高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 神奈川(横浜市)
開催結果
日 時:2020 年 12 月 10 日(木)18:20〜20:30
場 所: ビジョンセンター横浜 会議室 307A ほか
参加者数:13 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・逸見 誠(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・原 一郎(原子力発電環境整備機構 地域交流部 副部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として、受入地
域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。このため、広
く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活動を順次開催
していく。
・高レベル放射性廃棄物は貯蔵施設内では約2mのコンクリートで遮蔽することで、その外側で
は人が作業できるレベルまで影響を低減することができる。放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、その後はゆっくりと減少していく。
・長期にわたり放射性物質を閉じ込め、
生活環境から隔離しておくために、
地表から 300m 以上深
い安定した場所へ地層処分する。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分の事業費は約 3.9 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一
部として電力会社等から拠出される。
・最終処分の方法は、国際的にも長い間議論が交わされ、宇宙処分、海洋投棄や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性の確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、引き続き全国各地で
の対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持ってい
ただける自治体が出てきた場合には、地域の皆さまのご意見を伺いながら、法律に基づいた文
献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、全国規模で整備された文献・データに加えて地域固有の文献・データを整理・分
析し、市町村の皆様に地層処分事業についての理解を深めていただくとともに、次なる調査を
実施するかどうかを検討していただくための材料を集める、事前調査的な位置付け。ボーリン
グなどの現地作業は一切行わない。調査結果は地域の皆さまにご説明させていただき、ご意見
を伺うとともに、当該市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、その意見に反して、次の段階
に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、文献調査の実施に際しては、処分事業についての情報提供や住民のご意見
を事業に反映する「対話の場」を地域に設置いただき、多様な関係住民の参画を得て、市町村
の将来像などをご議論いただきたい。
「対話の場」には、私たちから調査の途中経過や結果な
どのご報告や、事業に関するご説明や質疑応答もさせていただきたい。こうした取組みは諸外
国でも同様に行われ、事業への地域のご要望の反映など、重要な役割を果たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模な公共事業。NUMO・電
気事業者・国は連携して、
地域の抱える課題の解決や、
地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・なぜ地層処分なのか。
(→回答:)原子力発電が開始された 1960 年代から、高レベル放射性廃棄物の最終処分については、
様々な検討がなされてきた。その中で、氷床処分、海洋底処分、宇宙処分、地層処分が
候補として検討された。氷床処分と海洋底処分については国際条約で不可能となり、宇
宙処分は発射技術の信頼性やコスト面などから現実的ではないと判断された。地層処分
は人間の生活環境から隔離することができ、元来、地層が持っている閉じ込め機能によ
り、人による継続的な管理が不要になるため、現在、最も適切な方法であるとの基本的
な考え方が世界各国で共有されている。
・処分場はなぜ1か所なのか。複数箇所を作ることは考えていないのか。
(→回答:)処分費用のスケールメリットを考慮して、40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる施
設を1か所つくる計画としており、現時点では複数箇所の建設は想定していない。
・40,000 本はいつ頃に到達する予定か。
(→回答:)東日本大震災後の原子力発電所の稼働状況を踏まえると、時期を見通すことが難しい。
なお、一般的に 100 万 kW 級の原子力発電所 1 基が 1 年間稼働すれば約 20〜30 本のガラ
ス固化体が発生することとなる。
・埋設後、ガラス固化体を回収することも考えているのか。
(→回答:)回収可能性は、国が定めた最終処分に関する基本方針に明記されている。今後、もっと
良い技術が出てくるかもしれないことを考慮して、将来世代の選択肢を残すという視点
から処分場を埋め戻して閉鎖するまでは回収可能性を維持することとしている。
・処分事業の費用は約 3.9 兆円とのことであるが、現在はどの程度確保できているのか。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所等の運転実績に応じた金額が、毎年、電力
会社等からNUMOへ拠出されており、現在、約 1 兆円強を確保し、それを運用してい
る。
・なぜ処分場の深さは 300m 以上なのか。
(→回答:)300m とは、諸外国での検討状況を踏まえて法律で設定された最小の深さであり、処分地
選定調査において地質を調査した上で、
処分に適した深さに処分することになる。
なお、
深ければ深い方が適しているというわけではない。深いと逆に地温が高くなり、人工バ
リアの機能低下といった安全性に影響を及ぼす可能性がある。
・埋設後のモニタリングについては、どう考えているか。
(→回答:)人間が管理することなく、高レベル放射性廃棄物を地上の生活環境から隔離し、閉じ込
めることができるというのが地層処分の基本的な考え方であり、地層処分施設を適切に
設計することにより、人間社会による管理を不要とするのが、地層処分の安全の考え方
である。その上で、埋設後のモニタリングの期間や方法などは、今後策定される規制基
準の中で具体化されていくことが考えられるが、地元の皆さまにも安心していただける
よう、ご相談しながら考えていきたい。
・ガラス固化体の重量は、どの程度か。港から施設へ輸送する際の、車両の積載量はどの程度か。
(→回答:)ガラス固化体の重量は 1 本約 500kg であり、港から処分施設まで陸上輸送する際には、
ガラス固化体を専用の輸送容器に入れて運搬する。
輸送車両も含めると合計約 150t と非
常に重いため、専用道路により運搬することになると考えている。
<リスクと安全性>
・地層処分で検討の対象となる超長期とはどの程度の期間の長さであるのか。10 万年先の地質のこと
など予想できるのか。
(→回答:)地層処分では将来の安全性を数十万年レベルの時間軸で検討している。これに対して、
地質学では例えば日本列島の成立は約 1500 万年前など、
さらに長い時間軸で過去の歴史
が解明されており、地層処分の将来評価が対象とする数十万年レベルの検討は十分に対
応ができると考えている。日本周辺のプレートの動きについては、その方向や速さは数
百万年前からほとんど変化がなく、
それに起因する断層活動などの傾向は今後も 10 万年
程度は現在と同様であり続けると考えられており、日本でも地層処分は可能であること
が、国内外の専門家によって評価されている。
・長期安全性における気候変動リスクとしてどのような検討をしているか。
(→回答:)例えば、過去の地質学的な歴史から、今後約十万年後に気候の寒冷化により海面が 150m
程度低下することを想定し、地下水流動の駆動力が増すことなどの影響も考慮して、将
来の安全性の評価を行っている。
・最終処分場のテロ対策はどうするのか。
(→回答:)原子力発電所や再処理施設などの原子力施設では、新規制基準によりテロを含めた人為
事象についての対策が措置されており、地層処分事業についても同様の考え方に基づき
必要な対策を講じることとなるものと考えている 。
・説明資料の中で、
オーバーパックの閉じ込め機能が失われたと仮定し、
さらに通常より 10 倍の速度
で放射性物質がガラス固化体から出ていくと想定した厳しいケース例における「安全性確保の国際
基準 300μSv/年」の根拠は何か。また、その国際基準との比較で下回っている「人間が受ける年間
線量の最大値 2μSv/年」と、説明参考資料の中にある不確実性を考慮した様々な解析ケースの評価
における「NUMO努力目標 10μSv/年」との関連はいかがか。
(→回答:)
「安全性確保の国際基準 300μSv/年」については、国際機関である国際放射線防護委員
会(ICRP)や国際原子力機関(IAEA)が推奨している基準である。また、ご質
問の「人間が受ける年間線量の最大値 2μSv/年」と「NUMO努力目標 10μSv/年」と
の関連については、この「人間が受ける年間線量の最大値 2μSv/年」との評価は、国際
的な安全性確保の国際水準(300μSv/年)から更に厳しめに評価しているNUMOの努
力目標である「めやす線量(10μSv/年)
」よりも十分に下回っているということを示し
ており、
人間が自然界から受けている自然放射線量の世界平均である 2.4mSv/年と比較
した場合でも約 1000 分の 1 相当となっている。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・地層処分場を受け入れた場合のメリットは何か。
(→回答:)最終処分地が決まった場合には、NUMOは本拠をその地域に移転し、NUMO職員や
関連事業者は地域の一員として地域の発展に貢献する。また、NUMO・電気事業者・
国は、雇用の創出や生活の向上ならびに国内外との交流拡大など、地域の持続的な発展
に資する総合的な支援策について、自治体や地域住民の皆さまとの対話を通じ、その地
域のニーズを汲み取りながら具体化し、地域と共生していく。こうした支援策の1つと
して、処分地選定調査の段階から、国の交付金制度も活用できる。具体的な地域が出て
きた際は、その地域にとって何が良いのか、持続性や親和性はあるか等も考えながら、
「対話の場」などでご相談したい。
・対話型全国説明会の効果は出ているのか。
(→回答:)本説明会は、地層処分の実現が社会全体の課題であるとの認識が広く国民の皆さまに共
有されることを目的として行っているものであり、地層処分に対して慎重なご意見をい
ただくことも多いが、対話形式で質疑応答することでご理解いただけることも多い。ま
た、いただいたご意見を説明や資料に反映させていただいている。説明会にご参加いた
だいた方々からは、聞きたいことが聞けたという声もいただいている。海外で処分地を
決めた国においても、数十年かけて地域理解、国民理解を進めてきており、引き続き一
歩ずつ取組みを進めてまいりたい。
・対話型全国説明会に参加する方は、もともと放射性廃棄物問題に関心のある層だと思われる。無関
心層の方に対し、NUMOではどのような取組みを行っているのか。
(→回答:)地層処分事業は長期にわたる事業であるため、将来を担う次世代層にも関心を持ってい
ただけるように取り組んでいる。
具体的には、
小中学校などへの出前授業で説明したり、
展示物や映像機材を設置した移動型模型展示車ジオ・ミライ号を全国の科学館などに派
遣し、親子向けに地層処分事業の紹介などを行っている。次世代層からの理解を得るこ
とは重要であると考えており、今後もSNS等を活用するなど、幅広い層への広報活動
について工夫していきたい。
・北海道の神恵内村で文献調査が開始されているが、当該地域はマップではオレンジとなっており、
適地ではないのではないか。
(→回答:)科学的特性マップは、候補地を絞り込むことが目的ではないため、具体的に詳細な調査
を行わないと、
適地かどうかはわからない。
なお、
神恵内村にもグリーンの部分があり、
調査の実施見込みについて確認を行った上で、文献調査を開始している。
・地域住民の皆さまの主体的な合意形成とは、具体的にどのような状況を言うのか。
(→回答:)地層処分事業はおよそ 100 年にわたる長期事業であり、社会全体の課題を特定の地域に
受け入れていただく事業となるので、地域の多様な方々に参画いただき、適切な情報提
供のもとで、地域住民の皆さまの間で継続的な対話を積み重ねていただくことにより、
地域住民の皆さまのご意見や考えが集約されることを考えている。
<その他>
・先進地の事例等、実際のものを見るのが重要。そういった広報活動は、できないものか。
(→回答:)NUMOでは地層処分事業についての関心・ご理解を深めていただくための取組みの一
つとして学習支援事業を実施しているが、その中で地下研究施設などの関連施設の見学
についても支援しており、ぜひご活用いただきたい。
以 上

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