高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明 in 山口(山口市)開催結果
日 時:2020 年 2 月 19 日(水)18:20〜20:30
場 所:山口市民会館 小ホール
参加者数:37 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・榎本 宏(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。
・最終処分の方法は、
国際的にも長い間議論が交わされ、
宇宙処分、
海洋底処分や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・地層処分では、地下 300m より深い安定した環境で、長期にわたり放射性物質を閉じ込め、生活
環境から隔離していく。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分事業費は約 3.9 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、ひきつづき全国各地
での対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持って
いただける自治体が出てきた場合には、地域のみなさまのご意見を伺いながら、法律に基づい
た文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、事業を深く知っていただき、更なる調査を実施するかどうかを検討してもらうた
めの、材料を集める事前調査的な位置付け。ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果
は地域の皆さまに公表してご意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を
伺い、反対の意向が示された場合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画され、積極的な活動が行われることが望ましい。こ
うした取組みは諸外国でも同様に行われ、地域のご要望の事業への反映など、重要な役割を果
たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模事業。NUMO、電気事業
者、国は連携して、地域の抱える課題の解決や、地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・処分場の地下施設の広さはどのくらいか。
(→回答:)処分場の地下施設の広さについては、現在の設計では、6〜10 km2程度を想定してい
る。
・ガラス固化体を 1 本つくるのに、どれだけの費用がかかるのか。
(→回答:)処分事業の費用を全体で約 3.9 兆円と試算しており、40,000 本以上のガラス固化体
を埋設できる処分場を 1 か所建設する計画であることから、単純に総費用を本数で
割り戻した場合には、ガラス固化体 1 本当たりの処分費用は 1 億円弱となる。
・処分地選定に向けた具体的なスケジュールはあるのか。
(→回答:)最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要であるが、スケジュールありき
で考えても全国での理解が進むものではない。むしろ、期限があることで、地域の意向
に反して一方的に物事を推し進められてしまうのではないかと受け止められてしまう
可能性もある。
いずれにしても現世代の責任として地層処分の実現に向けた取組を進め
ていくことが不可欠であり、引き続き、全国の皆さまに地層処分についてご理解いただ
くとともに、いずれかの地域で調査を受け入れていただけるよう努めていく。
・処分場の深さは、なぜ地下 300m なのか。300m は浅いのではないか。
(→回答:)300m とは、人間の地下開発が 300m 以深にほとんど及んでいないことや、諸外国で
の検討状況を踏まえて法律で設定された最小の深さであり、処分地選定調査におい
て地質を調査した上で、300m より深い処分に適した岩盤に処分することになる。
なお、深ければ深い方が適しているというわけではない。深いと逆に地温が高くな
り、人工バリアの機能低下といった安全性に影響を及ぼす可能性がある。
・ガラス固化体はどのような放射性物質を含んでいるのか。
(→回答:)成分としては、セシウム、ストロンチウム、アメリシウム、ネプツニウムなどの
様々な放射性核種が含まれている。高レベル放射性廃棄物の放射能は、短期間で
比較的早く減少するものの、長期間にわたって存在し続ける。放射性物質の崩壊
により半分が別の物質に変化する半減期については、セシウムとストロンチウム
が 30 年程度と短く、
アメリシウムは約 430 年、
ネプツニウムは約 2 百万年と長い。
使用済燃料のように核分裂性のウランやプルトニウムが殆ど含まれていないため、
臨界状態になることはなく、爆発することもない。
・国際条約で自国に処分することが決められているという説明があったが、何という条約か。
(→回答:)
「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」である。
・この問題を多くの人に知ってもらう必要がある。次世代層への周知を強化すべき。音楽と一緒
に伝えるなど、周知方法を工夫したほうがいい。
(→回答:)対話型全国説明会のほか、
駅前広場など人の往来が多い場所に広報ブースを出展し、
道行く人に地層処分事業を紹介したり、
展示物や映像機材を設置した移動型模型展示
車であるジオ・ミライ号を全国の科学館などに派遣して次世代や子育て層にPRした
り、小中学校、高校、大学への出前授業で説明を行うなど、さまざまな取組みを展開
している。今後ともSNS等を活用するなど、色々と工夫していきたい。
・原子力発電を止めても既に廃棄物は発生しているのだから、地層処分は必要だ。
<リスクと安全性>
・放射性廃棄物は期間や毒性が通常の廃棄物と大きく異なるので、想定外の事態が発生すると困
る。
(→回答:)地下水が染み出した場合のシミュレーションや、万が一調査で見つからなかった断
層が処分場を直撃した場合のシミュレーションなど、様々なシナリオの検証を積み
重ね、必要な安全対策を講じていく。
・地下水の流れをどのように把握するのか。
(→回答:)文献調査の次段階の概要調査では、ボーリング調査等を行うことにより、地下深く
の水の流れについて、水圧、水の透しやすさがどの程度であるかなどのデータを取
得した上で、
これらデータを用いたシミュレーション解析によって評価する。
なお、
広大な地層中のすべての水の流れを完全に把握できるものではないが、これまでの
様々な地質環境調査で得られた知識をもとに確率や統計的な手法も加味して、評価
していく。
・日本の岩盤は新しく、ヨーロッパのように安定していないのでは。
(→回答:)日本の地層はヨーロッパの地層と比べると新しいものが多いが、一概に新しい地層
が悪いというわけではない。これまでの研究成果では、地層処分に要求される地質
環境は、日本にも広く存在すると国内外の専門家から評価されている。地質の安定
性は、日本周辺のプレートの動きと関連していると考えられており、現在、その方
向や速さは数百万年前からほとんど変化がなく、今後も 10 万年程度はほとんど変
化しないと考えられている。ただし、実際に個別の地域において地層処分に適した
特性があるかどうかは、その地域における詳細な処分地選定調査を実施して確認を
行う必要がある。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・処分場を閉鎖したら雇用がなくなるのではないか。
(→回答:)処分場だけを捉えて見れば、建設・操業中の期間と比較して閉鎖後は雇用が減少す
るかもしれないが、NUMO・電気事業者・国は、雇用の創出のほか、生活向上な
らびに国内外との交流拡大など、地域の持続的な発展に資する総合的な支援策につ
いて、自治体や地域住民との対話を通じ、その地域のニーズを汲み取りながら具体
化し、地域と共生していく。
・信用は最終的には人と人。それをどのように得ていくのか。
(→回答:)国民の皆さまからの信用を得られるよう、誠意を持って説明責任を果たすことを積
み重ねていくことが重要だと考えている。
<その他>
・原子力発電は必要ないのでは。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー
政策を実現するためには、原子力への依存度は可能な限り低減していくが、ゼロに
するわけにはいかない。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネルギー供
給の安定性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力を活用して
いかざるを得ないと考えている。
・子供たちは「もうこれ以上、廃棄物を増やさないで」と言うのではないか。
(→回答:)出前授業などの学校教育の現場で子供たちと話をする機会があるが、
「ごみを増や
さないで」という意見もある一方、
「原子力を使って安定した電気をつくってほし
い」という子供たちもいる。
・初めて参加したが勉強になった。とても重要なことなので、家族にも話をしてきちんと考えて
いきたい。
以 上

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