2020年3月31日
電力広域的運営推進機関
2020年度供給計画の取りまとめに関する経済産業大臣への意見について
2020年度の供給計画の取りまとめにあたって、電気事業法第29条第2項の規定に基づ
き、以下のとおり意見します。
1.安定供給の確保へ向けた電源の補修停止調整の重要性
2020年度供給計画の取りまとめにおいては、連系線活用後の需給バランス評価において、
短・長期ともに適正予備率である8%を確保できる見通しとなった。その一方で、新たな休廃
止計画の計上により火力発電の供給力が減少するため、特に直近3ヶ年(2020〜2022
年度)の需給バランスが厳しくなる見通しとなった。第1年度、第2年度については、月別需
給バランス評価の結果としても適正予備率は確保できたが、第3年度である2022年度につ
いては、次回の取りまとめにおいて月別需給バランスを評価することになる。その際、電気の
安定供給に必要な供給力を確保すべく、月別需給バランス評価において、需要ピーク期に補修
停止が重なることのないよう適切に調整することが必要となる。
万一必要な供給力が確保できない場合には、本機関としては、容量市場における供給力確保
がなされる前であることから、やむを得ず特別調達電源として供給力を公募調達する仕組みを
活用し、関連する一般送配電事業者と連携して必要な供給力の確保に万全を期す所存である。
その際には「脱炭素化社会に向けた電力レジリエンス小委員会(中間整理)
」に基づき、その
費用負担と託送料金上の扱いについての整理が必要となることを改めて申し添える。
【参考/脱炭素化社会に向けた電力レジリエンス小委員会(中間整理)/ P33 抜粋】
6個別論点(一般送配電事業者が確保する調整力、供給予備力及び供給力に関する費用と
託送原価との関係性)
現行の託送料金制度上、一般送配電事業者が確保する調整力にかかる固定費は H3 需要*6%分のみ
原価算入することが認められている。
一方で、偶発的需給変動対応に必要な調整力 7%のうちの 1%と、電源 I ́相当量は、現状では原価
算入が認められていないが、一般送配電事業者が確保すべきとされてきた。
更に、今般のレジリエンス・供給力確保に係る議論の中で、容量市場創設までの間、H1 需要と電
源脱落が同時発生した際に備えるための予備力を一般送配電事業者が確保することや、小売電気事
業者が本来確保すべき供給力(H3 需要*101%)を確保せず供給力が不足する際には、
やむを得ず不足分
を一般送配電事業者が確保することとされている。
現状、一般送配電事業者が確保すべきとされる調整力及び予備力の範囲と託送料金上原価算入で
きる調整力及び予備力の範囲が乖離してきており、
改めて、
一般送配電事業者が確保すべき調整力及
び予備力の範囲と、その託送料金上での扱いについて整理することの必要性が確認された。
<再生可能エネルギーの更なる有効利用の観点>
容量市場にて供給力確保がなされた後は、実需給の2年前に行う電源の「容量停止計画の調
整」のメカニズム(調整に応じるリクワイアメント)の仕組みの中で、冬季を含めた需要ピー
ク期の補修停止の調整が円滑に、かつ効率的に行われることが期待されている。
そのような中、オフピーク期においては、CO2低減に寄与する再生可能エネルギーの発電
を抑制せず、より有効利用する観点から、揚水発電設備の補修停止を避けようとしている実態
もある。その一方で、容量市場の調整メカニズムではオフピーク期の補修停止を促す仕組みと
なり、結果的に再生可能エネルギーの出力が抑制されることで、当該発電電力の有効利用量が
減少してしまうことがあり得るという点にも留意が必要である。
再生可能エネルギーの導入拡大が進展するなか、その有効利用のためにオフピーク期の補修
停止を避ける電源の価値を評価する必要性についても検討が求められるものと考える。
2.容量市場開設後の供給計画のあり方
供給計画は、電気事業法の規定に基づき、今後10年間の安定供給の確保状況や設備形成
状況を確認するものであり、容量市場開設後であってもその基本的な目的・役割は変わらな
いと考える。また、容量市場開設後においては、毎年の供給計画の取りまとめ時に、今後
10年間にわたって容量市場を通じて必要な供給力が調達され得るだけの発電設備(供給
力)が存在しているかを確認することが重要となる。そのため、本機関としては一般送配電
事業者と連携し、新規電源開発の動向や、既存の発電事業者による電源の休廃止計画、更に
は休止中電源の活用可能性の把握などに傾注することになると考える。
特に、電源の休廃止という観点では、供給計画の取りまとめ時に相当量の休廃止計画が計上
された場合でも、送配電設備の送電能力も含め必要な供給力を確保することが求められる。そ
のような将来の見通しや必要な対策の検討に資するために、電源の休廃止に関する動向を事前
に把握し、
国や本機関、
一般送配電事業者で連携をとって対応することがより一層重要となる。
他方、シェアを増やした中小規模の小売電気事業者の供給力調達行動を見ると、卸取引市場
などからの調達比率が高い傾向が継続している。今後、小売電気事業者の長期的に確保すべき
供給力が容量市場を通じて確保される仕組みが整っていくが、それとともに、旧一般電気事業
者の小売部門も含め、小売電気事業者が卸取引市場や短期の相対契約などから供給力を調達す
る傾向も、継続あるいは増加すると想定される。
このような小売電気事業者による供給力の確保手段の多様化や、インバランス料金制度の
見直しといった環境変化も踏まえ、今後の供給計画における小売電気事業者の供給力確保状
況の確認のあり方について、あらためて精査する時期に来ていると考える。
3.送配電設備の高経年化に対応する更新計画の立案について
本機関にて、今後10年間の送配電設備の新設や更新計画の適切性について確認した結果、
将来にわたり設備が的確に更新されていくために、以下の4点に留意して検討を行っていく必
要があると考える。
・更新時期の的確な見極め
1960年〜1970年代頃の高度経済成長時代以降に建設された高経年設備の更新に
対応する案件が今後増加する傾向にあるが、送配電設備を適切に維持管理していくために
は、設備の更新時期を的確に見極める必要がある。
・工事施工力の確保
地域間連系線や再生可能エネルギー電源の接続に対応した工事が増加していく中でも、設
備を更新するために必要となる工事施工力も確保する必要がある。
・作業停止調整の実施
更新するために必要な作業停止期間や停止頻度が増加することから、電力を安定的に供給
しながら工事を行うために、計画的に作業停止調整を実施する必要がある。
・国民負担抑制と信頼度維持の両立
国民負担を抑制しつつ、電力系統の信頼度を維持するために必要な投資を行っていく必要
がある。
本機関としては、これらの点を踏まえつつ、設備の劣化状況や故障時の影響度合いを適切に
評価し、全国大での優先順位を見据えた的確な更新計画の立案が必要と考える。
これについては「電力系統に関するマスタープラン」の一環として、客観的な評価の下で適
切に高経年設備の改修が行われる仕組みについて検討する予定である。
併せて、電力の安定供給を支える重要インフラ設備の更新を効率的に遂行すべく、託送料金
改革においても必要な投資確保の措置が求められると考える。
以 上

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