高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 兵庫
(洲本市)
開催結果
日 時:2020 年 8 月 23 日(日)13:30〜16:00
場 所:洲本市文化体育館 1階 会議室1A
参加者数:6 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・榎本 宏(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・松木 浩彦(原子力発電環境整備機構 地域交流部 副部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として、受入地
域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。このため、広
く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活動を順次開催
していく。
・高レベル放射性廃棄物は貯蔵施設内では約2mのコンクリートで遮蔽することで、その外側で
は人が作業できるレベルまで影響を低減することができる。放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、その後はゆっくりと減少していく。
・長期にわたり放射性物質を閉じ込め、
生活環境から隔離していくために、
地表から 300m 以上深
い安定した場所へ地層処分する。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分の事業費は約 3.9 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一
部として電力会社等から拠出される。
・最終処分の方法は、国際的にも長い間議論が交わされ、宇宙処分、海洋投棄や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、ひき続き全国各地で
の対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持ってい
ただける自治体が出てきた場合には、地域の皆さまのご意見を伺いながら、法律に基づいた文
献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、全国規模で整備された文献・データに加えて地域固有の文献・データを整理・分
析し、市町村の皆さまに地層処分事業についての理解を深めていただくとともに、次なる調査
を実施するかどうかを検討してもらうための材料を集める、事前調査的な位置付け。ボーリン
グなどの現地作業は一切行わない。調査結果は地域の皆さまにご説明させていただき、ご意見
を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、その意見に反して、次の段
階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、文献調査の実施に際しては、処分事業についての情報提供や住民のご意見
を事業に反映する「対話の場」を地域に設置いただき、多様な関係住民の参画を得て、市町村
の将来像などをご議論いただきたい。
「対話の場」には、私たちから調査の途中経過や結果な
どのご報告や、事業に関するご説明や質疑応答もさせていただきたい。こうした取組みは諸外
国でも同様に行われ、事業への地域のご要望の反映など、重要な役割を果たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模な公共事業。NUMO・電
気事業者・国は連携して、
地域の抱える課題の解決や、
地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分の概要>
・東日本大震災以降は原子力発電所があまり稼働していない状況だが、ガラス固化体の貯蔵容量
に余裕はあるのか。
(→回答:)震災以前よりも原子力発電所の稼働率が下がったため、使用済燃料の増え方は遅くなっ
ているが、各電力会社の使用済燃料プールの容量はひっ迫している。また、既にガラス
固化体として貯蔵されている分に加えて、発生した使用済燃料も合わせると、ガラス固
化体約 26,000 本相当の廃棄物が生じていることになるため、
処分場のガラス固化体の貯
蔵容量(40,000 本以上)にも対して余裕があるとは言えない。
・年間でどのくらいのガラス固化体が生じるのか。
(→回答:)一般的に 100 万 kW 級の原子炉が 1 年間稼働して発生するガラス固化体は約 20〜30 本で
ある。
・高レベル放射性廃棄物は、将来的に技術が進んでも、何らかの再利用はできないものか。
(→回答:)再処理でウラン、プルトニウムを除いてしまった部分は、現時点ではほかに使い道がな
いため最終処分する方針。ただし、将来の技術進展の可能性を否定しておらず、この事
業の実現を目指しつつ、できるだけ回収可能性を確保し、将来世代に選択の余地を残す
こととしている。
<リスクと安全性>・処分場を作って、
高レベル放射性廃棄物を埋め終えたら、
あとはそのまま放置することになるのか。
(→回答:)基本的に人間の生活環境から完全に隔離し、影響が及ばない設計とするものであるが、
地元の皆さまとも相談しながら、埋設完了後の一定期間の管理方法等についても検討し
ていくことになると思う。
・最終処分は人間が行うので欠陥が必ず生じると思う。そのような欠陥があった場合に影響がどの程
度あるなどの想定はしているのか。
(→回答:)例えば人工バリアが想定よりも早い時期に性能を失った場合など、通常では生じないよ
うな非常に厳しい条件を想定して、遠い将来の安全性をシミュレーションにより確認し
ており、国際的な基準を満たしているという結果がえられている。
・安全性が信用できないから、なかなか地域の手が挙がらないのではないか。
(→回答:)
安全性を訴えるだけでは不十分であるため、
リスクについても併せて説明を行っている。
また、安全に処分できることを確認するために、文献調査、概要調査、精密調査と段階
的に調査して安全性を確認していくことも説明している。
・最終処分場がなかなか決まらない要因は、やはり不安イメージが先行するからだと思う。あなた方
は「安全だ」と説明するが、福島でも同様に「安全だ」と説明されていた発電所があれだけの事故
を起こしたことに、世間はトラウマになっている。ただ「安全だ」と説明するのでなく、例えばコ
ンピュータープログラムにおけるバグのように「もししろまる%の不具合があった場合はこうなる。しろさんかく%の
不具合があった場合はこのようになるが、それでも影響はこのくらいに収まる」といった技術的な
説明をした方が信頼してもらえるのではないか。
(→回答:)リスクについての説明が重要だというのは、おっしゃるとおりだと思う。今後、よりわ
かりやすい説明に努めたい。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・実際に応募に前向きな地域は出てきているのか。
(→回答:)
先日、
北海道寿都町において文献調査の応募について検討されているとの報道があった。
なお、寿都町が地層処分事業の候補地点に決まったということではない。
・東日本大震災前もこのような対話活動を行っていたのか。
(→回答:)現在と形式は異なるが、東日本大震災以前からもシンポジウムや説明会などを行ってい
た。現在の形式の対話活動は 2017 年から行っている。
・本日の参加者は少ないが,このような対話活動の成果は出ているのか。
(→回答:)
会場によって参加人数は異なるが、
平均すると 1 会場当たり 20 人程度にご参加いただい
ており、
最大で 90 人程度にご参加いただいたこともある。
理解活動は一歩ずつ進んでい
ると認識している。このような対話活動のほかに、地層処分事業を勉強したい団体から
のお申し出があれば、専門家を派遣した勉強会や関連施設の見学会の実施、学校等の教
育機関への出前授業などの活動も積極的に実施している。
・誰も住んでいない無人島ならば、受け入れてもらいやすいのではないか。
(→回答:)無人島であってもどこかの自治体に属しており、当該自治体の理解を得ることが必要と
なる。
<その他>
・実際に処分を行っているのは世界中でフィンランドだけか。
(→回答:)フィンランドでもまだ処分は行っておらず、処分場を建設している段階である。
・フランスは日本よりも原子力発電を利用しているが,最終処分については日本よりも進んでいるの
か。
(→回答:)フランスは日本よりも調査の段階が進んでおり、精密調査を行っている段階にある。
・北海道寿都町のように調査実施を検討する自治体があっても、周辺の自治体などが反対する。安全
に処分できることがまだ国民に十分に認識されていないように思う。
(→回答:)引き続き、様々な機会を捉えて積極的に対話活動に努めたい。・原子力発電所と最終処分場とを比較した場合、
動的施設と静的施設といったイメージの違いがあり、
最終処分場は安全に感じる。地域の将来を考え、誘致検討を表明された首長は立派だと思う。
以 上

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