【インタビュー】プレミアムサウンドバーの第一人者 Sonos。自信に満ちた新フラグシップ「Sonos Arc Ultra」に抜群の手応え
VGP2025 SUMMER受賞インタビュー Sonos Japan
"他のサウンドバーでは味わえない極上の没入感" を謳うSonosサウンドバーの新フラグシップ「Sonos Arc Ultra」。VGP2025 SUMMERにおいても「テレビシアター大賞」を受賞した。用意周到な導入施策も奏功し、お客様や販売店からも高い評価を獲得。鋭いスタートダッシュを決め、注目を集めている。
テレビの大型化・高画質化を背景に、高級サウンドバーへの注目が高まるなか、"プレミアムサウンドバーの第一人者" を自負するSonosの取り組みを、Sonos Japan 合同会社 代表・吉田庸樹氏に聞く。
Sonos Japan 合同会社
代表
吉田庸樹氏
満を持して登場。大きな進化を遂げた「Sonos Arc Ultra」
―― "他のサウンドバーでは味わえない極上の没入感" を謳ったSonosのサウンドバー「Sonos Arc Ultra」が、VGP2025 SUMMERで「テレビシアター大賞」を受賞されました。おめでとうございます。まず、発売に至るまでの背景をお聞かせください。
吉田 Sonos Japanがホームシアターを中心に日本市場を開拓していくなかで、サウンドバーのフラグシップとして先代モデル「Arc」を4年半前に発売しました。圧倒的な音質でSonosのプレミアムブランディングにも大きく貢献しました。
発売から早4年が過ぎ、ホームシアタートレンドの進化、競合との品質の差別化に改めて応えるべく、満を持して導入したのが「Arc Ultra」です。ポジショニングとしてArcの後継になりますが、中身は見違えるほど大きくアップグレードしています。
例えば、Arcの11個のスピーカーに対し、Arc Ultraでは小型化したウーファーを含め14個を搭載。それでいてボディはよりスリムになりました。テレビがいよいよ100V型超へと大型化・高画質化が進むなかで、サウンドバーにもさらに強力な音のパワーが必要とされている市場背景に応えました。
―― テレビやホームシアターシステムの導入環境については変化が見られますか。
吉田 一昔前に比べて、大きなテレビやホームシアターを導入する障壁がかなり低くなってきたと感じています。マンションの間取りは大きくなりましたし、コロナを契機に郊外に在宅ワーク、生活の場を移し、家のサイズも大きくなり、隣人にも気兼ねをしないで音を楽しむサバーバン・ライフスタイルもテレビの大型化を後押ししています。
ストリーミングコンテンツの進化も著しく、映像だけでなく、Dolby Atmosサラウンドサウンドでの配信がもはや当たり前の時代になっています。ホームシアター市場のトップランナーであるSonosにとって、このトレンドは音と技術の差別化を改めて証明するための絶好のチャンスであると実感しています。
また、ホームシアターやサウンドバーだと、どうしても「テレビの音のアウトプットデバイス」に位置づけられますが、Sonosは創業以来、テレビをつけていないときにも、サウンドバーは音楽のスピーカーとしても最高級の音を提供するという強い自負があります。
スマホはもちろん、今はテレビからもSpotifyやYouTube Musicといった音楽アプリをダウンロードして簡単に音楽を楽しむことができるようになりました。映画館にいるような臨場感ある音響と高音質な曲をスマホアプリひとつで簡単に楽しめるSonosのサウンドバーが世界中で支持されている理由がここにあります。
用意周到に理解を深め、スタートダッシュを決める
―― 2025年1月24日に発売されましたが、ユーザーや販売に携わる流通の皆様からの反響はいかがですか。
吉田 我々オーディオメーカーの最大のテーマは、自分たちが思う最高の音質をお客様、販売店様やメディアの皆様に実際に聴いていただき、同意納得していただくことであると考えています。今回はこの課題に改めて正面から取り組みました。
まずは導入前の準備です。これまでは取引先様のオフィスまで足を運んでセットアップした商品を聴いていただく、もしくはメディアの皆さん向けに会議室を借りて大規模な試聴会を開催していました。
しかし、それらは実際に家庭で使用する環境とは異なり、また限られた時間ではどうしても音の本質を伝え切れませんでした。その課題をどうにかして解消したかった。そこで、首都圏にマンションの一室を4か月にわたってお借りして、そこへデモができる環境を用意することにしました。
最大の利点はなにより実際に家で聴くのと同じリアルな環境であること。日頃視聴されている曲やソースを持ち込んでいただき、時間も10分や20分でなく、じっくりと納得のいくまで試聴していただきました。
その結果、数多くの深い、精緻な記事を書いていただくことができました。そして我々もメディアの皆様の音へのこだわり(ジャンルや映像シーン)の多様さに驚かされました。この学びは我々にとって非常に大きな経験と財産になっています。
お取引様の販売店様に対しても同様に、普段はなかなかできませんが、今回は役員様やバイヤーの方に部屋まで足を運んで体験していただきました。その後店舗を回り、ストアセールスの皆様とやり取りをしていますが、バイヤー様から伝達された商品の特長や品質への理解が大きくグレードアップしているのを実感しています。
その結果として、お客様の店舗における購入までの意思決定の時間が大幅に短縮されています。指名買いが大変多かったのです。事前に臨場感のある各記事を読んで十分に勉強されていて、店頭でも明確な商品の説明を聞き、最終チェックという流れですね。各Eコマースにおきましても、コンバージョンレート(CVR)が大変高く、つくづくマーケティングのしがいがある商品だと実感しました。
2026年には新たなチャレンジ「Sonosショールーム」をスタート
―― 1本で "極上の没入感" を手に入れることができる「Arc Ultra」ですが、さらにサブウーファーやリアスピーカーをご用意されています。こちらの引き合いはいかがですか。
吉田 あれもこれもとメッセージを投げ込むと混乱させてしまうのではないかと思い、導入当初より2か月は、「Arc Ultra」という商品単体の魅力をきちんとわかっていただくことに主眼を置き情報を発信しました。そして、アーリーアダプターや指名買いが一巡したタイミングを計り、次のステップとして、「Sonosアプリを使ってあなただけのホームシアターを作りませんか」という提案をスタート。今はリアスピーカーやサブウーファー、ヘッドホンとの連携拡張のマーケティングにも力を入れています。
おかげさまでこの施策も大変ご好評いただいております。スマートスピーカーとしてヒット中の「Era 300」(税込69,800円/1本)、「Era 100」(税込32,800円/1本)の2モデルが、システムのリアスピーカーとしてペアで売れるようになっています。
特に「Arc Ultra」の購入者はほとんどが「Era 300」を2本お求めになります。前面、側面、天面にドライバーを配置し、あらゆる方向に音が広がる設計のスピーカーで、単体でも空間オーディオが再現できます。これを2台追加して、「Arc Ultra」のリアスピーカーとして贅沢に使っていただくことで、部屋中に驚くほどサウンドが広がります。
ポジティブな悩みなのですが、14個のスピーカーを積んだ「Arc Ultra」は、単体でも感動的とも言える9.1.4chのサラウンドが楽しめます。しかし、「Era 300」を追加すると、空間オーディオがさらに増幅されて深みが増します。
グローバルで見ても、日本のお客様は特に「Era 300」を買われる方が多いというデータがあり、音への要求の高さを再確認することができました。まだご存じない方も多く、「最上級のホームシアター」の提案にさらに力を入れていきます。
―― こだわりが強い、妥協のないお客様の琴線に触れたわけですね。
吉田 「Arc Ultra」を買われたユーザーにアフターセールの拡張アップグレードを薦めるマーケティング活動を進める一方、セットパッケージとして最初から「Arc Ultra」とリアスピーカー、サブウーファー、ヘッドホンを組み合わせてお買い得価格でお求めいただけるキャンペーンもスタートしました。店頭での成約率も大変高くなっています。
ただし、いくらお買い得だとお薦めしても、エンドユーザー様に実際に体験して「これは絶対に手に入れたい!」と実感していただかなければ購入には結び付けられません。この試聴体験を販売店様にお願いするだけでなく、Sonos自ら体験できる場として「Sonosショールーム」の準備を進めています。マーケティング施策としては来年2026年一番のハイライトです。
家賃も人件費もかかりますから、つい商売心が出てしまいがちですが、とにかく一人でも多くの方に聴いていただくことに徹して運営していきたい。いろいろなブランドストアに足を運びますが、感じている課題を改善点として盛り込み、「また来たい」と思わせる体験を皆さんに提供します。
物件は現在検討中ですが、Sonosのイメージにマッチした場所と建物を期待してください。お客様の生の声を直接聞けることは非常に大きなメリットです。重要なアセットとして今後の商品開発に活かして参ります。
テレビの音を追求するサウンドバーにはもっと伸びしろがある
―― 直近のサウンドバー市場はどのように分析されていらっしゃいますか。
吉田 日本に限らず、スーパーハイエンドとローエンド、型落ち商品の二極化が加速しています。ハイエンド商品を主力とするSonosにとりましては現場での訴求活動がより大事になります。実際にその場で聴き比べる経験をご提供できれば、価格差と品質差、真のバリューをご理解いただけると信じています。
我々は大型のテレビとハイエンドのサウンドバーの組合せ率を「プレミアムアタッチ」と呼んでいます。ドイツでは約50%、英国では約40%あるのに対し、日本はまだ約30%にとどまっています。ライフスタイルや住宅環境の違いから単純に比較はできませんが、テレビの音の追求にはもっと伸びしろがあると見ています。
テレビを買い替えて、「ちょっと音が物足りないな」「サウンドバーを検討してみようか」と思いながら、たとえばマンションにお住まいで隣近所に遠慮してあきらめてしまうケースも少なくないと思います。我々はそこへの対策にもすでに手を打っています。
「テレビ音声スワップ」という機能になります。夜遅くや小さなお子さんが寝ていて大きめの音が出せないとき、Sonosのヘッドホン「Ace」をアプリにリンクすれば、サウンドバーの音を消して、「Ace」でホームシアターのサラウンドサウンドを聴くことができます。もちろん空間オーディオ対応です。
しかも、映画やライブをご夫婦やお友達などふたりで楽しまれることも多いと思いますが、「Ace」は2台同時に転送することができます。店頭でもデモを行うと大変好評で、差別化ポイントのひとつになっています。
―― ヘッドホンの「Ace」では、「TrueCinemaテクノロジー」により空間をすみずみまでマッピングし、まるで自宅のリビングに実在するスピーカーから鳴り響くサウンドを聴いているかのような、没入感に満ちたシアター体験をアピールされています。
吉田 はい、TrueCinemaテクノロジーも各方面から高い評価をいただいていております。YouTubeにも実際に試してみたレビュー動画が数多くアップされ、「本当にやってみた方がいいよ」と皆さんからお薦めいただいています。そうした動画もうまく活用して、その魅力をお客様にお伝えしていかなくてはと思っています。
実はヘッドホン「Ace」のセールスポイントのひとつである「かけ心地」の評価は、我々は当初ここまで高いものとは予想していませんでした。「とにかく疲れないんだよ!」「すげーふわっとしていて気持ちいい」など、インフルエンサーの声から大評判になりました。このような新たな発見を追求すべく、幅広いジャンルのインフルエンサーの皆様との協働にはさらに力を入れていく方針です。
―― さきほど「Sonosショールーム」についてお話をいただきましたが、店頭施策についてはどのようにお考えでしょうか。
吉田 今、ヨドバシカメラの旗艦店であるマルチメディアAkibaで展開しているSonosコーナーを、「Arc Ultra」を中心とした新機軸のホームシアター体験ゾーンにアップグレードを行います。よりレベルの高い体験を一人でも多くのお客様に、気軽にゆったりとご体験をいただけるよう10月に完成予定です。また、今後その他の店舗様にも体験ゾーンを順次設立、強化していく計画です。
―― サウンドバー市場をさらに盛り上げるべく、意気込みをお願いします。
吉田 Sonosが皆さんから求められているのは、品質やプレミアム感。「Arc Ultra」や「Ace」はSonosらしさが出た格好の商品と言えます。アグレッシブに販売していくことも必要ですが、価格を訴えて数を追うのは我々のスタイルではありません。Sonosのことを知っていただき、その価値に納得いただくことで販売に結びつけていく。「Sonosショールーム」もその一環となります。
ホームシアターについては、あくまでテレビが主人公です。テレビメーカーとももっと前がかりにいろいろな企画を一緒に行うなど、「プレミアムアタッチ」ももっと伸ばして、ホームシアター文化を活気づけていきたい。空間オーディオではDolbyさんともグローバルベースでとても良い関係にあり、いろいろな形の共同マーケティング活動を行っていくことができます。そうした新しい取り組みを通して、Sonosのブランド価値を一層高めて参ります。
我々は単なるスピーカーメーカーではありません。会社のモットーは「We are Sound Experience Company」です。スマホにSonosアプリを入れれば、家の中ならいつでもどこでも部屋にあるスピーカーで音楽が楽しめる「マルチルームオーディオ」は、Sonosが開発、提案したものです。サウンドバーとヘッドホンで行ったり来たりできる「テレビ音声スワップ」の利便性も、まさに我々の原理原則に則ったコンセプトになります。
2025年7月24日付けでトム・コンラッドが新しく社長に就任しました。技術者として商品に対するこだわりは誰よりも強く、各市場の声にもきちんと耳を傾けてくれます。綿密なロードマップを自ら何度も書き直して構想しており、今後、商品のリニューアルや導入がさらにスピードアップしていくのは間違いありません。これからもSonosの動きにどうぞご期待ください。