【インタビュー】革新的なホームシアター体験「Nebula X1」。最高峰の映像体験に不可欠となる"音"の価値にもフォーカス
VGP2025 SUMMER受賞インタビュー アンカー・ジャパン
サテライトスピーカーと組み合わせて4.1.2chの立体音響を実現する革新的なスマートプロジェクター「Nebula X1」がVGP2025 SUMMER「ホームビジュアル大賞」を受賞した。「映像体験では "音響" もすごく大事な要素」と訴えるアンカー・ジャパン 芝原 航氏に、同モデル発売に至る背景やリーディングブランドとしてのプロジェクター市場創造へ向けての意気込みを聞く。
アンカー・ジャパン株式会社
執行役員
事業戦略本部 本部長
芝原 航氏
プロフィール/アマゾン・ジャパンにてロジスティックス・BPRを経験後、アクセンチュアにてマネジメントコンサルティングに従事。大手企業における全社BPR/BPO戦略の立案および推進、グローバルプロジェクトにおけるPMOなどを経験。アンカー・ジャパンに参画後は複数のビジネス部門の担当者を務めた後、戦略企画チームをはじめとした複数の部門の責任者を兼任。現在は執行役員・事業戦略本部長として売上最大化の責任を負う。
ホームシアター体験を手軽に手にできる「Nebula X1」
―― サテライトスピーカーと組み合わせて4.1.2chの立体音響を実現する革新的なホームシアターシステム「Nebula X1」が、VGP2025 SUMMER「ホームビジュアル大賞」を受賞されました。おめでとうございます。御社プロジェクターでは449,900円(税込)と高額製品になりますが、開発背景についてお聞かせください。
芝原 スマートプロジェクター「Nebula」(ネビュラ)は、5万円前後から10万円前後のモバイルタイプのCapsuleシリーズを中心に2018年に発売を開始しました。当時はOSを搭載しない製品が一般的であったなか、いち早くAndroid OSを搭載し、手軽に新しい映像体験をお届けできる製品として支持を広げ、その後、コロナ禍のおうち需要も相俟って、プロジェクター市場全体を盛り上げる中心的な存在となっています。
現在は手に取りやすい製品の展開拡大に取り組む一方、家で映画館のような体験を望むもっとコアなオーディオビジュアルファン層に対しても、Nebulaとしてより踏み込んで革新的な体験をお届けしていきたいと考え、発売したのが「Nebula X1」です。
映像体験では映像だけでなく、"音響" もすごく大事な要素。そこで、「Nebula X1」にはサテライトスピーカーをセットにしました。通常100万円近くかかる本格的なシステムを、40万円台で手にすることができます。「映像もすごいけど、音もすごい」、そんなホームシアターの世界を「Nebula X1」でもっと身近に感じていただき、より手軽にお楽しみいただけます。
―― 現在、量販店の店頭販売シェアで、「Nebula」は数量ベースでトップ(※(注記))ですが、2018年の参入からここまで、市場の移り変わりをどのようにご覧になられていますか。
※(注記)プロジェクターのメーカー別量販店店頭販売数量シェアNo.1/2025年1月〜4月 全国有力家電量販店の販売実績集計/外部調査会社のデータをもとにした自社調べ
芝原 テレビを観ない方が増えていることや、コロナ禍を経てオンデマンドサービスが拡大したことがプロジェクターの普及に追い風となり、コロナ前の2018年と今とでは大きく様変わりしました。さらに大きなチャンスが開けていて、我々のブランドに対してよりハイスペックな製品を求める声が高まるなかで、据置型のホームプロジェクターで20万円台の製品、そして、今回の40万円台の「Nebula X1」と、こだわりを詰め込んだ上位モデルを順次、展開してきました。
―― 「Nebula X1」ではスピーカーを別売にする選択肢も検討されたのでしょうか。
芝原 米国では本体とスピーカーが別々で販売されており、日本でも検討は行いました。ただ、この製品の推しとなるのは、「サテライトスピーカーがあり、それがWi-Fiで接続され、素晴らしい音響も簡単に楽しめること」にあり、日本ではスピーカーをセットにした販売スタイルを主軸に考えました。
プロジェクターを選ぶときに、店頭で映像を比較されている光景をよく目にします。しかし、"音" についてはこだわる方は多くありませんでした。映像のクオリティがどんどん進化しているのに、そこに音が追いつかないのはもったいない。価格帯に限らず、音響面を整えることで、より映像をお楽しみいただけるという点を知っていただければと思います。
―― スピーカーがはじめからセットになり、これまでホームシアターに手が出せなかった人には願ってもない製品ですね。発売から3カ月余り、お客様や販売されている流通の方の反響はいかがですか。
芝原 予約販売では想定を上回る大きな反響をいただき、想定していた数量が早期に終了しました。発売後もアマゾンのレビューで星4.7をいただくなど、購入された皆様の期待に応える映像と音響をお届けできているのではないかと思います。
セットアップの面でも、投影するスクリーンや壁をスキャンしてAIが自動で解析し、最適な位置や鮮やかさを調整する「AI全自動スクリーン調整機能」の搭載や、リモコンひとつで最大25°の投影面の高さ調整が可能な「電動ジンバル」を内蔵しており、とても簡単です。スピーカーはコンパクトかつWi-Fiで接続できるため配線不要で、限られたスペースにも柔軟に設置ができ、使わないときは片付けておくこともできます。
設置や設定からじっくり楽しまれる方もいらっしゃいますが、多くの方にとって手軽さはとても大事な要素です。せっかく導入しても、設置の手間から結局使わなくなってしまうのはもったいないです。スピーカーの取り回しを含め、画期的なソリューションを提供できたと思います。
オフライン体験が重要。「Anker Store」出店を加速
―― 御社ではプロジェクターを、「ホームシアターシステム」「ホームプロジェクター」「モバイルプロジェクター」の3つに分類されていますが、それぞれの市場動向をお聞かせいただけますか。
芝原 初めてプロジェクターを買う方には、OS非搭載で1、2万円といった廉価なモデルに一定の需要が見られますが、満足度は必ずしも高くはありません。ある程度低価格帯であっても、しっかり満足のいく体験を届けられる製品で市場を底上げしていきたいと考えています。お客様の期待に応えるべく、長年高い支持をいただいているCapsuleシリーズで、ラインナップを拡充しております。
10万円から20万円ぐらいの中価格帯のホームプロジェクターでは、先ほど申し上げた通り、これからは映像だけではなく、音の良さをしっかり伝えていくことが特に大事になると考えています。その上の高価格帯では、コロナ禍にご購入いただいた方が、「もっと良いものを」とグレードアップして買い替える需要も増えています。全体としての市場のポテンシャルは大変大きく、低価格帯から高価格帯までしっかり取り組んでいきます。
コロナ禍の大きな盛り上がりはある程度収束しましたが、大きく捉えればテレビに代替していくもののひとつでもあります。音響や映像ではオフラインでの体験が非常に重要になり、今後、プロジェクターの備える価値や体験をしっかりお届けしていくためには、家電量販店やAnker Storeが担う役割がますます大事になってきます。
―― お客様への発信拠点・タッチポイントとなる「Anker Store」は、店舗数をハイペースで拡大されています。
芝原 9月にオープンした「Anker Store ニュウマン高輪」で40店舗になりました(※(注記)2025年9月12日時点)。お客様が満足のいく体験を得られる場所として、また、初期からの大勢のAnkerファンとの接点としても、欠かすことができない場所であると考えています。
プロジェクターはもちろん、モバイルバッテリー、イヤホン、スピーカー、ロボット掃除機、さらには需要が伸長しているセキュリティー関連製品まで揃っていますから、例えば、モバイルバッテリーを目的に見にいらしたお客様が、「こんなものがあるんだ」と他のカテゴリーの製品を知っていただくきっかけにもなります。
ひとつのカテゴリーの中でも、廉価なものから高額なものまで製品が揃い、詳しい説明や実際の体験を通して、自分が求めていた製品を選択することができます。製品の回転率がかなり高いことからも、お客様に対して良い体験をお届けできていると思います。
―― 5月にはカフェを併設した新形態の「Anker Store & Cafe 汐留」もオープンされました。
芝原 ショッピングモール、アウトレット、路面店、家電量販店のショップインショップ、そしてカフェと大きく5つのタイプがあります。ひとりでも多くのお客様に満足度の高い体験をお届けできるように、さらなる店舗数拡大に力を入れています。
新たな可能性を創造する「Nebula」&「Soundcore」コラボ
―― VGP2025 SUMMERでは、完全ワイヤレスイヤホン「Soundcore P41i」が企画賞を受賞されました。モバイルバッテリーを組み合わせた、まさに、アンカー・ジャパンさんならではの強みを訴えたユニークな製品と言えます。
芝原 シンプルに持ち歩くものとして、イヤホンとモバイルバッテリーを2-in-1にできれば、コンパクトさや利便性を重視されるお客様の満足度をさらに高められると考え、開発したものです。モバイルバッテリーを完全に代替できるわけではありませんが、「これは便利!」という気づきをご提供できたと思います。日本ではコンパクトさや効率を重視する文化が強く、きちんと価値を認めていただくことができました。
―― オーディオの「Soundcore」ブランドの取り組みについてお聞かせください。
芝原 「Soundcore」の完全ワイヤレスイヤホン、ヘッドホンは市場で高い支持をいただき、完全ワイヤレスイヤホンは、数量ベースではオンライン/オフラインともにシェア1位(※(注記))、金額ベースでは大手外資メーカーに続き、2番手に位置しています。単純に5人に1人の方に「Soundcore」のイヤホンをご使用いただいている計算になります。
※(注記)対象期間:2025年1月-3月における外部調査会社のデータをもとにした全国有力家電量販店の販売実績集計/大手ECプラットフォームのランキングをもとにした自社調べ、直営店などでの販売を除く
現在、2万円以下の低価格帯・中価格帯で高い支持をいただいていますが、そこから一歩踏み込んだ、もう少し高価格帯のモデルでも、お客様の期待にお応えしていくため、さらにハイクオリティなノイズキャンセリング性能や音質を追求していくと同時に、AIに対する世間の関心が急速に高まるなか、イヤホンで何ができるのか、いろいろ検討を重ねています。
―― タイプ別で伸長を見せるオープンイヤー型でもSoundcore AeroFit」が人気を集めています。
芝原 耳の疲れやトラブルから、耳を "塞ぐ" ことに懸念や心配をされるお客様のニーズが顕在化しています。オープンイヤーシリーズのなかでも、形状としてはイヤーカフ型とイヤーフック型の大きく2つがあります。特に前者はアクセサリー感覚で使えて、眼鏡やマスクをつける時にも邪魔にならず、より手軽に着け続けられると人気が高まっています。
―― プロジェクターでは「音」の重要性を強調されていらっしゃいましたが、「Soundcore」との今後のコラボレーションも大変注目されます。
芝原 私たちは「Nebula」と「Soundcore」の両方を手がけており、映像と音の知見をもっと組み合わせていくことができると考えています。「Soundcore」にはBluetoothスピーカーもあり、これまで培ってきた音響の知見を、プロジェクターにもしっかりと生かしていくことができるはずです
各々のブランドの強みを組み合わせていくのは大事なことで、例えばモバイル充電ブランド「Anker」の強みを活かせば、よりコンパクトで長時間楽しめるプロジェクターも開発できると思います。それぞれのプロダクトの知見がうまく組み合わさることで、より良いものを提供できればと思っています。
―― それでは最後に、スマートプロジェクター市場のさらなる盛り上げへ向けて、リーディングブランドしての意気込みをお願いします。
芝原 テレビとも違う、スマートフォンとも違う、プロジェクターだからこそできる体験をお客様にもっとお届けしていきたい。スマホで自分ひとりで見ていたものを、プロジェクターなら家族や友達とシェアして楽しめます。そうした価値を体験を通して広げていきたいと思います。
リモコンのスイッチを押すとすぐに番組が見られるテレビに対し、プロジェクターはまだまだ手間がかかります。日常的に使っていただくためには "手軽さ" はすごく大事なポイントです。この点についてもさらに突き詰め、プロジェクターを生活のなかでもっともっと身近な存在にしていきたいと思います。