことが望ましい。
(ウ) 読影
1 乳房エックス線写真の読影と視触診は、両者を同時に実施することを原則とする。
ただし、乳房エックス線撮影装置を搭載した検診車による検診の場合や乳房エックス
線写真の二重読影については、この限りではない。
2 乳房エックス線写真の読影は、適切な読影環境の下において、二重読影(うち1名
は十分な経験を有する医師であること。
)により行う。また、視触診と同時併用で読
影を行うことができない場合においても、2名以上の医師(うち1名は、十分な経験
を有すること。
)が同時に又はそれぞれ独立して読影をするものとする。
(エ) 写真の保存
乳房エックス線写真は少なくとも5年間検診実施機関で保存しなければならない。
(4) 子宮がん検診
検診内容は問診、視診、内診、子宮頸部の細胞診、コルポスコ-プ検査及び子宮体部の細
胞診(子宮内膜細胞診)とする。ただし、コルポスコープ検査及び子宮体部の細胞診は問診等
の結果医師が必要と認める者に対し行う。
ア 問 診
問診票により行う。
イ 視 診
膣鏡により子宮頸部の状況を観察する。
ウ 内 診
双合診を行う。
エ 子宮頸部及び子宮体部の細胞診
(ア) 子宮頸部の細胞診については子宮頸管及び膣部表面の全面擦過法、子宮体部の細胞診
については吸引法又は擦過法によって検体を採取し、迅速に固定した後、パパニコロウ
染色を行い顕微鏡下で観察する。
(イ) 検体の顕微鏡検査は十部な経験を有する医師及び臨床検査技師が行う。この場合にお
いて医師及び臨床検査技師は日本臨床細胞学会認定の細胞診専門医及び細胞検査士であ
ることが望ましい。
(ウ) 子宮頸部の細胞診の結果は、ベセスダシステムによって分類する。ただし、細胞診ク
ラス分類(I,II,IIIa,IIIb,IV,V)を併用しても差し支えない。
(エ) 子宮体部の細胞診の結果は「陰性」、「疑陽性」又は「陽性」に区分する。
(オ) 判定後の検体は少なくとも5年間検診実施機関において保存しなければならない。
(5) 大腸がん検診
検診内容は、問診及び便潜血検査とする。
ア 問 診
問診票により行う。
イ 便潜血検査
免疫便潜血検査2日法で行う。
(ア) 検診受診者から受託実施機関への検体輸送は、温度管理が困難であり検査の精度が下
がるので原則として行わない。
(イ) 検体の測定については、検体回収後速やかに行う。速やかな測定が困難な場合は冷蔵
保存すること。
(ウ) 検診の結果は、
「便潜血陰性」及び「要精検」に区分する。
(エ) 受託実施機関は、検診結果を少なくとも5年間保存しなければならない。
(6) 多発性骨髄腫検診
検診内容は問診及び血清蛋白分画検査とする。
ア 問 診
問診票により行う。
イ 血清蛋白分画検査
電気泳動法により行う。
2 精密検査
一般検査の結果医師がさらに精密な検査を必要と認めた者について必要な検査を行う。
第8 実施方法
1 一般検査
(1) 保健福祉事務所長は、がん検診の実施について、被爆者等に通知するものとする。
(2) がん検診の受診を希望する被爆者等は『「希望による健康診断」
受診申請書(がん検診)』(様式第1号)により保健福祉事務所長に申請するものとする。
(3) 保健福祉事務所長は、申請書を受理したときは、被爆者等であることを確認のうえ、
「原子
爆弾被爆者がん検診受診票」
(様式第2号の1〜3)に必要事項を記載のうえ、
問診票(様式第
3号の1〜6)及び原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則第11条第3項(以下
「規則」という。)に定める健康診断個人票〔一般検査(がん検診)用〕
(規則様式第四号(二))を当該被爆者等に交付するとともに、
「原子爆弾被爆者がん検診受診者台帳」(様式第4号)
を整備する。
(4) 被爆者等は、検診実施機関に保健福祉事務所長から交付された受診票等を提出し、検診を
受けるものとする。
受診期間は、一般検査は10月1日から11月30日までとし、精密検査は12月15日
までとする。
(ただし、時間外及び土・日・祝日等を除く。)
(5) 検診実施機関は、第7の1により検査を実施した後は、被爆者等に必要な指導を行うとと
もに、
検査結果
(様式第2号の1の破線より下の部分)、「原子爆弾被爆者がん検診報告書」(様式第2号の2)、問診票、
及び健康診断個人票
〔一般検査(がん検診)用〕
(規則様式第四号
(二))に「原子爆弾被爆者がん検診総括報告書兼委託料交付請求書」
(様式第5号)を添えて、期間
内の受診者分を取りまとめて12月28日までに受診者の住所を管轄する保健福祉事務所長
に報告するものとする。
ただし、一般検査の結果、精密検査が必要であると判定した者については、直ちに「原子
爆弾被爆者がん検診要精密者連絡票」(様式第6号)により保健福祉事務所長に連絡するもの
とする。
なお、精密検査を緊急に実施しなければならないと判断される場合及び一般健診実施機関
において速やかに精密検査を実施する場合は、電話等により保健福祉事務所長の指示を受け、
または事前の連絡のうえ、後日書類を送付してもよいものとする。
(6) 保健福祉事務所長は、前記報告により「原子爆弾被爆者がん検診受診者台帳」を整備する
とともに、
「原子爆弾被爆者がん検診受診票」の検査結果により、受診者に対してその結果を
通知するものとする。
2 精密検査
(1) 保健福祉事務所長は第8の1の(5)ただし書きにより連絡を受けた場合は、要精密検査者
及び精密検査実施機関と連絡をとり、精密検査の実施期日を定め、精密検査実施機関に「原
子爆弾がん検診受診票」、規則に定める
「健康診断個人票
〔精密検査用〕」(規則様式第四号
(三))及び、
必要に応じ一般検査の問診票等を送付するとともに、
「原子爆弾被爆者がん検診受診者
台帳」を整備するものとする。
(2) 要精密検査者は、定められた期日に精密検査実施機関において検査を受けるものとする。
(3) 精密検査実施機関は、第7により検査を実施した後は、受診者に必要な指導を行うととも
に「原子爆弾被爆者がん検診受診票」、「原子爆弾被爆者がん検診報告書」、「健康診断個人票
〔精密検査用〕」(規則様式第四号(三)
)に「原爆被爆者がん検診実施報告書兼委託料交付請
求書(精密検査)」(様式7号)を添えて、検査のつど、速やかに受診者の住所を管轄する保
健福祉事務所長に報告するものとする。
(4) 保健福祉事務所長は、前記報告により「原子爆弾被爆者がん検診受診者台帳」を整備する
とともに、
「原子爆弾被爆者がん検診受診票」の検診結果により、受診者に対してその結果を
通知するものとする。
第9 報告
1 保健福祉事務所長は、被爆者等に対する受診票の交付状況を「原子爆弾被爆者がん検診受診
票交付状況」
(様式第8号)により11月10日までに健康福祉政策課長に報告するものとする。
2 保健福祉事務所長は、本事業の実施結果を「原子爆弾被爆者がん検診実施報告書」(様式第9
号)により翌年1月10日までに健康福祉政策課長に報告するものとする。
第10 秘密保持
検診実施機関、保健福祉事務所及びその他の関係者は、秘密保持に最大の配慮を払うととも
に、事業により知り得た秘密を目的以外に利用してはならない。
第11 費用の請求及び支払
1 検診実施機関が被爆者等に対して行ったがん検診の費用として佐賀県(保健福祉事務所)に請
求できる金額は別途定める額とする。
2 保健福祉事務所長は、請求書を受理したときは、内容を審査し、適当と認めたときは、検診
実施機関に支払うものとする。
附 則
この要領は、昭和63年10月13日より施行する。
この要領は、平成元年8月9日より施行する。
この要領は、平成2年4月1日より施行する。
この要領は、平成3年4月1日より施行する。
この要領は、平成4年7月21日より施行、平成4年4月1日から適用する。
この要領は、平成7年8月11日より施行、平成7年7月1日から適用する。
この要領は、平成9年9月12日より施行する。
この要領は、平成17年4月1日より施行する。
この要領は、平成18年4月1日より施行する。
この要領は、平成19年4月1日より施行する。
この要領は、平成21年4月1日より施行する。
この要領は、平成23年4月1日より施行する。
この要領は、平成25年4月1日より施行する。
この要領は、平成28年9月14日より施行する。
この要領は、平成30年9月1日より施行する。
この要領は、令和3年9月1日より施行する。
この要領は、令和4年4月1日より施行する。

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