科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 長崎(佐世保市)開催結果
日 時:2019 年 8 月 22 日(木)18:20〜20:30
場 所:アルカスSASEBO 3 階 大会議室
参加者数:6 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・引地 悠太(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・吉見 修(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏出した
場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動を
遅らせることができる(天然バリア)
。放射能が大きく減少するまでの期間、少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保出来るかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域住民に公表してご
意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事に意見を伺い、反対の意向が示された場
合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画し、積極的な活動が行われることが望ましい。こう
した取組みは諸外国でも同様に行われ、地域要望の事業への反映など、重要な役割を果たして
いる。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える社
会経済的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応をさせていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・オーバーパックは鉄と記載されているが、どのようなものか。ステンレスか。
(→回答:)現在の設計では炭素鋼を想定している。諸外国によっては銅なども採用されている。
・地層処分の候補地は国内に既にあるのか。
(→回答:)現在、日本国内で処分施設の立地可能性を調査する地域を公募している段階であり、
候補地はまだ決まっていない。
・瑞浪(岐阜県)と幌延(北海道)の深地層研究施設をNUMOが引き取って処分場にすることはで
きないのか。
(→回答:)瑞浪と幌延の研究施設はともにJAEAが所有しており、所有者のJAEAは地元自治
体と「当該施設を処分場にしない」旨の協定を交わしていることから、NUMOが当該
施設を引き取って処分場にすることは考えていない。
・地層処分以外の方法も検討していくべき。火口に廃棄体を放り込んで、マグマの熱で溶かしてしま
うのはどうか。
(→回答:)
現在、
そのような検討はしていないが、
これまで様々な処分方法が検討されてきた中で、
地層処分は、人間による管理を必要とせず、将来のリスクを十分に小さくできる、国際
的に最も安全な処分方法とされている。もちろん、将来的な技術の進展も否定せず、将
来世代がガラス固化体を回収できる可能性も考慮していく。
<リスクと安全性>
・科学的特性マップには地下水など反映されていないデータもある。また、地上施設に対してなど考
慮することはもっとあると思うがどうか。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分に関係する科学的特性を、既存の全国データに基づき一
定の要件・基準に沿って客観的に整理されたもののみが記載されている。地下水に関し
ては全国一律のデータが無いためマップには反映していないが、具体的な処分候補地が
出てきた場合には、詳細な調査を行い、しっかりと調査・評価し対策を講じていくこと
になる。また、地上施設に対する要件・基準についても、科学的特性マップ上の立地の
要件に加えて、耐震性や津波対策などを考慮すべき事項と考えており、当然それらにも
対応していく。
・ガラス固化体中の放射性廃棄物を減らすような技術は進んでいないのか。
(→回答:)現在、高レベル放射性廃棄物中に含まれる放射性物質を分離し、減衰期間が短い他の放
射性物質に変換する技術の基礎研究がJAEA等で進められている。しかしながら、こ
の技術についてはまだ研究段階であり、実用化の見通しは立っていない。また、将来仮
に実用化されたとしても放射性廃棄物を完全になくすことは不可能であり、地層処分の
必要性は変わるものではない。
・ガラス固化体の放射能レベルはどのように変化するのか。
(→回答:)ガラス固化体 1 本当たりの放射能は、製造直後は非常に高いが、50 年冷却すると固化直
後の約 1/5 になる。1000 年後には約 1/3,000、数万年後にはガラス固化体 1 本分に相当
する原子燃料の製造に必要な量の天然ウラン鉱石と同程度の放射能にまで減衰する。10
万年後には約 1/30,000 になるが、
一般の地下の岩盤中の放射能と同程度になるにはさら
に長期間を要する。
・フィンランドなどは安定した地層かもしれないが日本でそのような場所があるのか。
(→回答:)確かに日本はフィンランドなどのヨーロッパと比べ地層が新しいが、一概に新しい地層
が悪いというわけではない。ヨーロッパならどこでも地層処分ができて、日本ではいず
れの場所でも地層処分ができないというわけではない。例えば北欧の地層は古いが氷河
期時代の氷がある分、隆起速度が速いなど地域にごとに特性がある。日本周辺のプレー
トの動きについては、百万年前からほとんど変化がなく、こうしたプレートの動きに関
係する活断層や火山活動などの現象は今後も 10 万年程度はほとんど変化しないと考え
られており、日本でも地層処分は可能と考えている。このような地殻変動の過去の履歴
から時間的・空間的な変化の法則性を見つけて傾向を将来に延長するという未来予測の
考え方は、将来の地質環境の状態を予測するうえで最も一般的な考え方とされている。
・安全性の説明ばかりされているように感じるが、危険性についても話してほしい。
(→回答:)私たちは、
あらゆるリスクに対してのシミュレーションを行っている。
具体的には、
40,000
本すべてのガラス固化体が壊れ放射性物質が地下水の流れによって地上に到達するケー
スなどや、適切な立地を選べば起こるとは考えにくい、活断層の直撃と言ったケースま
でシミュレーションを行い、その影響の度合いを把握している。地道ではあるがこのよ
うに取り組む姿勢を皆さまに評価していただきながら信頼を得ていきたい。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・文献調査、概要調査、詳細調査および処分場建設を受け入れた場合、受け入れた地域にはどのよう
なメリットがあるのか。
(→回答:)
地層処分事業は 100 年以上にわたる事業であり、調査〜操業に伴い、地域の雇用・税収・
資材調達等の経済波及効果が見込まれる。
またNUMOは、受け入れていただいた地域の持続的発展があってこそ、事業を安定的
に運営することができると考えており、処分地が決まればNUMOは本拠を現地に移転
し、地域の一員として事業を遂行し地域の発展に貢献していく。処分施設の建設や操業
には、高度な技術を支える人材が相当数必要であり、地域の雇用や教育などにもプラス
の影響を与えられると考えている。また、資機材や物資の調達などの面でも、地域経済
への貢献ができると考えており、他地域との交流の拡大、医療・交通・情報などのイン
フラの整備、まちの賑わい、税収の増加など、建設・操業に伴う経済効果が最大限にも
たらされるよう努める。
・地層処分は離島の無人島で行うべき。
(→回答:)離島であるかどうかにかかわらず、個別の地域について地層処分に対する地質的適性が
あるかどうかは、その地域における詳細な処分地選定調査を実施して検討していくこと
になる。なお、無人島もどこかの自治体に属しており、その地域の理解が必要であるこ
とにはかわりがない。
<その他>
・再処理施設も稼働していないなど核燃料サイクル自体が破たんしているのではないか。
(→回答:)青森県六ヶ所村の再処理工場が稼働していないのは福島第一原子力発電所の事故後に定
められた新規制基準への対応に伴う安全対策を実施しているからである。再処理の技術
そのものは確立されており、
規制委員会の審査を経て 2021 年度上期の竣工を目指してい
る。
・廃炉などをしても原子力発電の費用は安いと言えるのか。
(→回答:)本日の資料の「よくいただくご質問への回答」でも触れているとおり、廃炉や賠償とい
った事故処理費用などを試算してもなお、原子力のコストは他の電源に比べ低いもので
ある。・すでに 25,000 本相当のガラス固化体が発生し、
地層処分が最善なのだろうということは理解できる。
問題は、事業者や国と市民がどのように信頼関係を結んでいけば良いのか、最終処分について考え
る人々がどうやって心を一つにしていくかであると思う。それを考えると難しい問題だと感じる。
・若手の人材育成も大切。原子力の知識も低下してしまうようなことは避けるべき。
・広報の方法としてIT系の企業本体とコラボレーションするのも一つの手だと思う。
以 上

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