高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 東京
(墨田区)
開催結果
日 時:2020 年 8 月 27 日(木)18:20〜20:30
場 所:すみだ産業会館 8 階 ホール
参加者数:14 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・逸見 誠(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・岩﨑 聡(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として、受入地
域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。このため、広
く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活動を順次開催
していく。
・高レベル放射性廃棄物は貯蔵施設内では約2mのコンクリートで遮蔽することで、その外側で
は人が作業できるレベルまで影響を低減することができる。放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、その後はゆっくりと減少していく。
・長期にわたり放射性物質を閉じ込め、
生活環境から隔離しておくために、
地表から 300m 以上深
い安定した場所へ地層処分する。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分の事業費は約 3.9 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一
部として電力会社等から拠出される。
・最終処分の方法は、国際的にも長い間議論が交わされ、宇宙処分、海洋投棄や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、ひき続き全国各地で
の対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持ってい
ただける自治体が出てきた場合には、地域の皆さまのご意見を伺いながら、法律に基づいた文
献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、全国規模で整備された文献・データに加えて地域固有の文献・データを整理・分
析し、市町村の皆様に地層処分事業についての理解を深めていただくとともに、次なる調査を
実施するかどうかを検討してもらうための材料を集める、事前調査的な位置付け。ボーリング
などの現地作業は一切行わない。調査結果は地域の皆さまにご説明させていただき、ご意見を
伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、その意見に反して、次の段階
に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、文献調査の実施に際しては、処分事業についての情報提供や住民のご意見
を事業に反映する「対話の場」を地域に設置いただき、多様な関係住民の参画を得て、市町村
の将来像などをご議論いただきたい。
「対話の場」には、私たちから調査の途中経過や結果な
どのご報告や、事業に関するご説明や質疑応答もさせていただきたい。こうした取組みは諸外
国でも同様に行われ、事業への地域のご要望の反映など、重要な役割を果たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模な公共事業。NUMO・電
気事業者・国は連携して、
地域の抱える課題の解決や、
地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・処分場は1か所で足りるのか。
(→回答:)
現在ある使用済燃料
(約 19,000t)
をすべて再処理してガラス固化体として換算し、
今あるガラス固化体(約 2,500 本)と合わせると約 26,000 本相当となる。日本で
は 40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を1か所つくることとしてい
る。
・海外の国に最終処分をお願いすればよいのではないか。
(→回答:)国際条約に基づいて、自国で発生した高レベル放射性廃棄物は自国で処分するとい
う原則があるため、日本においても法律に基づき国内で地層処分を進めていく必要
がある。
<リスクと安全性>
・科学的特性マップで東京にシルバーがある理由は何か。
(→回答:)地下に鉱物資源がある地域は、将来的に人間が掘削して廃棄物に接近してしまうリスク
があることから、
好ましくない特性があると推定される地域としてシルバー色で表示し
ている。東京都を含め、東京湾に沿う形で南関東ガス田が広く分布しているため、シル
バー色となっている。
・なぜ処分場の深さは地表から 300m 以上としているのか。
(→回答:)300m とは、人間の地下利用が地表から 300m 以上深いところにほとんど及んでいな
いことや、諸外国での検討状況を踏まえて法律で設定された最小の深さであり、処
分地選定調査において地質を調査した上で、処分に適した深さに処分することにな
る。なお、深ければ深い方が適しているというわけではなく、深いと逆に地温が高
くなり、人工バリアの機能低下といった安全性に影響を及ぼす可能性がある。
・温度を下げてから地層処分するとのことだが、すべてのガラス固化体をそうするのか。
(→回答:)
ガラス固化体の温度が高い状態では、
ベントナイトなどの性能に影響を及ぼすため、
すべてのガラス固化体について、温度を下げてから地層処分する。その一方で、ベ
ントナイトなどの性能に影響を与える要因や、それに対する耐久性等に関する研究
などの技術開発を進めている。
・想定外の事態が発生すると困る。どのようなリスクを想定しているのか。
(→回答:)調査で見つからなかった断層が処分場を直撃することで、人工バリアと天然バリア
の閉じ込め機能が喪失してしまい、これにより、破壊された多くの廃棄体中の放射
性物質が断層を流れる地下水により地表に運ばれる場合など、発生する可能性が極
めて小さいケースも想定し、人間の生活環境への影響についてシミュレーションを
行い、その安全評価の結果において国際機関が勧告している値を下回っていること
を確認している。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・概要調査、精密調査等に進む際に、
「市町村長と都道府県知事のご意見を伺い、反対の場合は
先に進みません」と説明していたが、根拠法令があるのか。
(→回答:)
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(最終処分法)
」において、概要調査や
精密調査に進むかどうかの際には、当該調査の受入れにご協力いただく市町村長及
び都道府県知事のご意見を聴き、それを十分に尊重することが規定されている。
・一般参加者が少ないが、このような全国的な対話活動や説明会をいつまで実施するのか。対話
活動に私たちの電気料金が使われていると思うと、延々と実施し続けることに疑問を感じる。
(→回答:)今回の対話型説明会のほかにも、学校での出前授業、移動型の模型展示車によるイ
ベント出展を全国各地で行うなど、次世代層も含め、広くこの事業を知ってもらえ
るよう取り組んでいる。
最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要で
あるが、スケジュールありきで考えても全国での理解が進むものではなく、むしろ
期限があることで地域の意向に反して一方的に物事を推し進められてしまうので
はないかと受け止められてしまう可能性もある。
いずれにしても現世代の責任とし
て地層処分を実現することが不可欠であり、引き続き、全国の皆さまに地層処分に
ついてご理解いただくとともに、
全国のできるだけ多くの地域で処分事業に関心を
持っていただけるよう努めていく。
・文献調査を受け入れた自治体には、国からの交付金として最大で 20 億円が交付され、次の概
要調査を辞退しても返還不要とのことだが、交付金目当ての応募にはどのように対応するのか。
(→回答:)仮に、次の概要調査に進まなかった場合でも、文献調査で得られた技術的ノウハウ
や対話活動で得られた知見は、他地域での文献調査にも活用可能であるため、文献
調査を実施する意味はあると考えている。なお、文献調査の応募については、そう
簡単な決断の下で手を挙げられるものではないと考えている。
・文献調査は、処分場建設が前提か。
(→回答:)文献調査は、地層処分に関心を示していただけた地域の皆さまに、事業をさらに深
く知っていただくとともに、更なる調査(概要調査)を実施するかどうかを検討し
ていただくための材料を集める事前調査的な位置づけであり、処分場建設が前提で
はない。
<その他>
・原子力発電が稼働している限り、今後も高レベル放射性廃棄物は増えていく。日本は脱原発に
向かっていないので、地層処分に対する住民の理解が得られないのではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー
政策を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、ゼ
ロにするわけにはいかない。また、原子力発電を止める・止めないにかかわらず、
すでに高レベル放射性廃棄物があることは事実であり、現世代の責任で地層処分を
進める必要があると考えている。
・今後、原子力を減らしていくから、地層処分は安全だと言っているのか。
(→回答:)そうではない。原子力の将来の方向性の話と、地層処分の安全性の話が混在してい
ると思われるため、両者の話は切り分けて考えていただきたい。
・寿都町以外に文献調査の応募を検討している自治体はあるのか。また、寿都町の応募検討に際
し、どのような経緯があったのか、NUMOはどのように対応してきたのか。
(→回答:)複数の自治体などに関心を持っていただいているが、首長が対外的に表明している
のは、現時点では、寿都町のみである。地層処分事業について、地域の皆さまに関
心を持っていただけることは大変ありがたいと考えている。また、NUMOはこれ
までの対話活動を重ねる中で、処分場を受け入れるか否かにかかわらず、日常的に
様々な地域の方々に対して地層処分事業に関する説明を行ったり、お問合せにお答
えしたりしてきている。個別地域におけるやりとりの内容について言及することは
差し控えさせていただきたい。
以 上

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