科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 富山(高岡市)開催結果
日 時:2019 年 8 月 27 日(火)18:20〜20:30
場 所:高岡エクール(協同組合 高岡問屋センター)2 階 201 展示室兼会議室
参加者数:16 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・引地 悠太(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・羽多野 佳二(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏れ出し
た場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動
を遅らせることができる
(天然バリア)。放射能が大きく減少するまでの期間、
少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域の皆さまに公表し
てご意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、反対の意向が示さ
れた場合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画され、積極的な活動が行われることが望ましい。こ
うした取組みは諸外国でも同様に行われ、地域のご要望の事業への反映など、重要な役割を果
たしている。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える経
済社会的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・放射性廃棄物が目に見える場所で管理されていないと不安。地上で保管すべきではないか。
(→回答:)地上で保管するとなると、人間の生活環境により近い場所に放射性物質が留まることに
なるため、長い期間にわたり、人による管理が必要になるとともに、安全上のリスクが
大きくなる。後の世代に負担を残さないという観点からも、人の管理を必要としない方
法で処分を行うべきであるというのが国際的にも共通した認識である。
・候補地の選定期限といった地層処分事業のスケジュールはあるのか。
(→回答:)最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要だが、スケジュールありきで考
えても全国での理解が進むものではなく、むしろ、期限があることで、地域の意向に反
して一方的に物事を推し進められてしまうのではないかと受け止められてしまう可能性
もある。いずれにしても現世代の責任として地層処分を実現することが不可欠であり、
引き続き、全国の皆さまに地層処分についてご理解いただくとともに、いずれかの地域
で調査を受け入れていただけるよう努めていく。
・全国で何か所処分場を作るのか。
(→回答:)ガラス固化体を 40,000 本以上埋設可能な処分場を全国で1か所建設する予定である。
・40,000 本はいつ頃に到達する予定か。
(→回答:)かつて原子力発電が全体の発電量の約 3 割を占めていた頃は、2021 年頃に 40,000 本に
到達する見込みだったが、東日本大震災以降の原子力発電所の稼働状況を踏まえると想
定は難しい。一般的に 100 万 kW 級の原子力発電所 1 基が 1 年間稼働すれば約 20〜30 本
のガラス固化体が発生することとなる。
・ガラス固化体の放射能はどれくらいなのか。
(→回答:)製造直後のガラス固化体の表面線量は約 1,500Sv/h と、人の命にかかわるレベルの強い
放射線が出ている。距離をとることや遮へいを施すことによって、その影響を低減する
ことができる。また、時間の経過とともに放射能レベルは減衰する。
・約 3.8 兆円の費用はどこから出ているのか。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所などの運転実績に応じた金額を原子力事業
者等が拠出している。原資は電気料金の一部として皆さまにご負担いただき、NUMO
とは別の資金管理機関において適切に管理されている。
<リスクと安全性>
・ガラス固化体の埋設中に地下水が流入してきた場合はどうするのか。
(→回答:)地層処分場では、地下施設の建設中や廃棄物の埋設作業中は、地下の坑道と岩盤には圧
力差が生じるため、周囲の岩盤から坑道に地下水が流入しやすくなる。このため、坑内
に排水設備を設置するとともに、湧水量が多いと想定される箇所に対し、一般のトンネ
ル建設でも採用されているグラウチング等の湧水対策を施すことを考えている。
・立坑を 1000m 掘削しても岩盤に届かない場合、どう対処するのか。
(→回答:)立坑掘削などの処分場建設を開始する前に、地質図などの文献による調査、ボーリング
調査や地下の調査坑道などによる現地調査により、地層処分に適した地層の位置や広が
りなどを確認し、強度が十分な岩盤の位置が深すぎて、地層処分に適していないと考え
られる場合は建設地として選定しない。
・富山県の活断層等のデータが、なぜ科学的特性マップに反映していないのか。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分に関係する科学的特性を、既存の全国データに基づき一
定の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形にしたものであり、マップには
反映されていない地域の文献・データや、未知の活断層なども存在する。こうした地域
の詳細な地質環境については、3段階の処分地選定調査において詳細に調査することと
している。
・科学的特性マップの活断層は、何を根拠に策定したものか。
(→回答:)科学的特性マップでは、全国の活断層を網羅的に整備した産業技術総合研究所の活断層
データベースに記載されている情報を一定の基準に基づき使用している。
・地層処分を実施するうえで最悪のケースはどのように考えているのか。想定外の事態が発生すると
困る。
(→回答:)調査で見つからなかった断層が処分場を直撃し、全てのガラス固化体が破損して地下水
の通り道が地上までできてしまう場合など、発生する可能性が限りなく低いケースにつ
いてもシミュレーションを行い、その結果が地上の人間への放射能による影響について
安全基準を満たしているかを検証している。
・津波は考慮しているのか。
(→回答:)津波についても考慮している。具体的には、廃棄体の埋設後は坑道がふさがれるため、
地下の処分場に津波の影響が及ぶことは考えにくい。また、埋設までの間の廃棄体や処
分施設が受ける津波の影響に対しては、個別地点における詳細な処分地選定調査を踏ま
えた工学的対策により、津波の影響は対応可能であると考えている。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・今ある原子力発電所それぞれに処分場をつくってはどうか。
(→回答:)個別の地域について適性があるかどうかは、その地域における詳細な処分地選定調査を
実施して検討していくこととなる。地層処分は、数万年以上という期間にわたって地下
深部の安定性が求められる点で発電所の立地条件とは異なるため、原子力発電所の立地
地域が必ずしも地層処分の処分地として適しているとは限らない。
・地層処分は安全と説明しても、なぜ手を挙げる自治体がいないのか考えてほしい。これまでの説明
会、その他にも、最終処分を進める上で何が問題だったのか考えるべき。
・次世代に負担をかけないためにと言うが、もう既に負担になっており、そうした言い方は不誠実で
はないか。
<その他>
・これ以上、高レベル放射性廃棄物を発生させないために原子力発電を止めるべきではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー政策
を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、ゼロにする
わけにはいかない。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネルギー供給の安定
性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力を活用していかざるを得
ない。また、原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄
物があることは事実であり、
現世代の責任で地層処分を進める必要があると考えている。
・全体説明では表面的な部分しか説明されなかった。不都合な情報や研究成果を隠しているのではな
いか。
(→回答:)不都合な情報や研究成果を隠すような意図は全くなく、説明会に初めてご参加の方にも
ご理解いただきやすいよう、まずは基本的な内容からご説明するように心がけて説明会
を運営している。それ以外の詳細情報や研究成果についてはNUMOのホームページ等
で報告書などを公開しているし、より深く知りたい等のご関心については、いつでも国
やNUMOにご連絡いただければ、更にご説明をさせていただく。地層処分の実現にあ
たっては、
事業に対する国民全体での理解が重要であり、
今後も対話活動を進めていく。
以 上

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