科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 茨城(つくば市)開催結果
日 時:2019 年 10 月 23 日(水)18:20〜20:30
場 所:つくば国際会議場 中会議室 201
参加者数:10 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・江橋 健(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・羽多野 佳二(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏出した
場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動を
遅らせることができる(天然バリア)
。放射能が大きく減少するまでの期間、少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保出来るかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域住民に公表してご
意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事に意見を伺い、反対の意向が示された場
合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画し、積極的な活動が行われることが望ましい。こう
した取組みは諸外国でも同様に行われ、地域要望の事業への反映など、重要な役割を果たして
いる。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える社
会経済的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応をさせていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・地上で保管すべきではないか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の放射能は、短期間で比較的早く減少しながらも、長く残存
する。地上で保管するとなると、それが人間の生活環境に影響を及ぼさなくなるま
で、数万年の長期間にわたり地上施設を維持・管理していく必要があり、その間に
は施設の修復や建て替えも必要となる。さらに地上保管の場合、地震、津波、台風
などの自然現象による影響や、戦争、テロ、火災などといった人間の行為の影響を
受けるリスクがある。長期にわたり、このようなリスクを念頭に管理を継続する必
要がある地上施設を残すことは、将来の世代に負担を負わせ続けることとなり、
現実的ではない。このため、人の管理を必要としない最終的な処分(最終処分)を
行うべきであるというのが国際的にも共通した認識となっている。
・宇宙に処分すればいいのでは。
(→回答:)原子力発電が開始された 1960 年代から、高レベル放射性廃棄物の最終処分については、
様々な検討がなされてきた。その中で、氷床処分、海洋底処分、宇宙処分、地層処分が
候補として検討された。宇宙処分は発射時の信頼性やコスト面などから現実的ではない
こと、また、氷床処分と海洋底処分については国際条約で禁止されている。地層処分は
人間の生活環境から隔離することができ、
元来、
地層が持っている閉じ込め機能により、
人による継続的な管理が不要になるため、現在、最も適切な処分方法であるとの基本的
な考え方が世界各国で共有されている。
・これから調査を行い、候補地を選定するのであれば岩種は選べる。堆積岩系と花崗岩系、どちらが
処分場の建設に適していると考えるか。
(→回答:)岩種によって処分場の適性を一概に言えるものではない。その場所の地層がどのような
特性を持っているかを詳細に調べて確認する必要がある。花崗岩は比較的硬く、地下水
は岩石中の割れ目を流れるという特徴が、堆積岩は比較的軟らかく、地下水は岩石中の
鉱物粒子の隙間を流れるという特徴があるが、酸素が少なく地下水の流れが緩慢といっ
た好ましい地下環境の特性を満たしていれば、岩種によらず安全な地層処分は可能と考
える。
・地層処分における責任は誰が負うのか。
(→回答:)処分事業における一義的責任は事業の実施主体であるNUMOが負う。安全規制への
適合・遵守にとどまることなく、安全性の向上に向けて不断に取り組む義務を有してい
る。また、原子力損害賠償制度に基づく賠償責任を負うが、NUMOが対応困難な事故
等が発生した場合や、NUMOが解散した後については、国が必要な措置を講じること
としている。
・再処理やガラス固化できる技術はないのでは。
(→回答:)再処理やガラス固化を行う技術はすでに確立している。六ヶ所再処理工場は現在、原子
力規制委員会の新規制基準に基づく安全審査への対応を行っており、
2021 年に竣工する
予定である。
・再処理を行うから高レベル放射性廃液という危険なものが発生する。直接処分する方が良いのでは
ないか。
(→回答:)再処理せずに使用済燃料を直接処分する場合でも、使用済燃料そのものが高レベル放射
性廃棄物となります。 その上で、日本では、資源の有効利用、廃棄物の減容化、有害度
低減の観点から、資源として利用できるウランとプルトニウムを回収する再処理を行う
ことを基本的な方針としている。ガラス固化体には、ウランやプルトニウムがほとんど
含まれていないため、臨界状態になることはなく、また爆発することもない。
・安全性が担保できていないのであれば「処分」でなく「管理」というべきである。
(→回答:)地層処分における安全確保については、1断層や火山などを避けて場所を選ぶ「立地に
よる対応」、2選んだ場所に応じて、
ガラス固化体を厚い金属製容器に格納するオーバー
パックや、さらに粘土でできた緩衝材で包み込む人工バリアを設計する「設計による対
応」、3その対策により安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認する
「安全
性の確認」といった作業を繰り返し行い、安全性を確認する。その上で、人間の生活環
境から隔離するため、
地下 300m 以深の安定した岩盤に埋設・処分する方法が地層処分で
あることから、管理には当たらない。
<リスクと安全性>
・新幹線の工事で大量の湧水の話を聞く。総坑道長 200km もある地層処分で、操業中の地下水対策は
大丈夫か。
(→回答:)処分場の建設に際しては、事前に十分な調査で地下水の状況を把握し、必要な止水対策
を講ずる。新幹線や高速道路はある地点と地点を結ぶ線であり、経路上どうしても湧水
が多い場所を避けられない場合があるが、処分場は新幹線の工事と比べると地下水の影
響を受ける場所を避けることができる。また、総坑道長 200km については、一定の範囲
に分けて建設工事の時期をずらして、掘削、定置、埋戻しを進めるので、200km の総坑
道長が同時に空いているものではない。
・地下水の流れは地震や地殻変動などに伴って変動するのではないか。
(→回答:)地震により地下水の流れが変化しても比較的短期間で元の状態に回復する傾向と考えら
れている。一方で、沿岸の地下水の動きは海面の上下動の影響を受ける。世界的に
約 10 万年周期で海面が上下しており、
現在はほぼ一番海面が高い時期にあるが、
低い時
期は現在より 120m 程度海面が下がり、
日本列島がアジア大陸と陸続きであったというよ
うなことが言われている。このような影響も想定して将来の安全性を評価していく。
・ベントナイトへの塩水の影響はどうか。
(→回答:)国の沿岸海底下における地層処分に関する研究会でも報告されているが、海水系地下水
条件では緩衝材の膨潤性が低下する傾向ではあるものの、基本的にベントナイトの含有
量を増すことで対処できると考えられている。
・説明資料の中で、あえて過酷な条件を設定したシナリオによるシミュレーションの箇所で、めやす
線量として 20〜100mSv という記載がある。
稀頻度とはいえ、
そのようなリスクがあるのであれば、
地層処分すべきでないと思う。
(→回答:)適切に処分場の選定や設計を行うことにより、発生する可能性は極めて低いと考えられ
るが、あえて過酷な条件として設定した処分場を横切る大規模な断層の発生というシナ
リオのシミュレーションを行い、その影響が一定の範囲に収まっていることを確認して
いるものである。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・前提となる核燃料サイクルにつても説明しないと説得力がない。
(→回答:)日本では、資源の有効利用、廃棄物の減容化、有害度低減の観点から、資源として利用
できるウランとプルトニウムを回収する再処理を行うことを基本的な方針としている。
<その他>
・使用済燃料が増えている。保管が重要である。
(→回答:)使用済燃料対策の重要性は認識しており、使用済燃料の貯蔵能力の拡大の施策を進
めている。
・つくばや東京を候補地にすると、住民が具体的に心配して研究が進む。電気の消費地はもっと関心
を持つべき。
(→回答:)対話型全国説明会のほか、移動型の模型展示車によるイベント出展や学校での出前
授業など、大都市圏を含めて全国各地で行い、広く地層処分事業を知ってもらえる
よう取り組んでおり、今後も広報活動について工夫していきたい。
・現世代の責任と言うが、世代ではなく経産省、電力会社など、責任者を特定、明確化すべき。
(→回答:)もちろん政府として前面に立って取組を進めていくが、この問題は原子力発電を含
む電気を利用してきた社会全体で関心を持っていただき、考えていかなければ解決
できない問題と認識している。
・原子力発電を利用してきた我々に責任があると考えている。
以 上

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