科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 福井(敦賀市)開催結果
日 時:2019 年 10 月 16 日(水)18:20〜20:30
場 所:プラザ萬象 小ホール
参加者数:25 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・来島 慎一(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・伊藤 眞一(原子力発電環境整備機構 理事)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏出した
場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動を
遅らせることができる(天然バリア)
。放射能が大きく減少するまでの期間、少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保出来るかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域住民に公表してご
意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事に意見を伺い、反対の意向が示された場
合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画し、積極的な活動が行われることが望ましい。こう
した取組みは諸外国でも同様に行われ、地域要望の事業への反映など、重要な役割を果たして
いる。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える社
会経済的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応をさせていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・人工バリアのそれぞれの重さはどのくらいなのか。
(→回答:)ガラス固化体は約 500kg、オーバーパックは約 6t、緩衝材は約 17.5tである。
・平地面積の狭いところに処分場を作ることは可能なのか。
(→回答:)地上施設として 1〜2km2が必要であるが、必ずしも平地である必要はなく、設計で工夫
すれば、丘陵部や山間部が含まれていても可能である。
・処分事業を実施している途中でより良い処分方法が開発されたら廃棄物を回収して処分し直すこと
はできるのか。
(→回答:)地層処分を前提としつつも、将来世代が最良の処分方法を選択できるようにすることを
基本的な方針とし、回収可能性に関する研究開発を進めているところ。そのために必要
な緩衝材の除去技術などの回収方法の要素技術の開発を進めているところである。
・地層処分のタイムリミットは。どの自治体も応じない状況が続けば、時間が経つにつれて放射性廃
棄物があふれてしまうのではないか。
(→回答:)
かつて原子力発電が全体の発電量の約 3 割を占めていた頃は、2021 年頃に 40,000 本に
到達する見込みだったが、東日本大震災以降の原子力発電所の稼働状況を踏まえると想
定は難しい。一般論で言えば、100 万 kW 級の原子力発電所が 1 年間稼働すると、20〜30
本のガラス固化体に相当する使用済み燃料が発生することになる。
<リスクと安全性>
・ガラス固化体を 40,000 本も処分したら、地表に放射線の影響が出るのではないか。
(→回答:)例えば、六ヶ所の貯蔵施設では、ガラス固化体をタテに 9 段重ねで保管しているが、厚
さとして 2m 程度のコンクリートがあれば、
人が上に立つことができるまで放射線を遮へ
いできる。300m 以上の地層の遮蔽効果があれば、地表に放射線が出てくることはない。
・想定される事故のシミュレーションは行っているのか。
(→回答:)国際機関の指針に基づき、発生可能性に応じてシナリオを区分して評価を行っている。
これには通常の設計に考慮する様々なシナリオの他に、稀頻度事象シナリオといわれる
新規火山発生のケースや将来の人間が処分場に接触してしまう人間侵入シナリオなども
含まれるが、各シナリオにおいて、安全評価を行う検討が行われている。これらはあく
までも一般的なモデルでのシミュレーションであり、候補地が絞られてくれば、より詳
細な情報を用いて精度の高いシミュレーションを行っていくこととなる。
・科学的特性マップでは都市部か否かにかかわらずグリーンに色分けされているが、候補地として都
市部でないほうがいいのか。
(→回答:)科学的特性マップは、火山や断層といった地層処分に関係する科学的特性を、既存の
全国データに基づき一定の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示した
もの。そのため、都市部か否かといった点は考慮していない。
・操業中の安全管理はどのように行うのか。
(→回答:)操業中における様々な異常状態の発生を考慮し、処分施設の安全性を定量的に評価する
手法を用いる。例えば、万一にガラス固化体をオーバーパックごと落下したことを想定
し、シミュレーションを実施して、ガラス固化体に影響がないことなどの評価をしてい
る。
・科学的特性マップは、活断層をすべて確認しているのか。
(→回答:)全国一律に整理されている文献データとして「活断層データベース」を利用しており、
このデータベースに掲載されていない活断層は存在している。これらについては、今後
の段階的な処分地選定調査で詳しく調査・評価していく。
・大きな断層がなくても大きな地震は起きている。地下深く、例えば深さ 20km・30km のところに断層
があって、それが地震を起こさないかということは調べようがないのではないか。
(→回答:)日本ではどこでも大なり小なり地震は起きうると考えている。操業期間中は地域で想定
される最大規模の地震に対する耐震基準をクリアするような施設を建設することになる。
地下深くは地上に比べて揺れが小さいという評価結果も得られており、特に閉鎖後につ
いては岩盤と廃棄体とが一体化して揺れるため、ガラス固化体が破壊されるようなこと
は考えにくい。
・想定を超える地震が実際に起きてきている。耐震基準をクリアすれば安全とは言えない。
(→回答:)しっかりと設計を行うが、それで大丈夫というわけではなく、想定を超える事象は起こ
りうるという前提のもとに評価を行いながら進めていく。
・津波が発生した場合、遮水扉のみで被害を防ぐことはできるのか。水没したらどうなるのか。
(→回答:)地下トンネル入口に遮水扉を設置するだけでなく、防潮堤や高台への設置等の対策を行
うことで津波を防ぐ。万一、トンネルに水が入り水没したとしても、ガラス固化体が化
学反応を起こして爆発するようなことはない。
・科学的特性マップには反映されていない細かい活断層だらけで日本では処分する場所などないので
はないか。
(→回答:)全国すべて網目のように活断層があるわけではなく、活断層が少ない地域もある。
科学的特性マップの右下に地上施設と地下施設の大きさが赤い点で示されているように、
この程度の限られた大きさであれば日本でも十分に安定した場所が見つかるということ
が、長年の研究結果として得られており、その結果として地層処分を行うこととなって
いる。
・科学的特性マップに地下水のデータがないのはなぜか。
(→回答:)一部の地域では地下深部における地下水の挙動や特性について詳細な情報が得られてい
るものの、多くの地域でそのような情報が得られているわけではないことから、全国一
律の情報により整備する科学的特性マップでは反映されていない。地下水の挙動や特性
については、現地調査を通じて個別地点毎に評価して把握していくこととなる。
・地下水はどうやって調べるのか。
(→回答:)段階的な調査を実施する中で、例えば概要調査でボーリング等を行って地下水の特徴を
推定し、精密調査を実施する中でその推定が正しいことを確認するなどして把握してい
く。
・長期安定性のイメージが湧かない。
(→回答:)日本周辺のプレートの動きの傾向は数百万年前からほとんど変化がなく、このプレート
の動きに関係する地震・断層活動、
火成活動等は、
今後 10 万年程度はほとんど変化しな
いと考えられている。
・今の科学では特定の場所で安全だということは言い切れないのではないか。
(→回答:)どのような場所でも、リスクゼロであるということはあり得ないため、安全確保につい
ても様々なリスクを想定して、真摯に対策を講じていきたい。
・安全性が十分あると理解したが、どうしても漠然とした不安が残る。
・今回の台風など想定外というものが日常的にある。地層処分をしたときもやはり想定外が発生する
と考えて、どこも手をあげられないのではないか。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・調査の結果、不適ということであれば次の段階には進まないのか。
(→回答:)その通り。
・次世代に向けての理解促進活動はどのようなことをしているのか。
(→回答:)大学や小・中・高校に出前授業を行っており、例えば、福井工大では年 8 コマの特別講
義を行っている。千葉大では地層処分をテーマにしたディベート講座を実施してもらっ
ている。また、関心を持っている先生方の協力の下、小中学生の教師向けの副教材を開
発し、一部の学校では活用してもらっている。このほか、地層処分の学習ができる移動
展示車を各地に展開し、親子で体験してもらう取組みを行っており、先週末に敦賀でも
開催した。
・地層処分の認知度はどうなっているのか。
(→回答:)定期的に、広報活動の効果測定を通して認知度を把握している。例えば学生等への認知
度は決して高いとは言えないが、出前授業や教育支援を通して地層処分の問題を認知し
ていただけるよう取り組んでいる。
・市には説明会を開催することを伝えているのか。このような説明会の開催の案内をほとんど見かけ
ない。
(→回答:)説明会を開催することを市に情報提供している。NUMOは地方新聞やタウン誌や自治
体広報誌に広告を出すなど、事前告知の方法について試行錯誤しながら実施している。
・一般の人には、このような説明会に時間を潰して参加するメリットがない。また、興味も薄い。
広報の方法をもっと考えるべきである。
・地層処分の必要性を訴える宣伝が足りないのではないか。
・テレビCMや、地域密着媒体であるケーブルテレビなども活用すべきである。
・模型等があると理解しやすい。簡単に作れるような模型キットを配布すればよいのでは。
・若い世代に関する教育が必要で、特に小中学校におけるエネルギー教育は重要と考えるが、学習指
導要領に記載がなく、現場での教育の実施が統一されていない。
(→回答:)地層処分事業について知っていただくために、対話型全国説明会だけでなく、人が集ま
る場所での広報、ホームページやSNSを通じた情報発信、学校などへの出前授業、地
層処分展示車の展開など様々な取り組みを進めており、いただいたご意見も踏まえなが
ら、さらに社会全体で関心を持ってもらえるように取り組んでいきたい。・「ゴミ、処分場」という表現が良くない。施設ができることにより、町は発展し、さらには、海外に
向けても発展するイメージがほしい。・結局は政治主導で進めるしかないと思う。
長い事業期間中に方針転換などしないよう、
将来的にも、
国が責任をもって対応してほしい。
<その他>
・まず、高レベル放射性廃棄物の発生原因である原子力発電を止めるべきではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー政策
を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、ゼロにする
わけにはいかない。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネルギー供給の安定
性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力を活用していかざるを得
ない。原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄物があ
ることは事実であり、現世代の責任で地層処分を進める必要があると考えている。
以 上

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