アイヌ語とは

【アイヌ語の成り立ち】

アイヌ語はどのようにして成り立ったのでしょうか。アイヌ語と日本語はどのような関係があるのでしょうか。

アイヌ語と日本語がもとは同じ言葉だったという人もいます。 しかし、 今のところ正しいアイヌ語の知識と研究方法に基づいて、十分な根拠を示している説はありません。
「カムイ」と「神」のように似た言葉も多少ありますが、それらは借用語かもしれません。

また、その周辺の言葉である日本語・朝鮮語(韓国語)・サハリンのニブフ語などの言葉もその成り立ちがわかっていません。アイヌ語の成り立ちは、日本語と同じようにまだ未解決のままといえます。

【アイヌ語の歴史】

明治時代以降、日本語による教育をはじめとするアイヌ民族の同化政策が押し進められ、アイヌ語は日常生活から急速に姿を消していきました。大人のアイヌの集まりなどでは、自然にアイヌ語が口をついて出ましたが、子供たちには、その将来を考えて、アイヌ語より日本語を身に付けさせようとする親が多かったといいます。

その結果、しだいにアイヌ語は「滅びゆく言葉」とみなされるようになりました。

しかし、こうした時代の中でも自らペンをとってアイヌ語の記録を残しているアイヌの人たちがいます。登別市幌別出身の知里幸恵さんは『アイヌ神謡集』(1923)を世に送り出しています。幸恵さんのおばの金成マツさんは、膨大なユカラ筆録ノートを残しています。また、弟である知里真志保さんは、北海道大学で教鞭をとりながら、アイヌ語を言語学的に研究し、『アイヌ語法概説』など、 数々の著作を残しましたが、 大著 『分類アイヌ語辞典』の執筆中に早世しています。

そのほかにも道内各地でアイヌの人たちが自らのアイヌ語知識や、周囲の伝承を記録することに情熱をそそぎました。このような人たちの取り組みが、次代の新しい流れの基礎となり、各地でアイヌ語を学習する人たちが増えつつあります。

【アイヌ語の文字と表記】

アイヌ語は、特定の文字で表記する方法が定まっていません。そのため、「アイヌ語には文字がない」といわれることもあります。しかし、大正時代のころからは、アイヌ自身がローマ字やひらがな、カタカナなどを用いてアイヌ語を書き残しています。
現在もさまざまな立場の人によって、アイヌ語の発音を書き表す工夫が続けられています。

【アイヌ語を学ぶための参考書】

比較的に入手しやすい基本的な、あるいは重要な図書をいくつかあげてみました。

1 アイヌ語・アイヌ文化全般について

しろまるアイヌ民族博物館監修『アイヌ文化の基礎知識』草風館(1993年)
題名のとおり、アイヌ文化のさまざまな項目についてわかりやすく説明したものです。


しろまる札幌学院大学人文学部編『アイヌ文化に学ぶ』

2 アイヌ語学習の手引き

しろまる社団法人北海道ウタリ協会『アコロイタクAKOROITAK』(1994年)
全道各地のアイヌ語教室で用いるために作成されたアイヌ語の入門書です。
ていねいな説明に加えて、各地の方言を併記していることも特徴です。
ビデオ教材も発売されています。


しろまる中川裕・中川ムツ子『エクスプレスアイヌ語』白水社(1997年)
日常会話の文例が豊富にあり、学習段階に応じた練習問題と解説もあります。
千歳市のアイヌ語の話手が吹き込んだ音声テープも発売されています。


しろまる知里真志保『アイヌ語入門』ホッカイドウ出版企画センター(1985復刊)
特に地名研究者のために書かれた小型の文法書です。


しろまる田村すず子『言語学大辞典』第1巻所収「アイヌ語」三省堂(1988年)
言語学を専門的に学ぼうとする人を対象に書かれたもので、
約80ページにおよぶアイヌ語文法の概説があります。

3 アイヌ語の辞典

しろまる中川裕『アイヌ語千歳方言辞典』草風館(1995年)
千歳市で採録した単語約3,700語を収めています。
初心者にも使いやすいようにカタカナ表記を主にしたアイウエオ順の配列になっており
用例も豊富です。

しろまる服部四郎編『アイヌ語方言辞典』岩波書店(1964年)

北海道内8ヶ所のほか、樺太、千島の各方言について調査したものです。

しろまる知里真志保『知里真志保著作集』別巻1所収「分類アイヌ語辞典植物・動物編」(1975年)
しろまる知里真志保『知里真志保著作集』別巻2所収「分類アイヌ語辞典人間編」(1976年)
いずれも民俗学的な情報をたくさん含んでいます。
動物編が著者の遺稿になりました。

しろまる萱野茂『萱野茂のアイヌ語辞典』三省堂(1996年)
平取町で用いられていた単語約8,000語を収められ、巻末に日本語索引が付いています。
著者自身がアイヌ語の話手であり、生活に密着した用例が豊富なのが特徴です。

しろまる田村すず子『アイヌ語沙流方言辞典』草風館(1996年)
沙流川流域で1955年から6年の間に採録された単語約9,400語を収めています。
文法機能や類義語などの情報が豊富です。

4 アイヌ語地名について

しろまる山田秀三『アイヌ語地名の研究』全4巻草風館(1995年新装版)

北海道はもとより東北地方のアイヌ語地名などについての研究論文や概説を収めています。
過去の文献に当たり、実地の調査を行うという方法を長年積み重ねた研究をまとめたものです。

しろまる知里真志保『地名アイヌ語小辞典』北海道出版企画センター(1984年復刊)

アイヌ語地名によく出てくる単語の意味と用法について解説している小型の辞典です。

5 アイヌ語の物語について

しろまる萱野茂『カムイユカラと昔話』小学館(1988年)

全部で51編の物語を収録しています。昔話は日本語訳を、
神謡はカタカナ表記のアイヌ語も併記している読みやすい本です。

しろまる片山龍峯編『カムイユカラ』片山言語文化研究所(1995年)

6編の神謡がカタカナとローマ字で表記された絵本に詳しい解説書とCDが付いています。

しろまる知里真志保『アイヌ神謡集』岩波書店(1978年復刊)

ローマ字表記によるアイヌ語と日本語が対訳になっている文庫本です。

しろまる久保寺逸彦『アイヌ叙事詩神謡・聖伝の研究』岩波書店(1977年)

124編の物語とその詳しい注釈を収めた専門的な文献です。

しろまる中川裕『アイヌの物語世界』平凡社(1997年)

アイヌ文学におけるさまざまなジャンルの中から神謡、散文説話、英雄叙事詩といった
代表的なものについて、それらの特徴と魅力をわかりやすく紹介しています。

しろまる萱野茂『萱野茂のアイヌ神話集成』ビクターエンタテイメント(1998年)

1960年代から著者が採録してきた音声資料の一部がCD11枚、ビデオ1本に収録され、
そのすべてについて原文対訳テキストがついています。
神謡や散文説話、英雄叙事詩のほかに儀礼の際に発する音声なども収録されている
とても貴重な記録です。

(このページの内容は、道立アイヌ民族文化研究センター発行の「ポン カンピソシ1 アイヌ文化紹介小冊子 イタク はなす」を参考にして作成したものです。)

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